EPISODE.10
――あれからゾロ達と一旦別れたルフィとナマエは、コリーダコロシアム内で出口を探していた。
ちなみに走っている最中、ギャッツの実況によりDブロック勝者がレベッカだと知り、ホッと安堵するルフィとナマエ。レベッカも無事に勝ち進んだようだ。
外へと通じる道はどこもかしこも海楼石で出来ており、能力者である2人が逃げる道は無く・・・途方に暮れていると、正面を歩くバルトロメオを見つけた。
「あー!!トサカの奴!!いいとこで出会った!!あれ?ベラミーもいる!」
「のわあああーー!!!??ルルルッルッ、ルフィ先輩いいぃい!?」
『・・・毎回泣いてるね、この人』
「ッル、ルフィ先輩・・・!さっきゾ、ゾロ先輩とお会いになられましたか!?」
「ああ会えた!ありがとうな!ほんでおれ、急用が出来て外に出てェんだけどよ、出口がなくて困ってんだ!」
「・・・このコロシアムに出口なんか無ェよ」
バルトロメオの肩を借りているベラミーは、大会で負った時よりもさらに酷い怪我を負っていた。どうしたのかと聞けばベラミーはその質問に答えることはなく、選手は一度コロシアムに入ってしまえば二度と出る事は出来ず、出口など探すだけ無駄だと話す。
だとしても仲間のピンチを放ってはおけない。なんとしてでも外へ出なければいけないルフィはベラミーの肩を掴む。
「頼む、仲間がやべェんだ!!」
「ッ・・・・・・俺ァ今から外へ出る。ついてくりゃもしかしてお前も、出られるかもな」
「!そうか、ありがとう!連れて行ってくれんだな!」
「お前が勝手につけてこりゃ偶然そうなるって話だ。・・おれにボスを裏切れ、ってのか?俺は・・・ドフラミンゴを裏切れねェ!!!あ、あの人を尊敬している・・・!!」
「分かった!じゃあつけてく!!」
「し、しかしルフィ先輩、メラメラの実は・・・!」
「それは・・・っ渡したくねェ奴もいるけど・・・」
「!そ、そんだらば!おらが『そのことなら私に任せて。私が優勝してメラメラの実を絶対に手に入れるから』
「!ナマエ・・・」
「えェ!?ナマエだって!?!?ま、まさかあんた、ルフィ先輩のお、お、おお、お、お姉樣・・・!?」
『メラメラの実を取って、すぐに私も追いつくから』
どのみちバレるのも時間の問題であろう。バルトロメオはルフィの味方のようだし、今更訂正することでもなかった。ナマエは邪魔だったフードとサングラスだけを外し、髪色こそ違うもののその姿を目にしたバルトロメオは今度は涙ではなく血を吐いてしまい、失神しかけていた。
『だ、大丈夫・・・?』
「う、噂にたがわぬ美しさだっぺ・・・!!まさかこんな所でルフィ先輩のお姉様にも会えるなんてェ・・・!おら幸せもんだっぺェ・・・!」
『?そ、それじゃあルフィ、そろそろEブロックの試合が始まるみたいだから私行ってくるね』
「ああ!気をつけろよ!」
――カツ、カツ・・・。
『?』
――ふと、背後から足音が聞こえてくる。
後ろを振り返ったナマエは自分たちに近づいてくる黒い影に警戒するように身構える・・・が、見聞色の覇気から伝わるありえもしないその者の懐かしい"気"に、目が大きく開かれる。
『(そ、んな・・・まさか・・・・・)』
「・・・メラメラの実はお前たちには渡さねェぞ。麦わらのルフィ・・・大海の歌姫ナマエ」
「んだてめェ?おうおうおう、何者だ!?ルフィ先輩とナマエ先輩に気安く声かけやがって・・・!あのお方達はかの伝説の海賊、火拳のエース様の妹と弟にして、ルフィ先輩につきましては未来の海賊王であらせられるんだっぺこの馬鹿!!」
「――そんな事、昔から知ってる」
トンッ、と指先で軽く押されただけなのにバルトロメオの身体は体当たりされたかのように吹き飛ばされ、近くの空き箱に突っ込んでいった。
一歩一歩、ゆっくりルフィとナマエに近づいてくる長身の男はゴーグル付のシルクハットを目深に被っており顔はよく見えないが、ナマエは何度も何度も、否定するように首を左右に振る。
『っ、嘘だ・・・ッ・・・!』
「お、おいナマエ?どうした!?」
『そんなこと、ありえない・・・ッだってあの時・・・!』
自分に言い聞かせるように呟くナマエの大きな瞳からは涙が溢れていた。
突然様子がおかしくなったナマエに戸惑うルフィだったが、近づいてくる男からナマエを守るように間に立つと目の前の男を睨み上げる。
「何だお前!?いきなり来てメラメラの実は渡さねェ、って・・・!」
「・・・おれだよ、ルフィ」
「なぁーにがおれだ!いいか、メラメラの実はエースの形見だ!欲しいんなら敵だ!!それにおれをルフィって呼ぶけど・・・見ろこのひげを!おれはルーシーだ!!」
「変装したくらいで弟の顔が分からねェわけねえだろ」
「弟ォ?あのなぁ、おれを弟と呼ぶのはナマエと、死んだエースと、もっと昔に死んだ・・・っ・・し、死んだ・・・・・・」
『うっ、うぅう・・・!!』
鈍感なルフィも、薄々気づき始める。なぜナマエが泣いているのか――目の前にいる男が、一体誰なのか・・・。
金色の髪、ゴーグル付きのシルクハット――それだけで答えは十分だった。
目の前にいる男は被っていたシルクハットを外し、"昔と変わらぬ"優しい笑みを二人に向けてみせた。
口元を抑えながらナマエは力が抜けたようにその場で座り込み声を出して泣き、隣にいるルフィの瞳からも大粒の涙が溢れ出す。
「お、おま・・・ッ・・・・!あ・・・あ・・・」
「久しぶりだな・・・ナマエ、ルフィ・・・!」
『ッう、うわぁああああん!!』
「サボーーーーーーー!!!??」
驚きのあまり、目玉が飛び出しそうなくらい大きく目を見開かせたルフィは物凄い勢いで後退し柱に激突するも、サボの姿がいまだ信じられないのか「嘘だ!!!」と叫んだ。
・・・あの時確かにドグラが言っていた。サボは船と共に沈められた、と。あの時からルフィ達の中でサボは亡き者となり、この世に存在しているはずがないのだ。信じろという方が難しい。
しかしそんなルフィにサボは片目を瞑りながら、昔ダダンの酒を盗んで盃を交わしただろう、と・・・兄弟にしか知らない出来事を話し、本当にサボなのか・・・感極まったルフィはゴムの両手をサボに巻きつけそのまま勢いよく抱きついた。
「サボォオオオ!!!!!お゛れ゛てっきり死んだかとォお・・・!!あああああ!!!」
「ッ・・・・・・ありがとなナマエ、ルフィ・・・!!生きててくれて・・・嬉しい・・・!!」
「!・・・でもサボ、おれは、ナマエは・・・ッ目の前でエースを殺されて・・・!!」
『っ、・・・う、うう〜・・・!!』
「ああ・・・エースは死んだけどお前達だけでもよく生き延びてくれた・・・!おれは何も出来ず、3人の兄弟を失うところだった!!お前やナマエまで死んでたら・・・1人ぼっちになるところだった・・・!!!」
「うッ、ううおおおおおおん!!!」
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