EPISODE.09



ルフィ達の新たな任務が発動された――その時だった。





ドオオオオオオオオオン!!




何かが空から降ってきたと思えば、それは物凄い速さでゾロ達の前に落下し、大きな爆発音が鳴り響く。地面は割れ、砂煙が舞うなか混乱するゾロ達の目の前に現れたのは――なんとドフラミンゴであった。その後ろには騒ぎに駆けつけた海兵達の姿もあり、まさに万事休す。


「な、何だ!?」


煙の中心――降って来た"何か"の正体は怪我を負ったローであった。
ドフラミンゴは側にいるゾロたちを見向きもせず苛立った様子でローの前に立つと持っていた銃を構え、そして何の躊躇いもなく引き金を引いた。しかもそれは一発だけに収まらず弾が無くなるまで撃ち続け、何発もの銃声音が鳴り響く。


「トラ男ーーー!!!」
「・・・・・図に乗りすぎだ」
「ッお前!よくもトラ男を・・・!!」
「麦わら・・・・・・てめェにとやかく言われる筋合いはねェ。ローは元々おれの部下・・・けじめはおれが付ける!」

「っ錦!トラ男を運べ!!」
「承知した!!!」


ゾロ、錦えもんが刀を構え、ドフラミンゴに向けて攻撃を仕掛ける。その間も錦えもんが腰につけてる電話は繋がったままで、何が起きたのか理解できず心配するサンジチームやウソップチームに走りながら、たった今ローがドフラミンゴに撃たれた、と状況を説明した。


「・・・海賊狩りに狐火の錦えもんだな?モモの助らしきガキをさっき船で見たぞ」
「!」
「話に乗るな!!モモを渡しはしねェ!!」
「ッ無論でござる!!」
「ふふふふふふ」


不適に笑ったドフラミンゴに刀を振り下ろすゾロ――だがその刀は、突然横から現れた新たな海軍大将藤虎によって防がれた。刀と刀がぶつかり合った次の瞬間、強い重力が襲い掛かり、ゾロの周りだけの地面に亀裂が入りるとそのまま地面ごと奈落の底へ圧し沈められてしまった。



「ゾロォオオ!!!!」
『・・・!ッ!お侍さん!上!!』
「!!!!」


ナマエが錦えもんにそう叫んだ時には既に遅かった。錦えもんの上空を取ったドフラミンゴはそのまま錦えもんを蹴り飛ばし、目を見開かせたルフィがすぐに応戦しようと目の前の鉄格子に手を触れた・・・その瞬間、突然身体に力が入らなくなりその場に座り込んでしまう。
まさか、とナマエも指先だけ触れてみれば――全身から力が抜け、まるで海の中にいるかのような感覚に陥る。


『ま、まさか海楼石・・・!?』
「ふへぇえ〜〜ゾロォオ〜〜錦えもォ〜ん」
『どうしよう・・・これじゃ出られない・・・!』


「うおおおおおお!!!!」


――大きな穴の開いた地中の中から雄叫びが聞こえ、次の瞬間・・・ゾロが放った斬撃が藤虎に襲い掛かる。咄嗟に刀で受け止める藤虎は後ろにいた海兵らに市民達をなるべく遠くへやるよう指示し、その間に穴から抜け出してきたゾロは肩で息をしながら、目の前の藤虎を見つめる。


「ッ盲目の賭博オヤジがまさかの海軍大将かよ・・・!」
「大将ォ!?」
「な、なんと・・・ドフラミンゴと共におる男が・・・か、海軍大将でござった・・・!!」

[[[えええ〜〜〜!!???]]]



電伝虫の向こうから悲鳴が聞こえてくる。まさか、ドフラミンゴは海軍を味方にしたというのか――だとしたら敵の数は未知数・・・否、数の問題ではない。大将1人いるだけでその戦力は計り知れないのだから。

ローから錦えもんを離したドフラミンゴは目の前にいるローを肩に担ぐと藤虎の背後に回り込み、何か小さな声で耳打ちをする。一瞬、眉を動かした藤虎は持っていた刀で自分の周りの地面を切り、するとその地面が空へと浮いていくではないか。
後ろにいたドフラミンゴも指を動かしただけで体が宙に浮き、摩訶不思議な光景に唖然とするゾロ達。


「しまった・・・!!ロー殿!!!」
「なんで2人とも飛んでんだ!?!?」

「ットラ男おおお!!」
『(っこのままだとトラファルガーの命が危ない・・・!)』


かろうじて息はしているようだがあの出血量を見る限り、時間との問題であろう。
幸いにも今日は雲ひとつない晴天・・・青空にうっすらと浮かぶ月を確認したナマエは瞳を閉じ――やがて額に浮かんだ三日月模様が淡く光りを帯びると、中から光り輝く蝶が現れた。蝶はヒラヒラと空へ舞いながら、ドフラミンゴにバレることなくローの体の中へと入っていく。

――月光蝶げっこうちょう

先ほどの光る蝶はナマエの癒し力が具現化されたもので、ローの中に入っていったことによってすでに治癒が始まっていた。顔色の良くなっていくローの様子にもちろん、ドフラミンゴは気づいていない。


「ふふふ・・・話は王宮でだ、藤虎。おれに協力すりゃ小僧共の首はくれてやる」
「話は聞きやすが・・・天夜叉の。判断はそれからで」
「ッそうはさせるか!!!」

「――住民達の誘導完了!ロロノア・ゾロを捉えろー!!!」
「!」


変装をしていたゾロ達だったが、正体は既にバレてしまっていたようだ。
ローを連れてドフラミンゴと藤虎は王宮の方へと飛んでいってしまい、取り残されたゾロと錦えもんは海兵に取り囲まれ、一斉砲撃を受ける。放たれた銃弾を刀で弾きながら、一先ず退散だ、と・・・コロシアムの外周を走り、そして海兵らに追いつかれる前に一周して戻ってきたゾロがルフィ達に言う。


「はあ、はあ・・・ッ・・・おいルフィ!早く出口を探せ!おれ達はこの辺り逃げ回って待ってる!!」
「分かった、急ごう!!」
『トラファルガーは大丈夫!まだ生きてる!』

[[[[ぎぃやぁあああ〜〜〜!!!???]]]]

「!ブルック達だ・・・!今度は何だ!?サニー号!!どうした!?!?」


電伝虫の向こうで何が起きたのか・・・一番肝心な所で背後から海兵が追いついてくる。


「ちっ、もう追いつきやがった・・・!」

[た、た、た、大変ですぅ〜〜!!]
[ビッグ・マムの海賊船だァ〜〜!!!!]

「!?ほ、本当か!?ビッグ・マムの船!?」

[あああ〜〜!!!死ぬううう〜!!]

「どういうことだ!?ビッグ・マムも乗ってるのか!?」


ゾロ達の後ろから大勢の海兵が押し寄せてくる。小さく舌打ちをしたゾロは一緒に走りながら連絡をとるよう伝え、頷いたルフィはナマエと共にゾロ達と並行に走りながら電伝虫に話しかける。


[ッ分からねェが魚人島で会ったあの2人組が乗ってる!!]
[ひええ〜!!?ビッグ・マム〜!?ッいわんこっちゃねェ!ルフィ、お前が喧嘩売ったからだ!!]
[狙いはシーザーのようだ!!!]
[シーザー!?なんであいつを!]
[ッ大丈夫かサンジ!?だがおい・・・四皇なんてこの国に引っ張ってくんなよ!?国中がパニックになって兵隊たちの作戦がめちゃくちゃになっちまう!!]

「・・・そういや、なんで船にシーザーがいるんだ!?」
「交渉が決裂したらしい!!でなきゃ、トラ男があんな目に遭うか・・・!」

[ローがシーザーを次の島へ運べといったから乗せたんだ!]
[・・・サンジくん!私達、ドレスローザに戻らない方がいいと思う!!]



――それは、同じサニー号にいるナミの声だった。


[合流してトラ男を取り戻したい気持ちも、小人の兵隊達に加勢したい気持ちも分かる・・・っ戻るのが怖くて言うんじゃないの!――ルフィ、聞いて!ドフラミンゴと奪い合うカードは3つよ!]

「!」


シーザー、SMILE工場、そして理由は分からないが――モモの助。
SMILE工場はまだ破壊できていないから向こうのもの、しかし残りの2つのカードの2人は今サニー号にいる。
ローが戦ってたのはこの2つのカードをドフラミンゴから遠ざけるための囮として、もしかしたら工場破壊の時間稼ぎであったかもしれない・・・。


[そこまでしてトラ男が守ったカード、私達がむざむざ差し出しにいくようなマネしたら・・・あいつ・・・っ報われないじゃない!!]

「!・・・そうだな、分かった。トラ男はおれ達が必ず奪い返す!!次の島、なんつった!?」
「"ゾウ"でござる!!」
「――サンジ!!ナミ!!チョッパー!!ブルック!!モモ!!お前ら、先にゾウに向かってくれ!!!」

[・・・そういう事なら分かった船長キャプテン!じゃあ1つ許可をくれ!]

「許可ァ?」

[ああ・・・ビッグ・マムの船に・・・・・・反撃する許可を!!]

「ああ、いいぞ」

[[ええええ〜〜!?!?]]


驚きの悲鳴をあげたのは同じ船に乗っているチョッパーとナミであった。


「もう喧嘩は売ってある!!」

[へへ、確かに。・・・じゃあお前ら、ゾウで待ってる!!]

[よーし!!工場破壊はこっちに任せろーー!!]

「みんな、無事でな!」

[了解!]
[了解だァ!!]

「トラ男の命も、レベッカの願いも――全部あいつドフラミンゴが握ってる・・・おれ達は王宮へ行く!そして、ドフラミンゴをぶっ飛ばす!!!!」





   



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