EPISODE.08
目の前にある映像は全てレベッカが映されるわけではないため、他の者の戦いも映されていた。見ても意味のない試合に痺れを切らすルフィにナマエは「観覧席に行かない?」と提案し、直接見れる事をすっかり忘れていたルフィは大きく頷いた。
その場を離れる前に、ルフィは一度足を止めると牢を振り返る。
「そういやァおれ、この国楽しくてみんな幸せそうに見えたけど・・・おめェらみてるとなんか違ェな」
「お前が見たのは勝者たちの華やかな世界・・・ドフラミンゴは人間を、従う勝者と逆らう敗者に分ける。まるで世界政府そのものだ・・・そこから外れた敗者はゴミ同然、ゴミは闇に隠しちまえばそりゃ国としての見栄えはいいだろう」
『!それじゃ、まるで・・・』
――不確かな物の終着駅ではないか。
ルフィとナマエの脳内にはゴア王国のゴミ山が浮かび上がり、この国とどこか似たものを感じ取っていた。
「疑い始めりゃこの国は違和感の塊だ。おれ達はもっと深い闇があると感じてる・・・お前達も気をつけるんだな」
「分かった!じゃあな!!」
『ありがとう!』
ルフィとナマエは囚人検討したちに別れを告げ、その場を後にした。長い廊下を進んだ先に大きな扉があり、そこを出ると選手たちのいるエリアに繋がっていた。
「観覧席どっちだっけ?」
『確かあっち!』
「よし!早く行ってレベッカ応援するぞ!」
「ル、ルルッルルルルフィ先輩ーー!!!」
「ん?」
『え?』
後ろを振り返るとそこにはBブロック勝者のバルトロメオの姿があり、なぜか涙を流しながらルフィを呼んでいた。
「お、おれはルーシーだ!!」
「ぞ、ぞんがな事より・・・ッだああ駄目だ、緊張してまともにしゃんべれねェ・・・」
「?用が無いなら行くぞ?近くでレベッカを応援したいんだ」
「え!?い、いかねェでけろ!!た、た、頼まれたんです!ゾ、ゾロ先輩に!!」
「!何!?」
仲間の名前に足を止めたルフィは踵を返し、バルトロメオの前まで戻る。バルトロメオはゾロからルフィを連れて来るよう頼まれたらしく、ゾロがどこにいるのかとルフィが問えばバルトロメオは恥ずかしそうに顔を隠し、そして相変わらず涙をしながら「おらが案内します」と先頭に立ち、走り出した。その後をついていくルフィとナマエはレベッカが気がかりではあるものの、仲間が呼んでいるとあれば無視するわけにもいかなかった。
「よっしゃ、頼むぜトサカ!」
「!!!」
なぜか涙するバルトロメオの案内の元、2人はコロシアムの入り口が見渡せる廊下に辿り着いた。鉄格子の向こうではルフィの仲間のゾロ、そして錦えもんの姿があり、大きな声で2人を呼ぶルフィ。
「おーいゾロー!錦えもんー!用ってなんだー!?」
「ッお前なァ!こういう大会があるならなんでおれを誘わねェんだよ!」
「へへへごめんごめん!」
「人が町中駆け回ってんのにてめェは・・・あ?誰だその隣にいるの」
『は、初めまして!あの、わたし・・・ッ』
本名を言いかけたナマエだったが慌てて口を閉ざす。今自分たちはコロシアムの2階部分におり、外にいるゾロ達を見下ろす形となっているのだが距離もあるせいで大きな声を掛けなければ聞こえそうにない・・・しかしゾロたちがいる場所は人目も多く、どこの誰が聞いているかも分からないのだ。
後でちゃんと自己紹介しよう、とナマエが思った矢先――隣にいたルフィが大声で、
「ナマエだよー!おれの姉ちゃん!今さっき会って仲間になった!」
なんていうものだからナマエの顔面が一瞬で蒼白になる。そんなナマエの気も知れず、ルフィとゾロは相変わらず大きな声で会話を続ける。
「前に話してた姉貴か!よかったなやっと会えて」
「にしし!ああ!あとでみんなにも報告しなくきゃな!」
『・・・・・・』
言ってしまったものは仕方ない。それにこういう想定外な事をするのがルフィだと昔からよく知っていたナマエはきっと誰も聞いていないはずだと前向きに考える事にした。
ルフィを見つけたら電話をくれとサンジから言われていた錦えもんは持っていた電伝虫を繋げていた。
「あ、そういやルフィ、このコロシアム海軍に取り囲まれてるぞ」
「ふーん」
「軽い!!!それが本題でござる!!!」
『!海軍に・・・?』
[こちらサニー号!]
「お、サンジか?おれだ!」
[よし・・・チョッパー、そっちでウソップ達に繋げろ]
[分かった!!]
向こうで電話を繋げ、そして暫くするとウソップ達の声も聞こえてきた。ロー以外全員がこれで電話越しで集まったのを確認したサンジは、各自状況を伝えるよう指示する。
サンジチームはサニー号にナミ、ブルック、チョッパー、モモの助、そしてシーザーがおり、錦えもんチームはゾロ、ルフィ、ナマエがコロシアムに集まり、ウソップチームにはフランキー、ロビンがいるようだ。
場所を告げようとしたウソップだったが途中で声がフランキーに変わり、フランキー達は今、この国の反ドフラミンゴ体制リク王軍の"小人"たちと一緒にいると話した。
[おいルフィ、覚えてるか?おれ達コロシアムの前で妙な兵隊に会ったよな]
「ああ!それより小人ってなんだ?」
[あいつ、実はこの軍の隊長だったんだ]
「!小人の隊長か!」
[そしてここに集まった連中は正に今日、ドフラミンゴを倒そうっていうんだ]
『!それって、レベッカの言ってた・・・・・』
「それだ!レベッカが止めたがってたのそいつだ!ッフランキー、その軍隊を止めろ!」
[あほ言え!おれが言いてェのはその逆だ!!おめェ、あのレベッカと話したのか?]
「ああ!それがめちゃくちゃいいやつでよ!!金ねェのに弁当奢ってくれたんだ!なのにお前、あいつが試合に出た途端客のやつらムカつくんだ!」
[それァおれも同意見だ・・・・・・ッ・・・ルフィ、おれはトラ男の作戦には乗れねェ]
[フ、フランキーなにいってんだよ!?]
ローの思惑はSMILEの工場を壊した後、カイドウを落とすためにドフラミンゴはあえて生かして利用する――しかしそれでは今日、ドフラミンゴを討とうとしている小人の軍隊はどうなるのだろうか。
[小人たちは止まらねェ・・・一見、楽しげなこの国には深い深い闇があった・・・!こいつらは今、その闇をぶっ倒すために命懸けの戦いを始めようとしてやがる!!小せェが・・・大した玉じゃねえか。薄汚く巨大な敵に挑むこの勇敢なるちっぽけな軍隊をおれは見殺しには・・・・・できねえ!!]
「・・・・・・」
[それでもおれ達にとっちゃドフラミンゴは処理する方が好都合か?・・・・・・ルフィ、おめえが何と言おうと・・・ッおれはやるぞ!]
電話越しでも分かる、フランキーの強い意志。黙って聞いていたルフィの脳内には、先ほど泣いていたレベッカの姿が浮かんでいた。
――兵隊さんが、死んじゃう・・・っ。
ルフィは鉄格子の間から手を伸ばし、錦えもんの持っていた電伝虫を奪い取る。そして電話の向こうにいる仲間に、命令を下した。
「フランキー、好きに暴れろ!!おれ達もすぐ行く!!」
[・・・!!アウッ!!すまねえ!!!]
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