EPISODE.07



「さァー!Dブロックを勝ち残るのは果たして、誰かー!!」


Dブロックの試合は、映像電伝虫によって囚人たちのいる場所でも見ることが出来た。一緒に観戦していたルフィとナマエは、試合開始早々、複数の剣闘士に囲まれるレベッカを見て大きく目を見開かせる。しかし・・・囚人剣闘士曰く、レベッカが出場する試合ではよくある光景だと話した。


「猛者揃いの男共の中で女は大概レベッカ1人・・・」
「おまけにコロシアムに集まる客の全てがレベッカが倒されるのを望んでるんだからな」
「真っ先にレベッカが狙われるのは・・・謂わば必然ってわけよ」
「ッ・・・・・・負けるんじゃねェぞレベッカー!!いけいけェー!!!」


大声を上げてレベッカを応援するルフィ。それに乗じて囚人たちも映像の向こうにいるレベッカに声援を送り、そんな彼らに笑みを浮かべながらも、ナマエは一つ、疑問に思うことがあった。

――先ほどから客席はレベッカにブーイングの嵐。囚人剣闘士も言っていたが、なぜレベッカが倒されるのを望んでいるというのか・・・その理由が今だに分からなかった。


『・・・ねえ。レベッカはどうして、あんなにも批判を受けているの?』
「あいつおれに弁当おごってくれたすっげェ良い奴なのに!!」
「ッ分かってる!だがレベッカの爺さんは・・・かつて国中の恨みを買った、先代国王なんだ!!」
「孫だからなんだってんだよ!関係ねェだろあいつには!じいちゃんが何したってよォ・・・」
「・・・ああ、その通りよ!お前良い事言うじゃねェか!例え爺さんが国民から恨みを買った先代国王だとしても、レベッカは・・・おれ達にとっちゃ希望の星、だからな!」


レベッカと囚人剣闘士たちは、この出口のない真っ暗闇の底辺から這い上がろうと必死に戦ってきた。囚人剣闘士たちの実力ではとてもじゃないが勝ち進むことが出来ないが・・・唯一無傷のレベッカが、全員の希望の星だという。レベッカが優勝し、メラメラの実を手に入れればこの状況も少しは良くなるかもしれない――そのために、今まで皆で頑張ってきた。


『・・・っだからって・・・・・あれが・・・本当に同じ人間に対して言う言葉・・・!?』
「お、おい偽名」


老若男女問わず、レベッカに降りかかる批判の嵐。その中には「死ね」という言葉も聞こえ、映像に映るレベッカは顔はあまりよく見えないものの、悔しそうに唇を噛み締め、涙を堪えているように見えた。
眉を顰めさせながら怒りを露にするナマエの珍しい姿に、思わず一歩身を引くルフィ。・・・怒ったナマエは四皇よりも怖い、と昔エースが話していた事があるが、確かに今のナマエには近寄りがたいオーラが発せられており、檻の中にいる囚人剣闘士たちが怯えきっていたのはいうまでもない。


『ッもう我慢できない!私、ちょっと文句言ってくる!』
「お、おい待てナマエ!?」
『はーなーしーてー!!あんなのレベッカが可哀想だよ!!!』


まさか観客全員に文句を言おうというのか、ナマエの突発的な行動に驚いたルフィは慌ててナマエの背中に抱きつき、阻止した。しかしナマエも負けじと抵抗し、意地でも競技場の方へと向かおうとした――その時。


そこまでだァあああ!
「『!!』」


ぴたり、動きを止めたルフィとナマエの視線が映像に向けられる。

そこに映っていたのは白馬に乗って現れた――キャベンディッシュだった。それまでブーイングを巻き起こしていた観客たちも口を閉ざし、会場にいる全ての人たちの注目がキャベンディッシュへ向けられる。


「ッ行儀の悪い客だ・・・目に余る!!!恥を知れェ!!」
「おおーっとォ!美しき海賊団船長白馬のキャベンディッシュ登場ォー!!!」


それまでブーイングの嵐だったというのに、キャベンディッシュの登場によりそれは女性達の黄色い声援へと変わった。


「客席の女性たちが倒れていくぅー!!3年前に世間を沸かせた美貌は健在だァぁああ!」
「キャベンディッシュ様ァー!!その小娘をやっつけてえーん!」
「レベッカに思い知らせてええー!!」


「ッ・・・・・・黙れ貴様らァ!!!!


――怒号が響き渡る。シーンと静まり返った場内でたった1人、サーベルを片手に叫ぶキャベンディッシュの瞳は怒りに満ちていた。


「どんな遺恨があるかは知らんが、まだうら若くも死を覚悟してリングに立つ娘に対し!!命も懸けぬお前達には罵声を浴びせる資格もない!!!!そんなに娘を殺したくば武器を取り、このリングに降りて来い!!!!覚悟なき者の声など世の雑音でしかない、故あって出場したが僕はこの大会が大嫌いだ!!――戦士の命は見世物じゃない!!」


魂の叫びに、会場内は一瞬は静まり返ったものの――次の瞬間、キャベンディッシュを慕う声援に包まれた。
キャベンディッシュが目立った事により、もう誰も、レベッカを悪く言う者はいなかった。


「なんだ言うじゃねェかキャベツ!ちょっと見直したぞ!嫌いだけど。ほらナマエ、もうレベッカは大丈夫だ!」
『う、うん・・・』


ルフィに解放されたナマエは安堵の息を吐きながら、再び画面に視線を向ける。


試合のコングが鳴り響くとレベッカは大勢の敵に怯む事無く立ち向かい、そして次々と場外へと追い出していく。・・・誰一人として敵を傷つけることはなく、持っている剣は盾の代わりとして、守りながらでの戦いを繰り広げている。


『・・・見聞色の覇気使いなんだね、レベッカ』
「ああ・・・驚いたな」


ルフィとナマエの話に首を傾げる囚人剣闘士たち。あんなに大勢に囲まれながらもレベッカは一太刀も喰らう事無く、全てそれを紙一重で避け、そしてカウンターを仕掛けて場外へと追いやっている。背水の剣舞――それはレベッカが最も得意とする戦法だった。

しかしいくら倒しても次々と敵が現れ、さすがのレベッカにも疲れがみえてきた頃・・・レベッカの前に、マジアツカ王国軍隊長ローリング・ローガンが現れ会場が沸きあがる。


「さァて・・・どの骨を折っちゃおうかな?首がいいか?」
「「「「首ーー!」」」」
「ははは・・・それとも背骨かァ?」
「「「「背骨ーーーー!」」」」」
「やっぱ両手両足にしちゃう?」
「「「「しちゃうーーーー!!!」」」」
「甘ェなぁお客さん!!この憎まれっ子ちゃんは・・・全身粉砕骨折こそが相応しい・・・そう思わねェか!?!?」


ローガンの掛け声に、観客の全員が賛同の声をあげる。それを映像越しに見ていたルフィとナマエは檻を掴む手に力を込めて、ローガンを睨みあげた。


『酷い・・・』
「ムカつくな!!なんなんだあいつは!?」
「言っただろ・・・それだけ先代国王への恨みは深いのだ」
「だからそれは関係ねェだろ!あいつすげーいい奴なのに!」
「そんな事は分かってるさ・・・レベッカは大怪我を負って生死の境を彷徨っていたおれに寝ずの看病をし励ましてくれたんだ・・・!!おれだけじゃねェ、ここにいる皆も同じだ!だが外の奴らはあの夜の出来事を忘れようにも忘れられないのさ・・・」
『あの夜の出来事?』
「ああ。話せば長くなるが――」
「じゃあいいや」
「っていいのかよ!!」
「頑張れー!!レベッカー!!!」





   



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