EPISODE.06



「うっひょォ〜美味そう〜!!いっただっきまァ〜〜す!!」


道中にあった弁当屋を見たルフィがそこから一歩も離れようとせず、それを見たレベッカが1つ、ルフィの為にお弁当を買ってくれた。椅子に腰掛け、幸せそうにそれを頬張るルフィを見たレベッカが申し訳なさそうに言う。


「ごめんね、あんまりお金もってなくて」
「ううん!奢ってくれてありがとうレベッカ!」
「あなたも、ルーシーの知り合い?」
『うん、そんなところ。偽名っていうの、よろしくね』
「私、レベッカ。よろしく!」
『レベッカ、ここはどこなの?』
「此処は私達剣闘士の宿舎。・・・獄舎って呼ぶ人もいるけど」


ゲスト選手は此処には来ないため、一番安全な場所だった。付けていた兜を外したレベッカは、隣で無我夢中に食事をするルフィを見て笑みをこぼす。


「試合、すごかったね。驚いたわルーシー強くて!・・・ご飯、美味しい?」
「ああ!うめェぞコロシアム弁当!」
「ふふ」
「おめェは腹減ってねェのか?」
「!ッ・・・・・・お腹・・・・・・空かないの・・・私」
「なんだ侍みてェなやつだな」


この時、レベッカの顔が曇ったのを見逃さなかったナマエは――先ほどから感じていた気配が背後から迫ってくるのを感じ、咄嗟にその場を離れる。
それと同時、弁当を食べる事に夢中だったルフィは、背後にある檻の中から出てきた無数の手に身動きを封じられてしまった。



「おわっ!な、なんだ!?」

「おらァ捕まえた・・・!」
「レベッカ、やるならやれェ!!」
「その気で捕まえてきたんだろ!?」
「1人逃しちまったけど女だ、構う事はねェ!!」


檻の中にいる者達の言葉に、目の色を変えたレベッカは――目の前にある剣を手に取った。ルフィは自身に回された腕を振りほどこうとするがあまり暴れてしまうとせっかくの弁当がこぼれてしまうため、下手に身動きが取れない状態だった。


「おい!弁当がこぼれちまうだろ!?」
「ッどうした早くやれ!」
「やらなきゃおめェの目的はどうなる!?」
『!目的・・・?』
「ッ」


唇を噛み締めながら、一歩、一歩・・・ルフィに近づくレベッカ。
そして剣を構えると躊躇いながらもルフィを突き刺そうとする――が、その刹那、背後にいたナマエが大きく目を見開かせ、ルフィを捉えていた男たちに"覇気"を向けた。
――覇王色の覇気。ナマエもその素質があると判明したのは今から丁度1年前・・・モノに出来るようになるまでシャンクスに修行をつけてもらったおかげである程度扱えるようになったのだ。

威圧された気を失った男たちは音を立てて倒れていき、身体が自由になったルフィは弁当を食べながらもレベッカが振り下ろした剣を避け、そして足だけで手から剣を離させるとそのままレベッカの上に乗りかかり、動きを封じた。

レベッカの上に乗りながらもルフィは弁当を食べ続け、そして観念したレベッカは静かに目を瞑る。


「ッ〜〜・・・好きにすればいい。報いは受けるわ」
「メシをおごってくれた奴に何もしねェよ」
「!?貴方を殺そうとしたわ!」
「いいよ、死んでねェし。それにお前、殺す気なんて・・・」


そんなに余裕で許されてしまえば力の差が浮き彫りになるだけで、レベッカは悔しそうに唇を噛み締めた。
――檻の中にはナマエが気を失わせた者達以外にもたくさんの人がおり、レベッカの敗北を目の当たりにして酷く落胆していた。


「1人でもここで実力者を消しておければ少しくらい希望も持てるっていうのに・・・!」
「!ミイラ!?!?」
「違うわァ!!!」


ルフィが驚くのも無理もなかった。
檻の中に居る者達は全員、全身包帯で巻かれ、中には五体満足ではない者もおり、傷だらけであったのだから・・・。


「おれ達ァ・・・囚人剣闘士」
「レベッカもそうさ。戦い続けいつかリングの上で見世物として殺される・・・ドフラミンゴファミリーに少し逆らったからだ」
「1戦勝できりゃ自由の身になれると国王は言うんだが・・・どんな腕自慢でも100回も殺し合いもすりゃァ死ぬ。ここから脱走を計った奴らは・・・皆、射殺された」
「おれ達に逃げ場は無い・・・!」
「10年前、ドフラミンゴが王になるまでは・・・決闘は殺し合いじゃなかったんだからな・・・!」

『・・・・・・』



ドフラミンゴが治めるこの国には極端な"光"と"影"がある――。その光の部分は浅く、影の部分は底が見えぬ、まるで闇のように深いもののようだ。

囚人剣闘士が各々と語るなか、それまで黙っていたレベッカが口を開く。


「私は・・・今日の大会、どんな手を使ってでも優勝してメラメラの実の力で・・・ッドフラミンゴを討つんだ!!」
「・・・・・・」
「・・・今日、兵隊さんの率いる軍隊が私達を解放するためにドフラミンゴに決戦を挑む、って・・・ッ彼は命と引き換えにこの国を滅ぼすつもりなの・・・・・!」


その強い眼差しから、一筋の涙が溢れる。


「ッ、彼より先に私がやるんだ!もう、守られるだけじゃイヤなんだ!!」
『!』
「今度は私が、兵隊さんを守りたい!!!」





――私、どうしても強くなりたいの。今のままじゃ・・・ルフィの足を引っ張っちゃう。もう守られてばかりじゃ、駄目なの。




レベッカの言葉が、2年前――シャンクスに言った自分の言葉と重なる。堰を切ったように泣き始めるレベッカは手で顔を覆いながら、悔しそうに唇を噛み締めていた。


「・・・・・・っ・・・兵隊さんが、死んじゃう・・・!」
「兵隊って?」
「・・・片足の、オモチャの兵隊さん」
「オモチャ?」


身に覚えがあるのか、ルフィが反応する。コロシアムの入り口の前で、既にルフィとは出会っていたようだ。


「オモチャが死ぬのが心配なのか?おれには生きてるほうが不思議だけどな」
「・・・外から来た貴方達には分からないかもね。彼らは人間と同じよ・・・友達のいない人の友達になり、兄弟の人の兄弟になり、恋人のいない人の恋人になり――なぜ一緒に暮らしちゃいけないのか、分からないくらい・・・・・私は、たった1人の家族だった母親を失ったその日から、兵隊さんに育ててもらった。私にとって彼は――親も同然の人!」

「へェ〜、あのオモチャが・・・」


話し込んでいるうちに、リングの整備が終わったのか外からギャッツの声が聞こえてくる。次の試合はCブロック――レベッカが出る番であった。

涙を拭い、立ち上がったレベッカが兜を拾おうとしたその矢先――突然ルフィが、床に落ちていたおかずを手に取り食べ始めた。


「ちょ、ちょっとルーシー!何してるの!?」
「さっきのドタバタでコロ弁2つ落っことしちゃって・・・ごめんな、せっかく財布カラにして買ってくれたのに・・・落ちてもうめェな〜しかし!」
「!」
「お前、囚人には見えねェ。またコロ弁、おごってくれよな!にししし!」

「・・・・・・っ決勝で、会いましょう」
「おう!」
『頑張ってね、レベッカ』


2人の笑顔に言葉を詰まらせながらもレベッカは兜を付け、剣を持つとその場を後にした。


――レベッカの心の奥底に抱えている大きな闇を感じ取ったナマエはその背中を見送りながら、眉を顰めていた。・・・家族同然の者が命の危険に晒され、それを守るためにレベッカは戦おうとしている。大切な人を失う恐怖を一番よく分かっているナマエは、その境遇が似ている事もあってか、レベッカが心配でならなかった。


「なんかあいつ、昔のナマエに似てんな」
『え?』
「よく分かんねェけど・・・なんとなくそう思ってよ」
『・・・・・・うん・・・そうかもね』




   



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