EPISODE.05
「さァ――Aブロック勝ち残ったのはバージェス選手、Bブロックはバルトロメオ選手!そしていよいよCブロックの試合が始まろうとしています!果たして、誰が勝ち残るのか!?選手たちも今か今かと待ち構えております!」
「おしっ!やっと出番だ!」
『頑張ってね、ルフィ。』
「ああ!行ってくる!」
Cブロックにはサイとブー、殺し屋や賞金稼ぎ、巨人族、闘牛など・・・様々な者達が集っており、そんな彼らとルフィは激闘を繰り広げていた。
白熱した試合が続き、最後に残ったのはルフィと、先ほどガープに恨みを持ち、孫の子の代まで恨むと言っていたチンジャオであった。一騎打ちになり、見事Cブロック勝ち残ったのは――ルーシーことルフィである。もちろん、その正体はバレてない。
見た目からしてまず勝つ事はないだろうと観客たち皆がそう思っていた――が、ルフィは見事優勝し、その意外な強さに人々は雄叫びを上げた。会場はいっきにルーシーコールに包まれ、ルフィは観覧席から見ていたナマエに親指を立て、ナマエも笑顔で返す。
腕のある者達を相手にしたというのにルフィはほとんど無傷で、リングから戻ってきたルフィに駆け寄るナマエ。
『ルフィ・・・じゃなかった。ルーシー、すごく強かったね!』
「にししし!ナマエはどこのブロ――むぐぐっ」
『今は周りに人がいなかったからいいけど・・・私もバレたら色々と面倒なの。今の私の名前は偽名だからね。分かった?』
「お、おう・・・そ、そんでよ、偽名はどこのブロックなんだ?」
『私はE!次の次かな?』
「む〜〜ぎ〜〜わ〜〜〜らァ〜〜〜!!!!」
――まるで地を這うような低い声が響き渡る。
後ろを見てみればそこにはサーベルを構えたキャベンディッシュがいて、キャベンディッシュは迷う事無くその切っ先をルフィに突き刺した。
咄嗟にルフィはナマエの身体を持ち上げると紙一重でそれを避け、その後もキャベンディッシュの攻撃は止まることはなかった。
「ッしつけェぞキャベツ!」
『わ!?』
「!?」
ルフィはナマエを下ろすと、正面からきたサーベルを両手のひらを合わせるようにして受け止めた。慌ててサーベルを引くもルフィの手は離れる事無く、睨み合いが続く。
「いい加減に手を離せ!!」
「離すか!大体なんでお前と戦わなきゃいけねェんだ!おれ疲れてんだよ!」
「ぐぬぬぬぬ・・・!!」
『・・・この人、なんでルーシーに怒ってるの?』
「ッまたお前か!!こいつはルーシーなんかじゃない、麦わらのルフィだ!こいつのせいで僕の人気はガタ落ちなんだ!!」
それまでキャベンディッシュは懸賞金2億越えの美しきルーキーの登場と世界がざわめきもてはやされていたが、1年後のルフィ達超新星の活躍や、大海賊"白ひげ"による頂上戦争により自分の影が薄くなってしまった事が気に食わないらしい。
チンジャオの件もそうだが、逆恨みもいいところ・・・とルフィに同情せざるを得ないナマエが溜息を吐いた――その時。背後からぬっと現れたのは、先ほどルフィに敗れたチンジャオであった。その両隣にはサイと、ブーの姿もある。
「聞けやい!うちのジジイがお前に一言言いてェってんだ!」
「ハア!?もういいだろ!おれが勝ったじゃねェか!!」
「ッ・・・・・違ァう!!!」
――30年前、ガープとの戦闘で自慢の武器で宝物庫を開ける唯一の手段だった錐形の頭をへこまされた事を理由に、孫子の代まで恨むと強く憎んでいたチンジャオ。けれど先ほどの試合の際、ルフィの一撃で偶然その頭部が元の錐形の頭に戻り、そのお礼をしにやってきた――のだが。
錐形の頭に戻った事をすっかり忘れて、ルフィに頭を下げたチンジャオだったが地面に頭が突き刺さり、その衝撃波がルフィ達を襲う。
これ以上面倒事はご免だと、ルフィはチンジャオの感謝の言葉を聞く事無くナマエの手を引っ張るとその場から逃げだした。
「ッ待ってくれガープの孫よ!」
「待て麦わらァ!!!」
「ッなんなんだあいつら!しつこいんだよ!」
『ふふ、人気者は困るね』
「笑い事じゃねェー!!」
――逃げ回り続け、漸く撒くことが出来たがいつ見つかるか分からない・・・落ち着く場所もなく、途方に暮れていると突然、横から女性の剣闘士が現れた。
「ルーシー、こっちよ!」
「!お前は!え、えーとー・・・」
「レベッカよ!敵が多いのね?ついてきて!」
レベッカと名乗った女剣闘士についていくがまま、暫く走っていると・・・・・・どこからともなく聞こえてくる不気味な笑い声。その特徴的な笑い声に思わず足を止めたルフィ、ナマエは声のする方に視線を向ける・・・と、そこには電伝虫を持ったバージェスの姿があった。暫く何かを話していたバージェスは目の前に居るルフィの姿を見て口角を持ち上げると、電伝虫をルフィに向ける。
「ちょっと待った船長。麦わらだ」
[ん〜?んん〜〜!?そこにいるのか〜!?麦わらァ・・・!!]
「・・・ッお前・・・・・・黒ひげか・・・!」
[そうさァ・・・久しぶりだなァ、ゼェハハハハハ!大会に出場中らしいな、ルーシー!だがメラメラの実はうちのバージェスが頂く!まるでエースがおれの仲間になるようで嬉しいぜェ・・・昔、本人には断られちまったからな!ゼェハハハハ!]
『・・・ッ・・・・な、に――!』
言い返そうとするナマエの前に、ルフィの手が伸びる。
『ルー、シー?』
「・・・・・・エースの力は、お前らだけには絶対に渡さねェ!」
[ゼェハハハハ!]
「ウィィーハッハハァ!お前とのバトルが楽しみだァ!」
バージェスは笑いながらそう言うとその場を後にした。その背中を見つめながら、ルフィとナマエはグッと握り拳を握る。
――絶対に、バージェスに負けるわけにはいかない。
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