EPISODE.03



待機所に連れてこられると、腕っ節の強そうな強面の男達がすでにウォーミングアップを始めていた。受付の人が言ってた通り、見渡す限りでは女の人はいない。もしこの場に女性がいたら冷やかしだと睨まれるに違いない。といっても今はローブを羽織って髪も隠れて居るから女だとはバレなさそう・・・だが身体が小さいのは否めなく、変に絡まれても迷惑なので、ナマエは他の人に見られる前に柱の影に身を隠すことにした。

この待機所にはドンキホーテファミリーはいないみたいで、一般の参加者しかいないようだ。とりあえず勝つためには最低限、相手の実力を見抜くことも大事だとレイリーやシャンクスが言っていたのを思い出したナマエは、一番得意な見聞色の覇気を使って、この場にいる者の強さを調べようとした――その時。



うおおおおおおお!!!



物凄い歓声が響き渡る。
すでに闘技場ではAブロックの試合が開始されているようで、様子が気になったナマエは観戦ができる場所へと移動をした。

闘技場のリングの上には覆面を被った男――Mrストアを相手に、複数の男が立ち向かっていた。バトルロイヤルといえど、勝つためにはどんな手段も厭わない。先にMrストアを倒し、他の奴らは後で倒そうと考えた者達が協力してMrストアに立ち向かっていた。

しかしMrストアは臆するどころか余裕そうに笑うと、たった一撃で周りにいる男たちを倒し、あっという間にAブロック優勝者となった。

同じように観覧していた別ブロックの出場者たちが化け物だと恐れはじめた・・・その時、リングに立っていたMrストアが徐に自分の顔に手を伸ばし――その覆面を、剥がした。


『!!!』

「ッなんて事だぁー!我々はこの男を知っているー!!!波乱の幕開け、意外な出場者!Aブロックバトルロイヤル優勝者は――泣く子も黙る"四皇"黒ひげ海賊団、一番船船長――ジーザス・バージェス!!!!」
「ウィッハハハハハァ!!!」


バージェスの登場に最初は悲鳴が上がる――が、やがてそれも歓声へと変わる。観客たちが何に興奮してるか――それは血だ。観客にとって剣闘士は見せ物であり、やられる者の血で人々は興奮しているのだ。闘技場は人間の本性を暴きだす。抑え込まれた日々の不満、不安、怒り、心の奥に隠した残虐性・・・その全てを吐き出せる場所が、此処――コリーダコロシアム。
昔はただ相手を倒せばそれでいいという"技"を魅せる場所であり、人殺しも行われない、"神聖なコロシアム"と言われるほどの場所だったのだがドフラミングが政権を手にした事でシステムがかわり、コロシアムはこのように剣闘士達が殺しあう場所へと変わってしまった・・・。


『・・・っ・・・』


――全ての元凶となった黒ひげティーチの仲間バージェスの登場に、沸々と怒りが込み上げてくる。・・・絶対に、バージェスだけにはメラメラの実は渡さない・・・そう誓ったナマエは踵を返し、その場を後にした。

・・・ナマエが出るEブロックの試合までには、まだ時間がある。暫くの間、どこか人気のない休めそうな場所を探していると――向こうの方が騒がしく、足が止まる。


「そのヒゲ取って見せろ!!」
「いててて!っやめろ!嫌だー!離せー!!」

『っ』


出場者の観覧席には、白いひげにサングラスをかけた老人と、海賊貴公子――キャベンディッシュがなにやらモメているようだった。
キャベンディッシュは乱暴に老人のひげを引っ張っており、眉間にシワを寄せたナマエは彼と老人の間に割り込む。


『あなた老人相手に何してるの!』
「っ誰だ貴様は!そこを退け!そいつの正体を今ここで暴いて――」

「「『!!』」」


どこからともなく向けられた殺気にナマエ、老人、キャベンディッシュは同じ方角に視線を向ける。
そこには巨体の老人――首領ドン・チンジャオの姿があり、チンジャオは3人に向けて頭突きを仕掛けてきた。咄嗟に後ろに飛び、それを避ける3人だが――さっきまでいた地面には大きな穴が開いており、その威力を物語っている。
続けざまにチンジャオは攻撃を繰り返し、苛立ちを覚えたキャベンディッシュが腰に帯びていたサーベルを抜き、そして再び頭突きをしようとするチンジャオの頭に切っ先を突き刺した。


――物凄い衝撃波が辺りを襲う。突き刺したと思っていたチンジャオの頭は無傷で、むしろサーベルが曲がりかけており、チンジャオは両手拳を握ると3人に殴りかかった。


「さすがに手を抜いてちゃ倒せないな・・・!」
「ッこんにゃろォ・・・・・・やめろっつってんだろォ!!!」


それまで攻撃を避けていた老人が、チンジャオに一発、拳を振り落とした。激しい音を立ててその場で倒れ込んだチンジャオだった・・・が、すぐになんともなかったように起き上がる。――全く効いていないようだ。
チンジャオはそれまで瞑っていた目を開けると掌を合わせて気を高め、完全に巻き添えを喰らってしまったナマエ。こんな所で戦ったら出場停止になりかねない・・・その場から退散したかったが今、チンジャオに背中を向けられる状況でもなかった。


「ひやホホ・・・筋は良さそうだな・・・お前達。だがまだまだ修行が足りんわ!!」
「確かにその強さ・・・"麦わら"で間違いなさそうだ」
「なんだよ!放っておいてくれよ!」
『え!?』


誰に言ったのか、キャベンディッシュを見れば彼は隣に立つ老人を見てそう話していた。それまで気づかなかったナマエは大きく目を見開かせ、そして心を落ち着かせながら見聞色の覇気を使ってみれば――その"気"は確かにルフィのものだった。
どうして今の今まで気づかなかったのか・・・・・・突然の再会ではあるものの漸く会えたことに目を輝かせ、笑みを浮かべるナマエ――だったが、今、感動の再会をしている場合でもなさそうだ。


「もうなんだよ放っておいてくれよ・・・!」
「人の人気を奪ったり、鬼の孫に生まれたり・・・恨みばかり買ってるんだな?」
いやどっちもおれの知ったこっちゃねェだろー!!!・・・あ・・・お、おれはルーシーだけどよ・・・」
「邪魔立てするなら己も共に葬るぞ、若い騎士と女ァ!」
『(な、何で私まで・・・)』

「まてまてジジイ!そこまでやい!」
「ここで暴れりゃ失格だぞ!?」


興奮したように声を張り上げるチンジャオを止めにかかったのは、チンジャオの孫のサイとブーであった。
騒ぎに気づいた係りの兵士たちも続々と集まってきて、今此処で退場になっても困るため、ナマエは咄嗟にルフィの手を取るとチンジャオやキャベンディッシュにバレる前にその場からルフィを連れて退散した。





   



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