EPISODE.02



――ドレスローザ。


愛と情熱とオモチャの国と呼ばれ、訪れた者は『花の香り』『料理の香り』『島の女性の踊り』『生活するオモチャ』に心を奪われるという。オモチャが普通の人間のように人格を持って生活をしており、"妖精"がいるという伝説が出回るなど、色々とファンシーな国であった。


人目を避けるようにして情報収集をするナマエは、変装用に用意していた黒髪のウィッグをつけ、サングラスをかけて町中を歩き回っていた。


『(おもちゃが、本当に歩いてる・・・・・・)』


その姿は本当に人間のようで、少し不気味だ。それよりも――今朝方、国王であるドフラミンゴが王位を放棄したというのに・・・町の人々は何も無かったように、幸せそうに暮らしている。この国の者達はその事実を知らないとでもいうのだろうか・・・謎は深まるばかりだった。



暫く町を歩いていると、一際賑わいを見せているエリアに辿り着いた。ドレスローザの観光名所のひとつ、コリーダコロシアムだ。
所属する剣闘士や腕自慢の他国の戦士達が戦いあい、それを観戦する場所で、今日は特大イベントの日らしく国中の人々が集まっている。

人の波に流されるようにナマエもコロシアムに入場し、大勢の歓声に包まれたリングの上には司会者ギャッツが、興奮した様子で今回の目玉商品とやらを発表していた。


「お集まりの紳士淑女、オモチャの皆様ァ!本日のイベントはもはや事件である!!今日この日のために、王は、驚愕の一品を我らにお授けくださったー!!」

『(・・・・・なんだろう、さっきから視線を感じる)』


まるで誰かに見られているような――けれど、不快なものではなかった。辺りを見回しても妖しい人物はおらず、首を傾げるナマエ。しかしそんな疑問も、ギャッツの次の言葉で吹き飛んでしまった。


「――2年前、マリンフォード頂上戦争にて命を落とした男・・・!」
『!』
「いまや伝説の白ひげ海賊団2番隊隊長にして海賊王の息子・・・エース!奴の拳は軍艦を炎で貫き、町を焦がし、地獄に変えたという・・・・・・その凄まじき能力は再び、悪魔の実となってこの世に再生したー!!!」
『ま、さか・・・!』
「見よ!!!!!戦いの勝者にはこの禁断の実が与えられる!」




最強種自然ロギア系の悪魔の実、メラメラの実――。



リングの中央に飾られたその姿に、地響きのように歓声が鳴り響く。これまでに無い価値の高い優勝賞品に観客のボルテージもマックスになり、思わず立ち上がったナマエは握り拳をつくりながら、歯を食いしばらせる。


「本日、このコロシアムには我らが王によってすでに呼びかけられていた新世界の猛者共、そして腕に覚えのある一般参加のツワモノが集まっている!各ブロックで戦い、立ち上がった者が挑戦権を得る!――ただし!こちらも易々とこの一品を渡しはしない!奪えるものなら奪ってもらおう!いつもの剣闘士たちとは――格が違う!」


セニョール・ピンク
デリンジャー
ラオG
マッハ・バイス

――そしてこのコロシアムの英雄、ディアマンテ。


ドンキホーテファミリーの幹部クラスの者達がこうも集結するのは初めてだった。それほどメラメラの実の価値に値するのだろうが・・・・・・。


――メラメラの実は同時期に同じものが存在する事は無いという。だが実の能力者が死ねば、また世界のどこかにその能力を秘めた悪魔の実が復活し、その実を食べた者が新たな能力者になる――エースの死後、人知れずこの世に再生したメラメラの実をドフラミンゴは手に入れていたのだ。



『(エースの能力が・・・っ知らない誰かに取られるくらいなら・・・!)』


メラメラの実はこのコロシアムの優勝賞品・・・つまり、この試合に出て、勝てばいいのだ。席を離れたナマエはコロシアムの入り口にあった受付ブースへと向かい、自分も出場すると伝えた。ナマエのような女性がエントリーするのは滅多にないのか、受付の者は今回の出場者が誰か分かっていますか、と心配そうに再度確認してくるがそれでもナマエの意思は変わらない。例え相手がドンキホーテファミリーだとしても、なんとしてでもメラメラの実を手に入れたかった。

強い眼差しで頷いたナマエに受付の者はそれ以上何も言わず、エントリー用紙を渡す。
本名はさすがにマズイので、ナマエは咄嗟に思いついた偽名・・・"偽名"という名前をそこに書き出した。


エントリーが完了すると『No.557』と書かれたゼッケンを背中に張られ、コロシアムの中へと案内される。そこはエントリーした者しか入れない場所で、外部からの侵入を防ぐためなのか、それとも内部の人間を逃さないためなのか・・・どちらにせよ出入り口は全て厳重に檻で囲われていた。


「ついてきて。案内するわ。一般人のエントリーはあなたで最後よ。貴方といいさっきのお爺さんといい・・・一応忠告はしたんだから。怪我だけじゃすまなくても知らないからね」


そう話す案内人についていくがまま、途中でナマエはマントのローブを目深くかぶる。いくらウィッグとサングラスで変装しているとはいえ、もし正体がバレてしまえばメラメラの実どころではなくなってしまう。



――案内された場所は数多くの猛者たちが集う、待機所であった。




   



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