EPISODE.01



――"海軍本部と"王下七武海"、そして"白ひげ海賊団"による頂上戦争より2年の月日が流れた。


長いようで短く、限られた時間の中で日々修行を重ねていたナマエは周りの支えもあり大きな成長を成し遂げていた。区切りが悪く、約束の2年より少しオーバーしてしまったがそこは大目に見よう。
そしていよいよナマエが赤髪海賊団の元を離れる時が訪れ、レッド・フォース号のデッキにはシャンクス率いる赤髪海賊団が総出で、ナマエを見送りに来てくれた。



――この2年、ルフィを含む麦わらの一味は何の音沙汰もなく、"死亡説"さえ流れていた。しかし最近になって"麦わらの一味"が活動を再開したらしく、そのことで話題はもちきりだった。億越えルーキー達は、いまや新世界を掻き回す一大勢力となっているが、その中でも破格の大物であったのが、"麦わらのルフィ"であるからだ。
エニエス・ロビー、インペルダウン大監獄、そしてマリンフォードの海軍本部3大拠点を全て攻撃したのだから、嫌が応にも名はあがる。


海軍本部も、この2年の間に体制を変えていた。今まで海軍は赤い土の大陸レッドラインを挟んでシャボンディ諸島側に海軍本部を、新世界側に"支部G1"を置いていたが、新元帥はそれを入れ替えて、新世界に"海軍本部"を設置したという。


――何はともあれ、ルフィ達が復活したというニュースに心躍らせるナマエ。最近読んだ記事によると既に新世界へは来ているらしく、ルフィが同じ海にいると思うだけで笑みが浮かぶ。早く会いたい、ただその思いでいっぱいだった。


『シャンクス、ベックマン。それにみんなも、今までお世話になりました』
「ほんとに行っちまうのか!?もう少しいてもいいだろナマエ」
「ふ・・・2年だけだ、ってお頭が決めただろ?・・・ナマエ、身体には気をつけるんだぞ」
『うん!』


名残惜しそうに、先ほどからナマエを離そうとしないシャンクス。本当にこれで四皇なのかと疑われそうだが、ナマエに限っての行動なのでクルーたちも「お頭泣くんじゃねぇよ!」と声を出して笑っていた。


「ほらお頭、ナマエが困ってるだろ。離してやれ」
「あァ分かってる・・・っ何か困った事があったら、すぐ言うんだぞ?分かったな!」
『だ、大丈夫だよ』


片方の肩をがしりと掴まれ、鬼の形相でそういわれたナマエは苦笑いを浮かべた。2年間ほぼずっと一緒にいたせいかシャンクスは過保護な性格になってしまったようだ。・・・最もそれはシャンクスだけではなくクルーも一緒で、それはナマエの人格から来るものなのだろうか・・・修行以外の場ではそれは大層可愛がられていた。

ナマエにとって赤髪海賊団はまるで家族のようで、シャンクスにもいつでも帰ってこいよ、なんて嬉しい言葉を言われたものだから、つい目頭が熱くなってしまう。
帰るべき家があると思えるだけで、どれほど勇気をもらえただろうか。


『っヤソップさん、メーヴェありがとうね!』
「ああ!おれの息子とも仲良くやってくれな!」


マリンフォードに置き忘れてしまったと思っていたメーヴェは、海軍に見つかる前にヤソップたちが取り戻してきてくれていた。ピカピカの新品同様に整備してもらったメーヴェに足を乗せたナマエは、もう一度後ろを振り返り、涙が出る前にシャンクス達に言う。


『みんなー!今まで本当にありがとう!元気でねー!!』
「気をつけてなー!ナマエ!」
「また歌を聞かせにきてくれよー!」


色々な人からの言葉を背中で受け止めながら、ナマエは足元のペダルを踏み、そして能力を解放し、空高く舞い飛んだ。

体勢を整え、下の方で自分に手を振るクルー達に手を振り返しながら、そして優しく笑うシャンクスに心中でもう一度、ありがとうと言い残し、ナマエはルフィに会いに行くべく、大海原へと飛び立つのだった――。







*





『(飛び立ったのはいいものの・・・)』


新世界は広い。確実な情報がない限り島への上陸もなるべく避けたかったナマエは、途方もなく一先ず最後の目撃情報があったパンクハザード島へと行こうとした――その時。


『!』


遠くからたくさんのニュース・クーが飛んでくる。普段はお金さえあれば新聞が買えるのだが・・・目の前の島で無造作にばら撒いているところを見ると、号外新聞のようだ。
ナマエは島に向かい、上空でその新聞をキャッチしそのまま人気の無い森の中に降り立つ。メーヴェから降り、新聞を広げてみるとそこには――ドンキホーテ・ドフラミンゴが王下七武海を降りてドレスローザの国王を放棄したこと、ルフィと同じルーキー世代のキャプテン・キッド、スクラッチメン・アプー、バジル・ホーキンスと同盟を結んだこと、そして――。


『ルフィ!』


ルフィと、トラファルガー・ローが同盟を結んだ、と大々的に書かれてあった。

――この新世界で生き残るには"四皇の傘下に入る"か"四皇に挑み続ける"かの二つらしく、彼らが同盟を組むということは・・・後者だとしか考えられない。
ルフィがシャンクスを狙うのは恐らく無い。となると・・・残るはビッグ・マム、カイドウ、そして黒ひげことティーチの誰かを狙っていることになる。


『(ルフィの情報は・・・・・・同盟を結んだ事くらい、かあ)』


何か手がかりになりそうな記事はないものか、ぺらぺらと新聞を捲っていると――ふと、ドフラミンゴの記事で手が止まる。
ドフラミンゴが王下七武海をやめた理由は詳しくは書かれておらず、真相は謎のまま・・・政府も、突然本人から告げられ混乱しているそうだ。特に興味もない相手だが、妙に気になって仕方が無いナマエ。ルフィとローが同盟を組んだ日と重なっているせいだろうか・・・。


『(関係ないけど・・・航路の途中だし、バレなければいいよね)』



どのみち手がかりもないため、ナマエはドフラミンゴが国王を務めるドレスローザへと向かった。



   



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