EPISODE.38



あの後すぐ、シャンクスにある場所に連れて行きたいといわれた私はシャンクスについていくがまま、島に上陸をした。此処は偉大なる航路グランドライン後半の"新世界"にある島らしく、とても緑が豊かなところだった。

暫く山道を進んでいると――やがて開けた場所に出て、そして岬が見えた。


『!』


見晴らしのいい岬の先端には、大きな墓と小さな墓、2つの墓があって・・・側には、マリンフォードで見かけたエースの仲間の人たちの姿もあった。

・・・・言われずともその墓が誰のものなのか理解した私は目頭が熱くなるのを感じた。その場でじっと佇む私に、隣にいたシャンクスが優しく背中を押す。

一歩、一歩・・・・・・ゆっくりと墓に近づいた私は、その墓に刻まれた白ひげさんの名前と、兄エースの名前を見て、唇を噛み締めた。


『っ・・・・・』


墓にはたくさんの花が添えられていて、白ひげさんの墓には白ひげ海賊団の海賊旗、マント、薙刀・・・そしてエースの墓にはエースがいつも身につけていた帽子とダガー、そして・・・・・・あの時、壊れたはずの、数珠のネックレスが掛けられていた。


『こ、れ・・・・・・』


確かにあの時、数珠は壊れ地面に散らばっていたはずなのに・・・。元通りになっているネックレスに触れると、隣にいたエースの仲間の人に声をかけられる。・・・マリンフォードで不死鳥のマルコと呼ばれていた人だった。


「エースがいつも自慢してたよい。妹が作ってくれた、って。肌身離さず大事そうにしてたからよ」
『!貴方が・・・直して、くれたの・・・?』
「ああ・・・どうにも放っておけなくてよい」
『っ』


涙で、視界がぼやけてしまう。

きっとエースがこの場にいたら「また泣いてんのか」って呆れて、それでも放っておかずに私が泣き止むまで側にいてくれたのだろうか。


私は涙を流しながらもエースの墓に手を触れ、そして笑顔を見せた。・・・少しでも、天国にいるエースが心配しないように。








――心残りは一つある、お前らの"夢の果て"を見れねェ事だ・・・。










『・・・大丈夫だよ』




私の中にはまだエースの"意思"が残っている。


エースの言っていた私とルフィの"夢の果て"・・・・・・私の夢はもう途絶えてしまったけれど、でも・・・エースと同じで、私の人生にも後悔は無かった。大好きな歌をうたいつづけ、いつの間にか大海の歌姫セイレーンなんて呼ばれるようになって世界に名を轟かせる事が出来たから。ほんの僅かな時間だったけれど――その間は、夢のように楽しくて、"生きる喜び"を教えてくれた。もうこれ以上ない幸せだった。

私の夢はもう叶ったも当然――あとは、ルフィだけだ。ルフィの夢の果てを、私がエースの代わりに側で見届けたい。それが私に残されたエースの"意思"であって、また新たに出来た私の"夢"とも言えるのだ。




隣にある白ひげさんの墓にも、深く頭を下げる。


『ありがとう・・・・・・・・っ』


短い間だったけれど、エースは確かに幸せそうだった。それは他でもない、白ひげさんや、いつも側にいてくれた仲間達のおかげ。


『マルコさん達も、ありがとう』
「礼には及ばねェ。仲間を助けたかった・・・ただ、それだけの事だけだよい」


マルコさん達も白ひげさん、そしてエースの死をまだ受け止めきれていないようだった。・・・・もちろん私も受け止めきれたわけじゃない。

私は涙を拭うと空を仰ぎ、そして大きな声で思いのままの歌を歌った。


――サボが亡くなったとき、ルフィに聞かせた、愛する人への歌。遠く離れていても、私の気持ちは届くとエースは言ってくれた。だから、きっとこの想いも届くはず。










――エース。







たくさんの愛を、そして幸せをくれて、ありがとう。









   



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