EPISODE.29



ガープから洗礼を受けた3人の身体はボロボロで、ナマエは他の皆が寝静まって居る時を見計らい、キラキラの実の能力を使って3人の怪我を治癒した。

――兄弟の中で隠し事は無しだと、エースがナマエの能力についてサボとルフィに事情を話したのがつい先日の事・・・実際にその力を見るのは2人とも初めてで、サボもルフィも癒えた自分の身体を見て驚いていた。


「すっげェ!もう痛くねェ!」
「不思議な力だなァ・・・ありがとよ、ナマエ」
『どういたしまして』

「それにしても・・・このままじゃおれ達は明日ジジイに殺される」
「運よく生き延びられても海賊を諦めねェ限り結果は同じだ・・・」
「死にたくねェよ!」
「道は一つしかねェ・・・・・・決断の時だ、兄弟!」


決断――それは、ダダン一家から家出をして独立をしよう、というものだった。
エースの提案にサボ、ルフィはそれに直ぐ頷き、1人不安そうに眉を顰めたナマエは下の階で眠るダダンとガープを見て表情を曇らせた。

――表面的には自分たちを疎んじているダダンだが、なんだかんだ言いつつ町へ出かけるエース達をいつも気にかけていた事を知っていたナマエ。
ガープもエースを海兵にさせたがるのはそれがエースにとって"一番安全"だと思っての行動なのだろう。

こんなにも周りに支えられているというのに本当に家出をしていいのか・・・そんなナマエの心情に気づかないままエースは一枚の紙を取り出すと「どくりつする ASイニシャルL」と書いた紙を柱に貼り、ダダン一家から家を飛び出した。


『・・・・・・』


ダダン達も大好きだが、それ以上にエース達と離れるのはもっと嫌だった。

先に家を出たエース達の後に続くように一歩、家を出たナマエだったが――来た道を戻るように踵を返すと、エースが先ほど貼っていった紙に一言付け足した。



――またあそびにきます。ありがとう。



『(よしっ!)』


何もこれが今生の別れではない・・・寂しくなったらまた会いにくればいい。
そう自分に言い付けながら、ナマエは何も知らず夢の世界で幸せそうに眠るダダンとガープを一度見た後、家を出て行った・・・。



そして翌朝――貼り紙を見たダダンの悲鳴が森中に響き渡った――。


「ど、どうしましょうこれ・・・!」
「ふん!こざかしい真似をしよる・・・わしのナマエまで危険な目に遭わせて・・・」
「何を呑気な!あいつらの悪名は中心街まで轟いてんですよ!?うちら山賊に匿われてなきゃいつ誰に命を狙われてもおかしくねェんだ!」
「休暇は終わりだ!次来る時までにあいつらを立派な海兵に鍛えておけよ!」
また丸投げかい!?


家を出て行くガープに思わずツッコみをいれるダダン・・・だったが、ガープに睨まれてしまいそれ以上は何もいえず、「さようなら」と見送る事しか出来なかった。
ガープの姿が見えなくなるまで見送り、やがてその姿が見えなくなると・・・苛立ったように地団駄を踏むダダン。


「ッ山賊が海兵鍛えてどーすんだよ!!無茶苦茶だよあのジジイ!」
「まァまァお頭・・・でもなんだかんだいってあの子達の事心配してたんすね」
「けっ!知った事かい!考えてみりゃ好都合じゃねェか、自分たちから出て行ってくれたんだ・・・はーよかったよかった!」






一方、その頃――コルボ山の山道を走っていたエース達は、追っ手が来ないのを確認するとホッと安堵の息を漏らした。


「脱出成功〜!」
「追ってこないな、ダダンたち」
「・・・・・・」




だいたいエースもナマエもとっくに見放してんだ!!どこで野垂れ死んでもいいと思ってんのに憎まれっ子世に憚るとはこの事だ・・・あいつらは"鬼の子"だよ!!?万が一政府が嗅ぎつけてみなよ!あたしらどんな目に遭うか!




――来た道を振り返ったエースは、前にダダンが話していた会話を思い出していた。



「・・・きっと今頃、厄介払いが出来て清々してるだろうさ」
『・・・そうかな。ダダン、いい人だと思うけど』
「ナマエは人を信用しすぎだ」


その時、空からポツポツと雨が降り出してくる。
雨宿りをするため4人は大きな木の下の洞穴に逃げ込み、雨は止むどころか強さをどんどんと増していく・・・。

――この時ダダン一家が自分たちを心配し血眼になって探していることも知らず、エース、ナマエ、サボ、ルフィの4人は身を寄り添わせ、雨が止むのをただただ待つのだった・・・・・・。





   



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