EPISODE.28



――ある日、ルフィの様子を見にフーシャ村からマキノ、そして村長が来てくれた。ガープには内緒である事を条件にマキノは村から持ってきた子ども用の服をルフィだけでなくエースやサボにも提供してくれ、さすがのエースも大人の女性には逆らえないのか顔を真っ赤にしたまま大人しくマキノに服の採寸をされ・・・そのらしくもない姿にルフィとサボが腹を抱えて笑っていたのはいうまでもない。

ルフィ、エース、サボに服を渡し終えたマキノは今度はナマエに視線を移す。


「貴方がナマエちゃんね?ほんと、ガープさんが自慢してた通りお人形さんみたいに可愛いわね!」
『っ』
「せっかく可愛いんだから、もっと女の子らしくしましょうよ」


私のお古で申し訳ないんだけど、と言いながら女の子用の服を取り出すマキノ。
それまで女性と関わっていたのはダダンのみだった事もありお洒落とは無縁だったナマエにとって、マキノが出した服はどれも目を奪われるものばかりだった。

しかし男所帯の中で育ってきたせいか"可愛い"という概念が全く無く、自分もエース達みたいに動きやすい服がいいとマキノに提案するナマエだったが、直ぐに却下されてしまう。


「ほら、これとかどうかしら?せっかくだから髪も結いましょう!」


――マキノにされるがまま、劇的変化を遂げたナマエの登場にその場に居た者は皆、言葉を失った。真っ白なワンピースに身を包んだナマエは髪も一つにまとめられ、マキノがつけていたスカーフをリボン変わりに高い位置で結われていた。
周りが一瞬で静まり返ってしまい、その沈黙はナマエに見惚れていたからなのだが――やはり似合わなかったのだと、あらぬ解釈をしたナマエは顔を真っ赤にしてエースの後ろへと身を隠し、その場でワンピースを脱ごうとした。


「ばッ、こんなとこで脱ぐんじゃねェ!」
『ッだって私には似合わないもん・・・!』
「そうか?すんごく似合ってるぞ!なあサボ」
「ああ!すっげェ可愛い!」


可愛いといってくれたサボの言葉にぴたりと動きを止めたナマエ。


『・・・ほんとに?』
「もちろん!こんな可愛い妹がいておれァ幸せもんだ!」


エースもナマエもサボも同い歳なのだが兄弟の盃を交わしてからというものの、サボの中でナマエは妹という立ち位置になっているらしい。
サボに可愛いといわれたナマエは特別照れたように笑みをこぼし、そんなナマエの見た事のない表情にエースは嫌な予感しかせず、サボの耳元で「サボてめェおれのナマエに手を出しやがったら承知しねェぞ」と釘を刺したのだった・・・・・。

その日の晩、マキノが作ってくれたお手製料理をご馳走になったダダン一家とルフィ達はテーブルに並べられた美味しそうな料理に目を輝かせ、無我夢中で食べ出した。
酒場のマスターなだけあってマキノの料理はどれも美味しく、頬をいっぱいに膨らませたサボはうんうんと頷きながら話す。


「やっぱ航海に美味いメシは欠かさねェよな!海に出たらまず一番腕のいい料理人を仲間にするぞ!」
「おれが最初に海賊になるからそいつは無理だな」
「違うぞ!おれが一番に海賊になるんだー!!」


「「「「ぶーーーーっ!!!!」」」」


エース達がそう話していると突然、向かいに座っていた山賊達がエース達の背後に立つ人物を見て顔を真っ青にさせる。
いきなり吹く山賊たちに首を傾げていると、真後ろから聞こえてくる聞き覚えのある声にエース、ルフィの表情まで強張る。


まァーだそんな事を言っとるのか・・・!


何本もの青筋を立て、ずいぶんご立腹な様子のガープの登場にその場にいるナマエを除いた全員が悲鳴をあげた。


「お前らがなるのは海兵じゃというのが分からんのかァアアアアア!!!」


――鈍い音が2回、響き渡る。
頭に大きなたんこぶを乗せながらその場で倒れていくエースとルフィ。


「ダダン!」
「ッはい!ガープさ――」


ん、と言い切る前にダダンの頭にも拳が振り落とされ、エース達同様にたんこぶを乗せながらその場に倒れてしまったダダン。


「な、なんでわたしまで・・・」
「ガキ共の教育がなっとらんようだな!」

『おじいちゃん!』
「!!」


この場でただ1人恐れを知らないナマエはガープに駆け寄り、そしてさっきまでの鬼の顔とは一変・・・・・・振り返ったガープは頬を緩ませながら、走ってくるナマエを抱きしめた。
エースが兄馬鹿とするならばガープは爺馬鹿なのだろう・・・・・・ナマエもガープとの久々の再会に嬉しそうに微笑んでいた。


「暫く見ない間にまた一段と可愛くなったのう!さすがわしの孫じゃ!」
『えへへ』
「こんなむさ苦しい所に置いてすまんなァ・・・あいつらに酷い扱いされとらんか?」
『うん!ダダンたち優しくしてくれるよ』
「そうかそうか!ならよかったわい!」


掃除洗濯と、家事関係はほとんどナマエがやっていた為(自主的にだが)、ガープの質問に思わずギクッとなる山賊たちだったが・・・ナマエの発言に皆が「天使だ」と涙を流していた・・・。


「ッガープって・・・あのジジイがエースとナマエとルフィのじいちゃん・・・?」
「・・・坊主、お前も海に出るとかぬかしておったな?」
「坊主じゃねェ、サボだ!おれ達は一緒に兄弟の盃を交わして同じ海賊になるって誓ったんだァ!!」


余計な事をベラベラと話してしまうルフィに、呆れてモノも言えなくなるエース。

海賊――その言葉に目の色を変えたガープはナマエを離すと手をボキボキと鳴らしながらエース達の前に立ち、口角を持ち上げる。


「ほォ・・・そりゃつまり、わしにしごいて欲しいバカモンが3人に増えたという事じゃな!?」

「「「ぎゃぁあああ〜〜〜!!!!」」」



その日の夜、コルボ山ではエース、ルフィ、サボ3人の悲鳴とガープの怒号が夜明けまで鳴り響いていた――。




   



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