EPISODE.27



毎日毎日、ダダンに叱られながらも楽しそうに家を飛び出していく3人をいつも見送る側のナマエは、羨ましそうに3人の背中を見つめていた。

ナマエも一緒に行こう、と前に一度サボが誘ってくれた事があったがそれをエースが許してくれるわけが無く、かといってナマエばかり留守番では可哀想だと抗議してくれたサボやルフィのおかげで、人気の無い山道やコルボ山のジャングルは一緒に行ってもいいと、渋々だがエースが承諾してくれたのだ。

今日はジャングルでの食料調達の日だった為ナマエも一緒に同行し、4人で木の上から川の中を泳ぐ巨大ワニに狙いを定めていた。


「よしワニいくか」
「ワニめしうめェよな〜〜!」
「ルフィお前今回は食われんなよ!?」
『前は丸呑みで助かったもんね』


コルボ山の過酷な自然環境、並み居る猛獣は4人を日々強くした。


――ナマエ達の住むこの国の名はゴア王国。
ゴミ一つなく東の海イーストブルーで最も美しい国だと言われている。要らぬ物を綺麗に排除したこの国は"隔離社会"の成功例ともいえ、ちなみに ルフィが幼少期育った「フーシャ村」は半ば忘れられた様にこの国に属しており、海沿いの離れた村であった。

そしてコルボ山の北にあるのが不確かな物の終着駅グレイ・ターミナル、通称"ゴミ山"で、その北にある町とは強固な石壁で隔てられ、"大門"と呼ばれる門が唯一の通路であった。
一日に二度、国中から集まった大量のゴミが「大門」を通ってゴミ山に運ばれると、ゴミ山に住む人々はゴミをあさって、食べ物や物資を探すのだ。

ゴミ山の人々は時々町へ行き、再生物資を売って僅かな金を手にして暮らしている。
大門をくぐると通行人を見渡せる広い歩道が広がり、まだ少し悪臭漂う端町へと出る。端町は町の不良やチンピラが屯する場所で、キレイとは言い切れない。
さらに中心へ向かうと小奇麗な中心街があり、更にその中心にまた高い石壁がそびえ、中心地には王族と貴族が暮らす高町があった。


――ゴミ山の人々は、町に住もうとは思わなかった。酷く惨めな想いなど、誰もしたくないものだ。

エース、サボ、ルフィの3人は時折町へ出ては、その卓越した運動能力で無銭飲食などの悪事を働き、その悪名を街に轟かせていた。





今日も町へ行くため、ダダンの家で留守番を任されたナマエはいつもの岬へ向かうと3人の帰りを待ちながら、大好きな歌を口ずさんだ。


『あっ!』


暫くするとエース達の気配を感じたナマエが笑顔で後ろを振り返る。おかえりなさい、と3人に言うが――1人、どこか浮かない表情をしたサボの異変に気づいたナマエは首を傾げ、心配そうにサボの顔を覗く。


『サボ?どこか痛いの?』
「!い、いや!な、なんでもねェよ」
「何でもなくねェだろ。誰なんだよさっきの奴」
『?』


中心街で逃げている最中、ある男と出会ったそうだ。その男はサボを見るなり「生きていたのか、家に帰って来い」と叫び、けれどサボはそれに応える事は無かった。その光景をエース達に見られてしまった以上、隠し通せるわけでもなく・・・遂に白状をした。


――サボは実は高町に住む貴族の家の子で、先ほど彼を呼び止めたのは貴族である父親だったのだ。 高町での暮らしは、サボには思い出したくもない虫唾の走るような差別主義者達との日々だった。


「あいつらが好きなのは"地位"と"財産"を守っていく誰かであって、おれじゃない!王族の女と結婚出来なきゃクズ。その為に毎日勉強と習い事、出来の悪いおれはあの家にジャマなんだ。お前らには悪いけど、おれは親がいても"一人"だった。貴族のヤツラはゴミ山を蔑むけど・・・あの、息が詰まりそうな"高町"で決められた人生を送るよりいい」


サボの話を黙って聞くエースとルフィ、そしてナマエ。
サボは"高町"の記憶をふるい落とすように、立ち上がって言った。


「エース、ナマエ、ルフィ!!おれ達は必ず海へ出よう!!この国を飛び出して、自由になろう!!!広い世界を見ておれは、それを伝える本を書きたい!!航海の勉強なら苦じゃないんだ!!もっと強くなって、海賊になろう!!!」

「へっ!そんなもん、お前に言われなくてもなるさ!!おれは海賊になって勝って勝って勝ちまくって、最高の"名声"を手に入れる!!それだけがおれと、ナマエの生きた証になる!!!世界中の奴らが、おれ達の存在を認めなくても、どれ程嫌われても!!!"大海賊"になって見返してやんのさ!!!おれは誰からも逃げねェ!誰にも敗けねェ!恐怖でも何でもいい、おれの名を世界に知らしめてやるんだ!」

『わ、私は・・・海賊にはなれない、けど・・・せ、世界一の歌姫になりたい!例え世界中に嫌われていたとしても、私の歌を聞いてくれる人たちが笑顔になるような、そんな歌を世界中の人々に届けたい!』


それまでは夢なんてものを考えた事も無かったナマエ。

しかし自分が歌う事によって誰かが笑顔になってくれる、それを生き甲斐と感じるようになったナマエにとってもはや歌は生きる希望そのもので、目を輝かせながら初めて自分の夢を語るナマエの姿を見てエースは笑みをこぼした。


三人の宣言を聞いたルフィも、負けじと宣言した。


「よーし、おれはなァ!―――――!」


――ルフィの宣言に、三人は呆気に取られていた。


「なっはっはっは!」
「・・・・・・お前は・・・何を言い出すかと思えば・・・」
「あははは面白ェなルフィは!」
『私、ルフィの未来が楽しみ!』



それからエースは何か思い出したかのようにダダンの家に一旦戻り、暫くしてダダンの家から盗んできた酒と盃を取り出して言った。


「お前ら知ってるか?盃を交わすと"兄弟"になれるんだ。海賊になる時、同じ船の仲間にはなれねェかも知れねェけど、おれ達4人の絆は"兄弟"としてつなぐ!!どこで何をやろうと、この絆は切れねェ!!!これでおれ達は今日から兄弟だ!!」
「兄弟〜!?ホントかよ!エースやナマエみたいになれるのか!?」
「ああそうだ!」


親がいなくとも、世界中の人から忌み嫌われても、エースとナマエは兄妹がいれば心は強くなれた。助け合って強く生きていくことが出来、そんな毎日が幸せだと思えた。ならばルフィとサボにも、同じように絆で繋ごうと考えたエースの案に誰も頷かないわけがなかった。


それぞれの生い立ちを抱え、孤独に育った4人の少年少女が自分の手で兄弟を得た日だった。


「これでおれ達は今日から兄弟だ!!」
「「おう!!」」
『うんっ!』





   



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