EPISODE.26



はァ〜〜〜!!??どういう事だこれァ〜〜!!??


――明朝、ダダンの悲鳴にも似た声がコルボ山に響き渡る。
朝から騒がしい子分に叩き起こされ見てみればそこには傷だらけのエースとルフィ、そして見知らぬもう1人の少年――サボの姿があり、ダダンは何度も何度も確認するように子どもたちの人数を数えた。

呑気に眠るエース、ルフィ、そして・・・・・・


「ッエース、ルフィ!そいつァ誰だい!?なんでガキがもう一匹増えてるんだよォ!?」
「ッ朝からうるせェなァ・・・」


ダダンの声に眠たそうに目を擦りながらも起き上がるエースとサボ。一方のルフィはいまだ夢の中におり、外で洗濯物を干し終え戻ってきたナマエは頭を抱えるダダンを見て、予想通りの反応に苦笑いを浮かべることしかできなかった。

暫くして頭が覚醒してきたサボはダダンを見ると笑みを浮かべ、その手を握り握手を交わした。


「よう!ダダンだろ?おれはサボ」
「サボ!?知ってるよその名前!おめェもよっぽどのクソガキだと聞いてるよ!!」
「そうか・・・おれもダダンはクソババアだと聞いてるよ!」
余計な情報持ってんじゃねェよ!!


よろしくな、と何の説明もなく、ただここに住むというだけ伝えたサボ。最初は声を荒げていたダダンだったがサボの屈託の無い笑顔に言葉を失い、今更1人増えても変わりはしないだろうと諦め気味に溜息を吐いた。


「ッエース、ルフィ、サボ!おめェらショバ提供してんだからナマエを見習って働きやがれェ!!」


――こうして不確かな物の終着駅グレイ・ターミナルを追われる形で共に暮らすことになったエースの親友サボ。
エース、サボ、ルフィ・・・やがてこの3人の悪童は山道やジャングルの猛獣、町の不良達、"ゴミ山"の悪党達、入り江の海賊達との戦いに明け暮れ、その悪名はついに王国の中心街にも届く程になっていた。

毎日のように怪我をして帰ってくる彼らに、もはや何を言っても無駄なのだろうと半ば諦めたナマエは3人に「日没までには絶対に帰ってくること」を条件に、外出を許可する他無かった。



――ある日の晩、皆が寝静まった頃・・・・この日は眠りが浅かったのか急に目が覚めてしまい、ゆっくりと身体を起こしたサボはあることに気づいた。
今まで隣で寝ていたはずのナマエの姿がどこにも無い。


「!」


ナマエの事はエースから聞いている・・・余計な不安が頭を過ぎったサボは慌てて家を飛び出し、ナマエを探した。

――そう遠くへは行ってないのだろうが行く宛ても無く右往左往していると、どこからともなくサボの耳に"歌"が聞こえてくる。その澄み切った声は紛れも無くナマエのもので、目を見開かせたサボは急いで声のする方へと向かった。


「・・・っ」


家からそう離れていない岬に、ナマエの姿はあった。ナマエは背後にいるサボの存在にも気づかずそのまま歌い続け、大きな丸い月の下、月光を浴びながら歌うその姿はまるで絵本に出てくる女神のように美しく、また幻想的な光景に思わず息を呑んだ。


すっかり声をかけるタイミングを見失ってしまったサボは近くにあった岩に腰かけると心地の良いその歌を聞きながら、ナマエが気づくまで待つことにした。

――暫くして、ひとしきり歌い終わったナマエは満足したように肩を下ろすと帰路につくべく踵を返そうとする・・・・・が、そこで漸くサボの存在に漸く気づくと小さな悲鳴をあげた。


『サ、サボ・・・っい、いつの間に・・・』
「悪い!声かけにくくてよ・・・それよりもナマエ、お前の声ってすんげェ綺麗だな!」
『!き、聞いてたの?』
「ああ!ばっちり!」


エース、そしてシャンクス以外の人に聞かれたのは初めてで、恥ずかしそうにナマエの頬が赤く染まる。


『は、恥ずかしい・・・』
「もっと自信持てよ!おれナマエの歌、好きだな」
『!』
「町で披露したらあっという間に人気になるぜ!おれが保証する!」


お世辞でも何でもない、ただ本心でそう思い、言葉にしたサボ。
エース、シャンクス、サボ・・・自分の歌を聞いて同じように笑顔を浮かべていた3人を思い出したナマエは思わず俯いた。


存在を認められない自分が、誰からも愛されない自分が――誰かを笑顔にさせる事が出来るなんて、思ってもみなかった。


「ど、どうしたナマエ?おれなんか気に触ること言っちまったか?」
『・・・ううん。ありがとうサボ!私ね、歌しか好きな事がなかったから・・・そう言ってもらえて、すごく嬉しい!』


満面の笑みで礼を言われたサボは思わず言葉を失ってしまった。その時のナマエがあまりにも可愛く、額を押さえながら天を仰いだサボは「反則だろそれ」と苦悩したのはいうまでもないだろう――。






   



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