EPISODE.25



――今回エースが強奪したのは、残忍で有名な"ブルージャム海賊団"の下っ端からで、ブルージャムがこの国の貴族に上納する為の金であった。
金を子どもガキに奪われた事が万が一にでも船長のブルージャムにバレてしまえば最後・・・ポルシェーミーたちの命も危うい。ポルシェーミーはルフィの口を割らせることに命掛けで躍起になった。

【悪魔の実】の能力者にも効く特性グローブで何度も何度もルフィを殴り続け、ルフィがどれだけ泣こうとも叫ぼうともこの地に法律は適応されない。おまけにブルージャムは貴族の加護を受けて特権を得ている海賊だからと、周りの者達も遠まきに見るだけだった。


――とうとうその力も尽き、業を煮やしたポルシェーミーが腹いせにルフィを殺そうとした――その時、サボとエースは自分の身を省みずにポルシェーミーの前に躍り出てきた。


「「やめろォ〜〜!!!」」


アジトを破壊し、突撃してきたエースとサボは持っていた鉄パイプを使って下っ端たちをなぎ倒していく。
エースがポルシェーミーの相手をし、少しでも時間を稼いでいる間サボは下っ端から奪った小刀を使い、縄で吊るされた血まみれのルフィを救出する。


「よし!逃げるぞエース!!」
「先に行け!」
「な!?」
「一度向き合ったら、おれは逃げない!!!」


言いながらエースは1人で海賊たちに立ち向かっていき、その根性が本物の海賊相手に通用しない事を知っていたサボはエースを加勢するため、自分も海賊の中に飛び込んで行った。



*



『エース・・・・・・』


――森の中で1人、ナマエは小さく座り込み、ルフィ救出へと向かった彼らの帰りを待っていた。1秒1秒がとても長く感じ、空を見上げれば丸い満月が姿を現していた。
いつまで経っても帰ってこないエース達を心配したナマエは立ち上がり、三人を探しに行こうと歩き出した――が。


『!』


森の奥から泣きじゃくるルフィ、エース、サボの姿が見える。怪我は負っているものの無事だった3人の姿に安堵の笑みを浮かべたナマエは急いでポーチから救急用品を取り出し、3人の手当てを始めた。

本当は能力を使って今すぐにでも治癒してあげたかったのだが、さすが双子なだけあってナマエの心を読み取ったのかエースに睨まれてしまい、そうもいかなかった。


「うええ〜〜〜んどゥおお〜〜〜ん」
『恐かったよね・・・痛かったよね』


手当てされている間もルフィは涙を流し続け、そしてナマエの腕の中で泣きじゃくった。結果的にエースとサボの二人はポルシェーミーらを倒し、無事にルフィを救出する事が出来たらしいが・・・サボが不満そうに、隣にいるエースを叱る。


「お前・・・悪ィクセだぞエース!!本物の海賊を相手に『逃げねェ』なんて!なんでお前はそう死にたがりなんだよ!!」
「・・・・・・・」
「・・・はァ。こんな事しちまって・・・ブルージャムの一味はもうおれ達を許さねェぞ。この先追われる・・・!」


エースはサボには答えず、いまだ泣き続けるルフィに苛立った様子で叱りつけた。


「お前何で口を割らなかったんだ!?あいつら子供でも平気で殺すぞ!!」
「喋ったらもう友達になれねェ・・・!!だって他に!!頼りがいねェ!!!フーシャ村には帰れねェし、山賊は嫌いだし、お前を追いかけなかったら、おれは一人になる。・・・一人になるのは痛ェのより辛ェ!!」
「!?」


もし喋ってしまえばエースやサボとは友達になれなくなり、そして漸く出来た友達ナマエの兄を裏切ってしまえば当然、ナマエにまで嫌われてしまう。
泣くのを堪えながらそう答えたルフィにエースやナマエは大きく目を見開かせた。


「・・・おれ達がいれば辛くねェのか・・・?おれ達がいねェと・・・困るのか?」
「うん・・・!!」


――エースやナマエにとって、その答えは意外だった。
生まれてからずっとこの世に必要とされていない、生まれてくることが罪だと言われ続けていたのだから。エースはもう一度ルフィに聞いた。


「お前はおれやナマエに生きててほしいのか・・・・?」
「!?・・・当たり前だ!!」


生きている事を望む者、存在を必要とする者・・・・・・その言葉を聞いたナマエの瞳から涙が、真っ直ぐと頬を伝った。"人"として必要とされる事がこんなにも幸せな事だったのかと、今まで味わってきた事の無い感情に、ナマエの心は温かい気持ちに包まれていた。

エースもそう思ってくれる人物と出会うのはサボ以来2人目で、照れくさそうにして頭を掻きながら、ルフィに背中を向ける。


「・・・・・・そうか。でもおれはお前みてェな甘ったれ、嫌いだしな」
「ッ甘ったれてねェよ!!おれは強ェんだ!!」
「強い?どこが強いんだ!男のクセにナマエに泣きすがってばっかじゃねェか!」
「トゲで殴られた事あんのかおめェ!?おれは7歳だぞ!!お前みたいに10歳になったら絶対に泣かねェし、もっと強ェ!!」
「おれは7歳でも泣かねェよバーカ!!!一緒にすんなァ!!」


至近距離で睨み合い、言い争いを始めるルフィとエース。喧嘩はしているが以前よりも二人の心が近づいているような気がし、ナマエは困ったように眉をハの字にさせながらも、どことなくエースの嬉しそうな表情を見て笑みを深めた。

――暫くいがみ合いを続けていた二人に終止符を打ったのは他でもない、サボであった。
海賊に命を狙われることになった以上、ゴミ山で生活するのは危険・・・・・・そこでサボから一つ提案をした。


今日から4人でダダンに世話になろう、と――。






   



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