EPISODE.18



そこまでだァ〜〜!!!!!


その声に、ナマエやサカズキ、ボルサリーノ、クザン、大勢の海兵達、海賊・・・ティーチまでもが一瞬動きを止めた。マリンフォードの空気が、その一瞬で一変する。

一人の下っ端海兵――コビーはサカズキとナマエの前に躍り出ると、涙を流しながら言葉を続けた。


「もうやめましょうよ!!!もうこれ以上戦うの!!!やめましょうよ!!!命がもったいないっ!!兵士一人一人に、帰りを待つ家族がいるというのに!!!目的はもう果たしているのに!!戦意のない海賊を追いかけ、止められる戦いに欲をかいて、今手当てすれば助かる兵士を見捨てて・・・!!!その上にまだ犠牲者を増やすなんて、今から倒れていく兵士達は・・・・・・!!!まるでバカじゃないですか!!?」


涙ながらのコビーの訴えに、それまで冷酷だったナマエの目つきが元に戻る。戦意を失ったナマエを見たサカズキはナマエからコビーへと視線を移し、苛立ったように眉間にシワを寄せた。


「・・・誰じゃい貴様ァ、数秒無駄にした。正しくもない兵は海軍にゃいらん!!」
「!」


マグマの拳がコビーに向かって振り下ろされる。
コビーは恐怖に全身が戦慄して恐怖の中に死を覚悟したが・・・それでも自分のしたことに悔いはなかった。




――ダンッ!!!



「!!?」


サカズキの拳は、突如現れた"赤髪"の剣によって防がれる。――四皇"赤髪のシャンクス"の登場にマリンフォードはどよめき、大将たちも動きを止めた。
コビーは攻撃を喰らってはいないものの恐怖のあまり泡を吹いて倒れ、そんな彼の姿にシャンクスは優しく声をかける。


「よくやった、若い海兵。お前が命を懸けて生み出した"勇気ある数秒"は・・・良くか悪くかたった今、"世界の運命"を大きく変えた!!」


この騒動によって、ローの潜水艦はボルサリーノの攻撃を寸前で回避することが出来た。緊急処置を要するルフィとジンベエを抱え込んだまま海へと沈み、ボルサリーノは赤髪海賊団の副船長、ベックマンに銃口を向けられ、潜水艦を追う事を諦めざるを得ない。


――シャンクスは、宣言した。


「この戦争を――終わらせに来た!!!」

『!・・・シャン、クス・・・?』


・・・月が再び雲に覆われ、ナマエの力が弱くなったその好機をシャンクスは見逃さなかった。
一瞬でナマエの間合いに入ったシャンクスは、なるべく痛みを与えないようナマエの腹部に、剣の柄の部分を使って重い一撃を与える。


『ッ!』
「・・・すまないな、ナマエ。でも今はゆっくり休んでくれ」
「赤髪ィ・・・その女が持つ力は"脅威"そのもの・・・上の奴らが血眼になって探しておるんじゃ。さっさとよこせィ」
「・・・今はまだ、"その時"じゃない。悪いがナマエはおれが引き取る」


倒れていくその小さな身体を受け止めたシャンクスは、眠るようにして気を失ったナマエの目尻から流れた涙を指で払うとそのまま落とさないよう肩に担いだ。

――新世界に君臨する四皇の一角"赤髪のシャンクス"が「赤髪海賊団」を引き連れてマリンフォードに現れたことで場内はどよめき、皆一様に戦いの手を止めて、シャンクスの動向に注目した。
海軍では、昨日四皇"カイドウ"と小競り合いをしていたとの報告が上がっていた為、まさか昨日の今日でここに到着するとは思ってもいなかった。


シャンクスはナマエを落とさぬよう、ルフィが落としていった麦わら帽子を器用に拾い上げる。


――これを幼かったルフィに預けた10年前のことを、まるで昨日の事のように鮮明に思い出していた。

いろいろな思いを託したあの子が、海賊となって、この頂上決戦の場にいる・・・・・・。


「一目・・・会いてェなァ・・・・・・だが、今会ったら、約束が違うもんな、ルフィ」





――この帽子をお前に預ける。いつかきっと返しに来い、"立派な海賊"になってな。





   



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