EPISODE.16



享年72歳、かつてこの海で"海賊王"と渡り合った男、白ひげ海賊団船長大海賊エドワード・ニューゲート・・・通称"白ひげ"。マリンフォード湾岸にて勃発した白ひげ海賊艦隊対海軍本部・王下七武海連合軍による頂上決戦にて死亡。

白ひげ海賊団の隊長でロジャーの息子であるエース救出失敗、そして船長白ひげの"死"。

この大ニュースは瞬く間に世界を駆け回った。末々まで語られるこの歴史的大事件をその目に映した者達は、今はただ、声を呑むだけだった。



――白ひげの最期の命令で生き伸びることと、ナマエとルフィを守り抜くことを命じられていた白ひげ海賊団の者共は、涙を呑んでエースと白ひげの遺体を海軍本部に残して退却を始めた。

その"白ひげの遺体"に用があったのが、黒ひげことティーチであった。妖しく笑いながら白ひげの前に立つティーチは両手を大きく広げる。


「さァ・・・始めるぞ!!見せてやるよ、最高のショー」


そう言うと白ひげに黒い幕を被せ、自分もその中へと入ってナニカを始めるティーチ。そのナニカが終わるまで、黒ひげ海賊団の部下達が守った。

――どの位時間が経ったのだろう。白ひげ海賊団と海軍が戦っている最中のティーチの企てが、やがて完成した。

黒幕の中から出てきたティーチにも、白ひげの遺体にも特に異変は見受けられなかった・・・が、ティーチが嬉しそうに笑う。


「海軍ん〜〜、おめェにらにおれの"力"ってもんを見せておこう。晴れて再び敵となるわけだ、ゼハハハ!!」


全ての用を済ませたティーチは七武海の称号はもういらねェと、そう言い放ち、闇穴道ブラックホールで闇を沸き立たせると地面を闇に溶かし、倒れている海兵たちを引きずり込ませる。

そして拳に力を入れ構え・・・・・・その構えに見覚えのあるマルコたちは大きく目を見開かせた。
まさか、そう思った矢先――その拳から叩きだされたのは紛れも無く大気。白ひげのグラグラの実の能力であった。
ティーチの放った拳は、白ひげと遜色ない破壊力を発揮して海軍本部の要塞を粉々にしてみせ、そのすさまじい威力に大きく高笑いをするティーチ。


「ゼハハハハ!!全てを無に還す"闇の引力"、全てを破壊する"地震の力"!!!手に入れたぞ・・・これでもうおれに敵はねェ!!!おれこそが"最強"だ!!!!」


ティーチは、電伝虫を通じて全世界に宣言した。


「平和を愛するつまらねェ庶民共ォ!!海兵!!世界政府!!そして海賊達よ!!!この世界の未来は決まった!ゼハハハハ・・・そう、ここから先は!!おれの時代だァ!!!」


その宣言に、世界の全ての人は絶望を感じずにはいられなかった。
【グラグラの実】の絶対的な力を、白ひげの老化を待って、この総力戦でやっと終わらせたというのに、まだ【グラグラの実】の脅威が最悪の形で続くというのか。

――本来【悪魔の実】はその能力を一人の人間が二つ得ることは不可能である。
マルコは、苦虫を噛み潰したような険しい顔で言った。


「"普通の人間"ならば絶対に無理だよい。だがティーチは少し違う!!体の構造が"異形"なんだよい!!それがこの結果を生んだのか・・・!?」


白ひげの死によって、白ひげの脅威で均衡を保っていた白ひげのナワバリエリアの剥奪戦がおこるはず。
白ひげが最期に残した「ワンピースの実在宣言」によって、世界中の海賊達が再び活発な動きを見せるはず。
ドラゴンの血、ロジャーの血を引き、白ひげとエースの"意志"を継いだ麦わらのルフィ、ナマエも後々脅威となるだろう。
それに加えて、黒ひげティーチとインペルダウンの凶悪囚人達の暴走・・・次々と湧き出すように噴出する問題に、センゴク元帥の顔は引きつった。


――ティーチの攻撃により何百年もの間、世界の海を守り続けた海軍本部の「正義の要塞」が崩壊した。その様子はシャボンディ諸島に中継され、人々の海軍が勝ったという安堵を一瞬にして払拭した。
"火拳のエース"を捉えてこの戦争の引き金を引いた海賊黒ひげが、海賊白ひげの能力を手に入れた・・・人々の脳裏に、黒ひげの名は恐怖と共に刻み込まれた。


「ゼハハハ!!!力が!!!体の中から湧き上がってきやがる!!なんてすげェ能力だ!!!この世の全てを思い通りにできそうだ!!!・・・どれ手始めに、このマリンフォードでも沈めて行こうか!!」


暴走するティーチに攻撃を仕掛けたのはセンゴクであった。センゴクは再び巨大な仏の姿となり、【衝撃波】を黒ひげ海賊団に向けて放つ。


「要塞ならまた建て直せばいい。しかし、ここの世界の中心に位置する島、マリンフォード!!悪党共の横行を恐れる世界中の人々にとっては、"ここに"我々がする事に意味があるのだ!!!仁義という名の"正義"は滅びん!!!軽々しくここを沈めるなどと口にするな!青二才がァ!!!」


それは先ほどエースや白ひげに向けていたのはレベルの違う、激しい怒りの形相であった。




   



戻る
















×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -