EPISODE.15



マリンフォードは、海賊達は悲痛な叫び声に包まれた。
そしてそれは、復活した映像電伝虫により全世界へと中継されていた。


――だが、海賊たちの悲しみなどよそに海軍は海賊への攻撃をやめなかった。特にサカズキは残る未来の反乱因子、弟のルフィの始末と、ナマエの捕獲へと取り掛かった。

目の前でエースを亡くしたショックでルフィの精神は崩れ、気力だけでもっていたその体はガクガクと震え、サカズキの攻撃などなくても充分に生命を維持する事が難しい状態だ。
その危険性は、何度も限界を越えた【テンション・ホルモン】を打っていたイワンコフが強く感じていた。
一方のナマエはまるで魂の抜けた人形のように放心状態が続き、地面に倒れたエースをただ見つめるのみ・・・。


「麦わらボーイ!!」


迫り来るサカズキ・・・ルフィとナマエを守ったのは、手錠を外し能力を解放したマルコだった。


「コイツらの命はやらねェ!!!エースの妹と弟を連れて行けよい、ジンベイ!!"その命"こそ!!生けるエースの"意思"だ!!!エースに代わっておれ達が必ず守り抜く!!!もし死なせたら、白ひげ海賊団の恥と思え!!!」


頷いたジンベエはナマエとルフィを両腕に抱え、その場から逃げる。
・・・だがサカズキも本気だ。ここでルフィやナマエを逃しては、海軍の恥である。
――邪魔するマルコを倒すべく、再びマグマの腕を振り下ろそうとしたサカズキを背後から殴りつけたのは――白ひげその人だった。
白ひげは、そこでエースの安らかな死に顔を目にして、エースの意志を感じ取った。


地震の白ひげ、マグマのサカズキの直接対決が始まる。白ひげの拳はサカズキのその体を力で叩きつけ、サカズキは白ひげの顔面の半分を焼き飛ばした。


「オヤジィイイ!!」


しかし白ひげは屈する事もなく、大きな一打を放つ。
その一打はマリンフォードの地面を真っ二つに切断し、海軍と海賊を切り離した。

頭と顔を半分無くして命があるだけでも奇跡だと言うのに、白ひげはこんな力をも発揮してみせる。最後の力を惜しみなく出すつもりのようだった。

――白ひげ海賊団の部下達は、海軍本部の真っ只中に白ひげ1人を残して行くことに泣き崩れ、苦悩しながらも、"白ひげの意志"に従うことこそが、白ひげの望むことと退去の準備にとりかかった。

白ひげは、息子達の最後の一人が逃げ切るまで戦うつもりなのだ。

・・・だが海軍側にいた海賊は"白ひげ"一人ではなかった。
海軍本部要塞の影や、エースがいた処刑台から、この様子を高見の見物していた海賊達がいたのだ。


「ゼハハハハハハハ!!」
「ティーチ・・・!」
「久しいな!・・・死に目に会えそうでよかったぜオヤジィ!!!」


真っ二つに割れたマリンフォードの海軍本部の要塞に隠れてこの事態を見ていたのは全ての元凶の源マーシャル・D・ティーチ率いる黒ひげ海賊団であった。
しかも厄介なことに、インペルダウンのレベル6に幽閉されていたはずの、世界からその存在をもみ消された残虐で凶悪な世界的な犯罪者達を仲間に引きこんでいるのだ。
たった1人をも、世界に解き放してはならないレベルの悪党共が何人も居る最悪な状況であった。

この戦争は全て、黒ひげが引き金となって起きたもの・・・ティーチの登場に怒りに震え、今にも飛び掛りそうになるマルコ。


「ティーチ!!てめェだけは息子とは呼べねぇな!!おれの船のたった一つの鉄のルールを破り、お前は仲間を殺した。4番隊長サッチの無念!!このバカの命をとって、おれがケジメをつける!!手ェ出すんじゃねェぞマルコ!!!」
「オヤジ!」
「サッチも死んだが・・・エースも死んだなァ、オヤジ!!おれはあんたを心より尊敬し、憧れたが・・・あんたは老いた!!処刑されゆく部下の一人も救えねェ程にな!!バナロ島じゃおれはエースを殺さずにおいてやったのによォ!!!」


そう言ってティーチはヤミヤミの実の能力を解放し闇穴道ブラックホールを出した。
これで白ひげの能力は効かない・・・そう思い込んでいたティーチだったが、白ひげは持っていた薙刀をティーチの肩に振り下ろし、その頭を地面に押さえつけ、グラグラの実の能力で殴り飛ばす。

白ひげに掴まれたティーチは先ほどまでの威勢は一体どこにいったのか、わーわーと喚くが、白ひげの攻撃は止まらない。


――強い衝撃がティーチを襲う・・・・・が、ティーチは死ななかった。悶え苦しむティーチにトドメを刺さなかった。それが老いて満身創痍となった白ひげの力だったのか、かつての息子に手加減したのかは・・・白ひげ本人にしか分からない。


「ッこの"怪物"がァ!!!死に損ないのクセに!!!黙って死にやがらねェ・・・やっちまえェ!!!」


ティーチのその合図に、黒ひげ海賊団が至近距離から白ひげに持っている銃を雨あられのように撃ちまくる。

――かつての仲間に、親同然の白ひげが殺されていくのを指を加えて見る程無念な事はあったろうか。鳴り響く銃声に海賊たちは何も出来ることがなくただその場で泣き崩れた。
ティーチがサッチを殺して逃亡したことが全ての始まりで、エースの処刑もティーチの仕組んだ事であり、そして今――エースのみならず、白ひげをその手にかけた。


・・・かつての息子に、蜂の巣になる程撃たれながら白ひげは、昔を思い出していた。
あれは満開の桜の下、ロジャーと二人で花見酒を飲んでいた時だ。ロジャーが、自分は病気で先が長くないと切り出してきた時の事だ。




「ああ、もう長くねぇ。ラフテルへの行き方でも教えようか、白ひげ」
「聞いても行かねぇ、興味ねぇからな」
「近頃、政府の奴らがおれを何と呼んでいるか知ってるか?ゴールド・ロジャーだ。違う!!おれは"ゴール・D・ロジャー"!!!だ」
「時々会うな、"D"の名を持つ奴ら・・・うちにも一人ティーチってのがいる。"D"ってのは何なんだ?」
「おお、知りてェか?よし教えてやろう・・・・・・」






「――・・・・・・・・・」



ティーチの部下達の撃つ銃が皆、弾切れになってあたりが鎮まった時、白ひげの声がティーチの耳に届く。


「お前じゃねェんだ・・・・・・ロジャーが待ってる男は・・・少なくともティーチ、お前じゃねェ・・・。ロジャーの意志を継ぐ者がいる様に、いずれエースの意志を継ぐ者も現れる・・・。"血縁"を絶てど、"あいつら"の炎が消える事はねェ・・・そうやって遠い昔から脈々と受け継がれてきた・・・!!そして未来、いつの日かその数百年分の"歴史"を全て背負って、この世界に戦いを挑む者が現れる・・・!!」


その身体のどこにそんな喋る体力が残っているというのか・・・驚く暇もなく白ひげは言葉を繋げる。


「センゴク・・・お前達"世界政府"は・・・いつか来る・・・その世界中を巻き込む程の"巨大な戦い"を恐れている!!!興味はねェが・・・"あの宝"を誰かかが見つけた時・・・世界はひっくり返るのさ!!!誰かが見つけ出す、その日は必ず来る・・・」


白ひげは、最後の力で"意志"を世界に遺した。

かつて、ゴール・D・ロジャーが病に冒された自分の死を悟った時にそうしたように。
これが海賊王の意志・・・・・・いや"D"の意志であるのかもしれない。
そうやって、脈々と世界に受け継がれていくべきものなのかもしれない。




「"ひとつなぎの大秘宝ワンピース"は実在する!!!」」



――その言葉を最後に、白ひげは静かに目を閉じた。





許せ息子達・・・・・・とんでもねェバカを残しちまった・・・おれはここまでだ。お前達には全てを貰った。感謝している。――さらばだ、息子達・・・・・・!







――白ひげ、死す。
死してなお、その体屈する事なく、頭部半分を失うも、敵を薙ぎ倒すその姿はまさに怪物。
この戦闘によって受けた刀傷、実に260と7太刀、受けた銃弾152発、受けた砲弾46発、
さりとてその誇り高き後姿には・・・・・・あるいはその海賊人生に、一切の"逃げ傷"なし!!!





   



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