EPISODE.07



――この戦争、"勝利"の二文字しか見てないセンゴクには何か企みがあるらしい。
後ろでは遂に白ひげ本人が動き始めたらしく、大気を殴り、衝撃波によって島全体が大きく揺れる。
この状況で立って居るのは能力の高い者ぐらいであった。

衝撃は処刑台まで届くように思われたが、いつの間にか自分の陣地に戻った三大将が揃い踏みで白ひげの衝撃波を受け止める。・・・白ひげが動くということの凄まじさに、海軍本部が何を警戒していたのかがわかる。

そしてその時が来た。水面下で進んでいた海軍の「作戦」が発動したのだ。


『!』


湾をぐるりと取り囲むように地面から鉄壁がそりあがり、湾内で取り囲まれる海賊たち。
しかもその壁は、対白ひげ海賊団用として、白ひげの打撃にもびくともしない強度な鋼鉄で作られてあった。
各国に中継を繋げていた映像電伝虫はセンゴクに命令されたクザンによって破壊、全ての情報が閉ざされ、これでもう真相を語れるのはこの戦場にいる者のみとなった――。


最悪な事態に海賊達が半ば諦めかけた――その時。たった一か所、鉄壁が上がらない箇所があった。
先に陸に上がったリトルオーズが倒れている場所は、その巨体の重みで防御壁が上がらないうえ、システムにオーズの血が入り込んでパワーダウンしていた。
この偶然に勝機を見込んだ白ひげだったが、袋のネズミとなった海賊に赤犬サカズキが牙を剥く。

湾内に包囲された海賊達に浴びせられたのはサカズキのマグマであった。
空から降り注ぐ超高熱の塊に湾の氷は溶けて足場を失い、海水は煮え滾る熱湯となり、白ひげ海賊団の船を次々と、モビー・ディックをも沈没させた。足場を失って海に浮かぶ海賊達を、鉄壁から顔を出した大砲が狙い撃ちする。

唯一開くリトルオーズの道も、当然海賊達がここに集まるものとして、集中砲火にあって進めそうもない。白ひげを持ってしても、この鉄壁を超える事はできない・・・海賊共が鳥の籠状態になった時、センゴクが宣言した。


「作戦はほぼ順調、これよりポートガス・D・エースの処刑を執行する!」
「『!!』」


まだ処刑時間にはなっていないというのに・・・センゴクは海賊相手に時間を守る筋合いもないようだ。エースは目と鼻の先だというのに、最悪の事態に唇を噛み締めたナマエが憑依を解こうとした――その時。
真横に倒れていたリトルオーズが、また息を吹き返したではないか。


「フー・・・フー・・・エ、エースぐん・・・!」
「オーズ!!」


リトルオーズはすでに虫の息である。トドメにリトルオーズの頭を光で打ち抜こうとするボルサリーノ・・・だったが目の前に1本の水柱が立ち上がり、その中から丸太を抱えたルフィが現れ攻撃は阻止される。

後方の方で道を絶たれたルフィはジンベエにお願いをし、海水から丸太ごと自分を投げ飛ばしてもらい、強引に包囲壁を突端したのだ。


「ルフィ!!」
「あーらら。とうとうここまで・・・お前にゃまだこのステージは早すぎるよ」
「堂々としちょるのう・・・ドラゴンの息子ォ・・・」
「恐いね〜・・・この若さ・・・・・・」

「ハアッ、ハアッ」


大将1人にも敵わないルフィが大将3人を目の前にして怯む事無くギア2で攻撃を仕掛ける。しかし当然の如く大将相手にルフィの攻撃が通用するわけもなく、ボルサリーノに蹴り飛ばされてしまった。そこから攻撃は止まらず、転げ回るルフィにトドメを刺そうとクザンの氷槍が襲い掛かる――が、瞳を鋭くさせたナマエは思わぬ緊急事態に海兵から憑依を解くと光の速さでクザンとルフィの間合いに入り氷槍を足でなぎ払った。


「「「!」」」


生身の体では一撃でも喰らえば氷になるであろうその攻撃も、ナマエには効かない。キラキラの実は自然ロギア系の中でも最も希少な、伝説と呼ばれる悪魔の能力であった。

体は全身光り輝き、額には三日月の模様が浮かび上がる。光る・・・といってもボルサリーノのように全身が明るく光る訳ではなく、キラキラとした星のようなものが身体に付与されており、初めてみるその神秘的な姿に三大将の目が怪しく光った事を――ナマエ自身、気づいていなかった。


「その額の模様・・・まさかとは思うけど・・・やっぱそうだよねェ?何でこんな所にいるんだろうねェ?」
「は!今までどこに隠れておったか知らんが灯台下暗しとはこの事じゃのう」
「ま、探す手間が省けたしラッキーじゃないの」


三大将が何を言っているのか、この時ナマエには分からなかった。しかしキラキラの実の力は絶対に人前で使うなとエース、そしてガープからも忠告を受けていた事は事実・・・・この力のどこがそんなに特殊なのか今はまだ謎めいたままだが、三大将を目の前にしてもう後戻りは出来ないだろう。

空中で身軽に体勢を戻し、その際に被っていたフードが外れ、パステルピンクの髪がさらさらと腰まで落ちてくる。その場で倒れこんでいたルフィは目の前に居るナマエを視界に捉えると、安堵の笑みをこぼした。


「「ナマエ!!」」


「!ナマエだって・・・!?」
「ッ馬鹿もん!」


思わず発してしまったエースの口から出たナマエの名前。慌ててガープがエースの口を塞ぐにも一足遅く・・・しかしどのみちルフィもその名を呼んでいたため、センゴクの耳にはしっかりと聞こえてしまったようだ。


「ナマエ・・・・・・ッポートガス・D・ナマエか!!」


電伝虫を持ったままだったセンゴクから発せられた言葉は、マリンフォードに全体に筒抜けだった。先ほどゲンスイの言っていた双子のうちの1人が今、このマリンフォードにいる・・・。


「あの女もまた火拳のエースと同じ海賊王の血を引く者!?」
「ちょ、ちょっと待て!あの女・・・どこかで・・・」
「!ま、間違いない!!大海の歌姫セイレーンだ!!」
大海の歌姫セイレーンがゴールド・ロジャーの娘!?」


ポートガス・D・ナマエと呼ばれたナマエの突然の登場に「次から次へと一体どうなっているんだ」、と1人の海兵が頭を抱えたのはいうまでもない・・・。





   



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