EPISODE.05
『(おじいちゃん・・・)』
処刑台の上でエースとガープが何か話している。
・・・義祖父ではあるものの、ガープはエースやナマエの事を本当の家族のように思って育ててくれた。今はこのような状況になり、ガープ自身が葛藤している事はエースやナマエも十分に分かっていた。
「退けええぇえ!」
『!』
自分が海兵の姿だったのを忘れていたナマエは、迫り来る巨体な体格をした海賊の攻撃を紙一重で避ける。まさか避けられるとは思っていなかったのだろう、戸惑う海賊の肩に手をつきながら的確に首の後ろに膝蹴りを決め、気絶させる。
――戦闘経験は全くないものの、幼い頃からコルボ山でエース達と共に鍛え、シャボンディ諸島で出会ったレイリーからこの数ヶ月の間、覇気の習得も兼ねて少し修行をつけてもらっていたのだが、まさかこんな所で役に立つ日が来るとは思ってもいなかった。
たまたま倒した海賊はどこかの船長だったらしく、一発で気を失わせたナマエに続々と海賊が攻撃を仕掛けてくる。
・・・目立ってしまっては元も子もない。おまけに月華憑依は入れ替わった相手の戦闘力・・・つまり、今のナマエは入れ替わってる海兵分の力しか持ち合わせていない。キラキラの実の力も、覇気さえも使えないのだ。
『(まだエースのところまで遠い・・・)』
「おらぁああー!」
まだ憑依を解くわけにはいかない。襲ってくる海賊の攻撃を全て避け、心の中で謝りながらカウンターで気絶させる。
「お、おいあいつ・・・あんなに強かったか?」
「まるで人が変わったようだな・・・ッけどいい戦力だ・・・!」
すっかり勘違いしている海兵の横を通り過ぎ、周りの攻撃を避けながら処刑台へと走っていく・・・すると、周りにいる海兵や海賊が上空を見上げはじめた。
「あ、あれは・・・?空から何か降ってくるぞ!」
「白ひげ海賊団の奇襲攻撃か!?」
『(・・・・・・)』
――空高くから、物凄い勢いで落下してくるのは一隻の軍艦と――そして、たくさんの人、であった。
頭上から聞こえてくる悲鳴の一つに聞き覚えがあったエースとナマエは目を見開き、どんどんと地面に近づくにつれ、その顔が露となる。
「エースーーー!!!!」
『っまさか・・・』
真っ逆さまに落下してきたのは何と・・・弟のルフィであった。一体なぜ空から・・・しかも一緒に来た者達は麦わらの一味ではない。囚人の服を着ている者、指名手配書で見たことのある名のある海賊・・・と、全く共通点の無い者達ばかり。
不幸中の幸いなのか落ちてきた軍艦とルフィ達は氷の上ではなく、戦闘によって大きく空いた穴の部分へと落下していき、海水が衝撃を和らげていた。
一時は溺れかけたものの、ジンベエによって海から引き上げられたルフィは半分沈んだ軍艦の上に立つと、自分の正面にいるエースの姿を見て口角を持ち上げ、腹の底から大きな声を張り上げる。
「エースー!!!」
「ルフィ!!」
「へへっ!エースー!!やっと会えた!!」
エースの無事な姿に安堵するルフィ。軍艦の上に身構える、ルフィ率いる異様なメンバーに戦争中の皆は驚愕する。
元王下七武海クロコダイルに魚人族のジンベエ、革命軍幹部のイワンコフ、珍妙な姿をした者達・・・他にも有名な海賊が多数おり、いずれにしてもそのようなメンバーの先頭に立つルフィへと全員の視線が集まる。
「ッガープ!また貴様の家族だぞ!」
「ルフィー!!」
――ルフィが来た事によりまた状況は変わり、相変わらず無鉄砲な弟の姿に、思わずその場に相応しくない笑いが出てしまう。
何故だろうか、ルフィがいると心強くなるのは。きっと彼にはそういう不思議な力を持っているのだろう。あの異様なメンバーを束ねているのはルフィ本人・・・目的は違えど、そう簡単にまとめられるメンバーではない。もちろん本人は無意識なのだろうけど。
白ひげの隣に移動したルフィがなにやら話し出したかと思えば次の瞬間、戦場全体に響き渡る声量で叫び出した。
「海賊王になるのはおれだ!!!」
伝説の男に真正面から、そう啖呵を切るルフィの姿に一同は白目を剥いた。一方の白ひげは少し驚いて、そしてニヤリと笑う。
「くそ生意気な・・・足引っ張りやがったら承知しねェぞ!ハナッタレ!!」
「おれはおれのやりてェ様にやる!エースはおれが助ける!!」
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