EPISODE.04



「オーズー!!!!」


――エースの声が木霊する。白ひげ海賊団と海軍、そして王下七武海が壮絶な争いを繰り広げるなか、ナマエは1人、海兵に扮して真っ直ぐとエースの所へと走っていた。

・・・最初に混戦を破ったのは、白ひげ海賊団の一員で"国引きオーズ"の子孫【リトルオーズJr】だった。その巨体たるや、巨人族の倍は軽く越え、巨人族でも見上げる大きさのリトルオーズに、一般海兵は手の出しようがなかった。しかし・・・大きすぎても標的が向けられてしまうのも事実。リトルオーズは覚悟の上なのかエースの忠告も無視し、真っ直ぐとエースのいる処刑台へと足を進めていく。

巨人海兵ですら手も足も出なかったというのに、それまで静観していたバーソロミュー・くまの熊の衝撃ウルスショックの爆撃によってリトルオーズは大量の血を流し、山が崩れるようにしてその場に跪く。


「エース、ぐ・・・ん、は・・・優しいんだ・・・ッ・・・」


リトルオーズの言葉が、ナマエの胸に響く。

――エースが海賊になるといった時、ナマエは猛反対した。しかしそれはガープと同じ海兵になってほしいからという訳でもなく、処刑された父のように、ロクな人生にならないと思い込んでいたからだ。・・・けれどそれは違った。エースが海賊にならなければ、彼はこんなにも素敵な仲間たち・・・家族のような絆を持った彼らと出会うことは無かった。

エースの為に、優しいエースの笑顔を護るために、せめて七武海の一人でもと襲いかかろうとするリトルオーズだったが、そんな彼をあざ笑うように現れたドフラミンゴはひらりと空に舞い上がると躊躇なくリトルオーズの足を切断して身動きをとれなくした。


『っ・・・』
「オーズ!!!」


あと少し、あと少しでエースに手が届く。意識が薄れていくなか、それでもリトルオーズの手はエースへと向かっていた。


「もう、少し・・・ッエースぐんまで、もう少し・・・!」
「っもういい・・・やめてくれ、オーズ・・・!」

「ッドフラミンゴの野郎、足を切っちまいやがって・・・!こいつの死体はオレが貰うってのに!――角刀影つのトカゲ!!」

「『!!』」


――ゲッコー・モリアの放った影がリトルオーズの体を突き刺す。
目の前で突き刺されたリトルオーズを見て声を失ったエースは、必死に、何度も何度もリトルオーズの名を呼んだ。けれどリトルオーズは瀕死状態に陥りつつも手を伸ばし続け――エースに届く寸前の所で命を落とし、その場で崩れ落ちてしまった。


「ッオーズ・・・オーズゥウゥ!!」


目の前で起きた仲間の死に、エースの瞳から大粒の涙が溢れ出る。リトルオーズの死を目の当たりにした白ひげは怒りを露にすると、リトルオーズを踏み越えて前に進めと仲間たちに指示をした。
湾内から湾頭、そしてエースのいる処刑台までの架け橋を作ってくれたリトルオーズの死を無駄にしないよう、海賊らが一斉に駆け上がってくる。



「・・・・・・」


一方その頃――それまでの争いを静観していたガープは踵を返すと一段、また一段とゆっくりとした足取りで階段を上がり、処刑台にいるエースの元へ行く。
その間、走馬灯のように頭の中を駆け巡るのはエースやナマエ、そしてルフィと4人で過ごした思い出。


「・・・何をしに来た。作戦に異論でも?」
「否、相手は海賊・・・同情の余地はない」
「ならば・・・「黙れ!!」
「!」
「・・・・・・よかろう、ここに居るくらい」


そう言ってガープはセンゴクを黙らせ、エースの隣に腰を下ろす。
黙ったままのガープを、エースは不思議そうに見つめるしか出来なかった。

――あれはまだ、エースらが幼い頃の出来事だ。





「いいか、いつ起こるかもしれん戦闘に備え食える時に目一杯食っておく!これも海兵にとって大事な事なんじゃ、二人ともよーく覚えとけ!ほれ、ナマエもわしらに遠慮せんで食うんじゃ!」
「なーにが海兵だよ!勝手に決めんなよ!」
「何じゃと!?」
「おれは海賊になる!」
「海兵になる!」
「海賊になる!」 
「海兵になる!」


両者、一歩も引かない言い争いをし、いつもの光景にナマエは楽しそうに笑っている。
その間にルフィは目の前にあった食料を全て食べてしまい、結局、エースとガープはあまり食べられずに終わってしまった。ルフィは「美味かったー!」と満足そうに笑ってそのままナマエの膝の上で眠ってしまい、あまりの速さに怒る気も失せてしまう二人。


「・・・もしルフィが海兵になったら一日で軍艦の食料庫なくなっちまうぞ?」
「海賊を相手にするより大変かもしれんのう・・・ハッハッハッハ!」


豪快に笑うガープに、つられるように笑うエースとナマエ。




――まるで昨日の事のように思える日常。
あんなにも楽しそうに笑い合っていた者達が、たった一つの運命によって今、敵として隣に座っている。本当にこれは現実なのだろうか、そう何度も自分に聞き返した。


「・・・悪党に同情は無ェが・・っ・・・家族は違う・・・」
「・・・・・・!」
「・・・・・わしゃあどうすりゃええんじゃい・・・!エース貴様・・・!なぜわしの言う通りに生きなんだ!!」


それは初めて見る、ガープの涙だった。

海軍としての自分、そしてエースの家族としての自分・・・ガープの中で葛藤が繰り広げられる。

もっと自分が頑張り、エースを海兵にしていればエースはこんな目に遭わずに済んだのだろうか・・・出てくるのは涙と、後悔ばかりだった。

   



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