EPISODE.01



「ぎゃぁあああーー!!」
「船長失格なのよあんたァーーー!!」


ワノ国を出航した船は記録指針ログポースの指す方へ航海を続けていた・・・のだが。
海に皇帝のごとく君臨する四皇こと麦わらのルフィは、今現在、航海士ナミによって檻の中にぶち込まれ、顔中ボコボコに殴られていた。
なぜナミがこんなにも怒っているかというと・・・ワノ国を出航する際、安全な経路を確保できていたというのにキッドに煽られ、わざと滝を落下するような行動を起こしたからだ。


「ずぴ、ずびばぜん」
「船員全員の命を危険に晒したのよ!バカにも程がある!」
『スリル満点でドキドキしたね!』
「ワハハハハ本当じゃ!まァみんな無事だったんじゃそのくらいで」
「甘やかさないでナマエ!ジンベエ!!」

「うお!」 『は、はいっ!』


咆哮されたジンベエは一歩後ろへと後ずさり、ナマエは背筋をピンっと伸ばしていた。まるで覇王色の覇気を放ったかのような恐ろしさに怯えるジンベエに「怒ったナミに近づくな」とアドバイスするチョッパーたち。
檻に入れられてから何もご飯を食べさせてもらっていないルフィのお腹がぎゅるるるると鳴り響く中、ニュース・クーが新しい手配書を配達してきてくれた。


麦わら大船団5600名の大船長、四皇麦わらのルフィ及び10人の"大幹部"たちの懸賞金序列一覧。



船医"わたあめ大好き"チョッパー、懸賞金1000ベリー
航海士"泥棒猫"ナミ、懸賞金3億6600万ベリー
音楽家"ソウルキング"ブルック、懸賞金3億8300万ベリー
船大工"鉄人"フランキー、懸賞金3億9400万ベリー
狙撃手"ゴッド"ウソップ、懸賞金5億ベリー
考古学者"悪魔の子"ニコ・ロビン、懸賞金9億3000万ベリー
コック"黒足のサンジ"、10億3200万ベリー
操舵手"海峡のジンベエ"、11億ベリー
剣豪"海賊狩りのゾロ"、11億1100万ベリー
音楽家"大海の歌姫"ポートガス・D・ナマエ、20億ベリー

大船長四皇"麦わらのルフィ"、懸賞金30億ベリー



少しは上がったのかと期待を込めたものの900ベリーしか上がらなかったことに対し怒るチョッパー、そんなチョッパーにわたあめを差し出すロビン、もはや自分に賭けられた懸賞金が欲しいと泣くナミ、ギターを弾いてテンションをあげるブルック、手配書が自分ではなくサニー号になっていることに不満の声を上げるフランキー、もうこれ以上は上がらなくていいと悲鳴をあげるウソップ、ゾロやジンベエに負け涙を流すサンジ・・・と、さまざまな反応を見せる中、ナマエは自身にかけられた懸賞金よりも檻の中でお腹を鳴らしながらシクシク涙するルフィを不憫に思い、よしよしと頭を撫でていた。


「・・・これは・・・」


とある新聞記事を読んでいたロビンの表情が曇る。
そして、顔を上げるとナミに頼み込んでルフィを檻から出していたナマエに視線を向けた。


「・・・・・・ナマエ。それと、ルフィも」
『?』
「ん?どしたロビン?」
「これを読んで」


神妙な面持ちに首を傾げながらも二人は新聞記事に目を通し・・・そして、驚愕した。

"革命軍"天竜人に宣戦布告。参謀総長サボ、アラバスタの王コブラを暗殺。――その娘同国王女ビビ失踪。


「絶っっっっっ対ウソだ!!ビビの父ちゃんを殺したりするか!!サボはそんな事しねェよ!!!」
「もちろん・・・わたしもそう思うわ。革命軍の敵は"世界貴族"――王達ではないもの」
『・・・っ、』


アラバスタと深く関わりがあったルフィは声を荒げ、ナマエは大々的に載っているサボの写真を見て唇を震わせた。
ルフィの言う通りサボがこんな事をするはずがない・・・それよりも気になるのがその後のサボの動向だ。身体は無事なのだろうかと、記事の内容を隈なく探すも詳しいことは載っていなかった。


『サボ・・・っ・・・・』


新聞を持つ手が震える。
鎖国国家だったワノ国から出航した途端、一気に流れ込んでくる情報に眩暈がしてくる。――どうか無事でいてほしい、ただそれだけを強く願うナマエに気づいたルフィはキッと目つきを鋭くさせると叫んだ。


「アラバスタへ行こう!今から!!」
「――だからコブラ王は死んだんだよ・・・!行ってどうなる。ビビも失踪だぞ、マリージョアでな」
「じゃあマリージョアへ行く!」
「ッ敵の総本山だ馬鹿!!海軍本部と戦う気か!?」
「やるよ!!なんだ恐ェのかよゾロ!!」
「アテがねェっつってんだ!頭冷やせ!!」


ルフィとゾロが言い合いをし始める中、サンジはビビの気持ちを想って涙を流し、チョッパー、ウソップ、ナミもソワソワと落ち着きがない。


「今回の世界会議は随分荒れたのう」
「おめー達の兄貴ならドレスローザで会ったよなルフィ、ナマエ!」
「アラバスタ王国に悪政の話なんて聞いたことありませんね・・・!」
「・・・ナマエ、大丈夫?顔色が悪いわ」
『・・・え、っ、う、うんもちろん!』


ロビンに肩を支えられるナマエは『大丈夫』と、無理やり笑顔を浮かべるも血の気が引いた顔は青白くあまり大丈夫そうには見えない。
大切な兄でもあり、恋人でもあるサボの生死が分からない以上、そうなるのも無理もない・・・気丈に振る舞う姿は一味の胸を痛め、その姿に触発されたナミ達が遂に泣き出してしまい、今から助けに行くと意気込んでいたルフィにゾロがギロリと睨んで言った。


「ルフィ!お前よォ・・・エースの時なんつった?」
「・・・・・・」


「エースにはエースの冒険があるんだ」

過去の自分の発言を思い出したのか唇をへの字に結び、知らんぷりするようにゾロから目を逸らすルフィ。


「明確な危機までエースの人生を立てた筈だ・・・!ビビを侮ってんのか?あいつは強ェ女だろ!動くべき時が来たら誰とでも戦うさ。どうしようもねェ時に騒ぐな!」
「ぬーーーっ!じゃあ騒ぐくらい騒がせろ!!コイツ鬼だな鬼ヶ島!」
「緑マム!!」
「緑カイドウ!」
「クソマリモ!」
「黙れ5位」


ぎゃあぎゃあと騒ぎ合いをする中、ロビンはナマエの頭を撫でながら新聞記事に目を通す。

七武海制度の撤廃はあのレベルの海賊達を海に解き放ち、その結果・・・クロスギルドを発足させ新たなる四皇"千両道化のバギー"を生んだ。


「ルフィ・・・まだあなたに関わりのある名前が若干出てるけど・・・聞く?」
「んー・・・お前に任せる!ヤベーのは教えてくれ」
「了解。そうしましょう。もう頭がいっぱいよね」


新聞紙に釘付けだったナマエの頭に、ぽんっと麦わら帽子が被せられる。
驚きながらもつばを上げて、犯人のルフィを見上げてみれば・・・正面に立っていたルフィはさっきまでの狼狽えていた姿とは一変し、にかっと笑って言った。


「サボは犯人じゃねェよ!そんな事くらいナマエだって分かってるだろ?」
『っ、分かってる。サボはみんなを自由にしたいだけだもん』
「ししし!」


仰向けになってデッキの芝生に寝転がるルフィの腕がナマエの腹部に回り、そのまま引き寄せられたナマエも隣では寝転がる体勢になった。


「誓ったんだ、おれ達!なっ、ナマエ!」
『!』
「おれは――――」






ルフィの夢の果て。


それを聞いたゾロ、ジンベエ、ナミ、ウソップ、ロビンは耳を疑い、サンジ、フランキー、ブルックは涙を流すほど笑い、そして一人だけチョッパーは憧れの眼差しを向けていた。


「お前な!そんなこと出来るわけねェだろ!」
「海賊王になったらできるかもしれねェ!」
「んなこと考えるか!?フツー」
「あれ?言ったことなかったか誰にも・・・」
「全然言ってくれなくて構わねェが・・・ムリだし!」


誰に話したのだろうと、指で数え出すルフィ。
シャンクス、エース、ナマエ、サボ・・・自分の夢の果てを話した人物の名をあげていけば、ロビンは顔に手を置きながら「ナマエ達はなんて?」と興味深そうに問う。


『みんな・・・笑ってた、かな?ルフィらしくて』
「シャンクスなんか涙流して!ししし!それがおれの・・・"夢の果て"だ」
「ワハハ!この船に乗ってしまったからにゃあ他人事じゃないのう!大変な船長についてしもうた!」
「ししし!」
「それいいなー!ルフィの夢いいなー!」
「あんたらしいけど・・・そりゃ海賊王にくらいならねェと無理だな!"ロード歴史の本文ポーネグリフ"もう一つでラフテルに行けちまうからなー!」
「簡単に言わないでフランキー。その最後の一つこそが長い間・・・誰にも見つけられなかった石・・・!全く手掛かりがないのよ」



   



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