EPISODE.35



――楽しい宴と祭りを終え、ルフィ達はずっとワノ国を調査していたロビンの報告に耳を傾けていた。飛徹こと、光月スキヤキに教えてもらった内容をロビンが分かりやすく説明をしてくれる。


ワノ国のロード歴史の本文ポーネグリフは、花の都の城の地下の更に地下にあった。その場所は海底に沈んだ800年前のワノ国にあり、藤山の麓の洞窟、その高台にあたる場所だという。
更にその地下に古代兵器プルトンが眠っており、ワノ国将軍家は古代兵器プルトンが自国の地下に眠っている事を長年伝え、それを解放する事が開国である、という事も話していたそうだ。
光月将軍家には伝えられていない話を、外の世界に出たおでんが知り・・・そして開国をしようと促した。その意図はまだ誰にも分からない状態であった。


「何?熟女はもはや・・・兵器って話?」
「誰だ!?お前!」
「わたすよ!しのぶ!!ちょっと事故でやつれちゃったけど・・・」
「えーー!なんて素敵なやつれ方!!」


派手に登場してきたのは、すっかり見た目の変わったしのぶと、新しい装束を身に纏ったお玉であった。

先日の緑牛との戦いにて養分を吸われたしのぶは一時は干からびたミイラのようになっていたが、チョッパーとナマエの治療のおかげで何とか意識を取り戻し・・・あのふくよかな体型から一変し、昔のようにスタイル抜群な女性へと生まれ変わっていた。

掌返したようにサンジの目はハートになり、もはやしのぶにメロメロだ。


「アニキ!アネキ!おらしのぶちゃんに弟子入りしたでやんす!強くなるから今度会うときは仲間に入れてけろ!」
「お玉かわいー!!」
「忍術使えたらな!いいぞ!ししし!」
『楽しみに待ってるね、たま!』
「やったぁー!!」


――それから数日後。

ルフィ達は、兎丼の"常影港"にて出航の準備をしていた。しかしそこにいたのは麦わらの一味だけではなく、偶然にも出航日が重なってしまったハートの海賊団、キッド海賊団の姿もあって・・・鉢合わせてしまった船長三人はいつもの如く口論を始めた。


「麦わら屋、日を変えろ!もう同盟は解除!敵同士だ!」
「おれ達はもう今日って決めたんだ!」
「カチ合ったもんは仕方ねェ!!方角を分けるぞ!!」

「真ん中!!」 「真ん中!!」 「北東!!」


記録指針ログポースは3方向に定着した北東、東、南東を選んでおり、ルフィとキッドが被り、唯一被らなかったローが「おれは決まりだな」と長い足を組み不敵に笑う。


「北東が一番先へ進める」
「「ああっ!」」
「真ん中?ガキか・・・」
「東!!」
「うわーーくじ引き負けたァーーーごめんみんな!!」
どこも危険だろ!どうでもいいから荷物運べルフィ!
「おれ四皇なのにくじ引き負けたーー!」
「ハァン言うじゃねェか!!だが四皇と聞いておれが頭に来るのは――コイツだ!!」


言いながら、キッドが出した一枚の記事・・・そこにはバギー、ミホーク、そしてクロコダイルが、クロス・ギルドという会社を創設したという記事だった。クロス・ギルドという会社は海兵に懸賞金を付けているそうだ。
まるでバギーがミホークとクロコダイルを従えているかのような、そんなポスターの作り方にルフィやゾロは首を傾げた。四皇になったというのも信じ難いが・・・この二人を従えれるほどバギーに実力があるとは到底思えない。もし本当に従えることが出来たというのなら、確かに海の皇帝と呼ばれてもおかしくはないだろう。・・・ほぼ100パーセント、それは無いだろうが。


追う立場の海軍が民間からの暗殺にも怯える世の中へと――ワノ国にいる間に、世界はずいぶんと様変わりをしているようだった。


「進路に文句はねェな!?ワノ国を一歩出たらおれ達も殺し合いだ!」


ローは持っていたロード歴史の本文ポーネグリフの写しを、得る権利のあるキッドに投げ渡した。


「ファッファッファ!おれ達もコイツに本腰入れなきゃなキッド。ひとつなぎの大秘宝ワンピースの争奪戦に参加するには・・・!」
「"火ノ傷"の男を捜せってのか?アテがなさすぎる・・・!」
「ん?ヒノキズ?何だそれ」
「・・・・・・」
「知らねェのか。じゃあこっちにゃ好都合ハハハ!」
「何だ言えよ!!」


――いがみ合う船長を放って、船員たちにより出港準備は着々と進んだ。

サニー号に乗り込もうとしたナマエは『そうだ』と何か思い出したように踵を返すと、ハートの海賊団のいる潜水艦へと向かい、荷造りをする船員の中から白い熊を見つけると笑みを浮かべて飛びついた。

暫くこのもふもふが出来ないと思うと寂しく、別れを惜しむように強く抱きしめ、ぐりぐりと頭を押し付けると「くすぐったいよナマエ」と可愛い声が頭上から聞こえてくる。


「おい歌姫屋・・・何やってやがる」
『ん−もうちょっとだけ・・・』
「・・・そんなに離れたくないなら、このまま乗るか?」
『え?』
「わー!それがいいよー!そうしよー!」
『え、いやそういうわけには、』
「・・・ふ。冗談だ」
『!っ、もう!』


驚いたじゃんか、と頬を膨らませるナマエを鼻で笑って見下ろしたローは、ナマエの頭を鷲掴みにするとぐいっとベポから離し、「早く麦わら屋のとこへ帰れ」とROOMを展開して、サニー号にあった積荷とナマエの位置を入れ替えた。

強制的にサニー号に戻らされたナマエは相変わらず頬を膨らませながらも、すぐにニコリと笑みを浮かべ、デッキから身を乗り出すように大きく手を振った。


『ベポ、シャチ、ペンギンー!それに、みんなも!あの時、助けてくれてありがとう!』
「おう!」
「歌姫元気でなァー!!」
「またねナマエー!」
「おいてめェら・・・・・・」
『トラファルガーもありがとうー!』
「!・・・・・・ッチィ!」


ハートの海賊団は、すっかりナマエに心開いてしまったようだ。舌打ちしながらも潜水艦に乗り込んだローは、ルフィ達のいるサニー号に視線を向けて言う。


「・・・今度お前らに会う事があれば完全な敵だ。殺されても文句は言うなよ」
「ああもちろんだ!」
「じゃあなトラ男〜!」
「黙れ」
「えぇー!?」
「船を出すぞ!!」

「おーーーい!!」
「おぬしらァーー!!」


出航しようとした矢先、森の奥から――龍の姿となったモモの助と、それに乗ったヤマト、錦えもんがやってきた。
まだ飛ぶのが恐いのか、龍になったというのに飛ぶことはせずドカドカと激しい地鳴りと共に走ってくるモモの助の姿に、思わず笑みがこぼれてしまう。

――ヤマトは、最初はルフィの船に乗って一緒に海へ出ると話していたが、考えを改め、自分はワノ国に残ると話した。おでんはこの国の"漫遊"から始め、ヤマト自身もまだ世間知らず・・・同じ道をたどっていずれ海へ出ると決めたそうだ。

なぜか怒っている様子のモモの助はサニー号の元まで辿り着くと人間の姿に戻り、錦えもんと共にデッキにいるルフィに飛び込み、ヤマトはその隣にいたナマエに飛び込んだ。


「ルフィーー!捕らえたー!!」
「ナマエーっ!」
「うわあー!?」 『わっ!』


押し倒されたルフィはモモの助と錦えもんによってなぜか捕らえられ、ヤマトに至ってはナマエに熱い抱擁を交わす。


「ルフィー!おぬし一体何のつもりでござる!最も長い付き合いの我らに一言もなく出航か!?」
「将軍もお怒りでござる!!さァ言い訳してみよ!!」
「いま会えたろ!」

「ねえねえナマエー!僕、エースより強くなるからさ!そしたら僕と結婚しよう!!」
『えっ』
「「「はぁあーー!?!?」」」


何を突然言い出すかと思えば・・・瞳を輝かせながら「僕は決めたんだ!」と熱烈な告白をしたヤマトは、どさくさに紛れて無防備だったナマエの頬にちゅっとキスを落とした。


"えええええーーー!?!?"


――周りから悲鳴があがるなか、当の本人はというと突然の出来事に全身真っ赤にさせ、石のように固まってしまっていた。
そんなナマエを見て可愛いなァと再度抱き着くヤマトを慌てて引き剥がしたのは・・・ナミだった。
女同士なんだからどう考えても無理でしょ、と言い聞かせてもヤマトは「僕は男だ!」と言い張るので、それ以上は何も言えず・・・これにはさすがのナミもお手上げ状態のようだ。


その一方で、モモの助はというと・・・。


「ルフィ・・・将軍命令でござる・・・ッ行かな"いでくれ!!さみしィ!!ずっと一緒にいてほじい〜〜!!おぬしらと別れとうないでござるぅ〜〜!!!」


ボロボロと、涙と鼻水を流しながら大号泣していた。


おぬしらがいたから・・・生きていられた!おぬしらのおかげで・・・笑っていられた・・・!!父のカタキを・・・母のカタキを討ってくれてありがとう・・・!拙者バカであるから言葉にしつくせぬ・・・!この先は・・・・・・こわい!!だから行かないでくれェ〜〜!!

「みっともねェなァ」
「だってモモちゃんまだ子供だもん・・・」


泣き叫ぶモモの助を見て、ついもらい泣きしてしまうフランキー、チョッパー、ナミ。

ルフィはというと・・・デッキの奥にいたウソップを呼び、ウソップが持ってきた"それ"をいまだ泣き続けるモモの助の頭にかぶせた。


「ぶ!!」
「これ渡したくて待ってた!何が将軍だモモ!デカくなってもおれ達は中身を知ってるぞ!お前はバカでマヌケで弱虫だ。でも弟みたいに思ってる!!」
「!!こ、れ・・・旗!」


ルフィから渡されたのを広げてみると――なんとそれは、麦わら海賊団の海賊旗だった。


「辛いときは冒険の海を思い出せ!これをワノ国に掲げろ!この先ヤベーやつが現れたら見せてやれ!!おれの"仲間"に手ェ出すってことはおれ達にケンカを売るってことだ!!」
「!!仲間・・・・・・ッせっしゃ、も・・・!?」
「錦えもん!ヤマ)</rp>!モモ!海賊やりたくなったらいつでも迎えに来るからよ!弱虫は乗せねェぞー!!」


ルフィのその言葉に錦えもんは笑顔を向け、ヤマトは初めて名前で呼ばれた事に歓喜し、そしてモモの助は・・・泣きながらも、何度も何度も深く頷いた。


「頼むぞヤマトー!!」
「うん!・・・また迎えに行くからね、ナマエー!!」
「ほらナマエ、いつまでも固まってないでなんか言ってあげたら?」
『え、あ・・・』
「ナマエー!またねー!」


笑顔で手を振るヤマトに呼ばれたナマエは、困ったように笑いながらも大きく手を振り返した。


『またねー!』
「しっかりやれよ将軍ー!!」
「がんばれモモの助ー!!」


――モモの助達に見送られながら、3つの海賊船は出航をした。
ナミが言うにはこのまま白舞に向かえば正規の港があり、リフトを使って船を下ろせるそうだ。それを聞いて安堵の息を漏らすブルック達。・・・来たときは滝を上ってきたので、てっきり今度は落下するしかないと心配していたのだ。

そんな会話をしていると、隣を走るヴィクトリアパンク号からバカにするようなキッドの笑い声が聞こえてくる。


「お前らは正規の港を使うのか。安全だから・・・・・)</rp>な。ハハハ」
「!!」
「格下のお前らにはお似合いだ」

「「安・・・全・・・!?」」


その言葉にカチンときたのは――いうまでもなくルフィと、ローで。嫌な予感がした麦わらの一味とハートの海賊団は慌てて船長を宥めようと声をかける。


「イヤイヤルフィ!?安全でいいんだよ、のるなよ!?」
「え!?キャプテンなにその表情!?いいんだよ正規の港で!!」
「ジンベエ舵かせ!」
「よせルフィ!!やめろ〜〜!!」

「「「おらァ〜〜〜!!!!!」」」


"死ぬゥ〜〜〜〜!!!!!"






――次なる冒険への出航。
真っ逆さまに落ちていくサニー号に周りが阿鼻叫喚と化すなか・・・・・・ただ一人、ナマエはフランキーに作ってもらった音貝トーンダイヤルに耳を傾けていた。

・・・そこには新たな時代を迎えた花の都で行われている、浪曲師の歌と語りが記録されていた。


























――ベベン!!!









モモの助様と錦えもんにより誘われた賊堂達の強いこと!まるで真の"明王"のごとく疾風怒濤の大暴れ!龍王カイドウも、妖怪大花魁も、これに敵わず空を切り裂く断末魔!!

・・・一方、燃えて死んだと見えたオロチ!執念深く日和姫に襲い掛かる!!


ずば〜〜っと!そこで一刀両断にィー斬り捨てたのは光月おでんの第二の子分傳ジロー!燃え落ちた最後の首!黒炭オロチ一巻の終わり!!

轟く雷鳴同じく落ち行く鬼ヶ島と龍王カイドウ!!二十と余年ワノ国の空を覆った暗雲はゆっっくりと晴れてゆく・・・!!聞こえてくる花の都の祭り囃子の音を背にィ・・・ごろり!信じ難く燃えながらまだこちらを睨むオロチがこう言った・・・!

「黒炭家ノ怨念ハ・・・末代マデコノ国ヲ呪イ続ケルゾ・・・」

日和姫のまぶたに浮かぶ20年のワノ国の苦しみ!!怯まぬ眼差し!!

「危のうござる!日和様!!」

そう言う侍傳ジローの手を振り払い!!我らが日和姫、燃ゆるオロチに一歩も退かず引導をつきつける!!

手には扇!光月の家紋・・・!二十年の思いに唇を噛み締めて、父よ!母よ!兄よ!そして祖国を思い、言い放つ!!




「燃えてなんぼの!"黒炭"に候!!!





――時は火祭り酉二つ。逆さ三日月集まる港・・・討ち果たされた仇討の語り継がれるお家再興血風録!!




名代なりけるもののふ達の返り花咲く物語・・・。







ちょうど時間となりました。ちょと一息願いまして、またのご縁とお預かりィ〜〜〜。











































『――モモ、錦えもん。それにみんな・・・・・・また、会おうね・・・!』











想いは継がれ、いつまでも。



―終幕―




   



戻る
















×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -