EPISODE.34



――決着より7日目。

多くの人々が重傷を負っていたがそのほとんどが短い期間で驚くほどの超回復をみせていた。それも全てチョッパーの適切な処置とナマエのキラキラの実の能力のお陰であり、戦いの最中に起きた不思議な現象も全てナマエの力だと話せば、侍たちはまるでチョッパーやナマエを神様のように崇め、感謝の言葉を述べようと次々と城へ押し寄せて来た。
あまりにも人数が多すぎる為、礼は宴の時で構わないだろう、というモモの助の言葉に侍たちは渋々解散していき・・・散らばっていく侍たちの中のほとんどが、ナマエ目当てなのだろうと察したナミは、ふう、と息を吐いた。


「今に始まった事じゃないけど・・・カリスマの塊ねナマエって・・・」
「なあなあナミ、ナマエ見なかったか!?みんなの治療終わったはずなのに、あれから毎日夜遅くまでなんか作業しててさ・・・てっきり寝てるかと思って部屋覗いたんだけどどこにもいないんだ!」
「ナマエなら今朝、ウマ美にサニー号まで連れて行ってもらうって言ってたけど・・・そういえば何処へ行ったのかしら」
「ええー!?あいつ7日間もまともに寝てねェんだぞー!?」












――決戦にて、命を失った者もいる。
"鈴後"にある常世の墓にはマルコ、錦えもん、河松、そしてオニ丸がおり、背後にある祠にはイゾウとアシュラが使っていた銃と刀が置かれてあった。


「お堂を建てる?」
「うむ。この刀神リューマのように花の都を一望できる丘に・・・おでん様を祀る・・・!それを囲むように康イエ殿を始めとする国のため戦った大名達を・・・そして・・・アシュラとイゾウを・・・!」
「――それでよいか、マルコ殿」
「もちろんだよい。故郷の土が一番・・・!おれはまた・・・生き残っちまった」
「拙者たちにしてもよ・・・」
「我らが生き残り・・・"英雄達"にもし何かあったらやりきれぬ・・・!無事を祈ろう」

『あ、いたいた。よかった近くて!』
「!ナマエ殿!?」
『急に雪が降るから、びっくりしちゃった』


メーヴェを持ち上げるナマエは『これ、雲で月が隠れちゃうと飛ばせないんだよね』と、鼻と頬を真っ赤にさせながら笑って見せた。
事前にお菊から鈴後の気候は冬と聞いて厚着してきたものの、予想を超える寒さに思わずくしゃみが出てしまい、慌てて錦えもんが風邪を引かないよう、自身の羽織りをかけてくれる。


『ありがとう錦えもん!』
「どうしてここへ?花の都で療養中では!?」
『マルコの気配を辿ってきたの』
「おれの?」


特に心当たりがなく首を傾げながらも、ナマエの行動を見つめるマルコ。メーヴェを雪の上に置き、歩み寄ってきたかと思えばナマエはニコッと嬉しそうに笑うと『やっと会えたぁー!』と突然飛びついてきた。
驚きながらもナマエを受け止めたマルコが呆気に取られているのを見た錦えもん達は、それまでのしんみりとした空気が一瞬で柔らかいものへと変わったことに気づく。・・・こういう優しい空気を自然と作り出してくれるのが麦わらの一味なのだと、改めて実感した。

――マルコとこうして再会できたのは、白ひげとエースの墓前で宴をして以来。エースが兄のように慕っていたマルコは、ナマエにとっても大切な存在・・・会って話したかったのもあるが、当初の予定を思い出し、少し離れると懐からあるモノを取り出した。


『これ、マルコに渡したくて』
「!おれ、に・・・?」


ナマエに渡されたのは・・・・・・竹で編まれたコースターケースだった。


「・・・なんで、これをおれに?」
『エースがね、よく手紙に書いてたの思い出したんだ。1番隊隊長さんは、バーのコースター集めが趣味、って!それで、玉に編み方教えてもらって急いで作ったの!』
「!」


ちょっと失敗しちゃったけど、と申し訳なさそうに、そして照れたように頭に手を置くナマエ。
・・・よく見てみると言われた通り所々がほつれていて、エースからナマエは大がつくほどの不器用だけど、その分努力家でもあると聞いていたマルコはナマエの目の下に出来た隈に気付くと呆れながらも笑みをこぼし、ポカンと軽い拳骨を落とす。


「酷ェ隈だ・・・休める時に休まなきゃだめだろ。せっかくの美人が台無しだよい」
『でも、マルコすぐに行っちゃう気がして』
「・・・・・・」
『急いで作ったから下手かもしれな・・・うわっ』
「ありがとよい、ナマエ。これ気に入ったぜ!大切に使わせてもらうよい」


ぐしゃぐしゃと少し乱暴に頭を撫でられたナマエは、その温かい手がまるでエースのように思えて、嬉しそうに顔を緩ませた。


『あ、あとそれと・・・』


――踵を返しメーヴェからがさごそと何か取り出し用意し始めるナマエ。・・・出てきたのはおでんが入った保存容器だった。メモ用紙に書かれてある内容を確認しながら、並べた二つの皿に取り分けていく。


『イゾウはがんもどき・・・アシュラ童子はもちきんちゃく、っと・・・』
「ナマエ、殿・・・?」


冷めちゃったかなぁ、と言いながら取り分けたそれを、祠にあったイゾウとアシュラの武器の横にお供えする。そして静かに目を閉じ、手を合わせた。

――それは、二人の大好物だった。ちらりと見えたメモ用紙の字は紛れもないお菊のもので、わざわざ聞いて用意してくれたのかと、錦えもんはナマエの優しさに心震わすように唇を噛み締めた。


「かたじけない、ナマエ殿・・・ッ!二人も喜んでおる事だろう!」
「カッパッパ!なんとも心優しいお方だ」
『これくらいの事しかできなくてごめんね。・・・あ、そうだ!錦えもんたちの分のおでんも作ってきたんだよ。よかったら食べてね』
「おお!これは美味そうだ」
「かたじけない!」
『サンジが一緒に作ってくれたから、すっごく美味し・・・』

「!ナマエ殿!?」


急に視界がぐらりと揺れ、倒れそうになったナマエを正面から受け止めるマルコ。
一体どうしたのでござるかと心配して駆け寄る錦えもんと河松だが――・・・耳元を寄せたマルコは、聞こえてくる小さい寝息にプッと笑い「安心しろい。寝てるだけだよい」とそのままナマエを横抱きして持ち上げた。


「ね、寝たァーーー!?」
「こんな所でー!?」
「こいつのアニキも、似たようなやつだったよい」


――食事や会話の真っ最中に突然寝るという癖を持つエース。周りが心配するなか、本人は呑気に熟睡していて・・・そんなエースをいつも起こす役目だったのが自分だった。
昔よくやっていたエースとのやりとりを思い出してしまったマルコの目尻に涙が浮かび・・・流れ出ないよう、人差し指でそれを拭うとナマエを背中に乗せ、そして人獣型となってメーヴェを足で掴みあげる。
錦えもん達にナマエを花の都へ連れていくことを伝え、マルコは空を飛んだ。


「全く・・・兄妹揃って。手がかかるよい」

























「肉ゥーーーー!!!」
「酒ェーーーー!!!」


ルフィとゾロが目を覚ましたという情報は瞬く間に広がり、仲間たちが一斉に集まってくる。
次々と運ばれてくる肉を頬張るルフィは、隣で眠るナマエに気付くと・・・それまで肉を食べる事に夢中でその存在に気づいてなかったのか、少し間を置いてから驚いたように目を見開かせた。


「え!?ナマエまだ寝てんのか!?」
気づくの遅すぎだろ!
「ついさっき、マルコに運ばれてきたのよ。ずっと徹夜してたみたい」
「え・・・おれ達を治した後にか!?」
「ええ」
「力を抑えとるっちゅう時に、あれだけの人数に力を使って、いつ倒れてもおかしくない状況じゃというのに・・・その後もようけ働きよった。まっこと大したもんじゃ!」
「でも・・・そのおかげで助かった命もある!ナマエ、戦いが終わった後もずっと侍たちを治してくれたんだ」
「体力の消耗激しいって聞いたし・・・まともに寝てないんだもの。もう少しくらい寝かせてあげましょう」

「おーいナマエ、起きろよー!早く一緒にメシ食おうぜー!!」
「「「って聞いとんのかァー!起こすなァ!!」」」


ぺちぺち、頬を叩くルフィにすかさずツッコみを入れるナミ、チョッパー、サンジ。眉間にシワを寄せながら、ゆっくりと瞼を開けたナマエは眩しそうに目を細めると、『もうちょっと』と頭から布団を被ってしまった。
ほら寝かせてやりなさい、とナミが再度忠告をするも、不機嫌そうに頬を膨らませたルフィは「イヤだ!なァ起きろよナマエー!」と子供のようにナマエの上に乗っかって暴れだす。
こうなったら意地でも聞かない事を知ってるナミが呆れたようにため息を吐けば・・・静かに布団から顔を出したナマエが漸く観念したのか眠そうに目を擦りながらも上半身を起こす。
すると嬉しそうにパアアと笑みをこぼしたルフィはナマエに抱き着くと持っていた肉をナマエの口元に運び、まだ目が虚ろなナマエはされるがまま・・・それでも目の前に差し出された肉を、もぐもぐと食べていく。まるで小動物にエサを与えるような光景に、サンジは悔しそうに唇を噛み締める。


「ナマエちゃんにあーんだなんて・・・うっ・・・う、うらやッ・・・羨ましすぎる・・・!おれもナマエちゃんの弟になりてェよォ・・・!」
「ルフィ、ゾロ、ナマエ!まだあまり食うな!おぬし達が目覚めたら国をあげて宴をやる事にしておる!今日やろう!!」
「「『・・・・・・・・・』」」
「いやモモの助でござる!!」


龍の姿しか見ていなかったルフィとゾロは首を傾げ、光画を通して一度は見ていたナマエも、まだ目が覚めていないようで不思議そうに大人になったモモの助を見つめていた。


「そうかモモか!強そうな体だな、おでんの血か?殴ってみよう!」
「よせ!!ッ2人がいじめるでござる!おナミ助けてくれー!」
「きゃあ!?ッやめんかァーー!!


抱きしめられると同時にさりげなく胸を掴まれたナミは顔を鬼にしてモモの助を殴り飛ばした。


「せ!拙者まだ8歳でござる!痛くは無いが・・・」
「あ・・・そうだった」
「がっはっは!これが大人の世界だモモ!」
「もうかつての特権はありませんよ!!」
「ッ、ナマエー!!!」


サンジとブルックに笑われ、ナミがダメならば、と今度はナマエに向かって飛び込もうとする――が突然、新しい料理をナマエに食べさせようと間に割り込んできたルフィの背中に顔面が激突し、そのまま床で転げ回っていくモモの助。
ナマエに抱きつくのも失敗してしまい、鼻を抑えるモモの助を見てヤマトは笑いながらその頭にお盆を乗せた。・・・こうしてみると、おでんに瓜二つなのだ。


「ナマエ、ヤマト!お祭り前にお風呂入ろ!"願かけ"は終わりでしょ?」
「がんかけ?」
「ワノ国には願いが叶うまで何かを我慢して神仏に祈る風習があるそうじゃ」
「僕、キミたちが元気になるまでご飯とお風呂断ってたんだ!」
「えーそうか!ありがとうヤマ男!おかげで元気だ!」
「ええやつじゃのう!」
「ほら、行くわよナマエ!」
『ん−・・・』

「ナミ!お城に混浴はないから」
「拙者は・・・ご一緒にいいですか?」
「?」


いつもの如く後ろでゾロとサンジが喧嘩を始めるなか、ナマエの手を引っ張るナミは、ヤマトとお菊の言葉に首を傾げながらも、城内にある岩風呂へと上機嫌に向かった。

――光月おでんとなったヤマトは男湯に入っていき、そして心が女のお菊はナミ達と女湯に入っていた。
男湯は騒がしく、特にサンジ、ブルック、モモの助が、男湯で一緒に入るヤマトに酷く動揺し、これは夢かと騒いでる様子が伺える。
一方の女湯はというと・・・浴槽に浸かることで漸く目が覚めてきたのか、何度か瞬きを繰り返したナマエが『あれ?お風呂?』と不思議そうに辺りを見渡し、その様子に首を傾げるキャロット。


「ナマエ、いま目が覚めたの?」
「アッネキー!おはようでやんすー!」


飛び込んできたお玉は、ナマエの豊満な胸に触れると「おらもこんな"ようえん"になりたいでやんす!」と無邪気に笑っていた。何度も聞く"妖艶"という言葉を知らないナマエが、その意味をナミから教われば・・・怪訝そうに目を細め、目の前のお玉に視線を向ける。


『たま・・・まさかと思うけどそれ、』
「はい!エースがそう言ってたでやんす!"ようえん"なくの一になれば仲間にしてくれる、って!」
『〜〜〜っ』


子ども相手になにを言ってるのか。恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にさせたナマエは、頭を抑えながらもうこの事は忘れようと、お湯と共に流すのだった。


――その後お玉はおトコとわいわいはしゃぎ、そんな二人の楽しそうな会話を聞きながら久しぶりの湯船に幸せを噛み締めるナマエに、日和が声をかける。


「ナマエさん、歌がお上手なんですってね!あの、後でよかったらぜひ、私の曲を聴いてくださいませんか?"月姫"という、父が大好きな曲なんです!」
『え、っと・・・』
「あ!紹介が遅れました。私、日和と申します。光月モモの助の妹です」
『!モモの!』
「ええ!あなたの歌は世界一だと、兄から伺っております」
「アネキの歌、すごい綺麗なんでやんすよー!」
「え!そうなの!?あたいも聞いてみたい!」
「生死の境を彷徨う中、呼び名さんの歌声が聞こえて・・・・・・命を救われました。拙者も、もう一度お聞きしたいです」
「それなら宴の時に盛大に歌っちゃいましょうナマエ!!」


――お風呂から上がった一行は、城の料理が出来上がるまで待てるはずもなく、祭囃子が聞こえる城下町へと降り立った。
ルフィやチョッパー、ヤマトはあちこちに出されている出店、屋台と様々な食べ物やゲームに目を輝かせ、全ての店を回る勢いで城下町を駆け回っていた。


・・・一方、中央フロアに特設されたステージでは特別ライブが開催されていた。


「YEAH!聴いてくれ次の曲はブラザーおでんが愛したこの曲〜!!世界一の歌姫と一夜限りのコラボだぜYEAH〜!!」
「"月姫"」


ベベン、と日和が三味線を弾けば、それまで賑やかだったステージは一瞬で静寂に包まれる。
そしてステージ上に出てきたナマエは日和と目を合わせ、微笑みあうと――丁寧に鮮やかに歌声を紡いだ。人々に希望をもたらす優しい旋律が、伸びやかなナマエの歌声と一体になって聞く者の心を掘り起こす。
前奏の一節を歌い終えると、今度は日和の三味線の音色が響き渡る。凛々しく、力強い撥捌き、そして華麗な指使いの演奏は圧巻で、ナマエの歌声も、そして日和の三味線も全ての観客を一瞬で虜にした。


"日和姫ェーーー!!!!"
"呼び名さァーーーーーん!!!!"


あちこちから歓声が上がる中、全ての屋台を回り終えたルフィがステージに飛んでくると、持っていたジョッキを掲げた。


「ほんじゃあ改めてー!!忍者海賊ミンク侍!王の家来!ヤクザ達!!ワノ国ィーーー!!よく戦った野郎共ーー!!!」


突然のルフィの登場に、住民達は首を傾げながらも勢いに身を任せて声を上げた。

――実は、ワノ国の住民のほとんどがここにいるルフィの活躍を知らないでいた。かというのもルフィがモモの助に自分がカイドウを倒したという事を言うな、と事前に口止めしていたからなのだ。
ヒーローになるつもりはない、そう言ったルフィの言葉を思い出すモモの助から、笑みが浮かばれる。


「麦わらァーー!!!」
「ん?」
「てめェをここで消せば!!」
「ギザ男!よし!!明日のメシを祝して〜〜〜いくぞ〜〜!!」


なぜか怒った様子のキッドが向かってくる・・・が、そんなのお構いなしに笑顔で迎えたルフィは、キッドの首に自身の腕を巻き付けて引き寄せた。

派手に打ち上げられた大きな花火は花の都を明るく照らし、それを合図にルフィが声を上げた。


「乾杯〜〜〜〜〜い!!!宴だァ!!飲み明かせェ〜〜〜!!!」


麦わらの一味も、赤鞘侍も、ミンク族も、侍たちも、そして住民達も――全員が笑顔を浮かべててジョッキを掲げた。・・・ただ一人を除いては。
勝手に巻き込まれたキッドは鬱陶しそうにルフィの手を払うと、懐から出した新聞を目の前に広げだす。


「見ろこれを!!おれはお前を消しに来たんだ!!海外で何が起きたか知らねェが・・・これが新しい皇帝たち"四皇"だ!!!」

「!!!???」
『・・・わあ!』


――赤髪のシャンクス。

――千両道化のバギー。

――黒ひげティーチ。

そして――――麦わらのルフィ。


大々的に記事に載っている四皇の名前に自分がいるのを知ったルフィは珍しく言葉を失い、その背後から覗き込んだナマエが『ルフィすごい!シャンクスと並んでるよ』とあまりにも的外れなことを呑気に笑って言うものだから、すっかり戦意を失ったキッドは踵を返すとその場から去ってしまった。

――祭りの熱狂はまだまだ収まる事を知らず、日和とブルックに後を任せステージを降りたナマエは、約束していたお玉と共に、屋台を回った。
金魚すくい、射的、輪投げ、ヨーヨー釣り・・・どれも初めての体験にお玉は始終楽しそうで、取ってもらったヨーヨーをぼよんぼよんと弾ませるお玉は、隣でりんご飴を食べるナマエを見上げる。


「あの、アネキ」
『?』
「そ、その・・・ずっと言いたくて。ごめんなさいでやんす。エースのこと、ナミちゃんから聞いたでやんす」




「ッ・・・・アニキは嘘つきでやんすーー!!」

「!っーーー・・・うっ・・・うわぁああーーーん!アネキも嘘つきでやんす!絶対に信じないでやんすー!!」




「おら何も知らないで、あんな事・・・アニキやアネキが一番つらいのに・・・」
『・・・たま』


歩みを止めたナマエは、俯くお玉の前に回り込むと目線が合うように屈み、優しく頬に手を当てて顔を上げさせた。


『エースってばこんなかわいい子を長い間待たせるなんて・・・だめなお兄ちゃんだね』
「っ、」
『・・・でも・・・だめなお兄ちゃん、だけど・・・もし生きてたら、絶対にルフィと同じ事してたと思うんだ。エースは約束、破るような人じゃないから』
「う、ううぅ・・・ッ」
『エースの言葉を信じて待っていてくれて、ありがとう。たま』
「!うえぇええーーーーん!!!ア"ネ"ギィ"ーーー!!!」


















――たまといると、妹の事を思い出すよ。

――エースには妹がいるでやんすか?

――ああ!双子のな。

――ふたご?ってなんでやんすか?

――んー?まあ兄妹と同じようなもんだ。二人共同じ日に産まれたんだよ。俺が先に産まれたから、俺が兄ちゃん。そんで、後から生まれたのが妹だ!

――へえー!エースの妹さんは、どんな人でやんすか?

――あいつか?そうだなー・・・歌は抜群に上手いが・・・泣き虫で甘えん坊で、そんでもってめちゃくちゃ不器用!

――エースは器用でやんす!

――はは!まあな!俺がいないとあいつ、なんも出来ねェからな。放っておけねェんだ。











昔、エースとの会話を思い出したお玉は思わず笑ってしまい、ナマエの腕の中で鼻を啜りながら言った。


「エースが・・・言ってたでやんす」
『ん?』
「アネキが不器用、って」
『・・・・・努力、してるつもりだもん』


そりゃあエースの方が器用かもしれないけど、とあからさまに不機嫌になるナマエに、泣きながらも笑みをこぼしたお玉は、「また笠の編み方教えるでやんす!」とむぎゅっとナマエに抱き着いたのだった。









*




花の都が賑わいをみせるなか、ナマエ、ルフィ、ゾロ、サンジ、ジンベエは町から少し離れた場所で、同じ方向を見つめていた。ちなみにさっきまでナマエといたお玉は、今はナミと一緒に屋台を回っている。

お祭りの最中、少し気になった気配を感じた一行が向ける視線の先には・・・海軍から送られてきた海軍大将"緑牛"と戦うモモの助達の姿があった。



"ルフィにもナマエ達にも・・・拙者ずっと頼りきってきた!!この国に残る我らでどんな敵も追い払えなければ!!旅立つ者に頼っていては!拙者たちはこの先ワノ国を守ってゆけぬのだ!!"



モモの助の言葉は、遠くにいるルフィ達の耳にもハッキリと届いていた。単独行動で来ているとはいえ、大将クラスである緑牛に手も足も出せなかったモモの助がそう、啖呵を切った瞬間――モモの助の口からカイドウと同じ熱息ボロブレスが放たれる。

花の都では住民が祭りを楽しんでいる。解放されて、皆が自由に幸せを噛み締めている。
それを台無しにするわけにはいかない――。

敵に逃げる隙を与えず、何度も何度も熱息ボロブレスを放つモモの助・・・立ち上がった緑牛が反撃をしようと身構えた、その瞬間。


『!この気・・・・・・』














ドォン!!!!





強い覇王色の覇気が、海の向こうから放たれるのを感じた。
その瞬間、モモの助達と戦っていた緑牛は怯えるようにワノ国を去っていき、何が起きたか分からないモモの助は呆気にとられながらも、緑牛を追い返す事が出来たことに安堵の涙を流していた。


「いなくなった!ししし!」
「出番なしか」
「やるじゃねェかモモ・・・」
「しかしどエライ覇気が飛んどったのう」
「な!アレ何だったんだ?」
『・・・ふふ』
「懐かしい顔が浮かんだ」


誰の覇気か・・・ナマエもルフィも、何となく気づいているようで――二人は嬉しそうに、笑みを浮かべて大海原の向こうを見つめた。


「おい麦わら!いい"乗り合い船"が近くに来てるんでおれは一足ここを出るよい」


声をかけられ、空を見上げるとそこには人獣型になり空を飛ぶマルコの姿があった。


「マルコー!そっか行くのかー!」
「ああ!」
「頂上戦争でよ!おれとナマエを助けてくれたんだろ!?ありがとう!」
「あん時ゃみんながそう動いた。なぜだろうなジンベエ」
「いやァ昔の話じゃ忘れたわいワハハハ!」
「お前たちの成長をエースも喜んでるだろうよい!」
「ししし!そうかなー!!」
『マルコー、昼間は送ってくれてありがとうー!気をつけてねー!』
「ああ!この先はお前たちの時代だ、気ィ引き締めていけ!」
「おう!じゃあなー!」



   



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