EPISODE.31



――この決戦にはもう一つの戦いがある。

ルフィがカイドウに勝利することで消える"焔雲"。鬼ヶ島は墜落し、ヤマト曰く地下の火薬で花の都は大爆発――何も知らず火祭りに興じる何万人もの民衆の命が奪われてしまうのだ。
そこへ第二の危機――オロチの仕向けたカン十郎の燃える怨念が鬼ヶ島の空中爆発を目論み、地下へと向かっている。それをヤマトは追いかけにいき、モモの助は空で、自身もカイドウと同じ龍ならばと焔雲を発生させて墜落させないよう必死に押し返していた。


「ハァ・・・ハァ・・・楽しくなってきた!」
「ゼェ・・・ゼェ・・・俺もだ!!」


ルフィもカイドウも、ほぼ互角の戦い・・・だったが、突然カイドウがルフィの目の前で酒をガブ飲みし始めた。突っ込むルフィに「お前も飲むか?」と勧め、それはルフィとの戦いが楽しく、ルフィを認めたから出た言葉のようだが・・・酒を飲んだのはなにも酔う為ではなく――強くなる為であった。

酒の力により喜怒哀楽が激しくなりつつも、カイドウはそれを利用して自分の力を最大限・・・いや、限界以上に引き出す"酒龍八卦"状態になっており、構わずルフィが攻撃を仕掛けるも、それまでダメージを喰らっていたはずのそれは全く効いておらず・・・基礎戦闘能力の要である覇気が底上げされている状態になっているようでだんだんとルフィの方が押されてきてしまう。


――すべての月光蝶を送り終えたナマエは、大量の汗をかきながらも、城内で起きていた"ある事態"に気付くと驚きの表情から一変、笑みをこぼした。


『トラファルガ―・・・ユースタス・・・!!』
「気づいたか!?オイ」


・・・どうやらルフィと戦っていたカイドウもナマエと同じく見聞色の覇気を使って、気づいたらしい。


「やりやがったあいつら・・・!!"リンリン"がやられたァーー!!!!」
「!!」


怒りから、物凄い覇気が放たれ吹き飛ばされるルフィ。


「!ギザ男達か・・・!すげェな」
「思えば・・・長ェ付き合いだったなババア・・・!ひとつなぎの大秘宝ワンピースを奪りに行くと誓い合った矢先によォーー!!」


百獣海賊団の"大看板"達も、麦わらの一味によって倒されている。泣き上戸となりビッグ・マムが倒された事に大声で泣き叫ぶカイドウに、ギア4フォーススネイクマンになったルフィが攻撃を仕掛ける。


「お前の野望なんか関係ねェ!それでまたこの島のやつらがメシ食えなくなるんだろ!?ハァ・・・ッこれがおれの最後のギア4フォースだ!おれの力が尽きるまで攻撃をやめねェ!お前だけは絶対にィ!!!ワノ国から追い出してやる!!!」


変幻自在の攻撃を得意とする形態は、カイドウを押し込んでいく。しかしまだ酒が残っているカイドウは甘え上戸から盗人上戸になると、たちまち龍の姿に変身してルフィの攻撃を避けると、そのままルフィを咥えて空高く飛んでいき――上空から熱息ボロブレスを目の前で放った。

直撃したルフィは鬼ヶ島を貫通して落下していき、島の端からナマエが下を覗いてみると、ルフィは弾む男バウンドマンとなって空を移動し、再び鬼ヶ島へと戻ってきた。

一瞬は安心したナマエだったが、すぐにその表情は不安なものへと変わる。ギア4フォースとなってカイドウと戦ってからもうずいぶんと時間が経っている・・・あと何分もつか分からない状態だった。


「お前がいる限り!!ワノ国のやつらは水もろくに飲めねェんだ!」
「ウォロロロ!お前が誰に味方しようか構わねェが・・・ワノ国のやつらは敗北に慣れたのさ。"非暴力の弱者"!"名誉ある死者"!言い訳つきの"敗者"共を腐るほど見てきたぞ!!」
「うるせェ!!侍は強ェんだ!!!」
「強ェのか!?強がりか!?勝者にゃつかねェ!!お前はどっちだ!?」

「ゴムゴムのォ――覇猿王銃オーバーコングガン!!」


殴り飛ばされていくカイドウに追い討ちをかけようとするルフィだが、すぐさま立ち上がったカイドウに反撃を喰らってしまい、口から力が漏れかけるのを慌てて止めた。

一方のカイドウは殺戮上戸に変化しており、もう一発攻撃を放ってもダメなら自分の敗けだと覚悟を決め、再度向かって向かってくるルフィに対し、カイドウは再度"咆雷八卦"を放とうとする。







――これで、勝負が決まる。




『!!』


妙な胸騒ぎと共に少し先の未来が見え目を見開かせたナマエは地面を蹴る。

――どこからともなく現れたCP0が今まさにカイドウとやり合おうとしているルフィの腕を掴み、"鉄塊"で動きを止めたのだ。身動きの取れなくなったルフィを助けるべく、瞬時に間合いに入ったナマエがCP0を蹴り飛ばす。


『弟の戦いよ!邪魔をしないで!』
「!・・・フ・・・」
『!!』


――・・・しかし、一足遅かった。カイドウの動きはナマエやCP0の予想を遥かに超え、ルフィが解放されるよりも先にカイドウは攻撃を止められず、ルフィと、そして傍にいたナマエにも強烈な一撃を叩き込んだ。










*






――幼い頃、ルフィと遊んでいた時に、その不思議な出来事は起きた。


「おーいナマエ、見ろよこれ!ゴムゴムのォ――」
『新しい技?』
「風船ー!」
『・・・・・・』


ただ、身体を膨らませただけだというのに得意げな表情を浮かべるルフィが可愛らしく、思わずナマエから笑みがこぼれる。
シャンクスが奪ってきた宝箱に入っていたゴムゴムの実――それを何も知らずに食べてしまったルフィはゴム人間となり、エースやサボのように強くなりたいが故に様々な技を編み出そうと試行錯誤しては、よくこうしてナマエにお披露目をしていた。

口から空気を吐き出し元の姿に戻ったルフィに『その風船は相手の攻撃防げたりできそうだね』とアドバイスすれば、ルフィは嬉しそうに大きく頷いた。


「エースやサボなんかよ、おれをボールみたいにして蹴りまくってたんだぜ!ひでェよな!」
『ふふ。ひどいねえ』
「なあなあ、ナマエもなんか技とかないのか?"でんせつのみ"なんだろ!?」
『え?技?うーん・・・ないことはないけど・・・エースに力使うの、止められてるから・・・』
「いいじゃんかちょっとくらい!」


目をキラキラと輝かせて、何かできないのかと自分を見つめてくるルフィ。ナマエは、躊躇いながらもその眼差しに負けてしまい・・・『少しだけなら』と答えてしまった。
するとルフィは食い気味に早く見せろと催促し、当然の流れに少し後悔をしながらも空を見上げたナマエは、広い青空に隠れる白亜の満月を見つけると静かに瞳を閉じ・・・額に三日月模様が浮かぶと、月と星の力によって具現化された弓矢を創り出した。

はい、とそれを見せると、ルフィは興奮したように「かっけェー!!」と興奮気味に声をあげる。


「キラキラして宝石みてェ!」
『ちょ、ちょっと』


キラキラの実の力はいまだに何が起こるか分からない。額に浮かぶ三日月模様に興味がわいたルフィが、それに触れた――瞬間。


「『!!』」


強い光が二人を包み込む。やがて光が消えるとお互い弾けるように尻餅をつき、そして、・・・驚く両者の瞳から――ツウ、と一筋の涙が流れ出た。


「な、んだ・・・」
『っ、この気持ち・・・』


不思議な気持ちだった。心の奥底が震え、そして、一度溢れ出た涙は堰を切ったように2人の頬を濡らした。

・・・ルフィも、ナマエも、出会って間もない。
けれど、ずっとずっと、長い年月もの間、この時を待っていた気がする。

まだお互い子どもだというのに、漸く会えた――そんな気持ちが溢れ出るように、ルフィとナマエは涙を流しながら時間も忘れ、ただただ抱きしめ合った。


「・・・・・・お前らなに泣きながら抱きしめ合ってんだよ」
「てめェルフィ!!おれの妹に手ェ出すなんていい度胸してやがるな!?」


ダダンの家にいない二人を心配して探しにきたエースとサボは、岬で涙を流しながら抱きしめ合う妹と弟の姿を見て首を傾げた。


「うおおおーん!!だ、だっでよ、からだが、かってに・・・っ、ず、っと・・・っ昔、ナマエと、悲しい別れ、した気がしてよぉお・・・!!」
『っ・・・・・・や、っと・・・会えたんだよぉ・・・!』


「「はあ?」」


その後も二人はなぜ突然泣いたのか、そしてあの光が何だったのか何も分からないまま・・・試しにルフィがナマエの額に触れても、同じことは起きなかった。
エースやサボに説明しようにも説明が難しく、本能で泣いたとしか言いようがなく・・・結局、ルフィの前とはいえ力を使ったことがバレたナマエがエースと、そしてサボにまで叱られるハメになり、その記憶は二人の頭の中からすっかり消えていた。




















ドンドンドン♪


ドンドンッドドン♪



♪~♪




















「楽しいなァ、月の女神セレーネ !」


『ふふっ!わたしもだよ、太陽の神ニカ!!』








   



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