EPISODE.28



「一発かまそうカイドウ!6人中何人生き残れるかねェ?マーマママハハ!」
「おいおい、あの女は殺しちゃならねェんだろ?・・・ちったァ手加減しろよ」


――四皇2人を同時に相手するのには限界があった。
ローの能力でどちらかを下のフロアに移動出来ないかとキラーが案を出すが、そもそも向こうの覇気が強すぎて動かす事すら出来ないそうだ。
「だったら分解だ」と、キッドが不敵に笑っていると・・・・・・目の前にいるカイドウとビッグ・マムが武器を構えだす。


「足腰衰えてねェだろうなババア!」
「誰に口聞いてんだ小僧!」
「・・・!ダメだろこりゃ!」
「ムリだ避けきれねェ!!」


「「"覇海"!!!!」」


カイドウとビッグ・マムが放った衝撃破を、自ら前に出て受け止めたのは――ゾロだった。
ゾロと、そしてローの能力によって間一髪、回避することが出来た一行は辺りを見渡しその威力に思わず唾を飲み込んだ。一瞬とはいえ受け止めてくれたゾロがいなければ、全員やられていたかもしれない・・・抉れるような地面の跡はその威力を物語っていた。


『ゾロ、大丈夫!?』
「うっ・・・たぶん、な・・・・・・」
「!麦わら屋は?」


覇気を取り戻したルフィは、ゾロがやられた事に怒り狂いカイドウに向かって攻撃を仕掛けていた。
――"何か"を感じ取ったカイドウは、それまで全て受け止めていたはずの攻撃を初めてかわし、「避けたな」と口角を持ち上げるルフィ。本能で避けたということは、少なからずルフィの放った攻撃に恐れたということになる。
無敵と謳われたカイドウに攻撃が通じることが分かり、ルフィが戦っている間、キッドは集めた金属類を使って箱状のものを作り出し、ローに差し出した。
能力を使ってその箱の中にビッグ・マムの横にいるゼウスを移し入れる事に成功すると、ナマエに治癒をしてもらったゾロはプロメテウスを、そしてキラーがナポレオンに攻撃をし、ビッグ・マムから突き離す。
足場のなくなったビッグ・マムは地面に落ちていき、ゾロとキラーはビッグ・マムのところへ戻る隙を与える事無く、攻撃をし続けた。


磁気パンクピストルズ!!」
「何だい!?あいつらを引き離せばおれを倒せるとでも思ったのかァ!?」
「!!」


ビッグ・マムの拳がキッドに向けられる――が、それを両腕で防ぎ止めたのはナマエだった。強い衝撃に一瞬、押し負けそうになるも足に力を入れて踏ん張り、動きが止まったビッグ・マムの手首に金属類を装着させたキッドは口元に弧を描き、「反発リペル」と能力を解放する。

キッドの左腕の金属とビッグ・マムに付けた金属が技の名前通り反発しあいビッグ・マムは空高く吹き飛んでいく。


「"タクト"」


ROOM内にある岩を、宙に投げられたビッグ・マムにぶつけ鬼ヶ島から突き落とした。


「バカが!今さら岩なんてぶつけようが・・・・・・!」


――忘れているようだが今のビッグ・マムにはゼウスもプロメテウスもいない。つまり飛行手段が無いのだ。
空を飛んでいる鬼ヶ島の下は――海。悲鳴を上げながら落下していくビッグ・マムを助けに行こうとするプロメテウスに、ゾロは何度も技を繰り出し阻止した。
ゼウスは相変わらずキッドの作った箱に捕らえられたまま・・・助けを求める声も、届いてはいない。


「かはッ・・・っぐ・・・!!」


――プロメテウスに斬撃を繰り出していたゾロの口から突然、血が溢れ出て動きが鈍くなってくる。

いくらナマエに治癒されたからといって、ナマエの能力は回復速度を上げるだけですぐに回復されるわけではない。
先ほど喰らったカイドウとビッグ・マムの攻撃によって全身の骨が砕けていてもおかしくはない状況のなか、それでも攻撃を続けるゾロを見て、なぜそこまで動けるのかとローは目を見開かせた。


「おい海賊狩り!プロメテウスを解放してやれ!」
「!」

『っ、トラファルガー!』
「分かってる!」


ルフィと戦っていたはずのカイドウが、ゾロに向かって攻撃を仕向けてくる。――ゾロはもう、カイドウに立ち向かう力は残っていない。
ローはROOMを張るとゾロとナマエの位置を変え、すでに身構えていたナマエは覇気を纏わせた拳をカイドウに向けて振り上げた。


「ウォロロロ!ロジャーの娘か・・・面白い、来るなら来い!!」
『っ、――』


カイドウの金棒と、ナマエの拳が激しくぶつかり合う。――"流桜"を纏わせていたナマエは、直接触れてはいないもののカイドウの金棒に纏ってある覇気がただの覇気ではない事に気付き、目を見開かせた。


『(!まさか・・・)』
「ウォロロロ!何か気づいたようだが・・・気づいたところで、てめェには"まだ"早ェんだよ!!」
『あ、がはッ・・・!!』
「ナマエ!!」


――力で押し負けたナマエの鳩尾に金棒が打ちつけられ、勢いよく後方へと吹き飛ばされていく。岩場に激突する寸前にゾロによって受け止められたナマエはこれまで経験したことのない重い攻撃に目を見開かせ、咳き込んだ。
骨が何本か折れたのか息を吸うごとに鋭い痛みが身体中に走る。

――攻撃がなくなったプロメテウスは涙を流しながら海の方へと飛んでいき、それを視界に捉えたゾロがナマエを支えながらしまった、と舌打ちをする。


「おいトラ男!あの炎がビッグ・マムを助けちまうだろうが!!」
「行かせてやれよ・・・誰か死ぬくらいなら作戦失敗でいい・・・!」
「!」

「目的は2人を離すことだ!」
「そこまでする必要はねェ!ファッファファ」
「ビッグ・マムは任せろ!!」


キッドはキラーを連れてビッグ・マムを迎え撃つため、島の端の方へと向かった。
いまだ咳き込むナマエは、顔だけを動かし、覇気が弱まってるルフィを探す。

――カイドウによって倒されたルフィは意識を失っており、すぐに助けようと立ち上がろうとするが・・・足に力が入らず、その場で座り込んで再び咳き込んでしまった。口元を抑えた手のひらには血がこびりついており、せっかくビッグ・マムとカイドウを突き離したというのに状況は深刻さを増すばかり。


「――ナマエ」
『っ、』


不意に名前を呼ばれ、目に涙を溜めながら顔を上げるとそこには・・・自分よりも重傷を負っているはずのゾロが、凄まじい覇気を纏いながら立っていて。


「これからやるのがハァ・・・ハァおれの・・・限界」
『ゾロ・・・?』
「締まりなく戦っても消耗するだけだ・・・通じねェ時ゃ死ぬ時だろう。・・・ナマエ、トラ男、後のことは・・・頼む!!」
「ゾロ屋・・・!」

「おいカイドウ!そいつはウチの船長だ!まずはこっちの頭を先に潰してもらおうか!!」


鬼気九刀流"阿修羅抜剣亡者の戯"を繰り出したゾロの攻撃は、カイドウの体に完治しないであろう大きな傷を与えた。


「くそ・・・っあのガキ・・・まさかお前も・・・"覇王色"を・・・!?」
「あァ・・・?何言ってやがる・・・!ハァ、ハァ・・・身に覚えが、ねェな・・・!!っ、渾身の一撃だぞ・・・!ハァ・・・ハァせめて・・・倒れて、欲しかった・・・!!」


――どさり、音を立てて倒れていくゾロ。
その背中を見つめるカイドウは、ゾロにつけられた傷、そして昔おでんにつけられた傷跡に触れて口角を持ち上げた。


「充分だろう。この傷は残るぜ・・・!目障りな世代だ・・・」
「おい!ゾロ屋、逃げろ!」
「わざわざ出向かなくて結構だ!!」
「!」
『っ、トラファルガー!!』


目にも止まらぬ速さでローの目の前に来たカイドウの雷鳴八卦が直撃する。

――ルフィも、ゾロも、ローも・・・そこの戦場にいた仲間達はみんなやられてしまった。
唇を噛み締めたナマエは地面についた両手を強く握りしめるとふらつきながらも立ち上がり、目の前で仁王立ちするカイドウを睨み上げる。

・・・ルフィ達の攻撃が効いているのか、息を荒くしながらもカイドウは不敵に微笑むとナマエの首を鷲掴みしそのまま宙に持ち上げた。


『あっ、ぅぐ・・・』
「勿体無ェなァ・・・なぜ力を抑える?"それ"が無けりゃ、お前も存分に戦えたはずだぞ?」
『!!』


カイドウの視線の先には、ナマエがつけている耳飾りがあった。
まともに息もすることができず、目を見開かせたナマエは首にある手を掴んで勢いをつけ顔面に膝蹴りを喰らわせようとするが反対の手にある金棒で難なく受け止められてしまう。


「今のお前の力じゃ"まだ"足りねェ。そうやって抑えてちゃ、意味がねェんだよ・・・!」
『っ、ぅ』
「俺と来りゃァ世界をとれる・・・!あんな威勢だけのガキじゃなく・・・俺と来い!!!」


意識が朦朧してきたその時――強い覇気を背後から感じたカイドウの動きが止まる。


「――お前と?おれも、ナマエも・・・みんな侍が大好きなんだ・・・!誰がお前なんかについていくか、バーカ」
「!!」


立ち上がっていたのは、ルフィだった。


「ハァ・・・まだ・・・"浅かった"・・・!お前の金棒喰らって分かった・・・!覇王色も、纏えるんだろ・・・!?」
「!ウォロロロ・・・一握りの強者だけな!!この女も気づいたようだが・・・もう遅いんだよ、死に損ない!!」


ナマエを捕らえてない方の手で金棒を振り落とした――その時だった。

鈍い音と共に、金棒を"蹴り"で受け止めるルフィ。金棒に直接触れてないというのに弾き返され、体勢を崩すカイドウにさらに追撃は続く。


「ナマエを・・・離せェ!!」
「!!!」


今まで纏っていた武装色とは違う、"覇王色"の覇気を纏ったルフィの拳と蹴りが炸裂する。
触れてないというのにかなりのダメージを与えているカイドウに隙ができたのを見過ごさなかったルフィが目にも留まらぬ速さでナマエを救出すると、意識を取り戻したローの側に下ろした。


「ナマエ、ゾロ・・・トラ男。守ってくれてありがとう。お前ら下へ降りろ」
「!」
「後はおれが・・・何があってもこいつに勝つから・・・!!みんなにそれだけ伝えてくれ!!」



   



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