EPISODE.27
――ルフィ達のいるこの鬼ヶ島は、気づけばカイドウの"焔雲"によって空を飛び、新たな拠点地"花の都"へと向かっていた。
相変わらず意地の張り合いをしながらもルフィ達はカイドウに猛攻撃を繰り広げ、少なからずダメージを負っているカイドウは龍の姿となって空を飛び、ビッグ・マムもプロメテウスに乗ると上空からルフィ達を見下ろす。
「お前らが死んだら何もかも貰うぞ――この島にいるお前らの仲間も一緒にな・・・!」
「マンママーマ!おいカイドウ、間違ってもあの女は殺すんじゃないよ?あれはおれのエモノ・・・殺そうと思ったが、やっぱやめだ。おれはあの力が欲しい!」
「ウォロロロ!あァ分かってる。世界を覆すほどの強大な力・・・俺も興味がある!」
カイドウ、ビッグ・マムのナマエを見る目が変わる。相手は四皇――睨まれただけで物凄い威圧感に襲われるがナマエは臆することせず身構え、隣にいたルフィは瞳を鋭くさせながらナマエを守るように前に出る。
「勝った方が大きく近づく――海賊王にな!」
「海賊王には・・・おれがなる!!」
大きく息を吸ったカイドウが"竜巻・壊風"を出す。凄まじい暴風と共にカマイタチのような斬撃が一行を襲い、避けようにもその範囲は広く、一行は斬撃をかわしながらカイドウに立ち向かった。
「ウォロロロ!海賊王を叫ぶ大馬鹿者――俺を楽しませてみろ!侍たちは脆くも崩れ去った。おでんへの忠義だけじゃ未来は開けねェ!ワノ国は――俺が支配する!!」
的が大きいからなのか、それともあえて喰らっているのか・・・真相は定かではないがルフィ達の攻撃はほぼカイドウに直撃していた。
連携攻撃が続いていた途中、鎌で斬撃を放っていたキラーが不覚にも相手に隙を作ってしまい、それを見逃さなかったカイドウは目の前のキラーを噛みちぎろうとする――がルフィの攻撃によって阻止され、「やるじゃねェか!」とどこか嬉しそうに叫ぶと大きく口を開き、エネルギーを溜めていく。
『!まさか、あれは・・・!』
おでん城跡を襲ったエネルギー破。まともに喰らってしまえば致命傷になりかねず、目を見開かせたナマエが加勢に入ろうとするも自身を覆う輝きが弱まっていることに気づき、思わず足が止まる。
まさかと思い空を見上げてみれば、さっきまであった月は厚い暗雲に覆われ隠れており、キラキラの実の力が弱くなっていたのだ。
「熱息!!」
「――焔裂き!」
カイドウの放ったエネルギー破はゾロによって真っ二つに斬り裂かれ、ゾロは再度、自分を空に運んでくれたローの名を呼んだ。舌打ちしたローは「便利に使ってんじゃねェ!」と怒鳴りながらもフィールドを展開するとゾロをカイドウの真上へ移動させる。
「!なんだ・・・!?」
「避けなカイドウ!それはただの刀じゃねェ!!」
「一刀流――飛竜火焔!!!」
ゾロの放った斬撃は竜のように舞いながら、カイドウの頬に一筋の傷を負わせた。
――カイドウは、わずかな恐怖を覚えていた。なぜゾロの持つ刀におでんの気配が乗っているのか・・・と。そうとも知らず攻撃を外した事を悔やむゾロに、目を血走らせたカイドウの標的が決まる。
「ナメすぎたね・・・威鼓!!天満――大自在天神!!」
『!!』
雷雲化したゼウスの全体攻撃はまさに天災とも呼べ、地上にいる全員に雷が落ち、ナマエにも容赦なく降りかかった。ゾロ、ロー、キッド、キラー・・・周りにいた者達は次々と倒れていき、かろうじて立っていたナマエはビッグ・マムを睨み上げると痺れる体に鞭を打ちながら、弓矢を構えるように、手をかざす。
「往生際の悪い女だねェ・・・せっかく生かしてやるって言ってるのに・・・・・・月の力も無ェお前に何が出来るってんだい!?」
『ッ弦月の弓・・・!』
ビッグ・マムの言う通り、キラキラの実の力は弱くなっている・・・しかし元々ナマエの狙いはビッグ・マムへの直接的な攻撃ではなかった。弧を描くように放たれた光の矢は辺り一帯に降りかかる全ての雷を吸収し、空全体が一瞬眩ゆい光に包まれる。
――光は粒子となって空を舞い、地上で倒れるゾロ達を包み込むとわずかな力ではあるが治癒効果が発生した。
「うおおおお!!」
「!?」
目を眩ませていたビッグ・マムに奇襲を仕掛けたのは――弾む男になったルフィだった。
「ッ、麦わら・・・!?てめェなぜ雷が効かねェ!?」
「――ゴムだから!」
「ええっ!?」
「よくもナマエ達を・・・!!」
「熱息!!」
『!ルフィ!!』
ビッグ・マムを攻撃しようとした瞬間、背後で構えていたカイドウのエネルギー破がルフィに直撃する。地形が変わるほどのその威力に目を見開かせたナマエだったが・・・燃え盛る炎の中から咆哮しながら現れたルフィの姿にホッと胸を撫で下ろした。
「炎も効かねェのか?なぜだ!?」
「――根性!!!」
「!?」
「ゴムゴムの――大猿王銃乱打!!」
意表を突かれたカイドウはルフィの猛攻撃を全て喰らい、激しく音を立てて地上へと落下していった。
「!やったか・・・!?」
ナマエの治癒効果によって目を覚ましたキッド達は、気を失い倒れているカイドウを見て驚愕する。
「はあ、はあ・・・ッこれで最後だ、カイド――うっ、あ・・・!?」
「『!』」
トドメを刺そうと再度拳を構えた、瞬間――ルフィに異変が起きる。心臓が大きく鼓動を打ち、口から空気を吐きながら弾む男が解除されたルフィはヒュルルルルと萎みながら地上に落下していき、ナマエとゾロは慌ててルフィの元へと駆け寄った。
――まさかこのタイミングで副作用が起きてしまうなんて。こうなってしまうとこれからあと10分ほどは覇気を使えなくなってしまうだろう。
しかし先ほどのルフィの攻撃がカイドウに全部効いていたとすれば・・・今がまさにカイドウを倒す絶好のチャンス。口角を持ち上げたキッドがいまだ目を覚まさないカイドウに攻撃を仕掛けようとするも上空から放たれた雷によって動きを阻止されてしまった。
「マンママンマ!調子に乗るんじゃないよ」
「!!」
ビッグ・マムの攻撃を金属類で受け止めるキッド。
――後ろで激しい戦いが繰り広げられる中、ルフィの身体を起こしたゾロはその体を強く揺すった。
「ルフィ!動かねェと死ぬぞ!!」
「マンママンマ!なんだ、もう限界かい?よく暴れたね・・・今ここで終わっておきな」
「!」
「――刃母の炎!!」
プロメテウスの炎を纏ったナポレオンの斬撃が、ゾロとルフィに襲い掛かる。
――地面を強く蹴り、ゾロとビッグ・マムの間に割り込んだナマエは覇気と、わずかなキラキラの実の力を拳に纏わせ、頭の上から振り下ろされたナポレオンを両手の平で合わせるように挟んで受け止めた。
熱風が辺りを襲うなかナマエはゾロに向かって『早く、ルフィを!』と叫び、頷いたゾロはルフィを肩に担いでその場から逃げた。
『っ、!』
少しずつ、ナポレオンの刃が顔に近づいてくる。力の差は歴然としているものの、それでも諦めようとしないナマエの目つきにビッグ・マムは物珍しそうに首を傾げた。
「お前・・・なんで逃げ出さねェ?」
『っ、わたしの後ろに・・・っ守るべき人がいるからよ!!』
「はあ?」
「歌姫屋、伏せろ!――カウンターショック!」
ナマエが頭を下げると同時――ナマエの背後から飛び出してきたローがビッグ・マムの間合いに入ると電撃を喰らわせ、ナポレオンとナマエを引き離した。
『ありがとう、トラファルガー!』
「礼なんかよりてめェの心配しろ」
「ウォロロロロー!!」
「『!』」
――突風が吹く。ナマエとローが振り返った先には目を覚ましたカイドウの姿があり、カイドウは空に向かって渦を巻くように上昇しながら、幾つもの竜巻を発生させた。
「天に昇りし風――万物を破壊する竜巻!!」
ビッグ・マムの雷を天災と呼ぶのなら、カイドウのこれは災害というべきなのだろうか・・・。ハッと辺りを見回したナマエは、見聞色の覇気を使ってルフィとゾロの気配を追う。
――2人の覇気は、目の前を渦巻く竜巻の中にあった。竜巻の中には大きな黒い影――カイドウの姿もあり、カイドウは大きく口を開かせると、竜巻によって舞い上がってきた1つの影・・・ルフィに狙いを定め、そのまま口の中へと吸い込んだ。
『ルフィ!!』
まだ覇気を戻していないルフィは抵抗することも出来ず、ルフィを口の中に入れたまま更に昇っていくカイドウを見据えたナマエが怒りを露わにし、その反対側では、ゾロも同様にカイドウに狙いを定め刀を構えていた。
「てめェうちの船長を食ってんじゃねェよ!!」
『わたしの弟は食べ物じゃ無い!!』
「お、おい歌姫屋」
ゾロと同時に叫び、覇気を高めたナマエはローの制止も聞かずに地面を強く蹴り、高く跳躍してカイドウに向かって行く。
尻尾から背中を伝い、頭部分まで到達するとナマエはカイドウよりも上を取り、落下の勢いを利用してそのまま覇気を纏った足で踵落としを決める。
『弟を――返して!』
「!が、な・・・ッ・・・!?!」
「三刀流――黒縄大竜巻!!」
ルフィを想う渾身の一撃はカイドウを真っ逆さまに落としていき、落下してくるカイドウに狙いを定めたゾロがさらに追撃する。ゾロの斬撃はカイドウの鋼よりも硬いウロコに大きな傷をつけ、苦しむカイドウの口の中から飛び出してきたルフィをすかさず救出するナマエ。
・・・意識はまだ戻っていないものの、命に別状はない。安堵しながら地上に降りるとルフィの肩を掴み揺らした。
『早く起きて、ルフィ!』
「っああ・・・ナマエ、と・・・ゾロか・・・」
「――竜巻・壊風!!」
ナマエとゾロはルフィを守りながら風の斬撃を防ぎ、ローやキッド達も避けていく。
――暫くすると攻撃は止み、それまで空にいたはずのカイドウの姿がどこにも見当たらず・・・・・・ナマエは、目の前の煙の向こうにいる人物を見て目を見開かせた。
煙が晴れ、そこにいたのは人間でも、龍の姿でもない・・・人獣型となったカイドウだったのだ。
「おいリンリン!楽しいな」
「マンママンマ!おれも今そう感じていたとこさ」
「ウォロロロロ!」
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