EPISODE.26



20年以上先の未来に次の時代を担う強力な海賊達が新世界へ押し寄せてくる。

俺がもし死んだなら・・・カイドウを討てるのはそいつらだ!



――ルフィとナマエは、侍やミンク族達に守られながら屋上へと続く階段を上る。最後の一段を登り、目の前にある扉をルフィが吹き飛ばせば――そこには、先に到着していたキッドとキラー、ロー、ゾロがいて、その正面にはカイドウとビッグ・マム、そして――カイドウに敗れ、倒れている錦えもん達の姿もあった。

静かに怒りを露わにさせたルフィはゆっくりとカイドウ、ビッグ・マムに歩み寄っていく。


「・・・リンリン。このガキ俺の前で何になると言ったと思う?」
「こいつは生意気なのさ!おれの前でもずいぶん大口叩いてたよなァ?うちの城もぶっ壊しやがって・・・まず詫びろよ、麦わら。そうだねェ・・・その女ナマエをこっちに差し出すってんなら、許してやらねェこともない」
「おい小僧。お前が一体何になるのか・・・俺たちの前でもう一度、言ってみろ!」

「――・・・ナマエ!」


四皇の言葉を無視し、横切ったルフィは背中を向けたままナマエの名前を呼ぶと地面に横たわる錦えもんをゆっくりと起こす。



――お主らを、頼りにしておる。

――ルフィ殿・・・かたじけない!



「ハア、うっ・・・」
「大丈夫か?錦えもん。ごめんなァ・・・遅くなった」
「ぁ、あ・・・う・・・む、無念・・・ッあの世にて、おでん様に――合わせる顔が、ない・・・!」


ルフィに呼ばれた時、既に移動していたナマエは顔を顰めさせると空に両手をかざす。手から放たれた淡い光はドーム状となって赤鞘侍たちを包み込み、少しずつだが傷が癒えていく。

――先ほどまでゾロ達と一緒にいたはずのナマエのスピードを捉えることができなかったカイドウとビッグ・マムがこの時、驚きの表情を浮かべていた事を・・・誰も知る由もなかった。


意識を失っている赤鞘侍たちに治癒を行いながら、中でも1番の深手を負っているお菊に目を向けたナマエは思わず唇を噛み締めた。・・・お菊の左腕が、失われていたのだ。
怒る気持ちを必死に抑え込みながら治癒を終えたナマエは最後に錦えもんに歩み寄り、手をかざして治癒を始める。

――淡い光に包まれた錦えもんがなにか喋ろうとすれば口からは大量の血が溢れ、もう喋らなくていい、そう伝えようとしたルフィの背中は強く掴まれる。


「背負って、くれんか・・・っワノ国を・・・!」
「――バカ!当たり前だろ!友達の国だ!!」
「!!う、ううっ・・・ルフィ、殿・・・っ、かたじけ・・・な、い・・・」

「――おい小僧」
『っ、ルフィ!』
「トラ男!こいつら全員下へ!」


背後から感じる強い殺気。ほんの数秒にも満たない速さで振り下ろされたカイドウの金棒を月の壁ムーン・ウォールで防ぎ、その間にローの能力によって錦えもん達は別の場所へ移動された。

大地が大きく揺れ、その一撃は島全体にまで衝撃を与える。カイドウは自身の攻撃を受け止めたナマエにも驚いていたが、さらに目を見開かせたのが、先ほどまでナマエの後ろにいたはずのルフィの姿が見当たらないことだ。


「!!」


カイドウの頭上にいたルフィは、体の中を流れる覇気を感じ取りながら――ワノ国で起きた、これまでの情景を思い出す。



――お前さんが覇気と呼ぶそれを、ワノ国では流桜と呼ぶ。流れるという意味を持っている。

――おでん様は処刑されもうした!ワノ国の将軍と海賊カイドウの手によって!

――雷ぞう殿はご無事です!

――敵に仲間は売らんぜよ!

――いいか、ゆガラ達は前へ進め!

――えびす町のお調子者があの世へ参るぞ!

――まだ反逆の火は消えていなかったか!

――全船鬼ヶ島へ突入せよ!!




――20年前、おでんがカイドウに殺された日・・・この国は止まったんだろ!?
――死んで笑われていい奴なんているはずがねェ。
――よそ者がこの国守っちゃいけねェのか!?
――お前が言えよ!偉いんだろうが!こんなにすげェ奴らの大将なんだろ!?


















































――カイドウを、倒したい!!





















「――ゴムゴムの・・・業火拳銃レッドロック!!」


流桜を纏ったルフィの攻撃は、あのカイドウをも殴り飛ばした。


「!おいカイドウ、何してる!お前が殴り倒されるなんて・・・あ!?」


不意に空を見上げたビッグ・マムは、いつの間にか頭上で構えるナマエを視界に捉える。
月と星の光は強い輝きを放ちながら掌に集っていき・・・構えるナマエの背景には、未だかつてないほどの輝きを放つ満月と、周りを照らす星々があった。


『流星拳――"月の伊吹"!』
「あぁああーー!!?」


覇気とキラキラの実の力を纏った拳はビッグ・マムの顔面へと落とされる。

大きく大地が揺れ、四皇をたった一撃で殴り倒したルフィと、ナマエの姿を見てキッドやロー達は呆気に取られるも・・・ゾロだけはニヤリと口角を持ち上げていた。


「おれはモンキー・D・ルフィ・・・お前らを超えて――海賊王になる男だ!!」

「ぐううッ・・・」 「ぬ、うゥ・・・」
「ッ俺たちに攻撃が効く・・・?」
「ッこの期に及んで・・・クソガキ共が・・・!」


ルフィとナマエの攻撃を受け、ダメージを受けたことに驚いた様子のカイドウは九里で自身に大敗したあと、ルフィ自身に一体何が起こったのか・・・疑問に思った。こんな短期間でなぜここまで強くなっているというのか。

ルフィを見て、自身と戦える存在であるおでんや白ひげ、ロジャー、シャンクス、ロックスなどを思い返すカイドウはどこか楽しそうに笑いながら、雷鳴八卦を繰り出す。
未来を読んだルフィは避けたつもりだった・・・が、わずかに当たってしまい体勢を崩す。慌ててルフィの元へ駆け寄ろうとしたナマエの背後にはビッグマムの影が迫っており、ルフィに気を取られてしまったナマエが気づいた時には一足遅かった。


『!』
「おれの元に来る気が無いのは残念だねェ・・・"目覚める前"に・・・死になァ!」


ビッグ・マムがナポレオンを構えた、その時――。駆けつけたゾロが錦えもんの技である”狐火流焔裂き”を繰り出し、ビッグ・マムの足元にいたプロメテウスを両断した。


『ゾロ!ありが――』
「ルフィ、ナマエ!一瞬でも気を抜くな!!四皇が2人いるんだぞ!!」
『!』


ゾロが忠告したとほぼ同時、ルフィの目の前で金棒を大きく振りかざすカイドウ。


「ROOM――"シャンブルズ"」


ローの能力によって移動したルフィはカイドウの攻撃に当たることなく、目の前で自身を見下ろすローを見て安堵の笑みをこぼした。


「よう麦わら屋」
「トラ男、助かったありがとう!」
「いいか!おれとお前は同盟を組んだ、同盟ってのは対等なんだ!」
「な、なんだよ急に」


突然胸ぐらを掴むローは心なしか不機嫌そうだ。


「とにかくお前には一言言っておくが・・・!!おれははなっから錦えもんたちを下へ流すつもりだった!」
「んん・・・はあ?」
「それをてめェが・・・!」


――トラ男!こいつら全員下へ!



「まるでおれが・・・ッてめェの命令を聞いたみてェに!!」
「あっ?いいじゃねェかどっちでも!」
「フン・・・よかったじゃねェか麦わら。子分が増えてよ」
「子分?誰が!」
「トラファルガー、お前ついに麦わらの子分になったのかと」
「な・・・なるかァ!!」
「格下が格下につこうがおれにはどうでもいいが」
「「ああ!?格下に言われたくねェ!!」」


ルフィ、ロー、キッド・・・船長同士の言い合いが始まればそれまであった緊迫感はどこかへ飛んでしまっていて。歩み寄るナマエは苦笑いを浮かべ、ゾロとキラーは呆れながらも船長達を待つしか無かった。・・・しかし、敵がそれを待ってくれるわけもなく。


「だべってんじゃねェよ・・・!」
「「「ああん!?」」」
「焼き払え、プロメテウス!天上のヘブンリーボンボン!」



プロメテウスの放った3つの火玉はルフィ達に向かって真っ直ぐと飛んでくる。
睨みつけたルフィは「よし決めた!あいつの技を先に避けたやつ格下」と、突拍子もないことを言い出し、最初は乗り気じゃなかったローとキッドだったが・・・ルフィの「じゃあお前ら格下!」と言う言葉に引き下がることができず結局はその勝負にノることになった。


「勝手にやってろ!」
「おれはどうでもいい!」
「早く逃げろよチキン野郎」
「早く避けろ、ヘタレ!」
「ああ?」

「おい、来るぞ!!」


ゾロが叫ぶも、三人はその場から逃げようとはしなかった。堂々と腕を組み、物凄い勢いをつけてやってきた火玉を――ほぼ同時に顔面スレスレのところで避けた。
しかし火玉は三人を巻き込んで爆破を起こし、吹き飛ばされていくルフィ達。


「「「うわぁあーーー!!?」」」
何やってんだお前ら!!
『あははっ。引き分けだね、あれ』
「冷静に審判くだしてんじゃねェよ!」


お腹を抱えながら笑うナマエにすかさずツッコみを入れるゾロ。四皇を前にしてゲームみたいなことをしだす海賊なんて、どこを探してもルフィ達だけだろう。
・・・とはいえ、ビッグ・マムの攻撃をモロに喰らってしまったルフィ達のダメージは大きく、ふう、と一通り笑って息を整えたナマエは遠くにいるルフィ達に向かってパチンと指を鳴らし、治癒の力を放った。


「うお!?な、なんだこれ光ってやがる」
「・・・歌姫屋か」
「ハハ!もう痛くねェ!!サンキュー!ナマエー!!」



   



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