EPISODE.25



フロア内はまさに大混戦・・・ルフィはナマエ達にビッグ・マムを託すとカイドウと錦えもん達の待つ屋上を目指して行った。


「手を貸せ、ナマエ!」
『!』


敵に扮していたジンベエに突然呼ばれたナマエは驚きながらもジンベエが見つめる先――フランキーの背後から攻撃を仕掛けようとするビッグ・マムを視界に捉えるとすぐに状況を理解し、頷く。
二人は強く地面を蹴って高く跳躍するとナマエはビッグ・マムの左手を、そしてジンベエはナポレオンを構えている右手を捕らえる。


「あ?」
「腕を借りるぞ!――魚人柔術・・・"渦潮一本背負い"!!」
『はあぁあーー!!』

千紫万紅ミル・フルール――"大飛燕草デルフィニウム"!」


ナマエとジンベエは息の合ったコンビで同時にビッグ・マムの両腕を使い一本背負いを決めた。
床には事前にロビンが用意した幾つもの"手"が咲いており、レールのように敷かれた手の上に倒れたビッグ・マムは物凄い勢いでそのまま誘導されるように城外へと転がされていき・・・あっという間に姿が見えなくなった。


「いかが?」
「想像以上!もっと怒って帰ってくるぞ」
「ふふふ」
「本当に怖い女じゃ、ハハハ!」
「悪い!ありがとよナマエ、ジンベエ、ロビン!」


ぐっと親指を立てるフランキーに頷いたナマエは、ジンベエ達にこの場を任せると気がかりであったサンジの元へと向かった。――覇気を辿っていくと瓦礫の中からサンジを見つけ、あの攻撃をまともに喰らったというのに大きく目立った外傷はどこにもなく、一先ず安堵するナマエ。


「鳥野郎・・・腹に風穴が開くと思ったぜ!ムカつくほど頑丈なスーツだ」
『サンジー!』
「!!ッ、ナマエちゃん!?」
『よかった、無事で・・・!』
「!ま、まさかおれを心配してここまで・・・!?」


変身を解くと同時にやってきたナマエを視界に捉えたサンジは「これが真実の愛」と感極まったのか大量の涙を流していた・・・。
そんなサンジを気にもとめず歩み寄ったナマエは『怪我はない?』と確認するようにサンジを見上げ、いまだその素顔に慣れることができず、ましてや至近距離にいるナマエの姿にサンジの鼓動は早まるばかり。・・・此処は戦場だというのに今のサンジにとってはまるで天国のように思え、当たり前のように鼻からは噴水のように血が噴出してしまった。

鼻を抑えながら、これ以上は生死に関わると慌ててナマエから視線を外そうとした――その時。不意にナマエの頬がほんの少し赤く腫れている事に気付いたサンジは、空いてる方の手でナマエの頬に触れる。


「ナマエちゃん、こ、これ!ど、ど、ど、どど・・・!?」
『ああ、これ?ちょっと油断しちゃって』


掠り傷だから大丈夫だよ、と微笑むナマエの背後には、ナマエによって倒されたであろう海賊たちが床に転がっており・・・しかし、それでもサンジの怒りが収まる事は無かった。メラメラと炎のように目を燃やせたサンジは月歩を使って空高く飛んで行く。


「ナマエちゃんに怪我させたクソ野郎ども覚悟しやがれェ!!――焼鉄鍋ポアル・ア・フリールスペクトル!!」

"ぎゃあぁあーーー!?!?!?"


海賊らはもうすでにナマエによって戦闘不能になっているというのに・・・炎をまとった足で、無数の蹴りを放つサンジ。その後もサンジの猛攻撃は続き、一人置いて行かれたナマエは呆気に取られながらも元気そうなサンジを見て安堵の笑みをこぼすとフロアの中央で戦う"異色の戦力"――ナンバーズの元へと向かった。
ナンバーズはカイドウがパンクハザードから買い取った人造古代巨人族で、強いだけではなくその大きさも相まって、フロアにいる侍たちではまず敵う相手ではないだろう。
瞳を鋭くさせたナマエは建物や壁を伝って空高く舞い上がると目の前で暴れ狂う五鬼に狙いを定める。


「ゴキキキ!」
『っ』


振り回された金棒を、空中でくるりと身を翻し紙一重でかわす。そのままナマエは落下の力を利用して覇気と、キラキラの実の力を纏わせた足で五鬼の脳天から踵落としを喰らわせた。


『!』


目の前で倒れていったのは五鬼だけではなく・・・七鬼と、十鬼も、同じようにして倒されていた。
五鬼にしか攻撃を与えなかったナマエは着地する寸前に視界に映ったルフィと、飛び六胞の1人、X・ドレークを見つけ首を傾げる。

――ルフィはともかくとして、なぜドレークが自分の味方であるナンバーズを攻撃したのか・・・その意図は定かではないが、ドレークに何かあったのは確かなようで。
次々と倒されていく強敵ナンバーズを見たヒョウ五郎達は心強いルフィの仲間に歓声を上げている。


『ルフィ』
「そう甘くなくてよ・・・上に行きてェのに、厄介な奴らばかりいやがる」


てっきりもう屋上へ行ったと思っていた弟の姿に声をかければ、ルフィは悔しそうに天井を見上げた。

――途中で合流したゾロと共にカイドウの空けた穴を目指し城内を登って屋上へと向かおうとしたそうなのだが・・・飛行能力者や最高幹部達に邪魔され、なかなか思うように抜け出す事が出来ないそうだ。

話しながらも地上に着地したルフィとナマエに続くように、目の前に降りてきたドレークは2人を見据えると意を決したように口を開く。


「麦わらのルフィ!訳あって、俺は孤軍!頼む・・・お前達と共に戦わせてくれ!」
「・・・はあ!?」


ドレークは見るからに満身創痍で、息も荒く、立っているだけでも辛そうだ。・・・ドレークの言葉は麦わらの一味にも聞こえており、皆が疑いの眼差しを向ける中――ルフィは真っ直ぐとドレークを見つめる。


「お前は知ってる。カイドウを倒してェのか?」
「理由は話せんが、目的は一致している!」
「んんん・・・なァどう思う?ナマエ」
『え?う、うーん・・・』


元々敵だったのは事実・・・しかしとても嘘をついているようには見えず・・・一体どうするべきなのかとルフィとナマエが頭を悩ませていた、その時――刀を構えたゾロはドレークに攻撃を仕掛け、「この期に及んでつまらねェ手を使うな」と怒号をあげた。


「ルフィ、ナマエ!こいつはホーキンスと同じカイドウの傘下に落ちたヤツだ」
「っ!だが今はその立場を追われた!」
「クッ・・・追われたからコッチにつくだと!?」
「んな尻軽野郎、信用できるか!」
「ルフィには近づくな!X・ドレーク!海賊の世界にも仁義はあるぞ!」


ゾロに続くように、麦わらの一味から抗議する声が聞こえてくる。しかしルフィは麦わら帽子を被り直すと、「いいよな?」と再度隣にいるナマエに問いかけ、ナマエは『それは船長のルフィが決める事だよ』と肩を竦めた。


「――いいぞ、味方で」
「なっ・・・いいのか!?」
「いいぞ」
「「よくねェ!!」」
「黙ってろ船長!このボケ!」
「おれはカイドウをぶっ倒しに行くだけだ。お前も好きにしろ」


それだけを言い残し、他の仲間達にフロアを任せたルフィはナマエとサンジ、そしてジンベエを連れて数多なる敵を掻い潜りながら、城内から屋上を目指し進んで行った。


「今何階だ!?」
「この階段を上れば3階!屋上は5階の、その上じゃ!」
「よーし、錦えもん待ってろよ!」
「・・・・・・っ!?これは・・・おい、おまえら聞こえるか!?」
「え?なにが?」
『なんも聞こえないけど・・・』

「んなはずは・・・3階から聞こえるだろ!?」


急に足を止めたサンジはそう言うと集中するように目を閉じた。――聞こえてくる三味線の演奏、そして女性の助けを求める声に、やっぱり、とカッと目を見開かせる。


「重大な用事ができた・・・お前らは先に行ってくれ!」
「!おいサンジ!」
「野暮用済ませたら後を追う!お前ら、おれのナマエちゃんを絶対傷つかせるんじゃねェぞ!?」


サンジは何度もナマエのことを言いながら、颯爽と3階フロアに向かってしまった。


「ふっ・・・さすがルフィの仲間。強敵でも察知したのかのぅ」
「しょうがねェなァー・・・」
『きっとサンジにも何か考えがあるんだよ。わたし達も先を急ごう!』
「ああ!」


――それぞれが勝手なことをやっているようできっちり必要な仕事をする。そんな麦わらの一味に、自分も早く慣れなくてはと一人笑みをこぼしたジンベエは、先を走るルフィとナマエの後を追った。


「にしてもサンジ、どこ行ったんだろうな」
『――今は・・・何か、強い敵と戦ってる』
「!分かんのか?ナマエ」
『何となくだけど・・・一度覚えた人の覇気ならある程度のことは。3階にいた強敵を食い止めてくれてるみたい』
「!そうか!おれ見聞色まだまだだな・・・サンジがどこにいるか気配も感じられねェ!」
「ハハハ!本当に強敵の気配を掴んだのならサンジはナマエのように見聞色を使いこなしてるのかもな!」


――話している間に、4階まで辿り着くことが出来た。5階へと続く階段のあるフロアには報告を聞いていたのか待ち構えていたギフターズ達がおり、一斉に取り囲まれてしまうルフィ達。

敵の覇気を察知したジンベエは「どうやらこの階も1人残った方が良さそうじゃ」と身構えると、ルフィとナマエに先に行くよう指示をする。
これまでの追っ手達とは違い周りにいるのは強敵ばかり・・・さすがのジンベエでも敵の数が多過ぎると、ナマエは首を左右に振った。


『っ、ならわたしもここで戦う!』
「早よう行くんじゃ!」


ジンベエがルフィに目配せをすると、それに気づいたルフィがナマエの腰に腕を回し、反対の手で天井の梁を掴んで空高く飛んでいく。
ギフターズ達の上空を飛び越えたルフィは「乾杯するの忘れんなよジンベエ!」と、1人フロアに残ったジンベエに向かって叫び、ナマエを連れて屋上へと向かった。



   



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