EPISODE.24



突き刺されたカイドウは錦えもん達と共に床下まで落下していった。

辺りに砂埃が立ち込めるなか――ヤマトは初めて見る赤鞘侍の姿に興奮した様子でルフィとナマエを見やり、「あいつら強ェんだ」とルフィが自慢げに話していると・・・不意に、クイーンの声がフロア内に響き渡る。


「ふざけるな!無敵のカイドウ様が死ぬわけねェ!援護だ、赤鞘どもを殺せェ!!」


士気を高める海賊達だが・・・最高幹部のジャック、そしてキングはまだどこかに侵入者が潜んでいるかもしれないと辺りを警戒していた。・・・すると予想していた通り、それまで身を潜めていた侍たちがカイドウ襲撃を合図に周りの海賊たちに奇襲攻撃を仕掛け始めた。
――服を脱ぎ、本来の姿となった郷の親分衆を筆頭に侍たちも続々と正体を露にし、あっという間にフロアは戦場と化す。


「よしおれ達も行くぞ!」
「カイドウに追い打ちだ!」

「見つけたぞ――ヤマト!!」
『!』


どこからともなく現れたうるティがヤマトに攻撃を仕掛ける。ルフィとナマエも周りの海賊たちを薙ぎ払い、ヤマトに加勢しようとしたその時――ふと、背後から物凄い殺気を感じ、振り返ってみればそこには怒りをむき出しにした四皇ビッグ・マムの姿があった。


「げっビッグ・マム!今忙しいのに!」
「マッママーマ!やっと見つけたよ・・・麦わらァ・・・!」


その存在をすっかり忘れていたルフィは目を見開かせながらも、向かってくるビッグ・マムを迎え撃つように指をくわえ筋肉に空気を送り込む。そしてルフィの隣にいたナマエに視線を移したビッグ・マムはまるで宝物を見つけたように目を輝かせながら言った。


「お前がキラキラの実の能力者だね・・・!マーママーマ!その力、なんとしてでも手に入れてやる!おれに・・・よこしなァ・・・!!」
『っ』

「渡すわけねェだろ・・・!!ゴムゴムの――象銃エレファント・ガン!!」
「てやァー!!」


互いの拳がぶつかり、衝撃波が辺りを襲う。暫く押し合いが続いていたが、さすがは四皇というべきか・・・不敵に笑ったビッグ・マムが"ほんの少し"力を加えれば、ルフィはいとも簡単に押し出されてしまった。


「マーママッマ!ハハハハ!うちの海賊団に泥を塗ったお前をぶち殺すために・・・はるばる万国トットランドから来てやったよ!麦わら」
「ぐッ・・・」
「麦わら・・・お前はなぜここに来た?まさかカイドウを倒しに来たなんて面白ェことは言わねェよな?」
「・・・ああ、そうじゃねェ!」
「あ?」
「おれは・・・・・・お前もカイドウも、幹部もオロチも部下も――お前ら全員ぶっ飛ばしに来たんだ!!!!


ルフィのその言葉は、フロアで戦っているヒョウ五郎や侍たち、そしてモモの助の耳にもしっかりと届いていた。


全面戦争だァーー!!!!!


ルフィに鼓舞されたヒョウ五郎達は心を奮い立たせるように、刀を掲げた。


「調子に乗ってんじゃねェよ、たかが数百人連れてきただけで・・・マーママーマ!」


ビッグ・マムと、その近くにいるホーミーズ達が声を出して笑う・・・が、その笑い声も、突然鳴り響くスマシからの報告により失われる事になる。

裏口より数千人の侍たちが城内へ侵入――。

その報告はあらゆる場所で待機していた警備兵から送られ、クイーンが持っていた幾つものスマシは慌ただしく鳴り響いた。水面下で動いていた錦えもん達の計画は見事、成功を果たしていたのだ。

マイクを手にしたクイーンは映像電伝虫を使って鬼ヶ島中の海賊たちに宴は中止、武器を取って襲撃してきた敵を倒せと命令した。


「ウォロロロ!聞こえたぞ麦わら・・・俺をぶっ飛ばす、だと?やってみろ――受けて立つぞ!」


不気味な笑い声と共に、床下から現れたのは――龍の姿となったカイドウだった。世界一の戦力を見せてやる、そう笑いながら天井に向かって飛んで行くカイドウの背中には必死にしがみついている錦えもん達の姿もあり、錦えもんはフロアに立つルフィに笑いかけると、大きな声で地上に向かって叫ぶ。


「ルフィ殿!かたじけない!」
「錦えもん!後で追う!!」


――そのままカイドウは天井を貫き、大きな穴を開け、外まで昇って行った。


『!』


穴の開いた天井を見上げたナマエから、笑みがこぼれる。雲はいつの間にか晴れ――空には大きな満月が、姿を現していたのだ。
月の光がフロアにも届いたその瞬間、ナマエの額から三日月模様が浮かび上がり、体はキラキラと星のように輝きはじめる。いつもよりも強く感じる月と星の力に、ナマエはグッと拳を握ると目の前にいるビッグ・マムを見上げ構えた。


「マーママーマ!綺麗だねェ・・・欲しいねェ・・・その力ァ・・・!」
『誰が、あなた達なんかに――・・・っ、!』


――上階から、何かが落ちて来る。驚きながらも見上げてみればそこにはモモの助を助けようとしたしのぶの姿があり・・・キングによって返り討ちに遭ってしまったのか攻撃を喰らっているようだった。落下しながらも意識を取り戻したしのぶは忍術で空を舞うと、再度モモの助を奪還すべく再び上階の方へと向かっていた。


「うわぁあー!?た、高いいいーー!!」
『!モモ!』


今度はモモの助の悲鳴が聞こえてくる。悲鳴のする方を見上げてみれば、どうやったのかは知らないが錠を外したモモの助が一人宙を浮いていて・・・本人も何が起きているのか分からず混乱状態。龍の姿になっているならまだ分かるが、人間の姿であるモモの助が空を飛べるはずがない。

どういう原理で飛んでいるかは分からない・・・が、みすみす逃がすわけにはいかないと目を光らせたキングが、逃げようとするモモの助に向かって翼を広げ、飛んで行く。
カイドウに代わり処刑しようとするキングの攻撃は――モモの助に当たる寸前で防がれた。まるでそこに"何かが"いるようで、見聞色の覇気でそれが何か分かったナマエは『そういう事ね』と安堵の笑みを向けた。


「!サ、サン五郎!!」


――その正体はジェルマ66のレイドスーツに変身したサンジであった。全身に映像を投影することで擬似的に透明化できることが出来るサンジは、キングの攻撃を防いだもののモモの助を守りながらの戦いは不利だと感じ、すぐに空を飛んでいたしのぶに向かってモモの助を投げ渡す。

投げ飛ばされたモモの助は弧を描くようにしのぶの腕の中に受け止められ、それを見届けたサンジは目を鋭くさせると、自身の首を掴むキングの手を蹴り上げ、間合いを取る。


「おい、モモ!さっきの名乗り・・・シビれたぜ」
「っ、サン五郎・・・ッサンごろ゛う゛う゛」
「ふっ。――しのぶちゃん!モモを頼む!」
「分かったわ!」
「ありがとう、サン五郎!」

「ッ光月家は・・・滅ぶべし!!」


モモの助を抱え、逃げようとするしのぶを追いかけるキング。――しかしそれは、地上から放たれたナマエの光の矢によって遮られた。
本能的に避けた光の矢は空中で強烈な爆破を起こし、それを視界に捉えたキングは当たっていればさすがにタダではすまなかったであろう攻撃に唇を噛み締めながら、地上にいるナマエを見下ろす。


「っこれがキラキラの実の力・・・!」


月の力で出来た光輝く弓矢を構えるナマエ。邪魔をされ、苛立ったようにナマエを睨みつけるキングに――背後から、加速装置を使ったサンジの攻撃が繰り広げられる。

空中で激しくぶつかり合うなか、獣型になったキングは物凄い速さでサンジを嘴の先に捉えると、そのまま地上に向かって勢いよく落下していった。


『サンジ!!』


助ける暇もなくサンジはキングと共に地上に落下していき、激しい衝撃音が鳴り響く。目を見開かせたルフィは額に汗を浮かべていた。


「やべェな・・・今の攻撃は・・・ッヤマ男、モモを任せる!しのぶと一緒に守れ!」
「え、いいの!?」
「"いいの"ってなんだよ!」
「だよね・・・自然だよね!うん、僕の"息子"だもんね!」
「早く行け!!」
「ああ任せろ!父が息子を助けるのは当たり前だ!」

「お、おい!ちょ、ちょっと待つでありんす!!」


気合いを入れながらヤマトは目の前のうるティに目もくれず、踵を返すとしのぶとモモの助の元へと走っていき、完全に無視されたうるティもその後を追いかけに行った。
敵がいなくなり、ルフィがサンジの元へと向かおうとした矢先――道を遮るようにして現れたビッグ・マム。


「逃がさねェよ麦わらァ・・・!」
「!」
「麦わら・・・お前だけは絶対に逃がさねェ!」
「クソ!サンジのところに行きてェのに・・・!」
『――ルフィ、ここは任せて』
「!ナマエ!?」
『今のわたしなら、戦える・・・!』


キラキラの実の力が本領発揮される満月の夜――星のような光を自身の周りに纏わせながら、ナマエは目の前に立ちふさがるビッグ・マムを睨み上げた。


「マーママーマ!お前に相応しい死に様を用意してやる・・・惨めな最期をねェ・・・!――威国!!」


大型の両刃剣・ナポレオンを振るい、斬撃がやってくる。ルフィの前に立ったナマエは高く跳躍すると両手をかざし、手のひらに月と星の力を集わせた。


星の導きスターダスト・レイ!!』


星のように輝く光は斬撃を包み込むと粒子となり、空中で散らばっていく。――耳飾りによって力は制御されているというのに、それでも四皇の攻撃をいとも簡単に防ぐことが出来た事に周りの海賊たちは驚愕し、そしてビッグ・マムはなぜか嬉しそうに笑いだした。


「マーママーマ!ますますお前をおれのモノにしたくなったよ・・・!けど、今度はそうはいかないよ――来い、ゼウス!!」


・・・呼ばれたゼウスはいつまで経ってもビッグ・マムの元に現れない。一体どこへ行ったのか、ビッグ・マムが捉えた視界の先には――ゼウスを抱えながら逃げるナミの姿があった。
ゼウスを奪われたビッグ・マムの標的はすぐにナミへと変わり、ナマエとルフィが助けに入ろうとした――その時。


「おっと、何か轢ぃちまったか?・・・まあいい、"花"を轢いてなきゃな」
「はい斬っちゃいました」


どこからともなくバイクに乗って現れたフランキーはそのままビッグ・マムの顔面を轢き、ブルックの攻撃はゼウスを真っ二つにさせた。
ビッグ・マムは気を失うように倒れていき、死を覚悟していたナミは目に涙を浮かべながら助けてくれたフランキーに抱き着いたのだった。




   



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