EPISODE.23



「それはおれが貰うっての!あいつら・・・!」


ライブフロアにはカイドウと百獣海賊団の最高幹部、そして和服でめかしこんだビッグ・マムの姿があった。


【古代兵器の存在は世界に恐怖と戦争をもたらすだろう・・・覚悟しろ。それこそが俺たちの望む暴力の世界――!】


古代兵器――それは神の名を持ち、世界に3つあると云われている。
"プルトン"、"ウラヌス"、"ポセイドン"・・・カイドウ達と同じライブフロアで敵に扮していたロビンとジンベエは表情を曇らせた。
カイドウ達がもし古代兵器を手に入れ、そして月の女神セレーネに選ばれたナマエがその力を解放してしまえば最後――世界の均衡は崩れ、一気に破滅へと向かう。大仰、と思われそうだがこれは間違いない事実であった。


海賊たちが歓声をあげるなか、カイドウはオロチの部下達に告げた。

このワノ国は海軍でも世界政府でも容易に手が出せない、滝に囲まれた天然の要塞――武器工場もさらに増やし、花の都の者たちも労働力にすればあらゆる海賊たちにとってここは"楽園"と呼べる無法地帯になるであろう、と・・・。

オロチの部下が困惑するなか、カイドウの横でそれまで黙っていたオロチが口を挟む。


【おいカイドウ待て!花の都はおれのおひざ元!!てめェ誰のお陰で今まで武器を・・・!!】

『!』


――オロチの首元に閃光が走る。
オロチはカイドウによって首を跳ねられ、画面の向こうは騒然としていた。
・・・もはやカイドウにとって"光月家"も"黒炭家"も眼中には無く、カイドウと共に海賊になるか、それとも今ここでカイドウ達に挑んで"死"を選ぶか・・・・・・究極の選択を迫られるオロチの部下たち。
突如として主君が消されてしまい狼狽えるオロチの部下達に、「さぁ5秒で決めろ」と、背後にある太い丸太を叩くカイドウ。


・・・その丸太の中央には小さな子どもが括り付けられており――ルフィとナマエは目を見開かせた。そこにはカン十郎に捕らわれたモモの助があったからだ。殴られた顔は大きく腫れ、身体の至る所に傷を負っている。


【これから来る世界の大戦に向けてこの国を海賊の帝国に変える!本業の遠征も増えるだろう!!今夜この鬼ヶ島を――花の都に移し!!ワノ国は滅ぶ!!】

『!あれは・・・!』
「モモじゃねェか!?モモーー!!」
「!おい声がでかい!!」
「あ」


思わず身を乗り出してしまったルフィの足元にある天井の板が外れてしまい、そのまま下の階へと落下してしまった一行。
姿が露わとなり、再びカイドウの部下達に追われながらもルフィ達は急いでヤマトの誘導のもと、モモの助の待つライブフロアへと向かった。


【国の名は新鬼ヶ島!将軍は我が息子、ヤマトだ!】

「ッなってたまるかァクソオヤジ!!」
「早く案内しろ!モモが殺される!!」

「ヤ、ヤマト様がいたぞー!!」


追っ手を倒しながら、ナマエはヤマトに現在の状況――モモの助の事、そして錦えもん達の事を話した。おでんの息子である光月モモの助も、そしてその家来であった赤鞘九人男も皆、生きている――そう伝えればヤマトは「えええ!?」と驚きながらもすぐに笑顔を咲かせ、そして目の前で敵と戦うナマエの背中に抱き着くとそのまま両脇に手を差し込み、抱え上げた。


「本当にあの日見た赤鞘の侍たちが、皆・・・ッ!?」
『ちょ、ちょっとヤマト、降ろし・・・っ』
「みんな生きてるなんてすごい・・・!すごいぞー!!信じられない!」


ナマエを抱きながらくるくると回ったヤマトは「早く行こう、モモの助が待ってるぞ!」と、ルフィも抱えて廊下を走り出す。


「お、降ろせよヤマ男!」
「ヤマ男?なんだよそれ」

「ヤマト坊っちゃまと麦わらのルフィ、ポートガス・D・ナマエがフロアへ向かっておりますー!!」


どこもかしこも光画が繋がれているのかライブフロアは中継されたまま、状況は手に取るようにわかった。

――選択を余儀なくされていたオロチの部下はカイドウに平伏したのか歓声をあげており、そしてカイドウは、捕まっているモモの助に問いかける。

お前みてェな根性なしがあの光月おでんの息子であるはずがねェ・・・お前は誰だ、と。

・・・この処刑は古いワノ国を終わらせるためのもの。思い返せば20年前、燃えるおでん城のなか、モモの助はカイドウの"質問"に答えることはできなかった。怖くて悔しくて悲しくて、ただただ泣くことしかできなかったのだ。


――20年前と同じ状況に、モモの助は泣きそうになるも必死に堪えていた。ここで泣いてしまえば、自分は"あの頃"から何も変わっていない事になる。


【お前がもし光月おでんとトキの息子じゃねえんならすぐに処刑を取り止めよう。面目ねえ・・・それはとんだ濡れ衣だ。だがあくまで息子と名乗るなら――おでんと同じ運命を辿ることになる】


――カイドウは、そんなモモの助を見て試すようにそう問いかけ、周りの海賊や部下たちが嘲笑う声が響き渡る。

・・・ここは嘘をついてでも生き延びてほしい。
ライブフロアに紛れている侍たちは皆、それを願った。今すぐにでも助けたいところをグッと堪えながらモモの助を見守る。・・・しかし、モモの助の出した答えは、皆が求めるそれではなかった。


【っ・・・モモは、天下無敵を表す言葉!!拙者の名は光月モモの助!――ワノ国の将軍になる男でござる!!】


――モモの助の強い言葉は、廊下を進むナマエ達の耳にもしっかりと届いていた。

もうすぐフロアに着くというヤマトの言葉にニッと口角を持ち上げたルフィはヤマトから離れると「これ外すぞ、約束だ」と両手首に嵌められた錠を掴む。
頷いたヤマトは直前になって怖気付いたのか、念のため、取り外した後はすぐ遠くへ投げてくれとルフィに伝え、そうしている間も映像からはカイドウの怒号とモモの助の泣き声が響き渡り、目を見開かせたナマエは目の前の壁と向き合うと覇気を纏った掌を壁に向けて、大きな穴を開けた。

――穴の向こうにはカイドウ達のいるライブフロアが見える。


「な、なんだぁ!?」
「か、壁に穴が!?」


静かに深呼吸を繰り返したルフィは会得したばかりの流桜を使い、ヤマトの錠を外してみせた。そしてそれをナマエが開けた穴の向こうへと放り投げた瞬間――さすがに爆発しないと思っていたヤマトの期待は呆気なく崩れ去る事となる。
二つの錠は物凄い火力を帯びて大爆発をし、ライブフロアを爆炎に包み込んだのだから。


「チクショーあの牛ゴリラめー!!!僕を殺す気だったァーー!!」


爆風に巻き込まれたルフィ達はライブフロアへと吹き飛ばされ、涙を流しながらも華麗に着地をしたヤマトは上階にいるカイドウを睨み上げる。


「ッよく分かった!あいつはもう、親でもなんでもない!」
「ん!?ぼ、ぼぼぼ坊っちゃま!?」
「僕がこの手でケジメをつける!!」
「!おめェの仕業かバカ息子!!」
「うおおおー!クソ親父ー!!」
「!待て、ヤマ男!」


金棒を構えたヤマトが、真っ直ぐとカイドウに向かって走り出そうとする・・・が、慌ててルフィが腕を伸ばし、それを阻止した。
ルフィは囚われているモモの助を見上げると、ヤマトに大人しくするよう伝える。


「――・・・間に合ったけどよ、おれでもナマエでも、ヤマ男でもねェんだ!」
「えっ」
『この決戦を始めるのは、わたし達じゃない・・・!』


――ナマエは、段々とこのライブフロアに近づいてくる"8人"の覇気に確信の笑みをこぼした。


「!てめェら飲んでる場合じゃねぇぞ!武器を取れ、討ち入りだー!!」


クイーンの声が木霊する。裏口に回っていた錦えもん達が、カイドウ達の意表をついて背後から奇襲をかけたのだ。
応戦しようと構える幹部達を薙ぎ払う錦えもん達の標的はカイドウにしか向けられていない。





――名を捨てろ。

――知恵を捨てろ。

――この一撃に命を乗せろ!



目の前にいるのは、赤鞘侍たちだというのに。
カイドウの視界には、まるでおでんがいるように映っていた。


「!おでん・・・!?」


「二度と来るな――ワノ国へ!!」



"スナーーーーーーッチ!!!"



――錦えもんたちの渾身の一撃はカイドウに直撃し、上階から、その巨体を突き落としたのだった。



   



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