EPISODE.22



「てめェら・・・ブッ殺してやる!!」


ページワンはルフィが、そしてうるティはナマエが相手となり、双方の激しい戦いが繰り広げられる。
周りの部下達は入る隙もなくただ見守るばかりで、ルフィから重い一撃を喰らったページワンが倒れた瞬間――同じタイミングで蹴り飛ばされたうるティが倒れていくページワンを視界に捉えると目を見開かせ、そして激昂しながら完全なる獣型へと変化した。


「この野郎・・・よくもぺーたんを・・・!!」
『!!ルフィ!』


うるティの標的は、背中を向けているルフィへと変わる。慌ててナマエが名前を呼ぶも、物凄い速さで移動したうるティは一瞬でルフィの背後を取り、そのまま身動きが取れないよう両手を掴み捕らえた。


「ああぁ!!」
「ぶち壊す・・・!――ウル頭銃!!」


先ほどと同様に額に覇気を集わせ、うるティの攻撃を防ごうとしたルフィだったが――獣型形態になった事により先ほどよりもパワーはうんと増しており、一瞬気を失いそうになってしまうルフィ。
慌てて助けに入ろうとするナマエは、同じく獣型になったページワンによって背後から拘束されてしまい、解こうにもその腕力は凄まじく・・・逃れるどころかビクともしなかった。


「丈夫な頭だなァ!ぐちゃぐちゃになるまで終わんねェからな!」
「がっ・・・ああ・・・ッああああーー!!」


うるティもページワンと同じ腕力を持っており、どうする事も出来なかったルフィが咄嗟に両足を使ってうるティの顔面を蹴り飛ばす。しかしその攻撃は全く効いていないのか、うるティは顔色一つ変えず、ルフィを見下ろしていた。


「てめェ・・・頭かち割ってやる・・・!」
「!」
「ウル頭銃群!」

『――ッ!!』


先ほどよりも強い頭突き攻撃が出されようとする。このままではカイドウと戦う前にやられてしまう。

咄嗟にナマエは少しでも力を解放しようと両耳につけた耳飾りを外そうと手をかけ、ルフィもギア4フォースになろうとした――その時だった。

どこからともなく聞こえてくる下駄の音。それと同時にルフィとうるティの元へ跳躍してきたのは乱髪と顎髭の付いた般若の面を被った謎の人物だった。ザンバラの長髪をなびかせるその姿はまさに"夜叉"のようで、その者は持っていた金棒を構えると、今にもルフィに頭突きを仕掛けようとするうるティの顔面を殴り飛ばした。


「雷鳴八卦!!!」
「『!!』」

「姉貴!!」


一撃――たった一撃で、うるティは意識を失い、倒れていった。
ルフィが解放されたのを確認したナマエは一瞬、ページワンの力が緩んだのを見逃さず、瞳を鋭くさせるとそのままくるりと身体を回転させ、ページワンの頭上に踵落としを喰らわせる。

悲鳴にならない声をあげながらページワンも倒れていき、解放されたナマエはそのまま宙で身を翻しながらルフィの隣に着地すると、目の前に立つ般若面を見上げた。


「麦わらのルフィ・・・ポートガス・D・ナマエ」
「っ」
「・・・そうだよね!?」
『・・・?そう、だけど』


思わず身構えたルフィとナマエだったが相手の纏う空気が柔らかくなり、警戒しながらもナマエが頷けば般若面は感極まったように声を上げた。


「僕は・・・僕は・・・うう〜っ!うわーーー!!アハハハー!!!」
「いい!?」 『きゃ!?』


突然2人一緒に抱きしめられたと思いきや、そのまま両脇に抱えられて連れ去られてしまう。
一部始終を見ていた部下が慌てて後を追いかけて来るが、般若面は止まろうとせず・・・後ろから聞こえてくる「ヤマト様お待ちをー!」という声に、ナマエは首を傾げた。ヤマト――この般若面の名前なのだろうが、なぜ明らかに敵であろう者がルフィを助け、そして今、攻撃もせず嬉しそうに自分たちを抱えて走り逃げているのか。


「なんだお前!?」
「すまない、君たちに危害は加えない!」
「・・・まあ、何の殺気も感じねェけど・・・」
『さ、さっきは助けてくれてありがとう。でもわたし達、先を急いでて・・・っ』
「君たちを待っていた・・・やっと、やっと来たんだ!僕は君たちを待っていた・・・ずっと待っていた!!――僕の名前はヤマト!カイドウの息子だ!」

「ハア!?」 『ええ!?』


驚いている最中、大切な話があると言ったヤマトだったが・・・先を急ぐルフィは眉間にシワを寄せると、脇に抱えられながらも両足を強く床に打ち付け、そのまま背負い投げするようにヤマトを投げ飛ばした。――もちろんナマエも一緒に投げ飛ばされてしまったが、ルフィが伸ばした腕によりキャッチされ、そのまま抱き寄せられる。

一人投げ飛ばされたヤマトは身を翻すと綺麗に着地し、戦闘態勢に入るルフィを見て首を左右に振った。


「待ってくれ、僕はただ話したいだけなんだ!」
「知らねえやつに付き合ってられっか。そこを退け!」
「話を聞いてくれ・・・!」

『・・・・・・ねえ、ル――』


何か事情がありそうだ。少しならば話を聞いてもいいのではないかと、ナマエがルフィに提案を持ちかけようとするするが――既にルフィはヤマトに攻撃を繰り出し、ヤマトは攻撃はしないもののそれらを全て受け流していく。


「5秒で話せ」
「ここじゃ人目がある!よそで話したいんだ」
「じゃあ嫌だ!」
「っ分からず屋め・・・!」
「ゴムゴムの―― 火拳銃レッドホーク!!」
「!」


ルフィの放った炎が、ヤマトを襲う。金棒でそれらを防いだヤマトは・・・面をしている為、表情は分からないものの、感慨深そうにして呟いた。


「思い出すよ・・・あいつとの戦いを・・・」
『!あいつ・・・って・・・?』
「聞いてくれるまで僕は君たちから離れない!」
『ねえルフィ、少しくらい聞いてあげようよ』
「・・・・・・ナマエがそう言うんなら仕方ねェ。だったら10秒で話せ」
「10秒!?無理だ!」
「じゃあ30秒!」
「10分!」


辺りに砂埃が立ち込める中、ルフィ達は追っ手を撒く為、屋根裏に身を隠しヤマトの話を聞くことになった。
5分だぞ、そう言って腰を下ろすルフィにヤマトは嬉しそうに頷き、話し始めた。


「僕はある日、父に・・・光月おでんになりたいと言った」
「・・・はあ?」
「そしたら父にぶっ飛ばされた」
「そんな事なんでおれ達に話すんだよ。しかもこんな時に!」


20年前――ヤマトはおでんの処刑を、伝説の1時間を見たという。あんな立派な侍はいない・・・しかし殺したのはオロチとヤマトの父、カイドウだ。


「悔しかった・・・ッでもそれ以上に!胸が熱くて、涙が止まらなかった!!」


その後、ヤマトは九里で光月おでんの航海日誌を拾った。説明しながらヤマトの懐から出されたそれはずいぶん年季が入っているもので、確かに表紙には【おでん漫遊記】と書かれてある。
この日誌にはおでんの豪快な人生と大切な事が書かれてあり、ヤマトにとっては人生のバイブルそのものだった。・・・もちろん、日誌の存在はカイドウ達は知らない。


世界最強の男エドワード・ニューゲートと出会い、白ひげ海賊団の一員となって海へ出て数々の冒険を繰り広げ、やがてあのゴールド・ロジャーと巡り会う。
ロジャー海賊団に入ったおでんは様々な島へ行き、様々な人と出会い、様々なものを見た。そして知った・・・世界は広い、大きいのだと。


「赤鞘の侍たちも死んだ今、誰かがおでんの意志を継がなくちゃ!だから僕は・・・この国を"開国"するんだ!」


言いながら、ヤマトは被っていた般若の面を外し、着物の袖部分を千切った。――正体が露になった瞬間、ルフィとナマエは思わず顔を見合わせた。・・・男にはないはずの、胸に膨らみがあったからだ。


「君たちと一緒に戦わせてほしい!」
「んん?お前、カイドウの息子って言ったよな?」
「光月おでんは男だろう?だから僕は男になった!君たちは本当に強いな。さっきの戦い、まだ"本気"を出してないだろう?」


ヤマトは、不意にナマエに視線を向けて、顔を綻ばせた。


「――エースを思い出す!」
『!』
「はあ!?お前、エースを知ってんのか!?」
「ああ!彼はかつてカイドウの首を狙ってここに来たことがあるんだ。エースは君たちの事をよく話していたよ」
『・・・そ、う』


唇を噛み締めながら、思わず俯くナマエ。

エースたちがこの島を発つとき、本当は一緒に冒険の旅に行きたかったのだと、話を続けるヤマト。・・・しかし、ヤマトには行けない理由があった。


「光月おでんである僕としては、エースの弟妹の君たちなら僕を船に乗せてくれるはずだと情報を追ってた」
「お前な、光月おでんはみんなが好きなんだぞ!お前がおでんになっていいわけねェだろ」
「んぐぐぐッ・・・そりゃ君の方がおでんかもな!」
「なんだ!?おれの方がおでんって!」
「・・・おでんなのに僕は自由じゃない。――この錠のせいで」
『?』


ジャラジャラと、音を鳴らすヤマトの手首には錠がはめられていた。囚人たちが着けるそれと全く一緒のものだ。

――エースたちと一緒に海へ出たかったヤマトは8歳の頃からこの島に監禁状態となっており、カイドウに「この島から離れたら爆発する」と言われているらしい。
実の親が子を爆破するなど、考えられない。正直ウソかと思っているヤマトだったが・・・万が一を考えると足は竦んだ。なんせヤマトの父は四皇と恐れられているカイドウなのだから。


「取ってやろうか?それ」
「な・・・ええ!?」
「お前よ、ホントにおれ達と一緒に戦いてェのか?おれはお前の目の前でもカイドウをぶっ飛ばすぞ」
「ッ僕がそうしたいくらいだ!幼少期から一体どれだけあいつに殴られてきた事か・・・挑むたび、返り討ちに遭ってきた!」


ルフィは、問いかけるようにナマエに視線を向ける。――ヤマトのその言葉に嘘は無いと感じたナマエはルフィに向かって頷き、頷き返したルフィがヤマトに歩み寄った。


「そっか、分かった。取ってやる」
「いや取るって・・・僕これに20年も自由を奪われて・・・そう簡単に取れるわけ・・・」


【白ひげの頂上戦争から2年――】

「「『!』」」


どこからともなく聞こえてきたのは――カイドウの声だった。続くように海賊たちの歓声が聞こえ、瞳を鋭くさせたルフィ達は天井裏から、下の様子を隙間から覗いてみる。
――丁度真下にある部屋では光画によってライブフロアと中継が繋がっており、息を潜めながら映像に視線を向けるとカイドウが大々的に映っていた。


【ついに世界が動き始めた。"七武海の撤廃"はなにも政府がイカれちまった訳じゃねェ・・・海軍本部の新戦力で俺たちを抑え込めるという自信の表れ。だがのぼせ上った世界政府を尻目に俺たちはこの世で最も強大な力――古代兵器を手に入れる!そのために俺たちは・・・ビッグ・マムと手を組んだ!】
【マーママッマ!カイドウが言った通り、おれ達はある目的のために同盟を組んだ。いがみ合ってりゃ手は届かねえが・・・手を組めばもう射程範囲だ・・・いいかい?お前ら!海賊家業に本腰を入れるよ!俺たちゃついに・・・ひとつなぎの大秘宝・・・】



"ワンピースを取りに行くぞ!!"






   



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