EPISODE.21



アプーを殴り飛ばした事により、ルフィ達だけではなくキッドの正体も明るみに出てしまった。兎丼に捕まっているはずのキッドがなぜここへいるのか・・・上階から見下ろしていたクイーンはあからさまに動揺をし、お玉と主従関係を結んだ事も知らず、此処にはいないババヌキに大声で怒鳴り叫んでいる。


――仲間が傷つけられたこと、キラーの感情が奪われてしまったこと・・・"裏切り"をしたアプーに対してのキッドの怒りは昂るばかり。
何はともあれ、アプーの攻撃から逃れる事が出来たルフィ達が安堵したのも束の間――フロアに、大きな影が押し寄せて来る。


「ハチャチャーー!!!」


頭に2本の角がある、巨人族よりもさらに大きな大男――"ナンバーズ"の八茶がキッド達の前に現れた。

しかし酔っ払っているせいで力を自分で制御出来ていないのか・・・八茶は敵味方関係なく巨大なトゲつきの棍棒を持って暴れ回っており、あっという間にフロアは大混乱。
見境のない攻撃は正面にいたキッドへと向けられ、キッドは周囲から集めた金属で巨大な左腕を作ると八茶の棍棒を受け止めた。

両者一歩も引かない押し合いが続く中――キッドを狙う1人の部下が弓を構える。その矢の先端には爆弾が備え付けられてあった。
八茶を相手にしているキッドは完全無防備。キッドが敵に気づいた時には一足遅く、放たれた矢は真っすぐとキッドへ向かって飛んで行く。


「キッドの首はおれが貰った!」
「!」


――するとどこからともなく現れたルフィが武装色硬化した足で矢を蹴り払い、爆風によってキッドと八茶はお互い弾かれるように飛んでいく。矢を放った敵を殴り飛ばしたルフィは再び走り出しながら叫んだ。


「ギザ男!城に走るぞ!おれ達が今狙うのはカイドウの首だろ!こんな所でもたもたしてる場合じゃねェ!!」
「!麦わら・・・!」

「ハチャチャチャ!」


起き上がった八茶が再度攻撃を仕掛けてくるが、その攻撃はキッドの仲間によって防がれた。ここは俺たちが引き受ける、そう言ったキッドの仲間にルフィは頷くと前へと進み、キッドも後ろ髪を引かれる思いでルフィの後を追う。

――少し進んだ場所で敵を倒していたゾロとナマエもルフィと合流すると、一行は真っすぐと城へ向かって走りだした。


「はあ、全く・・・案の定騒ぎを起こしやがってギザ男!」
「お前が言うなよルフィ」
「ぐっ・・・お前もだろロロノア!!」
「こっそりと潜入だからな、こっからは!」
「俺に命令するな!お前らと組んだ覚えはねェ!!」
「何だとォ!?」
「ああ!?聞いてんのか!?」
「先行くぞ。カイドウの首は俺が取る」

「「あ!!待てェーーー!!」」


いがみ合うルフィとキッドを置いて走り出すゾロの後を鬼の形相で追いかける2人。そんなやりとりを、少し後ろから傍観していたキラーは思わずため息を吐いた。


「作戦も何もめちゃくちゃだ・・・制御不能。ダメだあいつら」
『あ、はは・・・で、でももしかしたらこれを見越しての作戦かもしれないし』
「ファッファッファ。そのポジティブさ、見習いたいところだ」


――これは余談だが、ナマエの言っている事はあながち間違いではなかった。


――それは鬼ヶ島に突入する前の出来事・・・。
作戦を企てる錦えもんに対し、ローは「お前らがどんな作戦を立てようとも正面から乗り込むであろうバカが約2名現れる」とルフィとキッドをバカ呼ばわりし、さらに「バカはいい囮になる。しかもただの囮とは思えねェほど手強い。バカを止めようと大量のカイドウの部下どもが正面に動員される」と、全て見越していたような発言を錦えもんにしていたのだ。

・・・まさかナマエとゾロも騒ぎの発端になるなんて、さすがのローも予測できていなかったようだが。


「――ドーン!!」


逃げている最中、太鼓の音と共に爆発を起こし、吹き飛んでいくルフィ、ゾロ、キッド。
足を止めたキラーとナマエが後ろを振り返ればそこには音楽を奏でるアプーの姿があった。


「アッパッパッパー!」
「くそ!またあいつか」
「あんな遠くから・・・!」
「ッ、アプーあの野郎・・・!」

「構うな!やつの思うツボだぞ」
『先を急ごう!』


闘おうとするルフィ達を抑制したキラーは、続けて攻撃を仕掛けてこようとするアプーを振り返るとルフィ達に向かって「耳をふさげ」と伝えた。理由は分からなかったがキラーの言われた通り耳を塞げば、ただ音の振動が体中に響くだけで――先ほどのような爆発は起きなかった。

キラー曰く、アプーの攻撃範囲は音が聞こえる距離・・・つまり聞こえたら逃れる術は無い。奇襲に気を付けてさえいれば、それほど怖くない相手なのだ。

それからルフィ達は敵と戦いながらも無事、金色神楽フロアを抜け出す事が出来た・・・のだが。キッドとキラーはともかくとして、さっきまで一緒にいたはずのゾロの姿がいつの間にかいなくなっていた。またいつもの迷子が出てしまったのだろうが・・・とはいえ皆の目的地は同じカイドウのいる奥の城。いずれ落ち合うだろうと、ルフィとナマエは奥に進み続け、その間もルフィは習得したばかりの"流桜"を実戦で慣らすように、目の前に立ちはだかる敵をなぎ倒していった。


「わあああーぺーたーん!!ぺーたんがあちきを守るためにーー!」

「『!』」


ある程度の敵を倒し終えたその時・・・物凄い勢いで中央にある階段から誰かが滑り落ちてくる。
砂埃が立ち込める中、ルフィとナマエの前に現れたのは――側頭部から大きな二本角が生えた女――うるティと、その下敷きとなって気を失っている男――ページワンだった。2人はこれでも"飛び六胞"と呼ばれる中の1人で、覇気の強さから只者ではないと察したナマエとルフィが身構える・・・と、うるティは一度は視界に入ったルフィ達を睨み上げたが、下敷きになっていたページワンが目を覚ました瞬間、目を輝かせてページワンに熱い抱擁を交わす。


「ぺーたんぺーたん!!無事でよかったでありんすー!!」
「・・・ん?」
「おいお前ら!よくも・・・よくもぺーたんをこんな目に!あちきのぺーたんいじめんじゃねェ!!」
「はあ?お前が階段スキーしたんだろ!そいつで!」
「あ?」


ルフィは事実を言ったまでなのだが、うるティはそれを全力で否定し、あくまでもルフィ達のせいだと言い張っていた。


「名乗れ!誰の部下でどの部隊だ!?」
「違う"アネキ"。そいつらは侵入者だ」
「何だと・・・?お前らどこのどいつだ!?」
「おれはルフィ――海賊王になる男だ」
「ああ!?」
「・・・で、たぶんそこにいるのが、ポートガス・D・ナマエだ」


ページワンはナマエを見るとほんのりと顔を赤く染めており、それに気づいたうるティがギロリとナマエを睨みつける。


「あちきのぺーたんをたぶらかしてる性悪女ってのはてめェか!!」
『え・・・だ、誰・・・?』


そもそもこれが初対面だというのに。全く身に覚えのない言葉に首を傾げるナマエが反論するも、もはや最初から話を聞く気はないのか今度は苛立った様子でルフィに視線を向けるうるティ。


「お前、さっき海賊王がどうのって言っていたが・・・ここが誰の城か分かってるのか?海賊王になるのはカイドウ様に決まってんだ――ろ!!」
『!』


うるティが足元にあった石を蹴り飛ばす。ただの石だというのにそれは物凄い速さで飛んできて、見聞色の覇気で先の攻撃を見据えていたナマエが紙一重でそれを避けると、今度はうるティはその隙に高く飛び、重力を利用してナマエに向かって頭を突き出してくる。


「歌姫だかなんだか知らねェけど・・・前々から気に食わなかったんだよ!!脳天かち割れろ!!」
『!』
「ウル頭銃!!!」


頭突き攻撃を仕掛けてくるうるティ。ナマエが受け止めようと身構えれば、横から間に割り込んできたルフィが「下がってろナマエ」と肩を押され、後退させられる。


『!ルフィ!』


額を武装色硬化し、真っすぐと頭を振り落としてくるうるティの頭突きを受け止めるルフィ。
衝撃波が辺りを襲うなか、両者一歩も引けを取らない押し合いが続くが――ルフィの立っていた床の方が先に限界を超え、音を立てて崩れ落ちてしまった。足場がなくなったルフィはそのまま床下まで突き飛ばされていき、慌ててナマエは穴の中に降りてルフィの元へと駆け寄る。


『ルフィ、大丈夫!?』
「ッああ・・・すげえやつらがたくさんいる。・・・ちょっとナメてた。ダメだな。ここは四皇の城だ」
『・・・うん』


2人は覇気を高めながら顔を上げると、いつの間にか人獣型に変身していたうるティ、ページワンを見据えた。



   



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