EPISODE.20



辺り一面に立ち込める砂埃。暗転していたフロアに明かりが灯され、怒りを露にするルフィの前には床にのめりこむようにして倒された部下の1人がいた。
――すっかり目立ってしまったルフィとナマエ・・・しかし騒ぎになったものの、2人の正体はまだバレていないようで、酒の席という事もあり周りからは「もっとやれ」と野次が飛んでくる。

構わずルフィとナマエが前に進もうとしたその時、2人の後ろの建物に亀裂が入り――建物は綺麗に斜めに斬れて崩壊をする。
降ってくる瓦礫に部下達が逃げ惑うなか、煙の向こうから現れたのは・・・刀を持ったゾロだった。


「全く派手に暴れやがって・・・。騒ぎの聞こえる方へ"真っすぐ"来てみりゃ、もうこの有様か。ナマエが一緒にいるからと思って一先ず安心してたのによ」
「!」
「なんで姉弟揃って大人しく潜入できねェんだ?お前ら作戦忘れたのかよ」


そう言うゾロに、遠くで一部始終を見ていたキッド達が「どの口がほざいてやがる」と呆れていたのはまた別の話・・・。

いまだ怒りで震える拳を握りながら、ナマエは悔しそうに目に涙を浮かべると、殴り飛ばされ既に気を失っている男たちを指差した。


『忘れてなんかないよ!でも、ッあの人たちが・・・!』
「あ?」
「こいつら、おしるこをぶちまけやがったんだぞ!!」
「!おしるこを・・・!?――だったらぶった斬るしかねェな!!」


床に広がるおしるこを見て、状況を理解したゾロの脳裏にもルフィ達と同様に、おしるこを美味しそうに食べていたお玉の姿が映されていた。


「結局騒ぎになっちまったな」
「そんなこと言ったって仕方ねェだろ。なあナマエ」
『うん!食べ物を粗末にするあの人たちが悪い』
「まあ・・・おしるこがらみじゃ仕方ねェ」


ほんの少し前までは、自分が姉としてルフィの暴走を食い止めねばと思っていたが・・・先ほどの一件で忘れているのかルフィ達と同調するようにうんうんと頷くナマエ。
しかし、理由がどうあれまだ戦いを始めるタイミングではない。・・・これだけ暴れてもルフィ達の正体がまだバレてないのが救いだった。


「・・・で、2人の気は済んだのか?」
「ああ!」 『うん!』
「だったら――逃げるぞ!」

「に、逃げたァ!?」
「捕まえろー!!」


カイドウの部下に囲まれていたルフィ達は、余計な体力は使わないよう注意しながら目の前の敵だけを倒して道を開け、その場から逃走を図る。
・・・しかしいくら相手が弱いとはいえその数は一向に減らず、あっという間にギフターズの集団に囲まれてしまう。

ニヤリと口角を持ち上げたルフィが「やるか」と言えばゾロは刀を抜き、ナマエは武装色硬化した腕を構え、向かってくる敵を次々と薙ぎ払っていく。

・・・すると、場内全体に聞こえる音量で、何者かの声がタニシを通して聞こえてくる。


「今日は楽しい金色神楽!そいつらを捕まえて俺に献上しろ!!」


その声の持ち主は――上階のステージに立つ、クイーンだった。ナマエに視線を向けられた瞬間、クイーンは頬を赤らめさせると何処からともなく取り出したナマエが映っている何枚もの写真を胸に興奮した様子で踊りだす。


「んん〜!ようやく逢えたナマエたん!実物はもっと可愛いぜーー!!エキサイトーー!!」
『っ』

「俺が飛び六胞を1人消し、その椅子1つ空けてやる!そいつら捕まえたやつに、報酬だァ!!・・・ただし、ナマエたんだけは絶対傷つけさせんじゃねェぞー!!」


いつの間にやら正体がバレてしまったらしい。
ラップ調でそう言ったクイーンの言葉にフロアにいた部下たちは歓声を上げ、すぐにルフィ達にターゲットを向ける。

――全員の目つきが変わり、ルフィ達は最低限の敵を倒しながらカイドウのいる奥の城へと向かおうとするが、どこからともなく聞こえてくる様々な楽器の音に思わず足を止めるナマエ。
陽気な音楽はルフィとゾロの耳にも届き、聞こえてくる方角に視線を向けてみると・・・そこには最悪の世代と呼ばれる1人スクラッチメン・アプーの姿があった。


「聞いてけ闘う音楽ミュージック!――ドーン!!」

「!?」


胸を叩けば太鼓のような音が鳴り響き、次の瞬間――ルフィは爆発を受け、吹き飛んで行った。


「『ルフィ!!』」
「アーッパパパパ!」
「!あいつはギザ男たちと同盟を組んでた・・・!?」

「――シャーン!」


続けざまにアプーは頭を上下に叩き、シンバルの音が鳴り響くと同時――今度はゾロが斬撃攻撃を喰らった。

刃物も持っておらず、ましてや相手の攻撃の軌道が全く見えない・・・見聞色の覇気を使ったとしても、アプーの攻撃を読み取ることが出来なかった。
唇を噛み締めたナマエは気を失ったルフィの首根っこを掴むと引きずりながら、軽症のゾロと共にその場から離れていく。


「Yo!お前ら麦わら達を逃がすなよ!!飛び六胞の地位が欲しけりゃ気張りやがれ!――そして・・・・・・早く愛しのナマエたんを、此処に連れて来いやァー!!」


「くっ・・・こんな所でダメージためてたらカイドウ戦まで身が持たねえ・・・!」
『さすがにただ多いだけじゃないね・・・!』


層もかなり厚い。飛び六胞という地位に目を光らせるギフターズは次々と攻撃を繰り広げ、クイーンの指示通りナマエに直接的な攻撃は無いものの、ルフィを庇いながら敵の攻撃をかわしていく。


「飛び六胞はもらったァー!!」
『!』


背後から襲い掛かってくる狼の能力者。ナマエが反撃しようと構えた次の瞬間、パッと目を覚ましたルフィが向かってくる狼を噛み返した。


「悪い、もう大丈夫だ」
「当たり前だ。面倒かけんな」
『・・・もうこの変装、意味がないみたいだね』
「確かに。動きづれェしな」
「おし!じゃあ――変装やめ!一気に突破だ!!」
「おうよ!」 『うん!』


ナマエ、ルフィ、ゾロが服の一部分を外せば、ドロンと辺り一面に煙が巻き上がり――3人は元の服装に戻った。


「ぎゃぁあー!わ、和装のナマエたん!!レ、レアだぜエキサイトォーーー!!」


「ムダだ。お前たちは俺の射程内だぜ――チェケラ!」
『!(またあの攻撃が来る・・・!)』


アプーが頭を上下に叩いた瞬間、先ほどと同様に斬撃がゾロを襲う。何度意識を向けてもアプーの攻撃を読むことは出来ず、相手が音を鳴らすとほぼ同時に攻撃を喰らっているところを見ると・・・まずはアプーの能力が何かを知る必要があった。

しかし考える暇もなくルフィも爆発に巻き込まれ、アプーは体全体を楽器のように扱いながら、リズムよく音楽を奏で続ける。


『っ、音楽を使った能力・・・!』
「どうやって防ぐ・・・!?」


アプーの音楽は鳴り止まらず、攻撃を次々と喰らい吹き飛ばされるルフィとゾロ。そのダメージは計り知れず、焦りを覚えたナマエはアプーの標的がルフィとゾロへ向けられているその隙をつくと地面を強く蹴り、持ち前のスピードで一瞬でアプーの間合いに入り込んだ。


「!?」


目にも留まらぬ速さでナマエはアプーの顔面に回し蹴りを喰らわせ、モロに直撃したアプーは悲鳴を上げる事もなく背後の壁に激突していった。


「チイッ・・・なめた真似しやが・・・!?」
『!』


入りが浅かったのだろう。すぐに瓦礫から出てきたアプーが苛立った様子でナマエに攻撃を仕掛けようとした・・・その時。

周りにいた部下達の武器、地下にあるパイプ官、ネジ、鍋・・・それらが突然宙を舞い、吸い込まれるように一定方向へと飛んでいく。
その中心には先程の見失ったばかりのキッドの姿があり、キッドは能力を使って強力な磁気を発生させ、周囲に存在する金属類を引き寄せていた。


「てめェが全ての元凶だ!!くたばれ、アプー!」
「キッド!?」
磁気弦パンクギブソン!!」


磁気で集めた金属類は巨大な腕の形に形成され、アプーを叩きつけた。



   



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