EPISODE.15



一晩で帆の修繕を終えたサニー号が出航した頃には錦えもんが提示した集合時間よりもだいぶ遅くなってしまった。

おまけにナマエとナミの予感は当たり、その日空は厚い雲に覆われ、強い雨風が吹き抜ける大嵐だった。荒れ狂う波の中、急いでサニー号を刃武港へ向かわせると――なぜかそこには小舟で海を渡ろうとする錦えもん達の姿があり、そして、錦えもん達の前に立ちはだかるように何隻もの戦艦が集っていた。

フランキーが放った砲弾は錦えもん達の目の前にいる戦艦に直撃し、緊急事態にナミは甲板でずっと眠っているルフィとゾロの頭を叩き起こした。


「もうあんた達、よくこんな時に寝てられるわね!!」
「・・・あ?直ったのか?船」
「ん?よ・・・っと。うおおお!!!食って寝て起きた時のおれは一番強ェぞー!!」


起き上がったルフィが撃て、と叫べばサニー号から砲弾が発射され、敵の戦艦に直撃する。


「悪い、ちょっと遅くなった」

「だ、だれだ!?敵の船は"全部"沈めたんじゃねぇのかー!?」


あからさまに動揺する敵陣。錦えもん達は窮地から救ってくれたルフィ達の登場に安堵するも、突然、錦えもん達の乗る小舟が大荒れた波に耐え切れなくなり、沈みかけてしまった。
けれど海底から浮上してきたハートの海賊団の潜水艦が錦えもん達を小舟ごと引き上げてくれたおかげで沈むことはなく、ずっと通信が途絶えていたハート海賊団の登場に、無事で良かったと安堵の笑みをこぼすナマエ。


「こんな小舟で嵐の海に出るなんて・・・バカかお前ら!!」
「!お、おぬし・・・!」
「海をナメすぎだ侍共!!」

「――おい!!」


サニー号とは逆側から飛んできた砲弾が、敵の戦艦に直撃する。


「向こうの港にバカみてえに船と侍が集まってたがありゃ何だ?――邪魔で沈めてやろうかと思ったぜ!」


現れた海賊船はヴィクトリアパンク号だった。その船を率いるのは・・・最悪の世代"ユースタス・キッド"だ。
キッドはルフィと同様、カイドウに敗れ囚人採掘場に収容されていた。そして収容されている間、二人は常にお互いをライバル視して何かと小競り合いをしていたのだが、ルフィが兎丼を制圧した時には既にキッドの姿はどこにも無く、それから見かけないと思っていたが・・・。どうやらキッドも、理由は違えどルフィ達と目的は一緒のようで、仲間を連れて鬼ヶ島へ向かう途中だったらしい。


「ふっ。結局来んのかよ、ギザ男」
「麦わらァ!カイドウの首をてめェにやるか!」
「チッ・・・」

「っ話が違うぞ!小舟に乗った侍たちを沈めるだけだと・・・!こいつら海賊じゃねェか!!」
「捕まってるはずの、最悪の世代!!」


ルフィ、キッド、ロー。
最悪の世代と呼ばれているうちの3人が集結する。

――それまで絶望の顔を浮かべていた錦えもんから、一筋の光が見えた。


「おいお前ら!なに侍の小舟いじめてんだ!」
「海の素人が無茶しやがって」
「ここはてめェらの出る幕じゃねェ」
「――海は海賊が相手だ!!」


鷲と蝶の羽根を生やした敵は上空を飛びながら、無傷のサニー号を見て愕然としていた。確かに昨夜、爆弾を落としたはずだというのに・・・一晩で修繕するわけが無いと、いまだに信じていないようだった。


「てめェらだったのか、ふざけたマネしやがって!――ニッ。なーんてな。そこらの爆弾でサニー号を爆破しようとは甘ェ輩だ!」


このサウザンドサニー号は宝樹アダムで造った千の海を越える船――。爆弾如きでダメージを追うサニー号ではないの。


「まあもっとも、帆は焼けちまったけどよ」
「くっ」
「悪い錦えもん!ちょいと帆の修繕に手間取っちまった!」
「ナマエが手伝ったせいで予定より倍の時間がかかっちゃったのよねえ」
『うっ・・・』


・・・そう、不器用な事を忘れ、帆の修繕を手伝おうとしたナマエだったのだが直すどころか余計にひどくなってしまい、最終的には哀れに思われたのかフランキーに「縫うのは俺がやるからナマエは布を用意してくれ」と、速攻に戦線離脱を言い渡されてしまったのだ。

ルフィといい勝負ね、不器用なところ。ナミに肘で突かれるナマエは顔を真っ赤にさせながら、拗ねたように頬を膨らませる。


『が、頑張ったつもりだもん』
「そんなナマエちゃんも俺は好きダァー!!」
「うるせぇエロコック」
「あァ!?ンだとクソマリモ!?」
『っ、ごめんね、錦えもん!』
「!そうか・・・そうでござったか!」

「おーい、錦!なんかさ、人少なくねェか?聞いてたのと少し違うけど・・・とりあえずあの戦艦はぶっ壊していいんだろ?」


そう、この海に集まっているのはサニー号とローの潜水艦、そしてキッドの海賊船のみで。周りを見渡しても船はおろか、囚人採掘場の3500人、各地に散った親分衆が集めたヤクザ200人がどこにも見当たらない。

伊達港でフランキーと共に船を造っていたイヌアラシ銃士隊200人、頭山盗賊団280人の姿もどこにもなく、彼らと一緒に修理した船も、ここに合流するはずだった。その全員が使える大量の武器も鈴後から届いていなきゃいけないというのに。


「ねえ錦えもん、何かトラブル?」
『・・・・・・?』


――ふと、ナマエは海岸の方に視線を向け、そして目を疑うような光景を目の当たりにした。
海岸に見えるのはカン十郎と、そしてその腕の中には・・・涙を流しながら何かを叫ぶモモの助の姿があったからだ。
カン十郎の背後にはしのぶの姿もあり、しのぶは蛇のような生き物に身体を縛られていて・・・何か様子がおかしい。


『モモ・・・?』

「拙者、不覚を取ったでござる・・・!ッルフィ殿、すまぬ!!我らの作戦、すべて漏れていた!!拙者の不徳の致すところ申し訳ない!!」


言いながら、錦えもんはその場に土下座をすると頭を床に打ち付けた。

皆がどうなったのか、錦えもん達にも分からないという。


「だから誰もいねえのか・・・」
「俺たちだけで戦うのか!?」
「ええっそんなぁ!」
「そっか・・・まあ仕方ねえな」
『――ルフィ』
「ん?」
『あそこ・・・』


ナマエが真剣な表情で、陸地の方を指差す。
モモの助を抱えるカン十郎は、今までに見たことのないくらい憎悪に満ちた表情をしており、異変に気付いたルフィが錦えもんに何が起きたのか、聞こうとした――その時。

上空から数多の爆弾が、サニー号に向かって投げ落とされる。


「状況をのみこめてねェようだな。孤立無援なんだよ、お前らは!」
「もう来やしねェさ仲間なんざ!」
「船が壊れなきゃ、海ん中にあぶり出してやるさ・・・――沈んじまいな、最悪の世代!!」

「・・・おれ達の仲間が来ねえってどういうことだ?」
「そいつを知ってどうするってのさ」
「もはや貴様らに勝ち目など、無いんだぞ!」


次々と襲い掛かってくる爆弾。瞳を鋭くさせたナマエは地面を強く蹴ると空高く舞い上がり、向かってきた全ての爆弾を、覇気を使って弾き飛ばしてみせた。
上空にまるで花火のように爆発する爆弾をバックに、身軽に船に着地するナマエの華麗な動きにサンジはメロメロだ。


「おいお前ら!おれの質問に答えろ」
「・・・せっかくだ、冥土の土産に教えてやろう。といっても俺たちも詳しくは知らねぇがよ!!」
「そのライオンの船は壊しそこねちまったが・・・」
「伊達港に並んでた船は昨夜全部沈めたよ」
「何だって?」
「チクショウ、せっかく直した船が・・・!」
「それだけじゃねェ!!」


――周到なオロチは郷と郷を繋ぐ大橋も全て壊せと命じたと、鷲の男が高らかに言った。もうここには誰一人として来るはずがない・・・もし万が一来たところで船がなければ鬼ヶ島へは上陸することも出来ないのだ。そして今日を逃せば、奇襲のチャンスは二度とない・・・百獣海賊団の部下たちは、声を揃えて、錦えもん達を見ながら笑った。


「あんた達にはまだ言ってないことが1つあるの」
「悪いな・・・絶望を重ねるようで気が引けてな」
「今日の宴はいつもの火祭りの宴だけではない――我ら百獣海賊団と、かのビッグ・マム海賊団の同盟を記念する宴でもあるのだ!!」

「!カイドウとビッグ・マム・・・!?」
「四皇の同盟だと・・・!?」




   



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