EPISODE.13



「海賊!?麦わらの男もカイドウと同じ海賊なのか!?」
「そうだが違う!」
「信用ならねェ!いつ裏切ることか・・・!」
「よりによってなぜ海賊なんか連れてきた!?」
「いや海は広く海賊にも色々いて・・・」
「接すれば分かる!彼の言葉に嘘はない。あの男こそがカイドウ討伐の"要"なのだ!!」


――離れた場所から、ヒョウ五郎と雷ぞう達が必死に囚人達を説得する話し声が聞こえて来る。
皆、生気は取り戻したものの囚人達の心を完全に掴んだわけではないらしく、どう説明すればいいか分からず苦戦しているようだ。


「たま・・・!危ねェだろお前こんな所まで・・・」
「ごめんでやんすアニキ。でもアネキが側にいてくれたから平気でやんす!無事でよかったでやんす」
「死にかけでござるぞ!?」
「触るなよ!すぐに抗体を見つけるから!!」


――壁にもたれるようにして倒れているルフィの身体はすっかりやつれてしまい、時間が経つにつれてどんどんと変色していく。


「効かねェなんて強がって!隠れてりゃ世話ねェよ!苦しいだろ!?ウイルス!なんで後先考えねェんだ!!おれに謝れ!!」
「ごめんぐるじい・・・だずげで・・・」


忙しなく医療道具を用意するチョッパーのごもっともな発言に、ルフィは謝るしかなかった。そんなルフィに駆け寄るナマエは辺りに誰もいないのを確認するとルフィに触れないよう、ギリギリのところで手をかざす。――淡い光がルフィを包み込みはじめ、目を見開かせたルフィは慌てて首を振った。


「おいナマエ・・・お前、また倒れ、ちまうぞ・・・」
『今は雲がないから。大丈夫だよ』


それにお玉の時に一度やったおかげで力加減が分かっているため、ナマエは治癒の力をルフィに与え続けることができた。
――元々、回復力が高いおかげなのか、先ほどまで死人のような顔をしていたルフィの顔色は徐々に良くなり、ウイルスの進行をうまく止めていることにホッと安堵したナマエは、チョッパーの特効薬ができるのを待つ。


「・・・ルフィはバカなのにやっぱりすごいでござる。拙者にはあんなマネできぬ」
「お前ホントにバカだし臆病だし弱えしビビりだしどうしようもねェな」
「黙れ無礼者が!!そこまで言われる筋合いは無い!」
「モモ君、ぶったらうつるよ」


殴りかかろうとする勢いのモモの助を慌てて抑えるお玉。


「行けよモモ!あいつらが待ってんのは――お前だろうが!」
「ギャーー!!やめろバカ者死んでしまうーー!!」


ルフィが投げ飛ばした岩がモモの助の足元に落下し、モモの助は派手に広間の方へと吹き飛んでいった。

――広間には囚人達が全員、集まっている。
そして、突然吹き飛んできたモモの助に全員の視線が集まると・・・さっきまで喚いていた囚人達は静かに涙を流し、そして・・・全員、その場で膝を折り、モモの助に頭を下げた。

――囚人達の心を掴む、足りないもの・・・それは、夢・・・戦いのその先だった。


「よくぞご無事で!!」

「っ(拙者じゃない・・・皆の目に映っているのはきっと父の姿だ・・・ワノ国を支えてきた光月の・・・大きな影・・・!!こんなに重く感じたのは初めてだ・・・!ビビるな、モモの助!!)」


自分に言い聞かせるよう、モモの助は唾を飲み込むと――目の前で平伏す囚人達に、言葉をかけた。


「み・・・皆、聞いてほしい。あの日、おでん城で何が起きたか・・・拙者達が今まで何をしていたか」


モモの助の話は、囚人達の志を高めるには十分だった。

――お玉の作ったきびだんごは、動物と、動物系のスマイルを食べた者に効く。それを知ったナマエの指示のもと、お玉はきびだんごを看守長のババヌキに食べさせた。忠誠心を誓ったババヌキはチョッパーに手当てを受けてもらいながら、お玉に指示され"スマシ"を使って鬼ヶ島へ向かったクイーンに連絡をとった。

――目障りな者達は全員檻の中で大人しくしており兎丼は特に異常なし、と嘘の報告を述べればクイーンはあっさりとそれを信じ、スマシを切った。
これで兎丼制圧したことをカイドウ達にバレることはないだろう。


「チョパえもん殿!このご恩!命に変えても必ずお返しする所存!!」
「いいよ割と簡単なウイルスだったから・・・侍のご恩は重いからいいよ」
『さすがチョパえもんだね』
「ほ、褒めても何もやらねぇぞこんちくしょぉ!・・・でもよかった!ルフィ太郎も、すっかり元気と人気を取り戻して!』


――チョッパーの作った特効薬のおかげで、ウイルスに侵されていた者達もあっという間に完治していた。
傷の手当ても全て終えたルフィは、周りの囚人達と活気を帯びている。


『雷ぞう、錦えもんに報告しなくていいの?』
「アイヤそうでござった!」


雷ぞうはスマートスマシを懐から出すと、錦えもんに状況を報告した。

ルフィを救出するどころか約3,500人の兵士を味方につけ、さらには河松も発見解放し、採掘場を占拠した、と。

スマートスマシの向こうから錦えもんの驚愕する声が響き渡る。


「共に戦ってくれる兵士はまだ増える・・・しかし先に言っておくべき問題点が一つ・・・!武器工場はワノ国中にいくつもあるが使っているものは海外輸出用の兵器の類がほとんど!!」


侍達が使いたいのは刀や槍であって、現在ワノ国ではオロチによって武器の所持を禁じられており入手困難・・・反乱の数に対し、武器が足らないと闘いにはならない。


【成程・・・あい分かった。確かに深刻!刀か・・・こちらも進展はあるが少々待て。戦略の最終確認の為にも拙者これより編笠村へ向かいそこを拠点とする!雷ぞう、そちらの情報を詳細にまとめよ!】
「承知した」


それからお菊達は一足先に編笠村へと向かい、兎丼に残ったルフィは、決戦の日までの残された時間、ヒョウ五郎から猛特訓を受けていた。

ルフィはヒョウ五郎が持つ"流桜"を、カイドウとの戦いの前にどうしても習得したいようなのだ。


『流桜?』
「ああ、ワノ国ではそう呼ぶらしい。レイリーも使ってた技なんだけどよ・・・」


ルフィと共に兎丼に残ることにしたナマエは、目の前の頑丈な石に拳を向けるルフィから修行の内容を聞くと首を傾げた。


『内部破壊の力のこと?』
「え?あ、ああ、簡単に言えばそうじゃが」
『・・・それって、』


見上げるほどの高さの岩の前まで移動したナマエはヒョウ五郎と、修行を中断したルフィが見つめる中・・・覇気を拳に纏わせ、岩に手のひらを当ててみせる。
――すると岩は触れただけなのに派手な音を立てて破壊され、ヒョウ五郎とルフィは言葉を失い呆気に取られていた。


『これの事?』
「そ、そ、それじゃ!それが流桜じゃーーー!」
「すっげェーーナマエ!!!お前いつの間に出来るようになったんだ!?」
『覇気の修行の時、レイリーが教えてくれたの。いざという時にって』
「おれでもまだ出来ねェのに・・・!はは!やっぱナマエはすげェや!」


流桜は体の不必要な覇気を拳に纏わせ、攻撃や防御をする技。

"纏った覇気が敵の内部まで浸透し敵を内部から破壊する"段階まで習得することが出来ればカイドウのような強固な防御力を誇る相手でもダメージを与えられるはずだ。
一度カイドウに敗れたルフィは、カイドウを倒すためにはこの流桜が必要だと踏んだのだ。


「なあなあ、どうやれば出来るんだ!?それ!」
『どう、って言われても・・・』
「頼むナマエ!あのジジー、難しい話ばっかで全然コツ掴めねェんだ!!頼む、教えてくれ!」
「なんじゃとォ!?」
「なァ頼むよー!!」





討ち入りまで、あと5日。



   



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