EPISODE.10



それから一行は、各々の目的のために散った。


元々、ルフィ達より先に上陸をしていたフランキーはフラの介と名乗り、かつてカイドウの屋敷を設計した棟梁から屋敷図を入手すべく弟子入りをし、ロビンはおロビという名前でオロチの軍勢の動向を正確に把握するため芸者となり座敷からオロチへの接近を試みて貰っている。すでに花の都では評判と噂されているそうだ。
ウソップはウソ八という名でガマの油売り商人をしながら、決戦の日と集合場所を図案にした【火集まりの日、夕刻酉二つ、場所は刃武港】の用紙を、左足に月の印を持つ者達に速やかに渡し回っていた。その印というのは反乱の意志があるという意味で、錦えもん達の味方なのだ。国中に散っている同志たちを集めるため、ロー率いるハート海賊団、そしてゾロ達も加勢し、回っている。

ちなみに兎丼の囚人採掘場に捕まってしまったルフィは、偵察に行った雷ぞうによると働いて食べて寝てという日を繰り返していくうちにすっかり健康体になり、捕まってから4日が経ったが元気に今日も課せられた仕事を全うしているそうだ。
どうやらカイドウは反抗的なルフィの心を折り服従させる目的で、収容したようだが・・・ルフィの心は折れる事無く働き続けており、機会を伺って雷ぞうが脱獄を助ける手筈になった。

一時はどうなるかと思っていたが、なにはともあれ、ルフィが元気な事に安堵したナマエは今現在、九里の編笠村にて、全身キズだらけになったお玉の手当てをチョッパーと共にしていた。


「ありがとうでやんす、ナマエのアネキ!」


――あれからルフィと別れたお玉はスピードと共に編笠村へと向かっている最中、突然上空から現れたカイドウに襲撃を受けた。スピードはお玉を守るため必死に戦ってくれたようだが・・・恐怖心からお玉は気を失ってしまい、それからほとんど憶えていないそうで。そのスピードも、気を失っていたお玉の近くにはいなかったらしく、安否が心配であるものの・・・お玉の怪我そのものは軽症で、包帯を取り外したナマエは綺麗になくなった傷跡を見て微笑む。


「おらの怪我より、ルフィのアニキの方が心配でやんす」
「ルフィの回復力は化け物級だし・・・心が折れる事もない!大丈夫だ。雷ぞうが脱獄の手助けをするといってくれたからあいつに任せる事になったんだ。ニンニン!」


忍者の服装になったチョッパーはすっかり忍者になりきっている。
クスクスと笑みをこぼしたナマエは、お玉の傷も癒えたことだし、気分転換に外へ散歩に連れていくことにした。

あまり遠くへ行くことは出来ないが、編笠村を歩いている最中も手を繋いでくれるナマエ。お玉はナマエを見上げ嬉しそうに口角を持ち上ると「アッネキっはつよっくってやっさしーいでーやーん−すー」とご機嫌に歌いだす。微笑んだナマエもお玉に続くように、歌を紡いでみれば、お玉は大きく目を見開かせ、ナマエの歌を聞いて感動したように目を輝かせた。


「アネキ、歌がとってもうまいでやんす!おら、こんな綺麗な歌声・・・初めて聞いたでやんす!」
『ふふ、ありがとう』


――はたから見れば二人は本当の姉妹のようで。暫く森の中を歩いていると、どこからともなく空気を切る音が聞こえてくる。
近づいてみるとそこには竹刀を構え、手作りの藁で出来た人形に打ち込むモモの助の姿があった。


「あ、モモ君でやんす!」
「!ナマエと玉か・・・おぬし、怪我はもう治ったのか?」
「はいでやんす!アネキ達のおかげでこの通りでやんす」


すっかりナマエに懐いているお玉は、近くの石に腰かけたナマエの隣に座りぴったりとくっついた。
そんな二人を見ていたモモの助は、思い出したように、自分にも妹がいる、と話し出す。


「妹がいるでやんすか、モモ君!」
「おい玉!無礼でござるぞ。拙者を誰と心得る!」
「もも君」
「・・・・・・もうよい。そう妹がおる。生きておれば26の歳。母の死を見た者はいても、日和が死んだとは誰からも聞いておらぬ。――だから、どこかで必ず生きていると拙者は信じておる!」
「ふーん。会えるといいでやんすね」
「いや会えぬ」
「?」
「日和の素性がバレたら必ずオロチに狙われる!会うのは戦に勝った時のみでござる!」


――大切な妹を守るため。ナマエは不意にいつも自分を守ってくれていたエースを思い出し、エースと同じ"兄"という立派な背中を見せるモモの助に、思わず笑みがこぼれた。
必ず生きてるよ、ナマエがそう言えばモモの助は頬を赤らめながら頷き、再び竹刀を振って修行に励む。

暫くするとモモの助の様子を見に来たお菊と、チョッパーもやってきた。


「ねえねえナマエのアネキ、浜辺まで散歩に行こうでやんす!」
『え?うん、いいけど・・・そんな遠くには行けないよ』
「拙者も行くでござる!」
「え?モモ君も?どうしてでやんすか?」
「ナマエを守るのが拙者の務めでござる!」
『!』


今、この九里にいる戦力はナマエとチョッパー、そしてお菊のみだ。他の仲間は各々の任務を遂行している最中で、決して存在がバレてはいけないナマエは九里にて、10日後に催される火祭りの日までは身を潜める事となった。
武士としての誇りがあるのか、モモの助は一段とナマエを気にかけており、心強い味方に笑みを浮かべたナマエは、お玉たちと共に九里の浜辺へと向かった。


「やや!?なんでござるかなアレは!ニンニン!!」
『?』


竹にしがみついていたチョッパーが、海岸にある何か大きな物体を見つける。
気になって近づいてみればそこには巨人・・・よりかは小さいものの、人間の女性が倒れていたのだ。打ち上げられているところを見ると、海で溺れてしまったのだろうか・・・とナマエ達が心配そうに見つめるなか、一人チョッパーだけは顔を青ざめさせると、確認するように後ろの方へと回り、女性の顔を覗きに行く。


あーーーー!!ビッグ・マ・・・ッ」
『?どうしたのチョッパー』
「声を出すな!起きちまう!逃げるんだすぐ!!起きたら終わりだ!!」
『?』
「!いや・・・ダメだ逃げても・・・」


チョッパーはこの女性が四皇ビッグ・マムだと説明した。なぜビッグ・マムがワノ国に来たのか・・・答えは簡単だ。ホールケーキアイランドで暴れまくり、ビッグ・マムのパーティーを壊滅状態にしたルフィ達を追ってきたのだろう。


「うぅ・・・ゲホ」
「!!遅かった!!ナマエ、お前だけでもとにかく逃げろーー!!」
『そ、そんな』


チョッパーたちだけで敵う相手ではない。それに、ここで逃げてしまっても都の方へ行って大暴れでもされたら錦えもん達まで危険な目に遭ってしまう。意を決したナマエはチョッパーに引っ張られていた手を振り払うと踵を返し、ビッグ・マムと戦闘態勢に入ろうとした――その時。
むくり、起き上がったビッグ・マムはきょろきょろと辺りを見回すと頭の上に沢山の?マークを浮かべながら言った。


「おれは・・・・・・誰だい?」

「・・・・・・は?」
『え?』



   



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