EPISODE.09



その場にいる者は全員、息を呑んだ。今まさに、戦おうとしている四皇――カイドウがいるのだから。


「カイドウって龍なのか!?」
「――そう。アレに見えるはカイドウ・・・カイドウは、龍に化けるのでござる!!」


その見た目だけでも、恐怖を与えるには十分だった。遠くにいるというのにカイドウの気迫は凄まじく、不意に、ナマエの腕の中にいたモモの助が苦しそうに蹲ると――ポンっと煙を立てて、龍の姿に変身してしまった。
慌てて錦えもんがモモの助の名前を呼びながら駆け寄り、まさかモモの助だと思わなかったしのぶとお菊が驚愕する。混乱する二人に後で説明をする、と伝えた錦えもんは、恐怖で震えるモモの助を守るように支える。


「あの辺・・・おこぼれ町だ!!」
「なぜ急にカイドウが九里に・・・!?」
「――!すまん、錦えもん。実はおれと麦わら屋、ゾロ屋は正体がバレた・・・!」
「何と!!?」
「何やってんだてめーロー!!」
「お前ら麦わらの一味に責められる筋合いはねェ・・・!!」


物凄い剣幕でそう言うローの言葉に、ナミ達はすぐに察した。全てルフィのせいだ、と・・・。


「――だがそれだけだ!歌姫屋の事は、バジル・ホーキンスも疑っていたようだが確証はなく、まだ半信半疑だったから恐らくは大丈夫だろう」


カイドウがこの国で作らせてる武器と、ドフラミンゴとシーザーが生み出していた人工悪魔の実"SMILE"の闇の取り引き――その根源の工場をパンクハザード・ドレスローザで潰し、商人ドフラミンゴを監獄に送り壊滅させた――。


「むしろ喧嘩を売ったのはこっちで、やつの狙いは――おれと麦わら屋の首だ」
「っ!!」

「!ルフィどこへ!?」
「ルフィ殿!!」


歯を食いしばったルフィが突然、九里に向かって走り出す。慌てて後を追いかけようとするナマエを呼び止めたのは、他でも無いローだった。

これ以上、誰かの顔が割れれば麦わらの一味とハートの海賊団は全員、滞在が確定してしまう。大捜索が始まってしまうと非常にこちら側が不利となってしまうのは目に見えていた。


「見つかったのはおれ達だけ・・・お前らの作戦は無事だ!いいな!」
「ではおぬしらはどうする!?」
「放っときてェ所だが・・・麦わら屋はすでにこの国の人間に関わっちまった。感情で動かれちゃ作戦に支障を来す。決戦の日に顔が揃わねェんなら同盟の意味がねェ。――おれが何とかしてくる」
『トラファルガー!?』
「お前らは絶対に顔を出すな!歌姫屋、お前は特にだ!」
「キャプテーーン!」


――ローは足元にあった石を遠くに投げ、自身と飛んでいった足を入れ替えると一瞬でその場からいなくなり、ルフィの後を追いかけに行った。
九里にカイドウがいる・・・それを知った錦えもんとお菊はおこぼれ町にいるお鶴の安否が心配になり、二人は山を下山して行った。

残された麦わらの一味は、はぐれた数時間でルフィが一体何をしたというのか、ナマエから九里で起きた事の経緯を聞くと全て納得をし、そして相変わらずの船長の自由っぷりに頭を抱えた。


「なるほどね・・・」
「っ許さねェ・・・!ナマエさんの身体に・・・ッ」

『・・・ルフィとトラファルガー・・・何も無いと、いいんだけど・・・』


不安に思ったその時――肌から全身にかけて強い殺気を感じたナマエが振り返る。そこには龍となったカイドウが、こちらを向いて口を大きく開け、エネルギーを溜めているように見えた。

まさか、居場所がバレたというのか。狙いは確実にこちらに向けられており、目を見開かせたナマエは『みんな逃げて!!』と叫んだ。

――ナマエが叫ぶと同時に、カイドウの口から放たれた火玉は真っ直ぐとナマエ達のいるおでん城跡を包み込む。




――ドォオオオオオン!!!























お鶴の事は錦えもんに任せ、皆の安否を確認しに慌てて山頂に戻ってきたお菊は、跡形も無くなってしまったおでん城跡を見て息を呑んだ。
辺りを探してもモモの助達の姿は何処にもなく、まさかカイドウの攻撃でやられてしまったのかと頭の中に不安がよぎるなか――不意に人の声がし、声を頼りに駆けつけてみると地面の一部が抜けて大きな穴があることに気づいた。

恐る恐る穴の中を覗いて見ると・・・なんとそこには毛皮強化ガードポイントになったチョッパーが底を塞ぎ、その上に立つナマエ達の姿があった。


「よかった皆さんご無事で!!」
「お菊さーん!」
「助けてください激しい地盤沈下につきーー!!地面が抜けて助かったけど海まで落ちちまうーー!!」


その後、ナマエ達はサンジによって地上へと上がることができ、「何とかレディ達を運び終わった」と一息つこうとするサンジに、まだ穴の中に取り残されたブルック達は「おれ達も助けんかいー!」と叫んだ。


・・・その後全員無事に地上に上がることができると、一時はどうなるかと、安堵の息を吐いた。攻撃された瞬間、機転を効かせたしのぶが妖術で足元の地面を腐らせ、大きな穴を開けてくれたおかげで攻撃を免れることができたのだ。


「しのちゃんの術で助かったんですね!」
「わたすの熟々妖艶の術はあらゆる物を熟れさせるのよ!」
「そう!しのちゃんの触れたものは何でも腐るんです」
「言葉のあや!!」

「――それで状況なのですが」
『!ルフィは、どうなったの?』
「・・・心して聞いてください」


――お菊の真剣な表情に、一同の視線が集まる。



仲間が攻撃されたことをきっかけに、ルフィはローの言葉も聞かずカイドウと一戦を交えた。しかし圧倒的な力の差により一瞬でカイドウに敗れ去ってしまったルフィは、命は助かったものの大怪我を負い、そして最悪なことに大罪人として地獄の強制労働が待ち受ける採掘場に収容されてしまったそうだ。


『っ、ルフィ・・・!』


・・・ルフィの九里での大立ち回りは、すでにワノ国中に響いていた。






   



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