EPISODE.07



「おい!そこの奴ら!道を空けろー!」
「すみません通ります!急いでいますのでっ!」

「追えー!食糧泥棒だァーーー!!」


食糧宝船を引っ張る狛ちよは博羅町の入り口までやってきた。
ゾロやお菊が忠告するもどれも言うのが遅く、カイドウの部下や建物はどんどんと轢かれ、破壊されていき・・・そんな中で暫く進んでいると突然、ゾロの胸ぐらが何者かに掴まれる。誰かと思いきや――なんとそこにいたのは、鬼の形相をしたローであった。


「てめェ!!」
「おうトラ男」
「騒ぎを起こさねェとあれほど誓ったよな!!指名手配になった上にジャックを呼び寄せるようなマネしやがって!!」
「・・・・・・」
「お前は花の都の浪人担当だろうが!なぜこの九里にいる!」

「え、誰・・・?大丈夫ですか!?」


ゾロは何も言い返すことができず、お菊がハラハラする中、ローの小言が暫く続いたのは言うまでもない・・・。

――博羅町を出ておこぼれ町に戻ってきたゾロは狛ちよに食糧宝船をブチ撒くように伝え、腹を空かせた町の人々が涙を流してどんどんと宝船に集ってくる。


「やいやい待て貴様らァ!それはまだおこぼれではないぞ!」
「おい聞けい!!」


追っ手が叫ぶも、喜びが優っている町の人々にその声が届くはずもなく・・・。
困り果てる追っ手の頭上に大きな影ができると、今度は真上から綺麗な水の入った大きな大きな樽が降ってきた。


「水だァー!毒なし!タダだもってけーー!おれはルフィ太郎!誰かに聞かれたらそう言え!!」


水を運んできたのはルフィであった。何年ぶりかの新鮮な食糧、きれいな水に町の人々は感極まり、皆が涙を流しながら口を揃えてルフィ達に礼を言った。

その一連を見ていたローは呆れたものも言えない顔でルフィを見つめ、その視線に気づき振り返ったルフィが嬉しそうに駆け寄る。


「あれトラ男!?久しぶりだなー!」
「・・・麦わら屋・・・ワノ国への反乱だぞこれは・・・」
「あ、そうだ!そんな事よりトラ男、ナマエを診てくれ!酷い怪我なんだ」
「!歌姫屋が・・・?」


ぴくり、眉を動かしたローはルフィが連れてきたナマエを見て目を見開かせた。
露出している肌には至る所に殴られたような痣、そして何か猛獣に引っ掻けられたような爪の跡があり・・・一体何があったと言うのか、それを問う前にまずは手当てが優先だと判断したローは、ルフィからナマエを預かると「部屋を借りる」と、そう言ってお菊の案内のもと、先ほどの茶屋へと向かった。


「アネキ・・・っ」
「心配すんな、あいつあれでも医者だから」
「そ、そうなんでやんすか・・・?」


心配そうに茶屋を見つめるお玉の頭を撫でたルフィは、宝船から取ったリンゴをひとつ手に取ると、ほら、とお玉に渡す。
何年ぶりかに味わう、それこそエースがいた頃に食べたリンゴを頬張るお玉は幸せそうで、その笑顔がやっと見れたことに満足したルフィも、宝船から好物の肉を取り出すと町の人々と共に食事を楽しんだ。


「たま、こんくらいで喜ぶな。当たり前にしてやるからな!」
「!アニキ・・・」
「おれ達がこの国出る頃には!お前が毎日腹いっぱいメシ食える国にしてやる」
「!!!」


おれ達がもう一度この国に来た時はお前が腹いっぱいメシ食える国にしてやる!!


お玉は、かつてエースの言っていた言葉を思い出していた。
ルフィを見つめるお玉の視界にはまるでそこにエースがいるように見え、本当に帰ってきてくれたような気がして思わず目頭が熱くなる。


「・・・ん?いやか?」
「え・・・え!いえもちろん嬉しいでやんす!ちょっと・・・びっくりして」

「全く無茶しやがって・・・さァ本格的に追っ手がかかるぞ、覚悟しろ」
「お前が言うな!!」
「あ、トラ男」


ツッコミと同時に茶屋から顔を出したロー。その背中には手当てを終え、すやすやと眠るナマエの姿があった。


「応急処置は終わった。あとは起きて自分で何とかするだろう。とにかく移動するぞ。おでん城跡地――あの山頂だ。ワノ国の・・・亡霊達に会いにな」
「亡霊?」
「・・・驚くはずだ」
「ああ・・・おれもビビった」
「?」
「お前は信じられねェ"事実"を知ることになる」


――それからルフィはお玉を編笠村に連れて行くようスピードに頼んだ。お玉のきびだんごによって忠誠心を誓ったスピードが側にいれば一安心だろう。

感謝の言葉を述べる町の人々に見送られながら、狛ちよに乗ったルフィ一行はおでん城跡地に向かった。・・・なぜか、お菊も一緒に。


「着いたぞ」


おでん城跡に辿り着くと突然、悲しそうに涙を流しだしたお菊が一人、狛ちよから飛び降りると何処かへ行ってしまった。さっきまでいたはずのゾロの姿もなく、犬に乗ってよく迷子になれるな・・・とさすがのルフィもこれには驚きを隠せない様子である。

一足先に狛ちよから飛び降りたローは、ナマエを背負いながらルフィを呼ぶ。呼ばれるがまま後をついていくと・・・だんだんと霧が濃くなり、太陽の日差しも届かないのか辺りが見えづらくなってきた。


「なんだか気味悪ィ場所だな」
「20年も人が来なきゃな」
「墓?・・・え!?何だこりゃ!雷ぞう、モモ、錦えもん・・・カン十郎!」


案内されてきた場所は、なぜか錦えもん達の名前が彫られたお墓であった。


「何であいつらの墓があんだ!?死んだのか!?そういや連絡取れなかったけど・・・!?っ、錦えもんはどこだ!?あいつがここで待ってると思ってた!!」
「・・・いない。ずいぶん長い間」
「いないィ!?」
「夜には出てくるかもな。昨日も・・・夜な夜な出てきた」
「何だそのオバケみてェな現れ方・・・!何で墓なんかあんだ!?はっきり言えよ!何が言いづれェ事でもあんのか!?」
「おれから話すような事じゃねェ」

「いやいやいや参ったでござる・・・また今日も夜まで便所から出られぬかと・・・・・・少々・・・落ち着い・・・んん?――おお!ルフィ殿!!」
「!」


朽ちた家から出てきたのは、つい先ほどまで話に出ていた張本人――錦えもんであった。
腹部を抑えながら出てきた錦えもんは不覚にも激しい下痢になってしまったらしく、その顔は別れた時よりずいぶんとやつれている。


「生きてんじゃねェかトラ男!」
「?いつ・・・死んだと言った。夜には便所から出てくんじゃねェかと」
ややこしい言い方すんな!!

「キン様ァーーーーー!!!」
「どわーーーーっ!!!」


突然、茂みの向こうから飛び出してきたのは――つい先ほど何処かに消えてしまったお菊であった。
お菊は嬉しそうに頬を赤らめながら、フラつく錦えもんにお構いなしに飛びついた。


「お戻りになられていたのですね!逢いたくて逢いたくて戦慄いておりました!!」
「菊っ!なぜおぬしが一緒に!?」
「なぜ戻っているなら一言声をかけてくださらなかったのですか!身を案じておりましたのに!よそよそしい!モモの助様もご無事ですか!?」

「・・・何だありゃ、知り合いか?」
「知り合いどころじゃねェだろ」


お菊の発言からして、むしろ錦えもんの同志か何かなのだろう。何から話せば良いのかまとまりがつかない錦えもんは、一先ず目の前のお菊にルフィたちを「この者達が強力なる助っ人でござる」と紹介していると・・・さらに森の奥から、竹刀を片手に汗だくとなっていたモモの助がやってくる。


「おーいルフィ!無事着いたのか!みよ、拙者いま剣の練習をしておった!」
「おうモモ!お前らも来てたのか」
「え!モモ!?お待ちくださいルフィ太郎さん、無礼ですよ!あの方は・・・」
「あーよいのだ菊!・・・!?ルフィ、ナマエはどうしたのだ、け、怪我を負っておるぞ!?」
「ん?ああ、さっき――「おーい!!ルフィじゃねェかー!!」

「!」


今度は誰だと振り返ってみると、そこには――サニー号で離れ離れになってしまったサンジ達の姿があった。
ルフィを海底まで探していたサンジ一行はひとまずルフィのビブルカードを見つけ、生きてる事が判明した為、先に錦えもんと連絡を取り落ち合うことにしたそうで。一通りの経緯を説明し終えたナミは、ローに背負われた全身包帯だらけのナマエを見てぎょっとする。


「ちょ、ちょっとそれまさかナマエ!?どうしちゃったの!?」
「ほ、ほんとだ!全身傷だらけじゃねーか!」
「な、何!?ナマエさんだって!?ッあの女帝ボア・ハンコックと並ぶほどの絶世の美女と謳われる・・・っナマエさんと、つ、ついに、ついにご対面!?」


サンジは目をハートにして、ローの背中で眠るナマエの顔を覗き込もうとした――が、残念ながらナマエは狐面をつけたままで。その顔が見られなかったことにショックを受けつつも、目元が見えなくても伝わってくるその容姿に期待は上がる一方なのか、興奮した様子で「早く目を覚ましてくれ麗しのプリンセスー!」と喚きその後、やかましい、とナミの拳骨を喰らったのは言うまでもない。

――騒ぎを聞いて、ローの仲間のシャチとペンギンも現れる。ベポはというと、あれほどダメだと言っていた川魚を腹いっぱいに食べた反動で腹を下し、茂みの向こうで下痢に悩まされているそうだ。

どいつもコイツも、と呆れたように溜息を吐いたローは、ナマエを背負い直すと感動の再会をするルフィ達に声をかける。


「ひとまず中で話そう。安全な食糧を農園から盗んである」
お前かァ!!盗んだのは!!!!!



   



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