EPISODE.01



――あれからサンジを救出しに行ったルフィ達と別れたナマエ達は、ハートの海賊団の潜水艇「ポーラータング号」に乗って、大きなトラブルもなくゾウからワノ国へと辿り着くことが出来た。
ワノ国に到着した一行は"九里おでん城跡地"にて早速、錦えもん達による作戦会議を始めていた。


「よいかお主たち!此処はワノ国・・・将軍の名は――黒炭オロチ!」


それに従う役人たちはもれなくカイドウの息がかかっており、お国の役人たちは故に横暴・・・だが手を出せばそれはカイドウの耳に届く。
同士が揃い、戦いの準備が整うまでは自分たちの存在は決してバレてはいけない。まずは国の住民になりすまし、静かに任務を果たす事――ただそれのみ、なのだが。

あれからフランキーは大工に、ウソップはガマの油売りに、そしてゾロは浪人、ロビンは芸者としてそれぞれ己に見合った住民へとなりすまし、町に忍び込んでいる。


一方の、ナマエはというと・・・いくら鎖国とはいえ、辺りにはカイドウの手下、海賊も紛れている。ただでさえ目立ってしまうカリスマ性の高いナマエが街を歩けばバレるのは時間の問題ということで、貴重な情報源にはなりそうだが、やむを得ずナマエは都から離れた九里に身を潜めるよう命じられた。


九里に身を隠してからおよそ一週間――ナマエは錦えもんが用意してくれたワノ国の衣装・・・着物というものを身に纏い、言われた通りただ、身を潜めていた。


『この長い袖にもやっと慣れてきた・・・けど、やっぱり足元が気になるなぁ』


普通の着物だと身動きが取れないであろうと、錦えもんが用意したものはやけに丈が短いものだった。スパッツを履いているから下着が見えることはないが、太もも部分が大胆に出ており、まだ慣れていない様子である。(これでも一度、ロビンが錦えもんに睨みを効かせてくれ、長くなったほうなのだが)

ナマエは特にすることもなく、九里の森林を歩いていた――その時。


「堪忍してけろ!放してけろ!おらそんな事言ってねーでやんす!お米もどうか返してけろ!!」
『・・・ん?』


幼い少女の声が森に響き渡る。
気配を消しながら、見聞色の覇気を使い、その声が背後から来るのを察知したナマエは地面を強く蹴ると高く跳躍し、高い木の枝に身を潜め、上空から地上の様子を探る。


「いやァ確かに言ったぜ、お前は悪の一族"光月家の侍者"・・・!重罪だ。遊郭に売るか・・・実刑か!容赦はない!」
「・・・!!」
『(・・・光月、家?)』


地上には鰐のような足の生えた生き物に乗った図体の大きな男2人組がいて、その一人の手の中には、恐らく少女が入っているであろう麻袋があって。どうやら捕まっているようだ。

光月家という聞き覚えのある名前に目を鋭くさせたナマエは、あんな小さな女の子にまで容赦のない言葉がけをする男達に怒りを覚えた。・・・しかし自分は隠れていなければいけない身。錦えもんからは「絶対に目立ってはござらん!!決して!!」と口酸っぱく言われている。

とはいえ、助けない訳にはいかない。少し悩んだが、見られる前に倒せばいいかと答えが出たナマエは木の上から飛び降りると、男たちが向かった海岸へと向かった。


『?あれは・・・』

「見ろ!浜辺に船だ!」
「狒々のやつもここにいたか!まだ狛犬を仕留められねェとは・・・ウチの自慢の用心棒の名が泣くぜ!」
「"真打ち"!やはりありました!不法入国の船です!」
【乗組員は?】
「一人見えます!麻酔で眠らせて連れて帰ります、労働力にはなるでしょう!」


男たちと、ナマエの見つめる先には――見覚えのある船。サニー号があった。
サニー号があるということは、ルフィ達も無事にサンジを連れ戻し、上陸できたのだろう。嬉しさのあまりナマエは走るスピードを速め、気づけば男たちを抜かしていた。


「・・・い、いまなんか・・・通ったか?」


それは男たちの目にも留らぬ速さで。一足先に、海岸にたどり着いたナマエは見聞色の覇気を使うと、すぐさまお目当ての気を見つけ――そちらに向かって猛突進した。


『ルフィ―ーー!!』
「!ナマエかー!?」


海辺には一人、ルフィと・・・その脇では大きな犬と、猿が喧嘩をしていて。少し周りが賑やかそうだが、そんなものお構いなしに弟の再会に心震わせたナマエはルフィの胸元に飛び込んだ。


『無事でよかった!怪我はない?』
「ああ!ナマエも元気そうで――」


――ふと、言葉を止めたルフィの瞳に赤い閃光が走る。見聞色の覇気を使い、先ほどの男がナマエに向けて銃を構えていることに気づいたルフィは男が引き金を引く前に、振り返る事もなくゴムの腕を伸ばし、殴り飛ばした。

男たちの存在をすっかり忘れていたナマエはルフィの首に抱き着いたまま、『そうだった』と今更になって目を見開かせ、助けてくれたルフィに礼を言いながら、砂浜に足を下す。
ニシシと笑ったルフィは、知ってか知らずか自身の麦わら帽子をとるとナマエの頭に深くかぶせ、男たちに顔が見えないようにした。


「ヤロ・・・!」


もう一人の男が、銃を構える。しかしスコープを覗いた時にはもう既に時遅し・・・高く舞い上がったナマエが上空から狙いを定め、落下の力を利用してそのまま男を蹴り飛ばした。


「うるせェビーチだな」
「くそ・・・!狒々!狛犬は後だ、そいつを捕らえろ!いや殺せ!!構わねェ!!」
「!」


刀を持った大きな狒々が、狛犬からルフィに標的を移す。
大きな声で威嚇の咆哮をする狒々に対し、ルフィもナマエも怖がる素振りもみせず・・・ルフィが「何だよ」と睨みを利かせば、一瞬で怖気づいた狒々は正座をし、可愛らしく首を傾げて見せた。もちろんそれは、近くにいた狛犬も一緒で。


「よし」
「何怖気づいてんだ貴様ァ――・・・ぐえー!?」


叫んでいた男が突然、鈍い音を立てて倒れこんでいく。・・・倒れた男の後ろには、先ほど捕まっていたと思われる少女が木の棒を持ち、肩を大きく揺らしながら立っていた。






   



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