EPISODE.14



イヌアラシの言葉のおかげで、それまでの不安が取り除かれたナミは安堵の笑みをこぼした。偶然にも先の答えを手に入れた為、ただ混乱していただけだったのだ。クロッカスの言う通り、確かにログはラフテルを指していた。終着点の更に先にあるラフテルに続く道を・・・。


「しかしおめェら伝説と繋がりすぎててレイリーと会った時みたいに頭クラクラするよ」
「拙者もロジャー達に会っておるが記憶が曖昧でござる。若かったゆえ」
「なるほど曖昧・・・って嘘つけェ!ロジャーは20年以上も前に死んでるよ!誰と勘違いしてるんだァ!!」
「ゴロニャーニャー!おでん様の伝説は濃厚じゃきいずれはまとめて話しちゃるぜよ」


話しているうちにクジラの木から無事に降りてきた一行。ここからはカイドウを倒すため、やる事は山積みのようにあった。ワノ国においても現在共に戦う侍達を募っているらしく、するとネコマムシがその間に会いたいとある人物がいると言い出した。


「誰だ?」
「元白ひげ海賊団、1番隊隊長――」
『!』
「"不死鳥マルコ"」


まさかここでその名を聞くとは思っておらず、ナマエ達は目を見開かせた。・・・一方、物覚えの悪いルフィはマルコという人物が思い出せないのか頭を抱えており、苦笑いを浮かべたナマエは「マリンフォードの頂上戦争で助けてくれた人だよ」と説明をする。


「おめェら友達なのか!そいつぁ頼もしいな」
「ヨホホ!手を貸していただけるならとんでもない戦力アップですね!」
「・・・いやでも待てよ?あいつら1年前の事件で・・・・・・」
「まぁ期待はするな。見つけたとしても希望は薄かろう」

「!ああ、あいつか!!確かにすんげェ―強かった!!・・・ん?でもなんで希望が薄いんだ?」
「あの戦争があった後・・・」
「ああ。マルコ率いる白ひげ海賊団の残党たちと黒ひげ海賊団の大激突」


――世に言う、落とし前戦争から1年。隊長たちの消息はパッタリと消えてしまったが、もし生きているとすれば・・・彼が居る場所に心当たりがあるとネコマムシは言った。
そもそも白ひげ海賊団と黒ひげ海賊団が戦った事すら知らなかったルフィは驚愕し、そんなルフィにロビンが分かりやすい説明をしてくれる。

両者援軍を含み、それはかなり大きな戦いであったという。そしてマルコ達は惨敗し、黒ひげが四皇に名を連ねるようになったのはこの戦いの後からであった。


「そうだったのか・・・・・・ックソォオ黒ひげ・・・!」
「大事件だったんだぞこれ!本当に修行してた間の情報を何にも知らねェんだな?」
「・・・ジンベエが言ってたんだ。頂上戦争でおれ、意識を失ったあと白ひげ海賊団に命を守ってもらったって」




エースの妹と弟を連れて行けよい、ジンベイ!!"その命"こそ!!生けるエースの"意思"だ!!!エースに代わっておれ達が必ず守り抜く!!!もし死なせたら、白ひげ海賊団の恥と思え!!!



「・・・また会って、礼を言いてえな」
『うん』
「ふむ・・・つまりわしらにしても錦えもんと同様、まだ準備する時間は欲しいがよ」
「そうか、分かった!じゃあ一度分かれっか」
「拙者達はワノ国にて同志達を増やし作戦を練る」
「戻って大丈夫か?お前たちは将軍に狙われてるんだろう?」
「危険は重々承知してござる」
「・・・しかし、国の同志が心配故・・・」


とはいえ今のワノ国はカイドウの縄張り・・・百獣海賊団と遭遇する可能性はかなり高く、入国するのもそう簡単にはいかないはず。どうやってワノ国に入国するか・・・頭を悩ませていると、ローが「うちの潜水艇で行けば航行中は安全だ」と案を出してくれた。後は島に着いた後の隠れる場所の確保が出来ればひとまず安心だろう。その間、ネコマムシは部下を連れてマルコの捜索に当たるという。

最終目標は将軍とカイドウ・・・錦えもん達が先に向かうのであればワノ国で集結するのが一番利口と考え、錦えもんのビブルカードを作る手はずとなった。だんだんと話しが纏まっていき、森を抜け侠客団の居住区に辿り着くと――なにやら遠くの方から賑やかな声が集まってくる。視線を向けてみるとそこにはたくさんのミンク族が、皆笑みを浮かばせ出迎えてくれたではないか。


「雷ぞう殿ー!おかえりー!!」
「無事でよかった!」
「縛られた手は痛くないですか!!」
「閉じ込めて悪かったなー雷ぞう!」
「宴にしよう!」

「雷ぞうさんの無事と、」
「2人の王の手打ちの祝いと!」
「無事落ち合えた光月家の祝いだァ〜〜!!」


その言葉に雷ぞうは唇を噛み締め、握った拳を震わせた。


「ッ・・・おのれミンク族・・・!!何が痛いですか、だァ・・・!」


自分の手を優しく握る子供のミンク族。その子供ですら怪我を負っていて、雷ぞうは涙と鼻水を流しながらも何かの印を組むと、空高く舞い上がり忍術を使った。


「どいつもこいつも・・・ッ・・・忍法!"大好きの術"〜〜!!!!」


空から溢れるばかりのハートの花びらが舞い、その場にいる全員が笑みを浮かべた。


「よーーし!!!宴だァーーー!!!」


意気揚々として宴に混じろうとするルフィを止めたのは、他でもないナミであった。


「待ちなさいルフィ!宴はもう充分でしょ!?船出すわよ、サンジ君のこと手遅れになっていいの!?」
「え!?なんでお前まで」
「私も行くに決まってんでしょ!?責任感じてるし第一この"新世界"の海を航海士の私なしであんた渡れるの!?」
「あ」
「おれも行くぞ!ペコムズは大重症、医者がいる」
「あ」
「それに落ち込んだりした時誰が音楽を奏でるんですか!?」
「あ」
「それはいいでしょ」
「!ちょっと仲間外れやめてくださいよ!一緒に目の前でサンジさん連れてかれた仲でしょう!?」
「・・・錦えもん、こいつら連れてくけどいいか?」
「許可などいらぬ。仲間を取り戻そうとする者を誰が止められよう!本来拙者も同行したい所!サンジ殿には恩があるのに・・・すまぬ!!」


サンジが目の前で連れていかれた手前、ナミ達もジッとしていられないのだろう。本当はナマエも一緒に行きたいところだったがこれ以上人数が増えてもこっそり潜入作戦が全くこっそりじゃなくなってしまうため、ナミ達に任せる事にした。


『みんな気を付けてね』
「式をぶっ壊したらすぐ逃げて来んだぞ!」
「オレ達は錦えもん達と行くけど・・・サンジを頼むぞ!」
「あ、ルフィ。万が一歴史の本文ポーネグリフに出会ったら"写し"1枚お願いね」
「いいぞ」
買い出しか!!
「私もワノ国で歴史の本文ポーネグリフを調べておくわ」
「おう!」


麦わらの一味も分かれる事になり、皆が頷いた――その時だった。
ズズズズ・・・と、突然地面が島ごと傾き始め、次の瞬間、大きな地響きと共に象主ズニーシャが大きく揺れだした。


「キャーー!?」
「な、なんだ!?」


パオオオオオと象主ズニーシャの鳴き声が響き渡り、こんな事が起きるのは初めてであった。


「「『・・・・・・!!』」」


――周りが騒然とするなか・・・ナマエ、ルフィ、そしてモモの助に異変が起きた。突然、何者かの"声"が頭の中に直接話しかけているのだ。それと共に激しい頭痛が走り、ナマエとモモの助は頭を抑えこみながらその場に蹲ってしまった。・・・しかし象主ズニーシャは大きく傾き、立つこともままならなくなるとナマエとモモの助の体は宙へと放りだされた。

・・・しかし、寸前のところでナマエはローが、そしてモモの助は錦えもんが掴んだためなんとか無事であった。ローはナマエを片手で抱えたまま小さく舌打ちをすると近くの木にしがみつくが・・・ナマエは目に涙をためて頭を抑えたままだった。


『ッ・・・・・・う、うう・・・!』
「ぐああああ!!!」
「頭が・・・ッ痛いでござる・・・!!」


ナマエ、ルフィ、モモの助・・・3人とも同じように頭を抑え、地面の傾きが収まると一行が駆け寄ってくる。



"そこにいるのか・・・!?"


「だ、誰だ!?」
「ちょ、ちょっとルフィ達どうしたの!?」
「どうしたってッ・・・聞こえるだろ・・・!?うあああ!」
「え!?何が!?」


どうやらその声は3人にしか聞こえていないようで。すぐに異変に気付いたイヌアラシ、ネコマムシは額に汗を浮かばせた。


「ま、まさかあガラ達も聞こえるのか・・・!?」


"早くしてくれ・・・!"


「ッお前!!!誰なんだよォ!?」
「今までで一番大きい声でござる・・・ッ・・・!!」


"早く・・・命じてくれ・・・!!そこにいるのなら・・・!!"


『ッ命じるって・・・何を・・・!?』
「お前が答えろ!!!!ッお前は、誰だァ!?!?」
「あぐッ・・・う、ううう・・・!」

「ちょ、ちょっとルフィ達誰と喋ってるの!?私達には何も・・・!」
「でも・・・聞こえるだけだ!こっちの話聞いてねェし、どこの誰かも分からねェ!」
「どういう事だ・・・!?」
「なんなんだよ一体!?」
「・・・・・・ゴール・D・ロジャーも・・・そしておでん様も、この地に来て同じ事を言っていたと聞く」
「!」


声のする方を見上げてみるとそこにはペドロの姿があった。あのゴール・D・ロジャーと光月おでんも、会話は出来ないが大きな声が聞こえたといい・・・その声の主が誰なのか分からないまま、いまだに地揺れは続きミンク族は一か所に集まり、木などにしがみつく事しかできなかった。


「歌姫屋、その声っていうのはまだ聞こえるのか?」
『ッ・・・・・・・・・』
「おい・・・!?歌姫屋!」


もはやローの声は、ナマエに届いていなかった。それはモモの助も同様で、2人は一点を見つめたまま・・・尋常ではない量の汗を額に浮かべ、目の前に浮かぶ"景色"に言葉を失った。
誰が見せているものなのだろうか・・・視界に真っ暗な闇が広がったと思えば、次には海の景色が見えはじめ・・・・・・暫くすると海に浮かぶ海賊船の集団が、ナマエとモモの助の目に止まった。そこに乗っていたのは――――なんとあの"ジャック"であった。


「!ジャックでござる!!」


モモの助の言葉に、全員の視線が集まる。まさかこの騒動は、ジャックの仕業だというのか。やはりジャックは生きていたのか。


「ジャックが・・・ッゾウを襲っているでござる・・・!」
『船が5隻・・・ッ・・・9時の方角、に・・・!』


象主ズニーシャが襲われている。同じ声が聞こえても、その光景はナマエとモモの助にしか映されず、ルフィには見えなかったようだ。
頭に流れ込んでくる映像・・・それは恐怖そのもので、幼きモモの助は声を震わせた。


象主ズニーシャの鳴き声、そしてこの揺れ・・・なるほど合点がいく・・・おのれジャック、象主ズニーシャを襲うとは・・・!」
「じゃが生きているとは好都合じゃい!返り討ちにするがじゃ!」
「船を出せ、海でジャックに応戦を!!」

「「「おおおー!!」」」


しかし象主ズニーシャの揺れはより一層激しさを増し、移動も困難であった。ナマエはローに支えられながら、また聞こえてくる大きな声に強く目を瞑る。



"苦しい・・・!私が倒れたら・・・お前たちも・・・危ない・・・!"

「!」
『ま、まさか・・・・』
「この声の主は・・・この・・・・・・ゾウでござる・・・!!」



   



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