EPISODE.13



「おれ達の敵は、カイドウだ!イヌアラシもネコマムシもモモや錦えもんたちも忍者もトラ男もみんなして手ぇ組んで四皇カイドウをぶっ飛ばす!それが同盟だ!お前ら、もう二度と頭を下げるな!手もつくな!同盟っていうのは・・・・・・友達の事だ!!」
違う!!


すかさずツッコミを入れるロー。ルフィのペースに慣れてきているようだ。


「それから同盟は組むけど条件がある」
「ふむ・・・ん!?いやそれは組む前に言うことではござらんか!?」
「条件とは?」
「うちは今仲間が1人欠けてんだ」
「ん?」
「ああサンジの件か」
「サンジ?」
「実は・・・色々あったのよ」


ナミはざっくりと、事情を知らないイヌアラシと錦えもん達にサンジの現状を伝えた。


「何だと!?ビッグ・マムに!?聞いていないぞ!」
「ゆガラが寝ゆう間のことじゃき」
「なるほど・・・それでサンジ殿がいなかったのでござるか」
「俺が行って連れ戻してくるからそれまでは戦うのを待ってくれ」
「えっ!?それが条件!?そ、そういうことなら待つでござるよ」
「ああ!その代わりサンジは強えぞ!あいつが帰ってきたら千人力だからな」
「おれは二千人力だがな」
「はいはい」


対抗するゾロの肩をポンポンと叩くナミ。相手は四皇ビッグ・マム・・・イヌアラシが心配そうにルフィに大丈夫かと問うが、戦いに行くわけではない。あくまでサンジを奪還するだけだ。

一通りの話が済み、一行が地上に出ようとしたその時だった――イヌアラシ、そしてネコマムシが目を合わせなにやら合図を送ると、ルフィの隣にいたナマエに歩み寄っていく。


「ゆガラ・・・すまぬが、額を見せてはくれまいか?」
『額?』


首を傾げながらもナマエが前髪を上げる。するとイヌアラシはネコマムシに一度視線を向けた後、懐から小さな箱を取り出した。その箱の中には――月と太陽で出来たアシンメントリーの耳飾りがあった。銀細工のようで立体的な細かい細工がされてあり、所々に宝石が散りばめられてある。
これに目利きの良いナミが目をハートにさせて食いついたのはいうまでもない。

興味津々に目を輝かせるナミを見て困ったように笑みを浮かべていたナマエの額が突然、能力を使う時しか出ないはずの三日月模様が浮かび上がり、そして淡く光り始めると反応するかのように耳飾りも同じように光り始めたではないか。


『っ』
「な、なんだ!?」
「・・・やはり・・・」
「ああ・・・まさかとは思うておったが・・・」
『?』


状況がついていけず首を傾げるナマエ達。


「このモコモ公国には古くから言い伝えがあってな・・・月の民がこの地に訪れた時、これを渡すよう先祖代々受け継がれてきたものなのだ」
『月の・・・民?』
「ああ。ゆガラのその額の三日月模様・・・それが月の民である証」
『こ、これ・・・?』


ナマエは自身の額に触れた。しかしこれはキラキラの実の能力者になってから出てくるようになったものであって、それを言うならすぐそこにいる雷ぞうも額に三日月模様がある。けれど雷ぞうの額にある三日月模様は違うらしく・・・ナマエの三日月模様がその耳飾りに反応したという事が肝心らしい。


「ゆガラも知っているだろうがキラキラの実は選ばれた者の前にしか姿を現さない。その選ばれた者こそ・・・月の民である証」
『!』
「ただの月の民じゃないがぜよ。月の民の中でもこの耳飾りが反応したっちゅうことは月の女神セレーネの力を受け継いどる可能性も大いにあるが」

「ま、待って!月の女神セレーネって・・・まさか、あの・・・!?」


ネコマムシの言葉に反応をみせたのは――ロビンであった。ネコマムシ曰く、考古学者の中でも"月の民"について知っている者は数少ないらしく・・・状況がついていけていないナマエ達に、ロビンが額に汗を浮かべながらも話しだす。


「月の神は"すべての生命と知恵と力との源である絶対者"・・・別名、"創造主"とも呼ばれていてこの世界の古代兵器とも深く関わりがあったみたい。アラバスタで見た歴史の本文ポーネグリフにそう記されてあったけれど・・・驚いたわ、まさか本当に実在していたなんて」
「そ、創造主!?」
「古代兵器!?なんだかえらくスケールがでかい話になってきたな・・・!?」
「よく話が分かんねェんだけど・・・つまりナマエは神様なのか?すっげーー!!」
「ややこしくなるからあんたはちょっと黙ってなさいルフィ!!!」


周りがどよめきをあげるなか当の本人・・・ナマエの表情は不安そのもので、そんなナマエを見てフッと優しく笑みをこぼしたイヌアラシは箱から耳飾りを取り出すとそれをナマエの耳につけ始めた。


「今まで力が暴走したことはないか?」
『暴走・・・?』
「ああ。もしかしたら意識が無い時に起きてるかもしれないが・・・」
『!』


月の力キラキラの実を操るだけでも難しいというのに、さらに月の女神セレーネという壮大な力も相まって抑えきれず暴走をしてしまうのだ。体の負荷も大きく、このまま暴走を繰り返してしまうとナマエ自身が、月の女神セレーネの力に飲み込まれてしまうという。


頂上戦争でエースがサカズキに殺された時――あとからシャンクスに話を聞いて分かったのだが、エースの死を目の当たりにした直後、あのサカズキとほぼ互角の戦いをしていたそうだ。もちろんその時の記憶は曖昧で、断片的なものしか覚えておらず・・・もしかしてそれが"暴走"だとするならば・・・。心当たりがあったナマエは小さく頷いた。


「もしも本当にゆガラが月の女神セレーネの力を受け継いだ者ならば・・・この耳飾りをつけていれば力が暴走することも覚醒する事も無い。もし万一にでも覚醒してしまえばゆガラ自身で力を制御する事はまず不可能だろう」


――万が一覚醒してしまった後、自分は自分でいられるのだろうか?見境無く仲間を傷つけてしまわないだろうか。もしこの話が本当だとしたら・・・どうして自分が選ばれたのだろうか。
・・・考えれば考えるほど顔色は悪くなる一方で、そんなナマエの不安を察してくれたのか、不意にふわふわとした毛並みの手がナマエの頭に乗せられる。・・・ネコマムシだった。


「そんな顔せんと、ゆガラはゆガラじゃ!なんも心配することはない」
『・・・う、ん』


とにかくこの耳飾りがあれば暴走する事はない。右耳には月の、左耳には太陽の耳飾りがつけられ、揺れるたびにそれは綺麗に光り輝いた。

モコモ公国と月の民がどういう関係を持っていたのかはイヌアラシもネコマムシも真相は知らないそうですべては歴史の本文ポーネグリフに記されてあるようだ。

耳飾りをつけたナマエは自身の手のひらを見つめる。


「どうナマエ?何か変わった感じとかするの?」
『特に・・・』
「でもこれで暴走しないんですよね?よかったじゃないですか!ヨホホホ」


全く実感の沸かない話だが、ブルックの言うとおりとにかく耳飾りがある限りは安心なのだろう。小さく頷いたナマエは先ほどより幾分かは顔色も戻っており、一行はクジラの木の内部から出て帰路についた。


――来た道を戻っている最中、ネコマムシはルフィがかぶっている帽子について、もしかしてシャンクスのものではないのかとルフィに問いかけてきた。シャンクスという懐かしい人物の名前にルフィは笑顔で頷く。


「シャンクスだよ!まさかネコマムシ知り合いなのか?」
「知っちゅうき!赤髪のシャンクスやろ?そうかどうりで見覚えのある麦わら帽子やと思うたニャンニャニャー!」
「そっか!ハハハ!イヌアラシもそう言ってたな!みんなシャンクスのこと知ってんのか?」
「ネコも私も一時ロジャーの船に乗っていたのでな」
「ええ!?お前らも海賊王の船員クルーなのかァ!?」


船員クルーといえばそうなるのだろうが、正しくはイヌアラシもネコマムシも、光月おでんの従者としてロジャーの船に乗っていたという。


「わたしたちは常におでんさまの従者として船に乗った。白ひげのモビーディック号に乗っていたときも、」
「え!?」
「そこからおでんさまがロジャーにスカウトされた時もいつも側に・・・」
「ちょちょ・・・ちょっと待て待て!白ひげ!?」
「そう・・・世代でいえば我々はシャンクスやバギーのような見習いたちに近い若造だったのだ」
「おい待てストップストップ!頭の中が追い付かねえ!えっと・・・」


慌ててノートを取り出し、整理するべく文字に並べていくウソップ。しかしイヌアラシもネコマムシも、ラフテルへは同行していなかったらしい。
昔を思い出しているのか二人・・・いや二匹は嬉しそうに笑みを浮かべながら語り始める。


「いやァ思い出すニャア・・・楽しかったぜよあのころは!見たこともない人種、地理、気候、空に浮かぶ雲の海!」
「海底に浮く島陽光・・・毎日胸が心が躍った!懐かしき冒険の日々・・・!」

「ニャンニャニャン!」 「ワンワン!アオーン!」

「・・・お前らさっきまで殺し合いしてたよな」


イヌアラシとネコマムシはお互いに肩を組みながら、機嫌よく歌い始めた。てっきり錦えもん達も白ひげの船に乗っていたと思っていたが・・・彼らはワノ国にいたらしい。むしろおでんが海賊の船に乗り込まないよう必死に止めていた側だったという。ワノ国は他国との交流が禁じられている鎖国状態・・・鎖国国家のワノ国においては海外へ出ること自体が罪。片やおでんは閉ざされた自国の法にずっと疑問を持ち続けた異端児だったそうだ。

・・・とはいえ、錦えもん達も白ひげやロジャーたちとは彼らがワノ国に上陸した折に面識はあるらしい。


「彼らは義理堅く別に悪い人間だとは思わんが海賊船に大名が乗り込むなど前代未聞・・・家臣としては、」
「ん?とにかくじゃあみんなはシャンクス知ってんだな!レイリーも」
「ああ、もちろん!」
「ニシシシシ!そっかァ!」


海は広い。その広い中でのこうした繋がりは、ルフィにとっては喜ばしいものであった。


「ちょっといいか?」
「「ん?」」
「ロジャーの船に乗ったんならそりゃ俺の船造りの師匠トムさんの造ったオーロ・ジャクソン号だぜ」
「何と!船大工トムの弟子か!」
「ああ!俺はトムさんの弟子だ・・・スーパー!!」
「あ、あの、次いいですか?ではもちろん船医のクロッカ・・・」
「待ってブルック!話割ってごめんね。ちょっと確認しときたいの」


ナミには心配事が1つあった。それは・・・航路のことだ。4つの歴史の本文ポーネグリフへの道を示すといっていたが、記録指針ログポースのログは今辿っていない状態になっている。本来なら3つの針が指し示す方角から次の目的地を決めているのだが・・・。ナミ達は偶然、ローに出会って偶然ビブルカードでこのゾウへ来て、偶然ラフテルの場所を示すロード歴史の本文ポーネグリフに辿り着いたが・・・以前出会った双子岬のクロッカスは、ログをたどれば最後には全ての航路が一本に纏まると話していた。


「わたしそこにラフテルはあるのかと今まで思ってたんだけど」
「おう!クロッカスか」
「懐かしいニャア!クロッカスは元気かニャ?」
「元気だったぞ!会ったの2年前だけど!ラブーンのとこにいたおっさんだろ?」
「船医クロッカス!やガラは昔ずっとある海賊団を探しよって・・・」
「それ全滅した私の海賊団です」
「ええーー!?」

ちょっとォ!!聞いてる!?大事な話してんだけど!!


どんどんと共通の話題が出てくるせいで話が一向に進まず痺れを切らし、怒鳴るナミ。


「話は分かった・・・ログをたどった先に興味があるのなら行ってみればいい。その3本の指針が全て同じ方角1つの場所を示す航路は確かにある」
「!」
「ただし・・・ゆガラたちはこれまでの旅ですでにその先の冒険を始めているのだ」
「どういうこと?」


――本来ならばそのログの終着点で初めて気付くのだ・・・歴史の本文ポーネグリフと古代文字の謎に。それを生み出した文明と見えぬ最後の島ラフテルの存在に。ロジャーはそこから大きく冒険をやり直したのだ。


「クロッカスも海賊王の船員クルー。全てを知る者の1人だ。ゆガラたちが嫌いでないかぎり嘘はつかん」


《そして最後にたどりつく島の名はラフテル・・・偉大なる航路グランドラインの最終地点!歴史上にもその島を確認したのは海賊王だけ――伝説の島なのだ》



「ログの終着点の・・・その先・・・!あたしたちはすでにその先に・・・ッ・・・!分かったわ。焦ることはなかったんだ。わたしたちは航路から外れたわけじゃなかった・・・偶然先の答えを手に入れて混乱していただけ。クロッカスさんの言うとおりログは確かにラフテルを指していた、終着点のさらに先にあるラフテルに続く道を・・・!ログは嘘をついていなかった!」
「うむ。ゆガラ航海士か?しっかりしているな」
「え?」
「大丈夫!道は間違えてはいない、このまま進め!」



   



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