EPISODE.12



「ところで・・・あなた達、なぜそんなに歴史の本文ポーネグリフに詳しいの?」
「発端を話せば・・・昔、わしらの主君、光月おでん様が石に興味を持っちょったのが始まり・・・というのも・・・ああー、これは話して構わんのか?犬」
「・・・・・・」
「苦しゅうない!この者達に隠し事はいらぬ、何でも話すがよいぞ」
「なァーーにが苦しゅうないだ!お前はまたえらそーに!」
「偉いのだから仕方が無い!無礼者め!!」


モモの助とルフィが再び頬を抓りあうなか、ネコマムシはモモの助の許可が下りたところで会話を再開する。


「・・・ワノ国、光月の家系ゆうがは実は代々、石を切り出し加工する石工の一族・・・今尚、高い技術力を持っちゅうがか」
「石工・・・?」
「そうじゃ。800年前の大昔、その光月一族の腕で作られた壊せぬ書物・・・・・それが歴史の本文ポーネグリフぜよ!」

「「「「「「えええーーーーー!?」」」」」」


光月家が世界中に散らばる歴史の本文ポーネグリフを作った一族・・・。しかし、モモの助たちは歴史の本文ポーネグリフに何が書いてあるかは後世に伝えられておらず、内容は石を読めば分かる、と・・・伝えられていたのは古代文字の読み書きのみであったという。


「ッしかし・・・それも不幸な事に・・・モモの助様に伝承される前に父上、光月おでん様の代で途絶えてしまった・・・!」
「え・・・!?」
「途絶えた・・・ってことは・・・モモの助さんのお父上は・・・」

「・・・ああ・・・おでん様は・・・ッ・・・ワノ・・・ワ・・・くっ・・・」


錦えもん、カン十郎、モモの助、ネコマムシ、イヌアラシ・・・・・・事情を知る全員が俯き、静かに涙を流し始めた。頑張って言葉を繋げようとする錦えもんだが声を詰まらせ、悔しそうに歯を食いしばる。


「お、おいもういいぞ!話したくねェ事までは・・・!」
「ッおでん様は・・・処刑され申した・・・・・・!!」
「!」
「ワノ国の将軍と・・・海賊カイドウの手によって・・・ッ家臣である我ら全員の命を守り、最後を遂げられた・・・!」
「カイドウに・・・!?」
「くっ・・・うぐ・・・そして・・・四皇カイドウの百獣海賊団は・・・ワノ国におる!!」

「・・・答えたくなきゃ別にいいが、お前らの親分は何をして処刑された?お前らが捕まったり狙われたりしてるのと関係があるんじゃねェのか?」



拭いても拭いても止まらない涙。あんなにも小さな子どもが、大切な人を失った苦しみや悲しみを背負っている・・・それが痛いほど伝わってくるナマエは静かに唇を噛み締めた。
ゾロの質問に暫くは涙を流していた錦えもんだったが、落ち着くように何度も深呼吸を繰り返し、再び話し始める。


「ああ・・・察しの通り、罪といえば大変な罪・・・ッカイドウは我らから情報を引き出そうとしておる・・・!先代大名、光月おでん様は・・・海賊王ゴール・D・ロジャーと共に最後の島、ラフテルに辿り着き世界の秘密も知ったお方でござる!!」
『!』
「モモの助の、父ちゃんが・・・ゴールド・ロジャーと・・・ラフテルに行った・・・!?っお前の父ちゃん、海賊王の船員クルーだったのか!?」
「うっ・・・ううう、ぐすっ・・・ううう・・・!」
「おい!モモ!!」
「ちょ、ちょっとルフィ・・・!」
「ッそうで、ござる・・・!」


世界の秘密を知った者――あのレイリーとも一緒にいたというのか。歴史の全て・・・その中にはロビンが知りたがっている"空白の100年"も入っている。
空白の100年――世界の歴史にぽっかりと空いた失われた100年間。この空白期間の後、誕生したのが世界政府といわれている。以来、800年にわたり世界を統括してきた世界政府はこの空白の100年についてその真実を解き明かす事を堅く禁じてきた。
100年間の出来事は、歴史の本文ポーネグリフを読み解く事で明らかになるとされている。
かつてロビンの故郷である考古学の聖地オハラにてクローバー博士は歴史の本文ポーネグリフを研究し空白100年の秘密を解き明かそうとしていた・・・が、クローバー博士はオハラの人々諸共、この世から抹殺された。この一件を初めとして、空白の100年の一切は世界政府によってもみ消されてきたのだ。
なぜ世界政府は空白の100年を直隠しにするのか・・その秘密を知るであろう者達も、今は口を閉ざしたまま・・・。


「・・・そうか。その世界の秘密ってのを部下から聞きだすためにカイドウと繋がってたドフラミンゴもシーザーもお前らを捕まえようとしてたんだな」
「左様でござる」
「それでお前ら知ってるのか?世界の秘密ってやつを・・・!」
「っそれは・・・拙者たちも知らぬのでござる・・・!おでん様は秘密を我らに背負わせようとはせなんだ・・・拙者たちは何も知らぬ!」
「ああ・・・最も、知っておっても口は割らぬがな。知ろうが知るまいが追っ手はやまぬ!それがしたちに残された道は・・・戦う事のみ!」
「然り!我ら敗残の兵なれどこの生き恥を甘んじて受け入れ、今日まで生き延びたのはただ一点・・・!この胸に刻みしおでん様のお言葉ゆえ!!」
「かのお言葉こそ我らの生きる便でござる・・・!」
「な、なんだよ言葉って」
「おでん様が残されたお言葉はたった一言・・・!!」




――ワノ国を開国せよ――




「開国、って何だ・・・?」
『・・・ワノ国は鎖国政策。即ち、国の外に出る事も外から入ることも禁じているの。それをやめて他の国と交流を持つってこと』
「惜しむらくは主君、おでん様の盾とならねばならぬ我らが・・・あろう事か一転命を守られて生き恥晒した・・・!今やるべきは命を賭して主君の無念を晴らすことのみ!!」
「ワノ国を奪った将軍を討ち、閉ざされた国を開国すること・・・」
「それが我らの志願でござる!!ワノ国は今、手を組んだ将軍とカイドウの手によりほぼ制圧上体・・・今、国では僅かな反乱をかき集めておるが・・・まだまだ敵の大群に対して多勢に無勢・・・勝機は見えぬ!」


錦えもん、カン十郎、雷ぞうがそう話すなか・・・モモの助は相変わらず涙を流しながら、その場に佇んでいた。
ナマエがモモの助に駆け寄ろうとしたその時、横からスッと腕が伸びてきて止められる。その腕は――ルフィのものであった。ルフィの視線の先にはモモの助が映っており、言葉には出していないものの、それが何を意図しているのか――さすがは姉というべきなのだろうか、理解したナマエは小さく頷くと一歩、身を引いた。


「だが勝たねばならぬ!従って、共に戦ってくれる同士を募るため我らは海に出たのだ!まずはこのゾウを目指して・・・!」
「百獣海賊団に対抗するには最も心寄せ、頼りにすべきミンク族の力がどうしても必要であった・・・」
「ああ・・・光月家とミンク族は古くから何かあれば運命を共にすると契りのある両族・・・」
「なにより、わしと犬はおでん様の直属の家臣・・・雷ぞうが来た時から戦士達も皆、腹を決めちゃあるがじゃ!」
「・・・しかし、いざ戦ってみれば・・・たかだかカイドウの一軍隊・・・ジャックの軍団に対してこの結果!」
「締まらん話よのう・・・」
「口惜しい事だ・・・!」
「っおい!それは敵が汚ェ兵器を使ったからだろう!」


毒ガスを使うなんて誰が想像するであろうか。しかし卑怯な敵が反則負けになるならそれでいい・・・どんな手を使われようともゾウはイヌアラシ、そしてネコマムシの治める国・・・勝たなければいけない戦いであったのだ。


「だが次はそうはいかんさ・・・同じ轍は踏まぬ・・・!奥の手もある、次戦うならばミンク族の"真の力"を見せてくれる!」
「!真の、力・・・?」
「おう!このまま引き下がるわしらじゃないきに!」
「だったらもっとちゃんと怪我のこと考えろよな!その真の力ってやつを発揮できなくなるぞ!」
「分かっとるぜよ!」
「完治するまで禁止だからな!」
「そ、それはつまらんぜよ・・・」
「風呂もダメだぞ!」
「はにゃァ・・・」


さすがのネコマムシもチョッパーの言葉にがっくりと肩を落としていた。
――錦えもん、カン十郎、そして雷ぞうの3人は目を合わせ、小さく頷くと再度、ルフィの前で膝を折った。


「・・・して頼みが・・・ルフィ殿、そしてロー殿!」
「ん?」
「あ・・・?」
「命を救われなお物願いなどおこがましいが、お主らの強さには毎度圧倒されるばかり・・・所志道連れもご縁なればワノ国の将軍および四皇カイドウを討つ戦にどうか助太刀願いたい!」
「どうかお頼み申すルフィ殿!」
「お頼み申す・・・!!」
「う・・・うう・・・ッ・・・」


ルフィ達にとっても願っても無い話だ。侍たちにミンク族・・・こちらとしても戦力として大いに役立つ。カイドウとはいずれぶつかる腹積もり・・・乗らない手は無い。


「よろしゅう願い奉る!」
「――断る!!!」
「ぬあ!?な、なんと!?」
「!い、今なんつった!?」
「こ・と・わ・る!」
「何でだよ!!航海をしてきた仲間だろう!!」
「ル、ルフィ殿・・・ッ」
「断る!!」
「「断るなァ!!!!」」


ウソップ、フランキー、そしてチョッパーはルフィに考え直すように促すが・・・しかしルフィの心は変わらぬまま。どうしてだよと揉める一方でナミもルフィの意見に賛成だと言い出した。


「ルフィの言うこと、一理あるわ」
「ナミ!?」
「あたし・・・交渉してくる」
「「違う違うやめろォ!!!」」


目をお金にさせて錦えもんたちの所へ行こうとするナミを必死に止めるチョッパー。
全く埒が明かず、フランキーがナマエに「ナマエからもなんか言ってくれよ」とルフィを説得するよう言われる・・・が、ナマエは困ったように眉をハの字にさせながらルフィと、そして――遠くで泣いたままのモモの助を見つめた。


『ルフィはきっと――本人から、聞きたいんだよ』
「え?」

「お前は飾りかよ!モモ!!」
「!」
「ッやめろよ子ども相手に!!!」
「お前が言えよ!!偉いんだろうが!!こんなにすげェ奴らの大将なんだろ!?泣いてるだけかァ!!!」

「うっ・・・うう、うぐ・・・ッ・・・」


ルフィの言葉にモモの助の涙が更に加速していく。それを見たナミは「あんなに泣かせることないでしょう8歳の子どもにムキになってー!!」とルフィに平手打ちを繰り返した。本来、跡取りというものは成人するまではそれほどしっかりする必要は無いもの・・・だが、ルフィにとってはそんなのはどうでもよかった。

涙を流しながら、モモの助は一歩、一歩・・・ゆっくりとルフィ達の所へと歩いていき、ルフィから手を離したナミがモモの助を抱きしめようとした――がモモの助はナミの横を通り過ぎ、ルフィの元へと向かっていく。


「(父上・・・っ拙者は・・・父上・・・!)」
「・・・・・・」
「・・・・・・ッ・・・ル、フィ・・・拙者は・・・」





――お前の父は・・・バカ殿だ





「ッ〜〜・・・カイドウを倒したい!!カイドウは親の敵でござる!母上も殺され申した!」
「!」
「拙者だって早く大人になって強くなって父上と母上の敵を討ちたい!家臣も皆守ってやりたい!」

「ッモモの助様・・・!」
「そのお気持ちで十分じゃき・・・!」
「・・・歳を取ったなゆガラ」
「黙れ!」

「されど体も小さい故、無理でござる・・・だから一緒に戦ってほしいでござる!この通りお願いす――ぶっ」


膝をつき、頭を下げようとした瞬間――ルフィの手が、それを止めた。


「よく分かった」
「!」
「手ぇ組もう。――同盟だ!カイドウの首はおれが貰うぞ!」
「・・・!!かたじけのうござる・・・かたじけのうござる・・・!!」


笑みをこぼしたモモの助は差し出されたルフィの手を両手で包み込むようにして握り、何度も何度も礼を述べた。


「・・・うむ。確かにこれが"筋"だ」
「ゴロニャンニャニャーン!大将同士の契りあっぱれぜよー!」
「・・・麦わら屋」
「ん?」
「おれへの筋はどうした」
「あ?いいだろ?」
「いいけど、だ!」

「まこと良かった・・・!」
「うむ!我ら反省せねばなるまい・・・」


子どもだ子どもだといってもモモの助は光月家の当主――ついそれを忘れ、守ることばかりを考えていた。8歳相手にムキにはなれど、モモの助を最も一人前として見ているのは――ルフィなのかもしれない。


「よーしお前ら集まれ!俺たちは・・・四皇カイドウをぶっ飛ばすための"忍者海賊ミンク侍同盟"だー!ハッハッハッハ!」
「長ェな!?」
「・・・忍者いるの?」
「「「「そりゃいるだろ!」」」」
「ハイハイ」





   



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