EPISODE.11



「クジラに登るぜよ。蔓を渡る道順を覚えれば頂上まで行けるきに!」


ローとも合流し、一行は雷ぞうに会うべくネコマムシに案内されながら、ゾウの島のシンボルともいえるクジラの木に登っていた。ネコマムシのしっぽの上に乗っていたルフィ、ウソップ、チョッパーが忍者との対面に期待を膨らませるなか・・・最後尾を歩くローは隣にいるナマエに声をかける。先ほどから顔色が悪いのだ。


「・・・どこか痛むのか?」
『う、ううん・・・だい、じょうぶ・・・なんか、声が聞こえて・・・』
「・・・声?」
『うん・・・たまに、聞こえるの』


ドレスローザであったのとはまた違う・・・何を言っているのか分からないが、それが聞こえる度に頭に激痛が走る。しかし具合が悪いのはナマエだけではないようで、前を歩く錦えもんの背中にいるモモの助も同じ状態であった。


「クジラに近づくほど大きな声が聞こえるのでござる・・・」
「体質がおでん様に似ておりますなァ」
「うう・・・」

「・・・もう1人、似たような事を言う男がいたな」
「わしもそれを思い出しおったぜよ」


――イヌアラシとネコマムシの視線が、最後尾にいるナマエに向けられたことを、この時誰も知る由も無かった。

蔦を伝って暫く歩いていると隠し扉が開き、長い長い階段が目の前に姿を現した。そこは丁度クジラの木のしっぽの辺りにある場所で――ジャック達がいくら探しても見つかるわけが無いと、納得した。

一段一段、階段を下りていると・・・・・ふと、下の方から唸り声が聞こえてきた。



「"うわぁああああああ"」

「・・・今のは?」
「雷ぞうの声じゃき」
「「「「忍者ァー!!」」」」


一際目を輝かせたルフィ、ウソップ、チョッパー、フランキーが走り出す。長かった階段の終点が見えた。


「ついたぜよ。あガラが忍者の雷ぞうじゃき」
「忍者!!忍者!に・・・ん・・・・・にん、じゃ・・・?」

「ッ来たなネコマムシ・・・!!おぬし何故拙者を敵に渡さなんだァアァア!!ここへ来るメシ運びの者は皆・・・ッ・・・怪我をしておったぞぉお!!国は無事と聞き申したが実かァ!?もし偽りならばこの雷ぞう、貴様を恨むでござる!!!かああーー!!!」

「「「「えええーー!?なんかイメージしてたのとちがーーーう!!」」」」


ワノ国の忍者――霧の雷ぞうは、身動きがとれないよう厳重に鎖で拘束されていた。
その姿はルフィ達が想像していたものとは遥かに程遠いもので・・・何かが砕け落ちる音が鳴り響く。すっかり意気消沈したルフィ達に加え、ゾロも「あれはねェな」と肩を落とし、ローも小さく舌打ちをした。


「顔でかい・・・」
「足遅そう・・・」
「あれが雷ぞうだと・・・?」
「あいつが忍者であってたまるか・・・!」

「ん?おぬしらこの国の者じゃないな?何奴・・・!?」
「雷ぞう!」
「!おお錦えもん、カン十郎・・・っモモの助様・・・!!」


後から来た錦えもん達を見て雷ぞうは同士の姿に安堵したのか、涙を流した。その間もルフィ達は雷ぞうに訝しげな視線を送ったまま・・・慌てて錦えもんが雷ぞうの鎖を外す。

ふとロビンが、奥の岩壁に彫られた光月家の家紋、そして今まで雷ぞうが鎖で繋がれていた赤い石に気づいた。


「あの家紋は・・・光月家の・・・?」
「この家紋は何百年も前からあるものだ」
「それに・・・あの石は?見たこともない色・・・真っ赤な・・・」
「ああ、"歴史の本文ポーネグリフ"じゃ」
「!!」
「ゆガラの事は知っている・・・ニコ・ロビン。"オハラ"はあの文字を解読したと聞く・・・」
「!あなた達はオハラを知っているのね・・・?」


オハラ――それはロビンの故郷であった。世界中から多くの考古学者が島に集結し、日々歴史の研究を行っておりその研究の中には世界政府により調査が禁じられている"空白の100年"や歴史の本文ポーネグリフに関する研究も含まれていた。
しかしその研究が世界政府に見つかってしまい、オハラはバスターコールという一斉砲撃により瞬く間に焼け野原となり、翌年以降、地図上から削除されたのだ・・・。

ロビンは考古学者として、これまで様々な歴史の本文ポーネグリフを見てきたが・・・このように真っ赤な石のものを見るのは初めてだった。

イヌアラシの承諾を得て、ロビンは胸に期待を膨らませながら赤い石の歴史の本文ポーネグリフを解読し始めた。

ロビンが解読しているその間、雷ぞうは落胆したルフィ達に忍術を見せていた。分身の術、変わり身の術など・・・・見た目はイメージと違えど見せた技はどれもイメージしていたものと一緒で、すっかり機嫌が良くなったようだ。

ロビンは歴史の本文ポーネグリフに書かれた文字を紙に起こし、それをナミに見せた。


「・・・どう?ナミ」
歴史の本文ポーネグリフにこれが書いてあったの?・・・確かに、これを元に海図が書ける・・・何かの場所を特定できそうよ、ロビン!」
「!」

「その赤い石の名は・・・ロード歴史の本文ポーネグリフ・・・海の猛者どもが捜し求める偉大なる航路グランドラインの最終地点――そこへ導くための石だ!!」
「「「「「!!」」」」」


クジラの森は、それ故に神聖でありネコマムシ率いる侠客団ガーディアンズが守る必要があったのだという。
偉大なる航路グランドライン・・・それはすなわち、最後の島――ラフテルへの道しるべ。


「「「「ええええーー!?ラフテルーー!?!?」」」」
「ああ・・・しかし、」
「ゴールじゃん!!海賊王じゃん!!!??」
「ぎえええーー!!とうとう来たァぁああ!最後の島、ラフテルゥウウ!!!」
「ラフテルの場所書いてあるのかァ!?あれに!?」

「ま、まてまて慌てるな・・・ただし、ただしだ。赤い石"ロード歴史の本文ポーネグリフ"は世界に"4つ"ある!!」


確かにこの赤いロード歴史の本文ポーネグリフにはどこかの地点が記されているはず・・・だが、ラフテルではない。残る3つのロード歴史の本文ポーネグリフにも同様に記されている。その位置を知り、地図上で4つの点を結んだ時――その中心に浮かび上がるのだ。


「数百年・・・海賊王の船員クルー達しか行き着く事のできなかった・・・最後の島――ラフテルがな!!」
「ははっ・・・最後の島・・・ラフテル・・・いよいよか・・・!」


ルフィは震える手をぎゅっと握り、赤いロード歴史の本文ポーネグリフを見上げて言った。


「そこにあんのかな・・・無えのかな・・・ひとつなぎの大秘宝ワンピース・・・!」


歴史の本文ポーネグリフ――それは世界中に点在するといわれている不滅の石。その石には古代文字が刻まれており、解読は困難を極める。但し、歴史の本文ポーネグリフを研究していたオハラで育ったロビンはこの文字を解読する事が出来た。歴史の本文ポーネグリフには情報を持つ石と、その石の在り処を示す石の2種類があり・・・そして情報を持ついくつかの歴史の本文ポーネグリフをそれを繋げて読む事で記録の残されていない"空白の100年"の歴史を埋める1つの文章となる。

繋げて完成する、今はまだ存在しないテキスト・・・それが"真の歴史の本文リオ・ポーネグリフ"である。海賊王ゴール・D・ロジャーはこの文を目的地に届けている・・・。


「よーし!探しに行くぞー!」
「ッどこ探しに行くんだよ!世界は広いわァー!」
「おれすぐサンジ連れてくるから!!」
「ッ人の話を聞けェえええー!!」
「・・・ゆガラ、ペコムズとホールケーキアイランドへ向かうならあながち間違うてらんぜよ」
「え!?」
「4つ歴史の本文ポーネグリフのうち、所在が分からんのは1つだけじゃ・・・1つはここに、残り2つはある海賊たちに所有されちゅう」
「!誰なんだ、その海賊って?」
「――四皇ビッグ・マム。同じく四皇百獣のカイドウ・・・!!」

「「「ぎえええーーー!?」」」


避けては通れない道・・・急に目の前が真っ暗になったナミ、ウソップ、チョッパー、ブルックは涙を流した。今までは遠い未来の話だと思って聞き流していたところもあり・・・いざ戦うとなると、恐怖で足が竦んでしまう。


「じゃが歴史の本文ポーネグリフは奪う必要はないきに」
「え・・・そうなのか?」
「魚拓のようにその写しを集めるのが普通じゃ。こんなでかいもん集めて回る奴ァおらん」
「!そうか!それならビッグ・マムやカイドウのアジトにこっそり潜入して写しを集めて・・・誰も知らぬ間にラフテル行って海賊王に――お前はなる!!」


一気に危険が消え去り、ころっと表情を変えたウソップがルフィを指差しながらそう言えば・・・ルフィは不満そうに唇を噛み締めた。


「なァにが不服なんだよてめェはー!!」
「そんなの男らしくねェ!!誰だろうとぶっ飛ばせばいいだけだろぉ!」


言い争いをしながら転げ回るルフィとウソップ。そんな2人を見てナミ達はまた始まったと呆れたように溜息を吐き、イヌアラシとネコマムシは声を出して笑うのだった。



   



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