EPISODE.08



2匹のワーニーに乗って右腹の砦を後にしたルフィ一行。ワンダと同じ王の鳥の役職のキャロットも案内人として加わった。


「そいでよワンダ、さっきの話じゃ・・・」
「ああ。まだ話の中でグル眉もガスも消えてねェな」
「それは・・・」
「その話はわたしからしましょう。この出来事は――この国の人々にはあまり話してないのです。国を滅ぼされた人々にこれ以上心労をかけたくなかったので・・・これはこっそりと起きた大事件。2日前の出来事です、覚悟してお聞きください。サンジさんはもしかしたらもう・・・わたしたちの元には戻ってこないかもしれません」
えええぇえーー!?!?なんでだブルック!!戻るって書いてあっただろ!!サンジの手紙に!!」


興奮するルフィを抑えるナミは、話より先にルフィに手紙を見せた事を後悔した。

此処ゾウは幻の島――島自体が生物があるために記録指針ログポースでも辿り着けず普通なら見つけることも出来ない場所・・・しかし、サンジ達には失態と盲点があった。先ずあの時――ビッグ・マムの船にサニー号が襲われていたときだ・・・引き離した敵船に目的地を聞かれてしまっていたこと。そしてその船に幻の島の"出身者"がいたこと。


2日前、サンジ達の目の前に現れたのは四皇――ビッグ・マム海賊団だったのだ。


右腹の砦まで来たモコモ公国出身者――ペコムズは、最初は故郷をめちゃくちゃにしたのがルフィ達の仕業だと勘違いしていたが、周りのミンク族たちに説明してもらい真実を知る。ミンク族たちはまだ体も心も癒えていないためサンジはペコムズと、そしてペコムズと一緒に上陸していたカポネ・ベッジの2人を人気のない森の中へと誘導し、話を聞いた。
シーザーを手渡して解決するものならいいのだが・・・実はビッグマム海賊団には既にルフィが喧嘩を売ってしまっているため、円満に話し合いで解決するとは到底思えなかった。
しかし・・・ペコムズは戦うどころか大粒の涙を流しながら、サンジ達に感謝の言葉を述べたのだ。故郷を救ってくれた大恩人――それが例え敵であろうと関係はない。

ペコムズは相変わらず涙を流しながら、説明をしだした。・・・もともとペコムズ達はビッグ・マムの指令でシーザー捕獲の他に新たな案件が増えたという。それは麦わら一味崩壊にも繋がりかねないらしく・・・鼻水を啜りながら、ペコムズはこう言った。


「だがもういい!任務は失敗、シーザーだけよこせ!麦わらの一味は取り逃がしたとおれから上手くママには言っておく!!」



しかしその言葉に異論を出したのは他でもないベッジだ。任務に私情を挟むな、と口を挟んだがペコムズに一喝され・・・目を鋭くさせたベッジは、なんと味方のペコムズに向けて、何の躊躇いも無く背後から銃を乱射したのだ。


血を流しながら倒れていくペコムズには目もくれず、ベッジはシロシロの実の能力者―― 自らの体を城にすることができ、 城(体)の中には縮小した多くの部下や武器が格納されていた。
やむを得ず戦わなければいけない状況にサンジとブルックも戦闘態勢に入った・・・その時だった。2人だけだと思っていたビッグ・マム海賊団のもう1人が、チョッパーとナミを人質にして現れたは。そしてあろう事か隠れているよう指示したシーザーまでもがベッジの手の元に渡ってしまい、サンジ達は戦う事が出来ず・・・ベッジの胸の辺りに扉が現れ、一行は鎖で縛られ、ベッジの城(体)の中へと入っていった。従うしかなかったのだ。

ベッジの体の中はまさに城そのもので――サンジ以外は鎖で縛られ、部下たちに銃を向けられた状態のまま、サンジとベッジはテーブル越しに向かい合って座っていた。


「1週間前・・・お前らと海でやりあった日から少し状況が変わってな・・・お前宛の招待状を預かってる」
「招待状・・・?」


それはサンジに宛てられた招待状であった。ビッグ・マムの開かれるティーパーティー・・・なぜそれにサンジだけが招待されるというのか。


「今回のメインは結婚式だ。新郎は・・・ヴィンモーク家の三男・・・サンジ!!!」
「!」
「新婦はシャーロット家三十五女・・・プリンだ」

「「「えええーーー!?結婚んんーー!!??」」」




その瞬間、サンジの顔色はみるみるうちに変わっていった。血の気は引き、暑くもないのに汗が噴き出ており・・・サンジは唇を噛み締めた。
初めて明かされるヴィンスモークというサンジの性・・・その時、ナミはサンジとの昔の会話を思い出していた。サンジと出会ったのは東の海イースト・ブルーだった為、てっきり東の海イースト・ブルーの出身かと思っていたのだが・・・生まれは北の海ノース・ブルーと言っていたことを。


北の海ノース・ブルーから東の海イースト・ブルーに移るには赤い土の大陸レッド・ラインを超えなければいけない・・・それはただの家族の引越しのレベルではなく・・・大航海しなければいけないほどの難関。

サンジは一体、どんな生い立ちをしたのか・・・驚くのはそれだけではない。シーザーの話しによると新婦側のシャーロットという性はビッグ・マムの性らしく・・・つまりサンジはビッグ・マムの娘と結婚を迫られた、という事になるのだ。
もしこの結婚が成立してしまえば事実上、麦わらの一味はビッグ・マムの傘下という形になってしまう。しかしサンジは出された招待状をベッジに投げ返した。



「うちの船長は誰かの下につくような男じゃねェ!!ルフィは・・・海賊王になる男だ!!!!」



しかし――ベッジは招待状を"見せた"だけに過ぎない。答えを求めているわけではないのだ。今サンジ達のいる場所はベッジの体内――揺れこそ感じないものの、既にベッジは移動を始めているという。
城内はベッジが自由に操れる空間・・・ありとあらゆるものが武器に変わる。成す術なく歯を食いしばるサンジにベッジの部下の1人、怪銃ヴィトが長い舌を出しながら何か耳打ちをしはじめた。

――その瞬間、サンジは形相を変えてヴィトを睨み、明らかに様子が変わりはじめる。長い沈黙が続いた後、サンジはベッジ達に用意してもらった紙とペンを使って手紙を書き始め、そしてそれをナミに預けたのだ。



「これを・・・ルフィ達に」
「!サンジ、くん・・・?」
「ナミさん・・・チョッパー、ブルック。これだけは信じてくれ。おれは仲間に――隠し事をしてたつもりはない!ヴィンスモーク・・・ッもう二度と、おれの前に現れないはずの壁だった・・・!おれはどうしても・・・ケリをつけにいかなきゃならねェ・・・!」



そう言うとサンジはナミ達を強く抱きしめ、耳元で外で強力な気配――ミンク族が居ることを伝え、次の瞬間外へと繋がる"窓"にナミ達を放り出したのだ。
外には奥で血まみれになって倒れていたペコムズを見て様子を伺いに来たネコマムシの旦那がおり、ベッジも迂闊に手が出せない状態・・・そんな中、ナミ達はまだ開いてるベッジの胸元の扉からサンジに詰め寄った。なぜ一緒ではいけないのか、と。するとサンジは・・・。


「おれの問題なんだ・・・必ず戻る。あいつらによろしく伝えてくれ」


笑顔で、そう言ったサンジ――そして胸元の扉は閉じられてしまい、ベッジは足を戦車のようなタイヤにさせてその場から逃走していった。サンジと、シーザーを乗せて・・・。






野郎共へ

女に会って来る

必ず戻ってくる

――サンジ




後からやってきたワンダたちがベッジを止めることも出来た・・・しかし、ブルックたちはそれを止めた。今ベッジを止めたところで、サンジが戻ってくるはずがない・・・あの笑顔を見てしまえば、分かるのだ。サンジに戻る気は無い、と・・・彼の意思なのだから。

何かを察したネコマムシは、ワンダ達にこの件を周りに言わないよう伝え、重傷のペコムズもネコマムシのところで預かってもらう事となった。


「じゃあよ、女に会って来るって・・・サンジのやつ、結婚するって意味なのか?」
「そうとは限らないけど・・・なんか覚悟したような顔だったの」
「あ!嫁連れて帰ってくんのかな?じゃあ仲間が増えるな!」
「はあー・・・全くお気楽なんだから・・・」
『ルフィ、新婦は四皇の娘・・・それだとわたし達、ビッグ・マムの傘下に入るってことなんだよ?』
「え!?やだ!!」
「もちろんそれはサンジさんも同じはずです。その場で断固拒否していました」


だからこそ思うのだ。今回の件は相手が相手・・・もし結婚が逃げられないものだった場合、サンジならどうするだろうか・・・。


「どうするって・・・ッ・・・!!」
「あいつの事だからおれ達に迷惑かけねェために・・・自分を切り離す事を考えるんじゃねェかな・・・」
「!サンジがうちやめるのか!?そんなのもっとダメだ!!」
「わたし達を外へ投げ出したとき、サンジくんは一緒に外へ出る事も出来たはず。手紙を書いた時点で、もう自分は行かなきゃって決めてたのよ・・・サンジくん」
「状況は飲み込めたわ・・・大変だったわね。それにしてもヴィンスモークって名前・・・」
「知ってるのか?」
「どこかで聞いたことある名前なんだけど・・・ごめんなさい、思い出せないわ」


「ごめん・・・みんなが来るまでせめて引き止める事が出来てれば」
「引き止めさせなかったのはサンジでしょう?あなた達に責任はないわ」
「うっ、でもよ、ロビン・・・ッひっく・・・もしこのまま、二度と会えなかったら・・・ッ」
「いいだろ別に」
「はあー!?なに言ってんだゾロ!」
「確かにこのままいなくなってくれりゃお世話になりましたの一言が足りねェな・・・あとご迷惑をおかけします、だ・・・」
「違う!!そういう事じゃねェ!!」
「そういう事だ。考えてみろ、おれ達はいま止まらねェレールに乗ってるんだ・・・!シーザーが言ってたろ・・・」


人造悪魔の実――SMILEの最大の取引相手はカイドウ。パンクハザードの研究所を壊してドフラミンゴを怒らせたようにドレスローザのSMILE工場を壊した今、次に怒り狂うのは――四皇・カイドウだ。もう遠い存在ではないのだ。この国を滅ぼしたジャック然り・・・既に手下の百獣海賊団とも一戦交えている。ルフィ達を追ってくるのは時間の問題。
ローと手を組んでいるのもこれからの戦いのため・・・理由は知らないが、錦えもんたちもカイドウに狙われている様子・・・ルフィ達は時期、四皇カイドウと戦う事となるのだ。


「こんな時に更に四皇!ビッグ・マムに絡むなんて馬鹿としかいえねェよあのグル眉野郎」
「そんな言い方ないじゃない!!!この無粋男!!これはこれ、それはそれでしょう!?」
『ナ、ナミ、落ち着いて・・・』
「大体なァ、結婚程度で振り回されるなんて話が小せェんだよ!」
「何ですってェー!?十分、大事よ!人の悩みに大きいも小さいもあるかァ!!」
「何ィ!?」

「・・・おし!!考えても分かんねェからサンジに聞きに行こう!!」


ナミとゾロがいがみ合う中、突拍子もない発言をしたのは他でもない・・・船長、ルフィであった。


「まさかビッグ・マムのところへ行く気か!?」
「あァ、そうなるな」
「お前自分が喧嘩売ったこと忘れたのか!?」
「何の策も戦力も無ェんじゃ叩き潰されて終わりだ」
「相手は四皇よルフィ、忘れないで?今までとは話が違う」
「じゃあ!こっそりいく!!!」
「だァかァらァ!!どうやって!?」
「!・・・っ・・・追いかける方法は、なくもない・・けど・・・」
「そうですね・・・ビッグ・マム海賊団のせいでサンジさんが行ってしまいましたが・・・代わりに彼らは大きな落し物をしていきました。もし"あの人"が目覚めているのなら新しく分かる事もあります・・・」
「"あの人"・・・?」




   



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