EPISODE.07



イヌアラシ率いるミンク族たちと、ジャック海賊団との戦いは長期戦であった。途中、噴火雨などが降ったおかげで優勢になったかと思いきや敵の勢力も衰えず・・・ジャックとの戦いは気づけば夜の6時まで続き、そして6時になると同時に現れたのが夜の帝王、ネコマムシであった。ネコマムシが来るなりイヌアラシは早々に戦場を後にし、こんな状況でも昼夜交代は有効らしく――けれど敵を休む間もなく攻め立てられるリスクがある。

――昼夜途切れることなく戦いは5日間続いた。夜と昼で戦闘員を入れ換えながら2日、3日・・・4日と、ミンク族たちは戦い続けた。海から次々と援軍が現れるジャックの兵たちの侵入を阻止しきれず敵はまるでとめどなくゾンビの軍団・・・しかしミンク族たちは着実に敵を圧倒していった。
強いていうのならただ1つだけ・・・崩す事が出来なかったのが――ジャックであった。


「あれはやはり怪物だ・・・ッ・・・」
「そ、そんなに強ェのか?」
「・・・強い!」
「へえー・・・このおっさんで勝てねェほどのやつがカイドウの部下か・・・すげェな」
「しかしそれは逆も然り・・・ジャックにとっても己の力で倒れぬ2人の王に痺れを切らしたのか5日にしてとうとう兵器を持ち出してきた!それが・・・毒ガス兵器」

「「「「!!!」」」」


この国を滅ぼしたのはシーザーの作った毒ガス兵器。シーザーの作った毒ガス兵器をドフラミンゴが密売し、そしてあろうことかそれはカイドウの手にまで届いていたのだ。


「ひでェ・・・!!」
「ッシーザー・・・・・・!!」


歯を食いしばるルフィ一行。

――戦いの終わりは一瞬であった。爆風の速度で国中に広がる殺戮ガスを、一体誰が避けられるというのか。ガスは街の全てと森の半分を呑み込んでミンク族たちの動きを完全に奪った。砦の奥に避難していた者達以外、ほぼ全滅・・・そこから先は思い出したくないほどの惨い仕打ちが待ち受けていた。

答えの分かりきった質問を繰り返しては戦士を手にかけ、国を壊していく・・・国の至るところで悲鳴や叫び声が上がり・・・そしてガスで身動きできないネコマムシや侠客団ガーディアンズ達も探し出し同じことを繰り返し、それも効果が無いとわかると・・・強者たちは磔にされ、拷問を受けた。



「もうやめてくれ・・・この国の者達はもう何も知らん・・・こんな無益な死は無い!無慈悲だ!」

「ッ死んでも忘れんぜよジャック・・・ネコの恨みでゆガラを呪い殺す日まで・・・!!」



丸一日の惨劇が続き、6日目・・・もう破壊に気が済んだのか、それとも同じ答えに飽きたのか・・・数十人の部下を残しジャックはこの地を去っていった。


「酷すぎる・・・!」
「なんて救いのねェ話だ・・・」

「・・・いや、それすらも救われていたのだ」


不意に、ルフィが乗っていた眠っていたはずのイヌアラシ公爵が突然話し出す。


「うわ!起きてたのか!」
「新聞にあったジャックの死亡記事を読んで分かった・・・」


言いながら、イヌアラシが手元にあった新聞を見せる。その記事にはなんと、ジャックが水難事故で死亡したと書かれてあったのだ。


「ゆガラ達がドフラミンゴを倒したその日、ジャックはこの国を去っていたのだ・・・ジャックはドフラミンゴ救出のためにこの国を出たのだ。何か深い繋がりがあるのだろう・・・つまりこの国からあの怪物を追い出してくれたのはゆガラたちだ・・・ぐがーっぐがーっ」
「「「また寝た!!」」」

「そうか・・・そう考えるとまた更に大きな恩と奇跡・・・!」
「え?」
「我々が生きているのはまさにゆティアたちのおかげだ・・・!」
「ジャックが去ったその次の日なんだ、おれ達がここについたのは」


上陸したサンジたちは街の異変にすぐ気づき、サンジとチョッパー、そしてシーザーを連れて街に向かった。
街は僅かな残りガスが漂う中、多くのミンク族が倒れており、チョッパーは急いで解毒剤を作ろうとした――が毒の成分が解析できなかった。困っていたその時だ――不意にシーザーがニヤニヤと笑い出したのは。効果が目に見え気分が上がったのかシーザーは鼻を高くしてベラベラと話し出した。街に放たれていた毒ガスは自身が作ったものだ、と・・・。それに怒りを覚えたチョッパーはすぐさまシーザーに中和ガスを放つよう指示し、街のガスは一瞬で消す事が出来た。残るは・・・解毒剤だ。

シーザー曰くその毒ガスは48時間以内に解毒をしないと死に至るらしく、サンジたちが上陸してから既に1日は過ぎている・・・そこからは時間との戦いであった。
作られた解毒剤は街中のミンク族にすぐ投与され一命を取りとめ、怪我を負った者達も手当てをし、それからはサンジお手製の料理を振る舞い、ブルックが音楽を奏で――ミンク族たちは、自分たちが何者かも知らないのに見捨てず助けてくれたナミ達に涙を流した。

まさかそんなにも壮絶な出来事が起きていたとは思ってもおらず、なぜこんなにも歓迎されたのか――漸く理解する事が出来た。


「しかしジャックってやつ、腹立つな!いつかカイドウと一緒にぶっ飛ばしてやる!!」
「ですがジャックは死亡記事が・・・」
「!そっか!くそー、ぶっ飛ばせねェのか・・・!!」
「その事だが・・・とても信じがたいのだ。当人を目の当たりにしたからな・・・」
「生きてるっていうのか?」
「分からない・・・」

「みんな、ここで話してるか?」
「?どこか行くのかチョッパー?」
「夜になったから夜の王ネコマムシやクジラの森の侠客団ガーディアンズたちの診察だ」
「ではワーニーを出そう」
『!そういえばワンダ、あなたも眠る時間じゃないの?』
「わたしは王の鳥という職務なのだ」
『王の・・・鳥?』


王の鳥――それは王の側近で昼夜問わず2人の王の間を行き来できる唯一の役職だという。


「おれも行く!ネコマムシ、会ってみてェ!な、ナマエ!」
『え?う、うん』
「ネコマムシの旦那・・・わたしもあの方大好き!お共します!」
「おれ達も行くぞー!」
「どんな奴か興味あるな、夜の王」
「チョッパーの話では大変な傷を負ってるみたいだけど・・・」
「ああ!すごい回復力なんだ、それにイヌアラシみたいにでっかいぞ!」
「ほんとに行っても大丈夫?」
「ああ、歓迎する。恩人が一緒だとネコマムシの旦那も喜ぶ事だろう」

「よーし!!ネコマムシの旦那に会いに行こうー!!」






   



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