EPISODE.06



一行はワンダの案内の元、イヌアラシのいる療養所へ向かっていた。今ルフィ達の居る"右腹の砦"は普段は使われていない場所らしく、モコモ公国の中心は先ほど来る途中で見た町、クラウ都だったそうだ。
明るく賑やかでそれがクラウ都の日常――クラウ都は穏やかで平穏であった。人々は、当たり前の日常を送っていた・・・が、事件は半月前に起きた。


「い、一体何が起きたんだ・・・?」
「わたし達が来たとき、町は破壊されつくしていたわ。まるで・・・嵐が過ぎた後みたいに」
「・・・正確には17日前の話だ。そう、ベポたち以来、1ヵ月半ぶりにモコモ公国に来訪者の鐘が鳴り響いた。だが・・・それはまず鳴るはずのない"敵襲"の鐘だった!」


森を裂き、平和な都に敵は侵入をしてきた。ただならぬ地響きで――象主ズニーシャは吼えた。


「な、何者なんだ・・・?ッ何しにきたんだ!?」
「・・・・・・っ・・・例えば・・・わたしたちが持っていないものを、凶悪な敵が欲していたら・・・それを、どう引き渡す?」


敵は雷ぞうというワノ国の武人を渡せと・・・そう、人々に言い放った。しかしワンダ達は雷ぞうという人物を知ってすらおらず、モコモ公国を襲った敵――四皇カイドウの腹心、百獣海賊団マンモス号船長"旱害のジャック"は巨大なマンモスの姿で怒り狂い、老若男女容赦なく暴れたという。


「マンモス!?おいウソップ、マンモスだってよ!」
「いや反応するところそこかよ!四皇っていってんだぞ、四皇!!」
『カイドウの部下たちだったんだね・・・この国を、襲ったのは』
「ああ・・・・・・」


ジャックの手下達は町の人々に一斉に襲い掛かった。しかし――ミンク族はその誰もが生まれながらの天性の戦士。赤子でさえ護身の術を持っており、ジャックの部下達は小さな子どもにも手も足も出せない状態であった。ミンク族はあくまでも話し合いを希望していたが・・・ジャックは聞く耳すら持ってくれずギフターズと呼ばれた不思議な体をした者達が戦闘に加わり、戦わざるを得ない状況だったという。


「全く話など通じず戦いは始まり、平和なクラウ都は・・・一瞬にして戦場と化した」
「それでこの右腹の砦に移ってきたのね」
「そうだ。動ける者は動けない者に力を貸し、ここに運び込んだ」
「な、なあ、結局そのジャックとかいうやつがどうして侍を見つけたいのか・・・理由は分かんねェままなんだよな?」
「ああ・・・なぜあティアらがこの島に辿り着けたのか、なぜ侍がいると思ったのかも・・・分からない」


――だからブルックは、ミンク族たちの前でなるべく侍の話をするなと先ほど忠告したのか。ワノ国、侍・・・もし口にすればミンク族たちの恨み、怒りを買ってしまうかもしれない。


「しかし・・・なんだな、錦えもんの言ってた忍者はいねェのかァ・・・がっかりだ!」
「「「「!!!!!」」」」


状況が全く理解していないルフィの突然の発言にウソップ、ブルック、ナミの顔色が変わる。ピタリと足を止めたワンダはゆっくりとした動作で後ろを振り返り、ルフィに視線を向けた。


「忍者・・・?」
「ん?」
ホネホネチョォオオーーーップ!!


ブルックの手刀がルフィの頭に直撃し、それに続いてナミとウソップも加勢してルフィを殴り始める。異様な光景に驚きながらもワンダは口を開いた。


「忍者・・・?ワノ国の武人のことか?ゆティア、何か知っているのか!?」
「ミ、ミンクシップ!叩き込んでるだけだから気にしないで!!」
「いや、確かに聞いたぞ!先ほど忍者、と・・・!」
「いえいえ!そのようなこと全く言ってません!」
『患者の具合はどうかなって・・・ルフィがそう言ったの、聞き間違えたのかな?』
「患者・・・?・・・!そうか、聞き間違えた!ゆティアらは優しいな、公爵様のことをそこまで気にかけてくれて・・・」
「(ナイスですナマエさん!)当然ですよヨホホホホ!!」


ナマエの無理矢理のフォローによってワンダは納得し、一同はホッと安堵の息を吐いた。
なぜ殴られたのか・・・理由が未だに分からないルフィの顔はナミ達によってぼこぼこで、歩いている間、手当てをしてくれたナマエの背中に落ち込んだようにぴったりとくっついていたのはいうまでもない・・・。


「ほら、あれがイヌアラシ公爵の療養所だ。出向いてもらって悪いな・・・話の続きは後にしよう」

「「「うわああー!!」」」


その時だった――どこからともなく頭上から飛んできたミンク族がルフィ達のいる吊り橋の下へと落下していくではないか。
一体何があったのか・・・ワンダが駆けつけた先に居たのは犬嵐銃士隊長"全力のシシリアン"だった。


「シシリアン殿、何事です!?」
「!おお、ワンダか!あガラたちが甘いことばかり言うのでな・・・千尋の谷へ叩き落してやったところだ!優しさ、愛・・・恋!赤子!砂糖!蜂蜜ううーー!!!ワシの前で塩気のないものを二度とするな!喉笛を食いちぎるぞ!!!さァ、自力でここまで上がって来い!!」

「シシリアン殿!」
「何だ!?」
「こティアらが、麦わらの一味です」
「!!!!!!この度は!!!国を救っていただきありがとう!!この恩は一生忘れない!!!!」


ダイナミックなジャンプからの大げさすぎる土下座をするシシリアン。ワンダ曰くシシリアンは何事にも常に全力らしく、船長がルフィだと分かるとシシリアンは大興奮した様子でルフィに抱きつき叫んだ。


「おおお!!ゆガラがナミたちの船長か!!素晴らしい!会いたかったぞおお!!!ガルチュー!!!心の底から猛烈に感謝しているうう!!!」
「いででででで!!」
「公爵がお待ちだ!!さあ、中へ!!グズグズするな!!」


バンッ!と派手な音を立てて扉が開かれる。療養所の中に入るとチョッパー、そしてチョッパーたちと出て行ったミヤギとトリスタンの姿もあった。
ルフィ達に気づいたチョッパーは笑みを浮かべ、そしてルフィ達はベッドの上で座るイヌアラシを見て――見上げるほどの大きさに目を見開かせ、ワンダは涙を流しながらイヌアラシに抱きついた。


「公爵様、よくぞご無事で・・・!!」
「ワンダ・・・心配かけたな。ゆガラたちが麦わらの一味かね?」
「ああ!」
「何から何まで掬われてしまったな・・・本当にありがとう」
「仲間たちが助けたらしいんだけど、まだ詳しく聞けてねェんだ」
「いや・・・ゆガラたちにもさ。麦わらのルフィくん」
「?しかしおっさん強ェだろ!相当強ェな!」
「!何を・・・無礼だぞ!公爵様はこの国1番の戦士だ!!」
「ふっ、おいよせ。それが敗者にかける言葉か?」
「敗者だなんて・・・!確かに敵は厄介でしたが戦いは我々が優勢でした!」


――ふと、イヌアラシの視線を感じたブルックが嫌な寒気を覚える。息を荒くして、口からはよだれが垂れ出ており・・・納得するようにワンダも頷いていた。


「分かります!あティアも恩人です!」
「なんて美味そうな恩人だ・・・」
「今はまだ体に障りますから・・・あとで!」
「あとでも嫌ですよ!!」
「いいじゃねェかちょっとくらい・・・」
「そのちょっとが命取り!この数日間、どれだけしゃぶられ噛みつかれたことか・・・っヨホホホ」

「まあ・・・敗北の話より・・・ゆガラ、麦わら帽子がよく似合うな。わたしも昔・・・あー誰だ・・あのネコの・・・・・・」
「ネコマムシの旦那ですね」
「ああ。それと共に海に出ていた時期があってな・・・今や四皇の海賊シャンクスが昔そんな帽子を・・・」
「え!おっさんシャンクス知ってんのか!?なんで!?おれこの帽子、シャンクスから預かって!おれもナマエもシャンクスの――」


話の途中、突然イヌアラシは気を失うように倒れてしまった。シャンクスの話を聞かせろとルフィが起こそうとするが、イヌアラシはビクともせず・・・。なぜ急に眠ってしまったのか・・・ワンダが説明をしてくれた。

――このモコモ公国では常に2人の王で治められており、正式な国の王はイヌアラシだが、代々神聖なクジラの森を守るネコマムシにも同等の権利がある。――理由は分からないが2人は顔を合わせると殺し合いをしかねないほどに仲が悪いらしく、王と讃えられるほどの2人が喧嘩をしても力はほぼ互角・・・あまりにいがみ合いすぎて顔も合わせたくない2人は太陽と共に朝6時から夕方6時まで、そして月と共に夕方6時から朝6時までと・・・生活時間を分割して暮らす様になったという。
いつの間にか医者たちもイヌアラシ同様に眠っており、この砦の人々も今頃はすでに夢の世界へと旅立っているそうだ。

扉の前にいたシシリアンも睡魔が襲ってきたのか何度も首を前後に振っていた。


「・・・っ昼夜逆転は我々にも影響している・・・町の者達は昼に活動を、森の者達は・・・夜行性・・・・・ぐがーっ!ぐがーっ!」
「・・・全力で寝たわね」
「ははは!こいつらおもしれェな!」

「わたし達は2人の王とずっとこの風習で暮らして居る。先の戦いでもそうだった・・・クラウ都でジャックたちと我々との戦いは激しさを増した――」




   



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