EPISODE.04



ナマエはこのゾウに来てから疑問に思っていたことを全てワンダに問い出した。
町がまるで廃墟のようになっていたこと、数十万人は住めるほどの都市から1人残らず住人が消えて居ること、そして道中に見かけた、あちこちにある引き裂いたかのような巨大な足跡、爪痕のこと・・・。

するとワンダとキャロットは表情を曇らせながら、この国が滅びたと、そう言い放った。


「滅びた!?だから誰もいねェのか!?」
「・・・数百年の歴史あるこの国の名はモコモコ公国。つい半月前の記憶を辿れば皆の幸せな顔が浮かぶ」
「・・・・・・っ」
「この国を滅ぼした者の名は・・・"ジャック"!!」



――ゴゴゴゴゴゴ。


『!』
「な、なんだ!?」


突然、地面が大きく揺れ始める。ベポたちは慌てながらその場から退散し、ワンダもワーニーに飛び乗った。


「"噴火雨"が来るぞー!!木に登れー!!」
『噴火雨・・・?』
「いや!ワーニーに乗れ!右腹のそティアらの仲間のもとへ案内してやる!」
「!そうか!そこにサンジ達がいるんだな!!」
「・・・・・!!」
「え・・・?」


サンジ、という言葉に押し黙るワンダ。まさかサンジ達の身に何かあったというのか、問い詰める前に地響きはさらに大きくなり――山が噴火するのかと思いきや、"ゾウ"が大量の"水"を降らせ始めたのだ。
空から降り注ぐ水の塊は洪水になるほど凄まじく、"噴火雨"と呼ばれるのも納得する。ルフィたちはワンダたちと一緒にワーニーに乗っていたおかげで難を逃れた。


「ぶああ!すげェ雨だったな!」
「噴火雨は正確には・・・雨ではない」
『?』
「1日2度、象主ズニーシャは水浴びをする・・・つまり今のは海水の塊だ。雨は都市の中心にある濾過装置で水路に流れ出て、国中の生活用水に変わるのだ」
「一緒に魚達も降ってくるから食料にも困らないんだよ」
「ほ〜!」
『恵みの雨ってことね』

「おーい!!麦わらァー!!」


洪水となった道を泳ぐワーニーの後を追いかけてくるのはベポたちだった。器用に木から木へと移りながらベポが叫ぶ。


「おれこの森出られねーから!おれ達のことキャプテンに言ってここへ呼んでくれよ!」
「出れない?」
「ベポはここの生まれだけど海賊だから・・・今はこの森の親分"ネコまむしの旦那"の預かりになってるんだ」
「へー・・・っておい!!噛むな!」


ミンク族は人を舐めたり甘噛みするクセがあるのだろうか、先ほどからされる慣れない行為にルフィも珍しくうろたえていた。
ワーニーに乗って、暫く進むと・・・やがて森を出て、開けた場所に出た。先ほどまで川のようになっていた水も驚異の早さで引いており・・・辿り着いた場所は拷問具が並んだ場所であった。
拷問具には夥しい量の血が染み付いており・・・ジャック襲撃事件を思い出し、涙を拭うワンダとキャロット。


「・・・名前なんだったっけ・・・この国を襲った奴・・・」
「ジャックだ・・・先日新聞に死亡記事が出ていた」
「『!』」
「先日ドフラミンゴを護送する軍艦4隻を襲撃したそうだ。2隻を沈めたが返り討ちにあったと・・・」
「え!?ドレスローザにいたのか!?」
「大将や前元帥の乗る艦を襲うほど頭のネジが飛んでいる男だったが記事には死亡確認はない・・・たぶんまだ生きている。わたし達はジャックを許さない。――もうすぐだ」
「ゾロ達もそこにいるのか!」
「そのハズだ・・・隠し砦への道を伝えておいた」


霧の深い場所を歩いていると・・・突然、「あ」と声を出したナマエから笑みがこぼれる。隣にいたルフィが首を傾げた瞬間――ワーニーの目の前に、シャンブルズで移動をしてきたロー達が現れたのだ。


「だ、大丈夫かルフィ、ナマエ!!手足はあるか!?」
『?』
「やいこのナミ犬女、そいつらはウチの船長とその姉貴だ!とって食おうってんだな!?そうはさせんぞ肉食女!!先に来た仲間ともどもすぐ返さねェと、この三刀流が火を吹くぞ!!」


ナミ犬女――ワンダのことを言ってるのだろうか。言われてみればワンダの着てる水着のような服はナミが着ていたものと全く一緒で・・・ウソップがゾロの背後に隠れながら、啖呵を切った。

・・・暫くの沈黙の後、呆れたように溜息を吐くワンダ。


「何か勘違いをしているようだが・・・まあよい。丁度目的地に着いた」
「え!?お、おい見ろ霧が!!!」


視界を遮っていた濃い霧が突然晴れ――目の前に砦の門が姿を現した。門の前には屈強そうな門番のミンク族もいる。


「ワンダ!そガラら?」
「くじらの森の侵入者か?」
「この者達は侵入者ではなく悪意はなかった、手違いで歓迎の鐘は鳴らず、1人がくじらの森に迷い込んだのだ。門を開き皆に知らせてくれ、麦わらの一味が来たと!!」
「えっ!?こいつらが!?」

「大切な客人たちだ、大恩人達の仲間にもてなしの準備を!!」


門をくぐった瞬間――歓迎の声が飛び交った。先ほどまでもぬけの殻だった町とは一変し、たくさんのミンク族が現れる。


「へーーっ!なんだ、明るい雰囲気だぞ!?」
「めちゃくちゃ人懐っこいぞ!全然思ってたのと違う!!」
「人間嫌いの種族じゃなかったのか」
「それは他のミンクを知らぬ者達の"怯え"なのかもな。わたし達から見ればそティアらは毛の少ないサルのミンク、同族の一種だ。嫌うなら個々を判断するわたし達は全身の純毛だが、ゆティアらの美しい少ない毛に憧れるものも少なくないぞ」
『あはっ』


再び顔を舐められ、くすぐったそうに肩を竦めるナマエ。すると木の上にある家からナミ、そしてチョッパーが飛び出してきた。2人の無事な姿に安堵する一同。
ナミはルフィに、チョッパーはウソップに抱きつく。


「ルフィ!」
「おうお前ら!よかった会えて!」
「みんなぁあー!」
「サンジもブルックもモモも無事か?」
「「・・・・!」」
「ん?」


ゾロがナミの異変に気づく。ルフィに抱きついているナミの体は小刻みに震えており、よく見れば涙を流しているではないか。


「・・・っごめん・・・サンジ君が・・・・・・!!!!」






   



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