EPISODE.03



「得体の知れねェ土地だぞ、振り返るな・・・常に前方に注意を払え!」


竜がいなくなってしまったことにより全員が悲しみ明け暮れるなか、泣きじゃくれるルフィ達にゾロが一喝する。
その言葉に一同は涙を流しながらも頷き、そして目の前に高くそびえる門を見上げた。


『あれが国の門・・・?』
「ゾウの背に・・・しっかりと文明がある。物見櫓もあるが見張りは無し・・・国としりゃ手薄だ」
「おーいナマエ!こっち来てみろよー!!」
『?』
「すげェなー!1000年生きるでっけェ象がいて、その背中に国があるなんて面白ェ!!」
「ってなんでもう見張り台に昇ってんだよ!!」


すでに物見櫓にいたルフィに呼ばれ、ナマエも後に続く。下からは分からなかったが高い場所から見るとそこには森、川、そして町もあり・・・本当に象の背中なのかと疑問に思うくらいに、完全な島となっていた。森の中央には大きなクジラの形をした樹木があり、最初は笑みを浮かべていたナマエ――だったが、だんだんとその笑みも消えていく。
なんだろうか、この胸騒ぎは。町の様子も少しおかしい。


『ねえルフィ、なんだか様子がおかし・・・っわ』
「行くぞ冒険ー!!」


ぐっと腹部に回る腕、そして突然の浮遊感・・・ルフィに抱きあげられたと理解する暇もなく、ルフィはナマエを抱えたまま物見櫓から飛び降りた。


「ひゃっほー!!!」
『きゃぁあああー!!』
「ちょ、おい、ルフィー!!!」


ナマエまで巻き込むなよ、というウソップの叫び声が木霊する。
かなり高い場所にあった物見櫓から一気に森の中へと着地したルフィは相変わらず愉しそうに森の中を掛け走り、ナマエの目がぐるぐると渦を巻く。


「ははは!面白ェなー!ぶよぶよして走りづれェー!早くあいつらにナマエ紹介しねェとなァー!」
『わ、わかった、から、下ろし・・・っ』
「お!町だ!!」
『!』


町・・・というべきなのだろうか。人の姿はどこにもなく、まるで廃墟のような状態であった。


「おーいサンジー!ナミー!チョッパー!ブルックー!あとガスー!・・・ガスはいいか」


全く聞く耳を持たないルフィに半ば諦めたように小さく溜息を吐いたナマエはルフィに担がれながら辺りを警戒する。・・・先ほどから感じる妙な違和感の正体は未だ謎のまま・・・しかしそんな事を知らずルフィは突き進み、暫く進んでいくと再び森の中へと入ってしまった。
森の奥には見上げるほどの大きなクジラの形をした樹木が聳え立っており、それを視界に映したルフィの瞳がきらきらと輝き始め、嫌な予感がしたナマエは恐る恐るルフィを見上げた。・・・するとルフィは「あれに乗ったらこの島よく見えそうだ」と1人頷き、なんとなく予想していた状況に思わず顔が引き攣る。


『ま、待ってよルフィ、皆を待ってたほうが』
「しっかり掴まってろよナマエ!」
『いやそういう問題じゃ・・・っ』


ゴムを伸ばし、木から木へと飛び移っていくルフィ。もちろん振り回されっぷりのナマエは成す術もなく・・・しかし、どこからともなく感じた殺気に瞳を鋭くさせたナマエはルフィを呼んだ。


『ルフィ!』
「ん?・・・!」


足を止め、2人の目の前に現れたのは――牛のような獣であった。


「なんだお前?」
『・・・ミンク、族・・・?』
「ンモオオー!!!」
「『!!』」


突如として突進してくるミンク族。咄嗟にルフィはナマエを下ろすと向かってくるミンク族を武装色の覇気を纏わせた額で受け止めてみせた。突然始まってしまった戦いにナマエが止める暇もなく、もう1匹いたゴリラのようなミンク族がナマエに攻撃を仕掛けてくる。


「ンガアアー!!」
『っ』


大きな拳が振り下ろされ、後ろに飛んでそれを避けるナマエ。よく見れば牛もゴリラも酷い怪我をしているのか全身包帯だらけであった。


『ま、待って、わたし達は何も・・・っ』
「やめてくれー!そこまでそこまで!そいつは知り合いなんだ!」
『!』
「知り合いだろうが侵入者!!モー!!」


後ろには白いクマと人がいた。牛とゴリラを必死に止めようとしてくれているみたいだが全く止まる気配がなく・・・互いに頭突きを交わすルフィと牛。牛は雷を纏わせており、放出しながらルフィに攻撃を繰り出していた。


「ウホ・・・なぜあガラ・・・"エレクトロ"が効かんのだ!!」
「チッ!力ずくで止めるしかねェな!!」
「邪魔するなウホ!!」


割って入ろうとした1人の大男――ジャンバールをゴリラが背負い投げをする。片腕を骨折しているというのに巨体な体をしたジャンバールを意図も簡単に投げ飛ばしていた。


「ジャンバール!!」
「やっべェ手に負えねェ・・・!」
「なんて怪力だ!!」


「そこまでだ侠客団ガーディアンズ!!」
「「!」」


次から次へとどんどんと人・・・いや、獣がやってくる。今度はなんだと振り返ればそこには巨大なワニに乗った犬のミンク族と、ウサギのミンク族の姿があった。
牛にはヒラヒラした真っ赤なマント、そしてゴリラにはバナナを放り投げられ、牛はマントに突進し、ゴリラはバナナに気をとられて一先ず争いは収まった。


「い、いぬ・・・!?」
「そティアが・・・麦わらのルフィか?」


獣女は戦闘民族らしく、犬のミンク族の名をワンダ、ウサギのミンク族の名をキャロットと自己紹介をし始めた。


「こティアらは何もしない・・・だからもう抵抗するな」
「おれ何もしてねェのにあいつら急によ!!」
「それはゆティアらが入ってはならぬ森へ侵入したからだ」
「うわっなんだよ!?」
『ふふっ、くすぐったい』


言いながらワンダはルフィ、そしてナマエの顔をペロッと舐めた。この森の侠客団ガーディアンズである牛のミンク族ロディとゴリラのミンク族のブラックバックは侵入者を排除するのが使命であり、ルフィ達は知らず知らずのうちに入ってはいけない森に侵入してしまったそうだ。


侠客団ガーディアンズ、すぐに連れ出す!許してくれ!」
「・・・ワンダに免じて。退くぞロディ、BB!」
「ペドロ・・・」
「"全員"退けェ!!」


森の中から様子を見ていた屈強そうなミンク族の1人がそう指示を出した瞬間、ロディとブラックバックだけではなく一斉に侠客団ガーディアンズが姿を消した。森の中にも多数いたようで、知らない間に囲まれていたらしい。見聞色の覇気が異常に発達しているナマエでさえ、あの数の侠客団ガーディアンズの気配に気づくことすら出来ず驚いていた。


「囲まれてたのか!」
「今が月夜でなかったことに感謝しろ」
『・・・?』

「おーい麦わらー!!」


先ほど仲裁しようとしていた白いクマがルフィ達の下へとやってくる。


「・・・誰だ?」
「おれ達のこと覚えてねーのか!頂上戦争の後世話してやったのに!ショックだぞ、おれ!」
「えっ!?・・・ああ、お前トラ男んとこの喋るクマじゃねぇか!」
「トラォ!?違うよ、おれ達トラファルガー・ローの部下だよ!ハートの海賊団!!」
「だからそう言っただろ!」
「言ってないよ!」


ルフィと白いクマ――ベポが言い争いをする光景を真横で見ていたナマエはベポを見て目を輝かせていた。なんとも愛らしいその姿と喋り方に今すぐにでも抱きつきたい衝動を押さえる。
同じくローと同じハートの海賊団の船員、ペンギンとシャチも興奮したように話した。


「いやー新聞読んでたよ!驚くニュースばっかりでさ!おれ達同盟組なんだろ!?」
「キャプテンは一緒か!?」
「ああ、トラ男なら一緒だ」
「だから誰だよそれアイアイ〜!!」
『ト、トラ男っていうのはトラファルガーのことだよ・・・!』
「本当か!?初耳だぞ!じゃキャプテンも来てんだな!?」

「!お、おいまさかあれって伝説の歌姫!?」
「本当に麦わらのところに入ったのか!?」


早く会いたいよ、と泣きそうになるベポに更にナマエの胸が高鳴る。いつかローにお願いをして一度でもいいから抱きつかせてもらおうと心の中で誓ったナマエを、ペンギンとシャチが見惚れていたのはいうまでもない――。



   



戻る
















×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -