EPISODE.02



オールを漕ぎながらゾウに近づいていくと、霧の向こうから1隻の船が見えた。――サニー号だ。サニー号を見た途端、バルトロメオ達は子どものようにはしゃぎ回り、そして感涙しながら拝み始めた。
これで間違いなく、ビッグ・マムの手から逃れゾウに辿り着いていた事になる・・・が、ルフィが声をかけてもサニー号からは応答が無かった。ゴムの手を伸ばしたルフィがサニー号へと移動し、船を探してみてもサンジ達の姿はどこにも無くもぬけの殻・・・。

他の者達もバルトロメオが張ったバリアの階段を渡ってサニー号へと移動した。


「おーいルフィ、皆は?」
「いねェみてえだな・・・」
「全員上陸したんだな」
「ああ!すぐ追いかけるぞ!!」


バルトロメオ達の食料全てがサニー号へと積まれ、各々の出発の準備が終わる。甲板に立つルフィの姿を遠くから見つめていたバルトロメオは別れの涙を流しながら1人叫びだした。


「ああ・・・先輩方行ってしまうべ・・・このままついていって夢の麦わらオールスターズを一目拝見してェけんど・・・ッとても神々の冒険のお邪魔は出来ねェしぃ・・・おら達の幸せバロメーターは既にフルスロットルゥ!!いつかお会いする日にはおら達全員麦わら傘下の名に恥じぬ実力を身につけて参上仕りますゆえ・・・!そん時もしお役に立てましたならばァ!!残る4枚の先輩方の神の雫サイン!頂戴できますれば至極光栄に存じますべー!!!」

「・・・ミミズ?」
「蛇だろ?」
「足があるだろ、トカゲだ」

完全なる無視ー!?!?パーフェクトスルー!!・・・ッでもそんな全てが幸せェー!!!」


バルトロメオの想いは誰1人として聞いておらず、麦わらの一味はカン十郎が地面に描き始めた墨絵に夢中であった。

等身サイズの筆を器用に動かしながら絵を描き終え、その絵の正体が何なのか様々な意見が飛び交うなか――カン十郎は手を構えると「出でよ昇り竜!」と叫んだ。
・・・ミミズでも蛇でもトカゲでもなく竜だったという事実に一同が呆然とするなか、カン十郎の悪魔の実の能力が発動される。カン十郎の描いた絵は実体化となって、巨大な竜が姿を現した。


「うおおー!なんだこれー!すっげぇー!!」
「う"・・・う"う"う"う"」
「!なんか言うぞ!?」
「・・・・・ッりゅう"う"う"!!!りゅう"う"う"!!!」
なんだか気の毒な生き物出てきたァー!?!?
「『(可愛い・・・)』」


カン十郎の画力が足りないのか、現れたそれはとても竜とは思えない・・・が、本人がそう叫んでいるのだから恐らくそうなのだろう。
竜の愛らしさにナマエとロビンが頬を赤らめるなか、カン十郎が竜に指示を出す。


「竜の背に乗って飛んでいけるならあっという間だな!」
「さあ行け、竜よ!!」
「・・・・・・」
「竜よ!!」
「!りゅ、りゅ!?りゅりゅりゅ・・・」


どこか焦った様子の竜はカン十郎に命令されると、渋々といった感じで巨象の足にしがみついた。少し歩いただけですでにゼエゼエと息が荒い竜に不安を覚えるウソップ。


「さあ皆の者、竜の背にしがみつけ!よじ登る!!」
って飛ばねェのかよ!!
「はははは!よォーし!行こうー!!」


一行は竜の背にしがみつき、全員がしがみつくと竜が巨象の足を伝ってよじ登り始めた。ゆっくりゆっくりと昇っていくなか、ナマエは下から聞こえてきたバルトロメオ達の声に気づくと先頭にいるルフィを呼ぶ。


『ルフィ、バルトロメオ達がなんか言ってるよ』
「ロメオ達か!そういや礼も言ってなかったな!おーーいロメオー!!じゃあなー!ロメオ達!送ってくれてありがとうー!!!」

「!!!い、今ァ!!おれの名を・・・・・・ッ初めて呼んでもらえたぁぁあ!?ッこちらこそおお!!ありがとうございまぁああす!!どうかお気をつけて行ってらっしゃいませぇええ!!!」


バルトロメオ達に見送られながら暫く進んでいると・・・下を見ればすでに船の姿は蟻のように小さく、その高さにウソップが顔を真っ青にさせて悲鳴をあげていた。


「うひょォ高ェー!怖ェー!腕疲れたしんどいィー!」
「そう言うなよ、コイツも頑張ってんだ」
「りゅう・・・っりゅりゅ・・・・・」
「まだてっぺん見えねェなー・・・サンジ達どうやって登ったんだ?」
「ちゃんと上にいんのか?」
「錦えもん、カン十郎!そういえばお前らなんでゾウに行きたいんだっけ?」
「!そうでござるな・・・おぬしらは恩人、いずれ全てを話さねばならぬが・・・まずは安心させてくれ!」
「うむ。ワノ国を出てこのゾウこそが我らの目的地・・・モモの助が無事であるか、また海上ではぐれたもう1人の同心忍者の雷ぞうが無事に着いたかを確認したい」
「忍者!?忍者なのか!?」


一番後ろにしがみついていたカン十郎の放った"忍者"というワードに目を輝かせ、一斉に後ろを振り返る男性陣。手裏剣、滝に打たれる、忍法、消える術・・・そこには男のロマンが詰まっているのか・・・・もちろん女性であるロビンとナマエは特に反応も見せていなかった。
ナマエは自身の前に座っていたローまでもが反応した事に意外性を感じ、その視線に気づいたローがナマエと目が合うとバツが悪そうに前を向き直したのはいうまでもない・・・。

ルフィ達が忍者の質問をするなか、ふと・・・上空から不思議な声が聞こえてきた。


『ルフィ、空から何か・・・』
「ん?・・・!?なんだありゃ!?」


空を見上げれば見た事の無い猿のような影が降ってくる。


「エテテテテ〜〜!!!!」
「エテェ?」
「そう!雷ぞうはテテテと走る忍者でござる!」
「うおっ!危ねェ避けろ!!!」


落ちてくる猿(?)を順番に避けていく一同。・・・しかし最後方のカン十郎と錦えもんは猿に気づかず戯れており、あろう事か落下してきた猿と激突。
2人と1匹の猿はそのまま昇り竜から投げ出されてしまい、一瞬で姿が見えなくなってしまった・・・。


「やべー!!2人が落ちた!!」
「くそォ!急に降ってきた今のなんだったんだ!?」
「分からないわ!包丁が何本も突き刺さった血まみれの人間かと思ったら子猿にも見えたわね・・・」
いや怖ェーよ!最初なんでそう思ったんだよ!!


ロビンに冷静にツッコミを入れながらもウソップが下の海に向かって2人の名前を叫ぶ・・・が、既に雲がかかる高さまで来ていた為、全く返答は無かった。


「海に落ちたか?」
「!助けに行こう!!!」

「"ルフィー殿ー!!拙者たちは無事でござるー!!"」
「!錦えもんの声だ!良かった生きてた!」
「"先に行っててくれー!!じきに追いつくゆえ!!"」
「なに言ってんだ水臭ェ!おい竜!下へ引き返・・・」
「りゅりゅりゅ・・・ゼェ・・・ゼェ・・・」
「おい竜!!」
「りゅう・・・っ・・・りゅ・・・りゅりゅう・・・」
「りゅ、竜・・・」


「「「「「(気の毒でとても言えねェ)」」」」」
「『(可愛い・・・)』」


竜は一刻も早く昇りきりたいのか、目に涙を浮かばせながら昇り続けていた。その健気な姿にナマエとロビンは再び胸を掴まれたのはいうまでもない。


「悪いけど先に行くぞー!!後で会おうー!」

「"承知いたしたー!"」
「"おのれェ!勝手な入国は許さんぞォ!!"」
「"先へー!!"」

「・・・今1人知らねェ声が混ざってなかったか?」
「気のせいじゃねーか?」


それから日も暮れ始め、ルフィが退屈で眠り始めた頃――足をガクガクとさせながらも、漸く視界に頂上が見えてきた。


「頂上が見えた!!頑張れお前ならやれるぞ!!」
「あと少し!!」
「いけー!!」
「行くんだりゅうのすけー!」
「りゅうのすけ!」
「りゅうのすけ!」
「頑張れー!!」


沢山の声援を送られながら、最後の力を振り絞り――竜はとうとう、頂上に辿り着く事が出来た。


「着いたァ〜〜!!!」
「りゅりゅりゅ・・・」
「!」


久しぶりに地面に足がつくことができ、ルフィ達が喜ぶ一方でロビンは感動のあまり涙を流しながら竜の頭を撫でていた。


「頑張ったわね、りゅうのすけ・・・!」
「りゅ!りゅりゅ・・・ゼェ・・・」
「!絵に・・・戻るのね・・・」
「!おいちょっと待て!!」
「りゅうのすけ!!」
「りゅうのすけェ!!」


涙を流しつつニコッと笑う竜はやがて消え始めてしまい、再び墨絵に戻ってしまった――。夕日をバッグに泣き叫ぶルフィ達を尻目にゾロとローが小さく呟く。


「・・・茶番だ」
「ただの下手な絵だろ」
『うっ・・・うう〜〜っ』
「「・・・・・・」」


しかし隣で咽び泣くナマエを見て、それ以上は何も言えない2人であった――。





   



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